深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Return of LOMO as a fighter in digital age~OKC-6-50-2

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【撮影データ】カメラ:R-D1s+SLカプラ、絞り優先AE、ISO200、露出+1/3、全コマ開放、ロケ地浅草
さて、今宵のご紹介は、またしても掘り出し物のレポートです。
このキエフIIにちょこんとくっつけられた、"LOMO"の刻印も控えめな漆黒/シルキークロムの改造レンズ、これは、1992年にレニングラード光学機廠がデジタル用映画カメラでの利用を前提に満を持してリリースしたシネレンズです。

ついでに刻印の意味も御説明しておくと、"OKC"とはObjective Kamera Cinema"のことでつまりキネマ用レンズという意味で、"50"がノミナル焦点距離、そして最後の"6"はシリーズ番号で、開発世代を表し、"6"は今のところ最終型でデジタルでもゴーストやフレアが出ないコーティングを施されている、というアナウンスでした。

構成はオーソドックスな4群6枚のオーピックタイプ、全面にマルチコートが施され、見た目にもゴーヂャスでコレクション意欲をそそります。

このモデルは昨年秋にご紹介したPO3-3Mという先輩格のシネレンズの改良型に当たるワケですが、果たしてその性能は、偉大なる先輩を超えるのか?

ということで、早速、実写結果を見ていきましょう。但し、PO3-3Mの試写はM8で、こちらはR-D1sなのでシャープネスは若干ハンデを負っていることは予めご了解下さい。

まず一枚目。

木場から地下鉄に乗って浅草につき、雷門近くの出口から地上に上がると、まずは雷門を目指し、途中の人力車乗り場付近で何枚か車夫さんの営業風景なんか撮り、門を目指しました。

門の表で何カットか撮り、仲見世を歩き出そうとした刹那、門裏で吸水性高分子素材を使った、怪獣のおもちゃを子供相手に売る露店が出ており、しめしめ、今回は、ちょうど子供っぽい童子2名があーだら、うーだら、熱い議論を交わし、品定めをしています。

そこで、横の親御さんに目配せしてカメラを指さし、撮るよと合図してから、撮ったカットのうちの一枚。

ピンは小々姐のダウンヂャケットの胸のタグで合わせましたが、いやはや、このSLカプラは構造上、回転角が大きく、いつも使っているL39やMの純正や改造レンズに比べ、速写性に欠け、その結果、よく動く童子達への追従MFは困難を極めますが、えいやっとシャッター切った一枚はこのように解像感も十分で前後のボケも満足行く結果となった次第です。

そして二枚目。

親御さんに会釈してその場を立ち去り、次の定点撮影スポットである扇屋さん前に移動しました。

ここではいつも、店頭に並べられている様々なな江戸模様の団扇を撮らせて貰い、背景のボケが良く判るようにしています。

ピンはひょっとの鼻に合わせたつもりですが、実際はその1インチ弱後方の団扇のエッヂからおかめの右側の輪郭くらいに合っており、かろうじて被写界深度でセーフかなというところですが、ボケが特徴的なのでボツにせず、あへて採用しました。

3m強後方の藍染の暖簾くらいまではまぁ何とか許容範囲ではなかと思いますが、その遥か後方の通りは電信柱をはじめ、2線ボケというか、ぐずぐずに崩れてしまっていて、収差の出方がほんまにシネレンズかいな?てな按配でした。

それから三枚目。

また仲見世を本堂方面に向かって歩いていきます。

途中、これはと思ったシーンで何枚かシャッターを切りましたが、同様の理由で、とにかくピントの微調整が困難を極める上、ヘリコ部分が無限とか最近接まで行ってしまうと、戻すのが固くなってしまい、その結果、MLリングの締め付けがゆるみ、これがあたかもダブルヘリコイドの如き作用を引き起こし、ピンがずれるという結果をもたらします。

それでも、何枚かは上手く行ったカットがあって、M8とは違い、連写が効かないR-D1sにあって、会心の一枚はなかなか満足感が得られました。

その会心の一枚というのがこのカット、本日のベスカットではないかと自分では思っています。

宝蔵門近くで、お子さんを背負った若いヲヤヂさんを見かけ、人ごみを縫って追尾し、かなりイイ線まで肉薄し、必殺のシャッター切ったのがこのカット。

予め、SLカプラのネジはきつく締め直し、かつ、ヘリコを2m~1.5mのところへ合わせておいて、至近距離に入って、フレーミングがばっちりのところで、シャッター切ったものです。

ちょうど、16時過ぎの夕陽を浴びた童子の寝顔は何とも無邪気で愛くるしく、思わず、この子の将来に幸多かれ、と祈らずには居られませんでした。

ここでは、後ボケは相対的に距離が近くなっているためか、鑑賞にはそれほど妨げにならないレベルに収まっているのではないかと思いました。

続いて四枚目。

この幸せそうな親子へと心の中で感謝の念とエールを送り、その場を離れ、お参りもしたかったので、本堂へ入りました。

お賽銭を上げて、むにゃむにゃと幾つか個人的なお願い事をしてから、また俄然撮影モードに入り、本堂の西側エリア、そう西陽が差し込む扉付近に視線を走らせます。

すると、かなり低めの角度で差し込む夕陽を背後に浴びながら、年輩のヲヤヂさんと、いたいけな童子がお御籤なんかを棚に結えています。

そこで、するすると人ごみを縫って、斜め横に近寄り、逆光試験も兼ね、童子が顔を上げた瞬間を狙いシャッター切ったのがこのカット。

結論から先に云っちゃえば、逆光下では、先輩格の赤い毒々しいコートを纏ったPO3-3Mに大敗です。

PO3-3Mは江ノ島の海岸で海面に反射した西陽が斜め後ろから光る、インド人の親子を撮りましたが、そこでは、フレアの類いは皆無で、撮った本人が後でびっくりしたくらいですが、同じくノーフード状態で撮ってみたら、しっかりと円弧状の虹が童子の愛くるしい顔を横切ってしまいました。

しかも、背景の木々は好みでない、ぐるぐるが出かけていますし、なかなか気難しいレンズのようでもあります。

まだまだの五枚目。

お参りを終え、何枚か本堂内で撮ったので、肩の荷も降り気楽なキブンで次の撮影スポットである屋外お御籤売り場へと移動します。

するとここでも、ステンレス製のテーブル部と木製の引出しが良い按配に夕陽を浴びて照り返しており、これを撮らない手はありません。

そこで、お御籤売り場を真横から串刺しにするようなポジションに陣取って、「おみくじ」の文字にピンを合わせてシャッターを切ったつもりなのですが、ここでも、もはやアダプタの相性の問題なのか、若干後ピンになっています。

最後の六枚目。

そろそろ陽も傾いて来たので、どこかでお茶もしたいし、帰り道を急ぎました。

仲見世の間道で、雷門近くに老舗のお煎餅屋さんがあるのですが、そこがいつも、白熱電球で店内を煌々と照らし、また商品のディスプレィも良いカンジなので、写真を撮らせて貰おうと歩み寄ると、お店の方がちょうど出てきて、商品の並べ替えだかを行っておられました。

そこで、一枚撮らせてね、と声を掛けたところ、どーぞ、どーぞ、良いのを撮ってやって下さいね、観光客の方ですか、いや、そうとも見えないな・・・あ、アマチュア写真家の方ですか、あ、邪魔でしたね、ぢゃ、ごゆっくり、などと会話を交わし、店頭に佇み、向かって右の棚の端の瓶にピンを置いて撮ったのがこのカット。

ここでは、ちゃんとピンが来ているのですねぇ・・・いや不思議、たぶん、このカプラのカムの形状、口径から、距離によっては、後ピンになっちゃうのではないかと、勝手に推定した次第。

後ボケはまぁまぁ見苦しくないレベルですし、何よりも驚いたのは、こんなに煌々と輝く白熱電燈が被写界に入っていても、R-D1sはかなり高い精度のAEで適正露出を導き出し、また、このシネレンズは、全くと云って良いほど、フレアもゴーストも出さず、光源の形をありのまま背後に捉えています。

今回の感想は、マルチコートで一番新しいタイプのシネレンズとは云え、シチュエーションでは、古くてしょぼいモノコートのレンズにも負けてしまうことがあるのだ、と思いました。

しかし、M8とR-D1sというハンデを負っていた割には、3枚目の夕陽を浴びた幸せそうな親子のカットのような満足行くものが撮れるので、早々にライカマウント版も製造したい、と思った次第。

さて、次回はローテに従い、工房附設秘宝館からコレクションご紹介致します。乞う御期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2012/03/04(日) 22:00:00|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

このレンズは難しい...というか、高輪の御大が「シネレンズは絞るの前提」と言っていましたが、もしかしたらそんな感じなのかな、と。私のBaltarもF8程度まで絞ると発色はかわらずに、劇的に繊細さが増し、表現豊かになります。ちょっとコイツ、譲って頂いたのが一本ウチにもあるので、なんとか5D2で使えるようにして、試してみたいと思います。
  1. 2012/03/06(火) 11:06:41 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。

まぁ、マウント精度がそこそこのSーLカプラでLMリング付けたら、こんなもんでしょう・・・汗

また、説明でも書きましたように、SLカプラの距離計連動カムはかなりムリして仕込んであるので、距離によっては、上手く連動せず、狂いが出るボディもあるので、今度は初めからMマウント改造したいと思います。

ただ、先般の銀座ICS後のオフ会でTarningさんが愛機M9を持参してくれたので、これを試してみたら、1.5~2m域では若干、四隅に影が出来ましたね。

寧ろ、うちの弟子を上手く丸め込んで、LかMマウントに加工させて、NEX-7で使った方が面白いかもしれませんね。
  1. 2012/03/06(火) 22:44:37 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

4枚目のハレーションが残念ですが、これらすべて開放だという事を忘れる様な描写におどろきます。
しっかり絞ったらどうなるのでしょうね。そんな興味が湧いてきます。けっこうMズミクロン最新型と良い勝負になりそうな…。
  1. 2012/03/12(月) 21:28:21 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
そうですね、相性の関係か、精度がいまいちのS-Lカプラ経由、ローパスフィルタ有りのR-D1sでの撮影で開放でもここまでの威力を発揮する玉ですから、M8でF3.5くらいに絞りでもしたら、恐ろしいことになるのはもう目に見えています。

実は、昨日の深大寺テストに新コンセプトの、殆どゼロから企画、設計、製造した標準レンズを同行させたのですが、開放では、タンバール並みのフレアで、f2.8に絞った途端、Wガウスのシャープさとクリアさを取り戻し、それこそズミクロンの3代目とタイマン張ってもイイ勝負すんぢゃね!?てな写りになりましたから、これは間違いなく、もっと性能が上がると思います。

尤も、試作品の方はレンズ自体の写りよりも、レンズのエレメント間のクリアランスで球面収差とコマ収差を制御するノウハウが或る程度判って来たので、今回開発のものは、パーツさえ揃えば、中原の海底竜宮工房で「ミゾノクチルックス」として商品化出来るかも知れませんぞ。
  1. 2012/03/12(月) 22:38:09 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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