深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Lens veio de além da Cortina de Ferro~Jupiter3 powered by F.G.W.~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE 露出+1/3、全コマ開放、ロケ地;浅草
さて、今宵のご紹介は予告通り、秘宝館からの登場です。

え~なんぢゃ、こんな安モノを"秘宝"なんて言ってんの!?とか、そこのアナタ、ページ変えないでもうちょっと付き合って下さいね(笑)

このJupiter3、そんじょそこらのモノとは出来が違います。

そもそも、改造レンズのヘリコイド&マウント用ドナーに適当なのを見繕って送ってくれ、と某旧共産圏の写真業者に頼んでおいたら、何を考えたか、送ってきたのが、エレメントにもキズなく、アルミの鏡胴に有りがちな腐食の黒ずみや染みなども無く、この何処がパーツ用ぢゃい!?と怒鳴り飛ばしてクレーム扱いで送り返してやろうとも思いましたが、よくよく確認してみれば、なんかヘリコがスカスカ、しかも、振ると微かにカタカタという音も聞こえるし、しかも、工房のピント測定機で確認してみたら、あにはからんや、無限が来ていない・・・こりゃ、紛らわしいヂャンクだわ、とか思い、これで綺麗なレンズを人身御供にするという罪悪感から開放され、さぁて、分解してヘリコを頂戴しませう♪とかまずレンズ後端の蟹目なぞを開けようとして、はた!と気付きました・・・げ、このレンズ、光学ブロックとヘリコ一体式で某キャノンとかライカにありがちなヘリコと光学ブロックの分離型になってない!・・・これぢゃ改造レンズのヘリコ&マウントユニットに使えない!!!

ここで、このままキレイなので叩き売って小遣い稼ぎをしてしまおうという、悪い心もムラムラと湧き起こらなくもなかったのですが、それより、昔、駆け出しの頃買ったのに、間違って手放してしまった、開放からとても良く写るジュピター3を思い出し、この外観美人をリフォームすることとしました。

まずは、光学ブロックをヘリコから外し、無限が出るよう、無限位置の突き合わせを旋盤で慎重に削り、奥に入るようにして光学的無限をとり、次は、こうすると距離計連動カムが無限位置より後ろに行き過ぎてしまうので、こちらも、ピント基準機のファインダと睨めっこして、二重像をドンピシャに合わせました。

ここまでやると、ムクムクと沸き起こってくる欲望が、コントラストを上げたい、フレアを減らしたいというキモチです。

そこで、エレメントも全部バラし、コバ塗り、鏡胴内部の黒色アルマイトだけの部分には、工房特製、グラファイト無反射塗装を奢り、中に残っていた、バリ、金属粉、塗料カス?みたいなものも全部掻き出してキレイにし、慎重に組み直しをしました。

ほぼ改造レンズ一本作るのと同じくらいの手間隙を掛けて、時価1万円そこらのレンズを治したってことです。

まぁ、当工房は非営利団体なのでどうでもイイことですが・・・

作例行く前にこのレンズの氏素性をおさらいしておきましょう。

このJupiter3は焦点距離50mm(実質は52mm強)F1.5の3群7枚のゾナータイプ、というより戦前のゾナーの忠実なコピーで、1950年台の初めから、クラスノゴルスクで作られたようです。

そして、この個体はどうやら1971年のザゴルスク工廠製のマイナーチェンジ版のようです。

ネットで色々と評判を調べてみたら、結構なクセ玉というのが一般論らしく、開放で使うのは無謀!というのが総じてのJupiter3評のようです。

では、そんな暴れるゾナーの末裔が深川の杯を受けたらどんな子分になるのか?早速作例行ってみましょう。

まず一枚目。

今回は浅草へふらりと出かけてみました。今日の今日、まさに撮って出しです。

別のレンズの試写も兼ねていて、そちらの試写を浅草寺本堂内で上がりにして、このJupiter3にスィッチしました。

本堂には、西側に開け放たれた出入口から、ちょうど斜めに午後の陽が差し込んできており、時折、良い案配で、小姐達の髪の輪郭を光らせます。

そこで、狙いを定め、おみくじカップルを狙い、ちょうど、頭を動かし髪に陽が当たって、光った刹那、シャッターを切ったのがこのカット。

ちょっとピンが甘いようにも見えますが、女性の後ろ髪にピンを合わせていて、振り返った瞬間にシャター切ったので、この被写界深度の浅いレンズの開放では、ちょっと甘く見えるということです。

後ボケもゾナー固有の蕩けるが如きマイルドなボケで好感持てると思いました。

そして二枚目。

してやったり顔で本堂を出て、定点観測ポイントのひとつ、手押しポンプの方へと向かいます。

すると、来るときには、人っ子1人居なかったポンプの前で若いお父さんと童子が肉体労働に勤しんでいます。

しかも、この童子、小生がカメラ構えてると、カメラ目線いなり、お仕事が疎かになります。

すると若いのに良く出来たヲヤヂさんが、「ほれ、よそ見してサボってんぢゃねーぞ、ごるらァ!」とか優しく叱り飛ばしてひたすら無意味な水汲みへと誘います。

そこで、一心不乱に水を汲むというか、垂れ流す様子を収めんと、シャッター切ったのがこのカット。

日陰になってしまっているので、童子へのピントのシャープさはいまいち判りづらいですが、ほぼ同一被写界面に在る、ヲヤヂさんの手編み風のセーターのテクスチャがくっきり写っていることから、描写性能は窺い知れるのではないでしょうか。

後ボケはここでもナチュラルで鑑賞の妨げにはならないようです。

それから三枚目。

仲見世は異様な混雑度合いだったので、往きだけで充分と思い、東側の側道を歩きながら、時折、横道から仲見世方面に視線を走らせ、シャッターチャンスを探します。

すると、ありました、ありました・・・新機軸。

なんと人形焼の焼方のヲヂさまの勇姿がガラス越しにセミシルエットになってるぢゃあーりませんか!?

しかもこのガラスのグリッドが何故か意匠的で泣かせます。

早速、光の具合いを読み、またヲヂさまの挙動を見て、姿勢を予測してシャッターチャンスに備えます。

そして、光とヲヂさまの姿勢が合致した刹那、シャッター切ったのがこのカット。

白衣が、半透明から透明に近い格子ガラス越しに極めて柔らかい輪郭で写っており、イイカンジだと思いました。

午後の極めて狭い時間帯のみのシャッターチャンスに思わず感謝しました。

続いて四枚目。

側道を歩いていたら、店先のベンチに腰掛け、お孫さんに絵本を読んで聞かせている、おばぁさまが居られました。

そこで、一枚撮らせて貰いますよ、ブログのネタですから、どうぞお気楽に、とか笑顔で声掛けたら、おばぁさまの方は、暫し合点がいかないようで、戸惑っていますが、お孫さんの方は、ほれ、この通り、もうピースして首を傾げてポーズなんか作ってます。

そこでやっとおばぁさんも正気に帰り、はぁ、有難うございます、写真を撮ってくれるんだってよ!とかお孫さんに言って聞かせている瞬間をシャッター切ったのがこの一枚。

う~ん、惜しかった・・・これで目線貰って、ピンを合わせ易い耳ぢゃなく、目で合わせていれば、パーフェクトだったのに。

でもまぁ、撮り直しも、申し訳ないし、だいいち、変わったカメラ提げてて、いかにもマニアですよって人種が撮り直し、なんてカッコ悪くて言えよう筈もないので、諦めて、御礼を述べて笑顔でその場を立ち去った次第です。

最後の五枚目。

側道を歩き通し、やっと雷門まで戻りました。

すると、傾きかけた冬の夕陽はここでも斜めに射し込み、大提灯の下を通り過ぎる人達のシルエットを時折光らせ、浮かび上がらせています。

まさに前回のシネプラナーの応用で、R-D1sを持ち出したのには理由があり、こういう夕陽越しのシルエットで髪がフワっと光るさまを捉えるには、この上ない相棒と感じたからです。

そして門の浅草寺サイドに立ち尽くし、距離だけ合わせておいて、シャッターチャンスを待つこと3分弱。

パナソニック印の大提灯下を通り過ぎたカップルが門を潜り終えんとする刹那、シャッター切ったのがこのカットです。

ただ、ピンは置きピンで撮ろうと決めた以上、大提灯下の金箔貼りの金物に合わせています。

背後の人々も夕陽が当たって仄かに輝き、なかなか、冬の夕暮という風情を暖かく演出出来たのではないかと思います。

今回の感想としては、う~ん・・・レンズは値段や氏素性だけでは判断出来ません。組み立てや、検査さえしっかりしていれば、ロシアのレンズも、ヂャンクと紙一重の値段からは脱出出来るのに・・・と思った次第。

さて、来週は、溜まりに溜まった工房作品から何か面白げなのを引っ張り出して来ませう。乞う御期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2012/02/12(日) 21:42:38|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

浅草冬景色

そんなところでしょうか。

4枚目のおばあさんの雰囲気が良いなと思うところですよ。
もともとの素性がいいのか、Jupiterから映し出される画像の色合いが自然ですねえ。
  1. 2012/02/13(月) 22:59:58 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
確かに、このおばぁさん、なかなかお品が宜しくて、声掛けてから、暫し唖然とし、間髪置かない小々姐の奇行により、やっと正気に戻ったら、有難うございます、と云い、写真を撮り終わってお礼を述べたら、また、子供にも頭を下げさせて、どうも有難うございました、と云い、何故か文明開化の頃の、居留地の写真機を持った外国人の前に出た横浜の人みたいな、写真撮影者に対する接し方でしたね。

このジュピター、云われてみれば、自然な発色なんて、確かにちょっとヘンですよね・・・普通はもっと醒めたというか褪せた発色だったような気もしますもん。
でも、これでも撮って出しでリサイズ以外は何にもやってないんですよ。
  1. 2012/02/14(火) 22:27:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #lICd2zaU
  4. [ 編集]

白っぽいガラスのコバの反射が印象的です。
戦利品だといって工作機械を持ち出したり、数奇な遺物という感じがしますが、ヘリコイドが有る分ニッコールよりも実際は高価という印象があって、コレは持っていません。

f2のゾナーコピーも含め、やっぱり本家zeissの暖色系に到達・あるいは追い越すのはニコンも含めムズカシイという気は個人的にはしました。でも、これはハロも殆ど感じませんし、ちょっとキリキリするようなピントが気になるくらいです。


景気がそこそこだとか、街中はあたたかそうですね。


  1. 2012/02/19(日) 17:48:00 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
このレンズ、まさにロシアレンズの世間イメージと実力のギャップを象徴しているのではないでしょうか。

確かにF1.5、F2も含め本家のゾナーのしっとりとした彩度の高い描写には今一歩及ばずの感はありますが、それでもモノコートの50mmf1.5のレンズがフード無しの開放撮影でこれだけのコントラストとシャープネスを発揮するのは、驚異的ではないでしょうか。

丁寧に、レンズ製造のセオリー通りに手直しすれば、ここまで写るようになってくれるのです。

同じく大口径で、ゾナーの子供である、Nikkor5cmf1.4も、設計思想的にはゾナーの後群の影響を強く受けていると考えられるキャノンの50mmf1.4も開放ではここまでフレアもなく、すっきりとは写りませんし、ライツのクセノン/ズマリット系列もしかりです。

どうです・・・この春から"筑後オプティカルサービス"の旗揚げをせんと意気軒昂の仲間も居られますし、貴兄も旧共産圏から何本か買い入れて、御自分でレストアなどしてみては・・・
  1. 2012/02/19(日) 22:41:16 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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