深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

An Experimental Restration of Nikkor-SC5cmf1.4

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【撮影データ】カメラ:Nikon SP フィルム:Kodak EKTER100、全コマ開放、ロケ地:浅草~上野
さて、年の瀬も押し迫り、いよいよ、今年最後の更新となってしまいました。

今回のご紹介は、先週の予告通り、秘宝館から、面白い実験結果のお披露目ということで、Nikkor-SC5cmf1.4の劇的なレストア結果についてご紹介したいと思います。

そもそもの発端は、何故かニコンマウント互換?の5cmゾナーをf2、f1.5とも使い、しかるのち、Nikkor-SC5cmf1.4を白、黒とも街撮りで使ってみたら、何れも異常にフレアが多く、赤・緑色レーザーのスリット光を通しても、白色光で散乱を試みても、分解しても原因が判らなかったのですが、よくシネレンズの再生で無理をお願いしている川崎の関東カメラサービスさんで、モノは試しとばかり、SマウントNikkorのフレア何とか出来ない?と聞いてみたところ、任せて下さい、というカンジで引き受けてくれたので、お預けして、待つこと2ヶ月、大サービスで白文字の入れ直しまでやって戴いて、手許に戻って来たのです。

では、早速、テスト結果見て行きましょう。今回の作例は畏友Tarningさんと同道の浅草~上野ツアーからのピックアップです。

まず一枚目。

お登りさんよろしく、雷門前を出発した二人は、あちこち道草しながら仲見世を浅草寺に向かい撮り歩き、途中で六区映画街方面へと向かいました。

すると、若い力車の車夫さんが、にこやかにお客さんに浅草演芸場の説明なんかしています。
日もカンカンに照っていて、構図的にもなかなか宜しいので、一枚戴きました。
さすがにピーカン下での開放ですから、いかな1000分の1でも完全にオーバー気味で、ハイライトは飛んでしまってしかりですが、さすがラチチュードの広いEKTAR100、それほど破綻なく、生々しく現場を捉えています。
クロムメッキの車輪フェンダーや幌のビニールのように元もとの反射率の大きいものは、前ボケでもあり、フレアを纏っているように見えますが、ピンを置いた車夫の兄さんの笑顔はすっきりくっきりと映えていますから、やはりレストアの効果は絶大だったかと予感させる仕上がりです。

そして二枚目。

六区映画街から、一旦、昼食を取りに浅草寺境内を通って、早田カメラ&ハヤタカメラボ経由、Tarningさんお馴染みの和屋さんに向かい、そこでまたーりとランチを戴いてから、午後の撮影開始しました。

ルートは、伝法院通りに接した、飲み屋街からすしや通り、ひさご通りを抜け、千束通りまで向かいました。

その途中、民家の横に手植えされた紅葉が綺麗に色づいていて、遠方にスカイツリーが聳え立っていたので、まさにここぞとばかり、一枚戴きました。

ここはさすがに日陰なのでそれほど盛大なフレアは出ないと期待してはいたのですが、仕上がった画を見て、少なくとも、このシチュエーションでは、本家ゾナーと同等のレベルまで改善されている、と思いました。

紅葉とその周囲に関しては、発色も解像力も満足行く結果ではありましたが、バックのスカイツリーがかなりの二線ボケになってしまったのは、少々、残念に思いました。

それから三枚目。

千束通りの途中から脇道に入りそれを奥まで歩いて行ったら、突き当たりに面白い木造家屋が有ったので、誰か前を通りがかったらシャッター切ろうと身構えていたら、ちょうど、物憂げな黒づくめの小姐が約一名通ったので、強制的エキストラ出演して貰いました。

ここでは、主役はあくまで木造家屋なので、そこにピンを置いていましたが、反射率の高い掲示板や隣のコンクリートパネルの家屋はさすがにフレアが認められますが、それでも画面全体としては、見違えるようにすっきりしており、これが、シャター速度がもっと上げられて、もう少々アンダー気味に撮れば更にハイライトのフレアは減るのではないかと思いました。

続いて四枚目。

浅草エリアでの作戦行動を終了し、次のミッションである東京芸大を目指し、上野に向かって、二人は歩き出しました。

合羽橋エリアなど、もう学生の頃から来ていたので、隅々まで知っていたつもりですが、こうして、純正品の江戸っ子と歩くと、やはり産地偽装の江戸っ子もどきは馬脚が出てしまいます。

見るもの何もかもが珍しく、キョロキョロしながら歩いていたら、かなり反射している建物の前に黒尽くめの作業員風のヲヂさまが寛いでいるではないですか?

こんな素晴らしいフレアの発生実験はありません。

早速、ヲヂさまにピンを合わせ、一枚戴いたのがこのカット。

どーでしょう。画面の殆どが相当反射率の高い面で以て、西陽を浴びて盛大に光っている中に漆黒の衣装のヲヂさまが佇んでおられるのですが、全くと云って差し支えないほど、被写体の識別に支障となるようなフレアが発生しておらず、ヲヂさまのお姿も、植栽も赤いとんがりコーンもきれいに見分けられます。

やはり、満を持したフレア対策のレストアの効果は絶大であるようです。

更に五枚目。

二人はやっと東京芸大の近傍まで辿り着き、その敷地の周辺の前衛的オブジェに目を奪われ続けました。

その中でも、特に目を惹いたのが、このステンレス板だかを溶接して造型した戦士風のオブジェです。

落ち葉の中で物思いに耽るかの如く佇む姿は、まさに芸術そのものの具現でした。

無機質である筈の金属板がどうして、ここまで人の心を惹き付ける形を纏えるのか?

まさにこれが凡夫の悲しいところ、幾ら考えても判りませんでした。

しかし、このベストシーズンの晴れ姿を残すことは出来ます。

背中から夕陽を浴びて鈍い輝きを放つ、この異形のオブジェの勇士を一枚戴きました。

やはり、フレア対策の効果で、この憂いに満ちた金属板の戦士の形は落ち葉の中、キレイに捉えられています。

このカットを撮れただけでも、レストアの価値は有ったと思いました。

最後の六枚目。

艱難辛苦の挙句、何とか二人はミッションを成し遂げ、後日、無残にもボツにされるとは知らず、何故か妙に晴れがましい気分で、芸大を後にし、上野公園へと向かいました。

すると、傾きかけた陽光を浴び、親子連れのヲヤジさんが奥方の助けを借りてまだ幼い童子を背負おうとしているではないですか。

思わず、一挙手一投足に見入って、ここぞと思う刹那、すかさずシャッターを切ったのがこの一枚。

ここでも、フレア激減の効果は十分に出ており、家族の衣服の皺まで充分に見分けられるくらい、シャープでクリアな描写を叶えています。

今回の感想としては、やはり、レンズにしてもカメラにしても、経年変化による描写の劣化は、味などではなく、オリジナル性能からの退化に他ならないのではないか?ということ。

そういった意味では、今回の完璧とも云えるレストアは金額以上の満足感があったのではないかと思った次第。

さて、今年の更新はこれにて満了ですが、愛読者各位の益々の御発展を祈念致しまして、今年はこれにてお暇をいただきます。

また来年も宜しくお願い致します。

良いお年を!!

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2011/12/25(日) 23:45:06|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

年末の浅草らしい風景ですね。

絞り開放でもノスタルジックな色合いが中々ですね。

ここのところコントラスト高の写真ばかり撮っているので、こういう写真には癒されます。

それにしてもフレア調整したことで、白昼夢の様な映り方になるのは元のレンズの性能が良いからなのか、関東カメラの技術力恐るべしなのか迷いますね。
  1. 2011/12/26(月) 20:17:01 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:年末の浅草らしい風景ですね。

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。
ホント、テスト結果が上がって、撮った本人がびっくら島倉千代子の使用前/使用後でした(笑)

元々のレンズは前後の玉にキズもなく、かなりキレイな状態でコーティングも異常なく、曇りもない状態なのに、開放で撮ったりしようものなら個人的には、使う気も起きなくなるくらいフレアが酷かったのですが、通常のOH料金で第三群のバル貼りと細かい白文字入れまでやって戴いて、この写りです。

オリジナル以上の性能は出せない、いや出さないのでしょうけれど、それこそがレンズと付き合う上で大事なことだと改めて思いました。

レンズの経年変化による、コントラスト低下等画質劣化をあたかもクラシックレンズの味のように有難がる不可思議な信仰もありますが、やはり設計通りの画質で味わうべきと個人的には思っています。

もし、これは!と思うレンズがあれば、小生同道の上、納得行くまで話し合って、依頼されると宜しいのではないかと思います。
  1. 2011/12/26(月) 21:55:44 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

今年も一年ごくろうさまでした。

ニコンの50mmf1,5は、イエナガラスなんていうウワサもあったのではありませんか。
5005(f1,4)くらいまでのS用ニッコールは素性が良いとされているそうで開放からフレアーが無いと云われていましたが、今回はカラーではっきりと証明された感があります。

一枚目は、なんといってもTokyo 刻印だとこんな浅草の場面がピッタリなんて思ってしまいます。このレンズの多くは外地に出てしまったでしょうから、特別な印象も持ってしまいました。

それにしてもハイライトの滲み以外はフレアーも気にならず、代表的にはSニッコール・40番台の黒鏡胴のフレアーがキャノン50mmf1,8の宣伝材料になってしまったかの感もあります。

しかしながらきつめの収差補正もあってか、背景ボケがカタイ場面も見受けるものの、コレくらいの癖ならシネ・ゾナー並にも見えますね。
(絞った)ズマリットやゾナー辺りに並び称されるだけの実力を垣間見る事ができると思います。

そういえば過日、他のサイトで拝見したニコンの同様レンズはもう少しフレアーはありました。色彩の点でもコチラよりzeissふうの暖かい感じだった事を思いだしました。

古いレンズの本を見ると、ニコンの職員がレンズを睨みカナズチを持って砕き、それから研磨に掛けるといった行程を写真で解説したものがあります。

ですから、かなりの個体差は止むを得ないでしょうけれど、その個体差すら楽しめるような今日になった訳ですから、かつてあった手作業と年季の入った選別(選塊?)を多くの実写から推測できるかもしれませんね。初期性能に迫るべくO、H、の効果ももちろん絶大だと思います。


最後のカットも、それ以外と同様に気持ちの良いピントが来て、背景をキレイに見せているとおもいます。
  1. 2011/12/29(木) 12:56:23 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

今年も御贔屓深謝です。

treizieme ordre さん
有難うございます。
今年も色々と面白く、的確な講評を戴き有難うございます。

さて、まずは、お詫びと訂正・・・このレンズ、ついうっかりf1.5と開放値を書いてしまいましたが、SCでf1.5などあろう筈もなく、ニコン製のガラスを使ったと言われるf1.4です。

このレンズは確かに各ニコンのSレンズに関するマニアックなサイトを幾つか覗いてみても、開放からf2.8くらいまではかなり手に負えない大フレア大会で、描写もニッコールにしては、かなり甘めで、兄弟レンズのf2にも開放での解像力は一歩譲るといった評価のようです。

ただ、各サイトの評価や作例は当然のことながら、経年劣化込みでの評価であり、当サイトでの最初のアップも同様でした。
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/blog-entry-221.html#comment

まさに修理前と後では全くの別玉といってイイほど、キャラが変わってしまい、寧ろ、ゾナーの5cmf1.5の作例の方がよっぽど近しいくらいにも見えます。
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/blog-entry-224.html#comment

ありふれたSマウントの玉でこれですから、いつか、L39の5cmf1.4でキレイなのを見つけたら、是非、レストアをお願いしたいと思いました。

では、来年も御贔屓宜しくお願い申し上げます。
  1. 2011/12/29(木) 14:31:55 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

そうですか・・・。某教会詣出にて手にでも入れたのかと思いましたがi-230

それにしても、Sニッコ-ルのバリエーションは多いので楽しめますね。
リーマンショックの頃はアメリカから沢山渡って来ましたが、今頃はどこに収まったのでしょうか。

ニコンマニアは戦争絡みのせいなのか日本とアメリカに多い様なので、他の国の人が興味を持つような投機の対象に成りそうも無い気もしますし…。

今回のレンズがSCだとすると、32xxx辺り以前の番号ではないかと推測しますが、これが40xxxだったらカントーさんの威力をことさら感じひれ伏しますが、いかがなものでしょう???

どこかで安い1,5が転がっていないかと、ボデーはS3であろうとも目を凝らして行きたいものですね。
(S3に5005がくっついていて7~8万というのも偶然見た事ありますが、資金不足に泣きました。i-241
  1. 2011/12/29(木) 17:30:40 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
再び有難うございます。
このレンズのシリアルは勿論、4096XXです。
どこをどう直したかは企業秘密でしょうし、具体的に詳しくは教えてくれませんでしたが、撮れば明らかに違いが判るレベルの修理はしてあります、とだけフロントで告げられ、引き取ってきた次第。

通常のレンズ修理の常識で考えれば、第3群の周囲のちょっとしたバル切れを治し、内面反射を反射防止塗料の塗り直しで減らしたくらいでは、元から内面反射はそれほど目立たないレベルだったので、この飛躍的な改善はまず説明が付きません。

ただ、ひとつ気になったのが、或る時、大久保の名人と別のゾナータイプのレンズに関し、雑談していた時に言われた、「ゾナータイプは第2群のエレメントの周辺端部の形状が描写性能に大きく影響する」との一言です。

もしかすると、関東カメサは長年のニコン製ゾナータイプのレストアの結果、端面形状の改善(=切削)で大幅にフレア減少、コントラスト改善のノウハウを蓄積してきたのかも知れません。
  1. 2011/12/29(木) 19:20:30 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

このレンズは...さすがに私の範疇を超えているので、コメントできずにいました。

ので、ご挨拶だけw

今年は色々と、ありがとうございました。charleyさんに出会ったことで、写真においては、随分実りのある一年でした。来年も御指導、宜しくお願い致します。

そして、よいおとしを。
  1. 2011/12/31(土) 21:20:04 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
旧年は終わり頃になって、主にサイトを通じ、JYさんと色々と語らうことが出来、自分の写真制作の上でも、これまでの仲間内とはまた一風変わった見方のご意見を戴いて、大変参考にも、また、時には励みにもなったと思い、感謝しております。
また、今年もどうぞ宜しくお願い致します。
  1. 2012/01/01(日) 00:36:24 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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