深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Resurrección de la caja de basura~Ai-Nikkor28mmf2.8~

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【撮影データ】カメラ:Canon EOS1DsMKII ISO400 絞り優先AE、全コマ開放、 ロケ地:深大寺
まずは、東日本大震災からちょうど一年目の今日、無事にブログ更新出来る僥倖を改めて感謝すると共に、尊い生命を落とされた方、愛する方々を亡くされた方々には心よりお見舞いを申し上げます。また、被災地の一日も早い復興を心より御祈念申し上げます。

さて、今宵のご紹介ですが、ちと趣向を変えて、比較的新しい一眼レフ用レンズで、性能良く、品物の出来も素晴らしいのにも関わらず、あまり陽の当たらないモデルが工房にあったので、それを深大寺へと引っ張り出してみました。

このAi-Nikkor28mmf2.8は、1974年にリリースされ、Ai-sに跡目を譲る1981年まで製造、販売が続けられました。

構成はいわゆる、変型レトロフォキュタイプの7群7枚で、最前群に凸の一枚玉、その後2枚の異なる曲率の凹レンズからなる光学系を噛ませ、樽型の厚いエレメント以降のマスターレンズ系をその後の配置した形となっています。

では、こんな工房主の普段の趣味からかけ離れたとも思えるレンズが何故登場したのか?・・・

それは、オリジナルの改造パーツ、特にヘリコイド周りを自製出来ない工房の宿命で、時折、新宿辺りの中古カメラショップを廻って、ヂャンクパーツ中心に買出しをしなければならないのですが、或る時、新宿の某巨大チェーン店のヂャンク棚に不可解な物体を見つけました。

それは、外見はご覧の通り、擦れも激しく、しかも、値段タグには「ヘリコイドオイル抜け、自動絞り不安定」と書かれていて、誰も顧みる人も居なかったのか、値段は二度書き直され、買った時には、3500円となっていました。

しかし、ぱっと見て、惹かれるものがあり、手に取って良く良く見てみれば、グリーンのマルチコートも美しい前後のエレメントには、キズはおろか、カビ跡、ムラなどもなく、外観とは不似合いな良好な状態でした。

そこで、ついつい買って来てしまい、手間暇掛けて前後のエレメントを外し、絞りユニットはアセトンで前後から徹底的に拭き掃除、ヘリコには工房特製ブレンドのテフロン系のものを軽めに塗布して組み上げました。

では、早速、実写結果を見て参りましょう。今回は、震災法要への参列も兼ね、深大寺へ行きました。

まず一枚目。

つつじヶ丘からバスに乗って、「御塔坂上」のバス停で下車し、腹ごしらえのため、お目当ての蕎麦屋へと足を急がせます。

が、人の心は移ろい易いもの、馴染みの「湧水」さんんではなく、その手前の「深水庵」さんへとふらふらと入ってしまい、そこで玉子焼、蕎麦豆腐、そして大盛蕎麦を戴きました、〆めて1200円也。

お腹も心も満足し、撮影へとシフトアップしました。

いつもの通り、近傍の水車などを撮ってからそぞろ歩き、深大寺城址へ軽い足取りで登って行きました。

で、ここでまず「昭和枯れすすき」こと、バンパグラスの群生越しに芝生エリアを撮ったものです。

さすが新しいレンズだけあって、殆ど逆光に近い状態とは云え、EOS1DsMKIIの優秀な露出計によって導かれた適正露出と相俟って、フレアもゴーストも皆無で、穂のディテールも繊細に描写されています。

また、「この樹・何の樹・気になる樹」のそっくりさんも背景に見えますが、キレイに融けるが如くボケています。

そして二枚目。

同じ深大寺城址の芝生エリアで少々場所を移動し、「この樹・何の樹・気になる樹」の全景をシルエットで撮ることとしました。

まさにここでも、ゴーストや、フレアへの耐性も確認出来ましたし、コントラストが高い割には、暗部の再現性も悪くはありません。

要は優れた光学設計と、新しいマルチコートの恩恵で透過光量が増えると共に、内面反射等によるロスや光学的ノイズが少ないため、トレードオフとなるコントラストと階調再現性が高いレベルでバランスしているからなのではないでしょうか。

それから三枚目。

芝生エリアには、必ず撮影するアイテムが幾つか有って、そのうちの一つが、この屋敷跡の柱の位置を示す黒御影石の石柱なのです。

磨き上げられた石柱の上面には、空に浮かび風に流される雲々の姿が映っていて、それを捉えようと試みましたが、まだまだ腕が未熟な故か、このカットでは良く判らなくなってしまったのがとても残念でした。

ピンは石柱の向かって左手前のエッジに合わせていますが、石柱後端から後ボケになりかけているのは大したものですし、遠くの石柱がキレイに融けるが如きボケとなっているのには瞠目しました。

続いて四枚目。

深大寺城址での撮影を終え、下の神代植物園附設水生植物園に向かいました。

ここは、小さいながら、深大寺の豊富な湧水に育まれた湿原が在り、陽の傾き出した昼過ぎには、構図に水面を入れると、なかなか面白いカットが撮れることがあります。

そこで、曇天の今日は、桟橋の上から水面を眺めたら、空を流れる雲が妙に美しく映っていたので、いつもとは趣向を変えた構図で何枚か撮ってみた次第。

そのうち、海と陸の稜線のバランスが一番良さげなものがこの一枚です。

まだまだの五枚目。

附設水生植物園での撮影を終え、茶店街へと足を運びました。

ここでも、レンズの評価用に必ず撮影するアイテムが有って、それは、或る茶店のミニ庭園の入口に置いてある、石の蹲です。

奥の竹の簾の手前側にピンを置きましたが、ややハイライトが飛び加減ながら、空を行く雲も、蹲の水の中も程好い加減で写り込んでいます。

ただ、蹲の手前部分のボケは、何と言うか、感覚的に申せば、ちょっと息が詰まるようなボケ方なのが、難と云えば、難だと思いました。

最後の六枚目。

いつもの茶店街でのカットです。

標準レンズであれば、買い物する人、品物やお釣りを渡そうとするお店の人とのやりとりをもっと間合いを詰めて撮るところですが、何せ28mのフルサイズ機での撮影は掛値無しの28mmですから、迫力有る買い物風景のスナップなんぞ撮ろうとしたら、それこそ息が掛かるくらいの至近距離に寄らねばならないから、ま、こんなもんなんでしょう・・・お手軽スナップとしては。

ピンは「よもぎもち」の幟に合わせていますが、その手前の「そばぱん」の幟の下半分もかろうじて被写界深度に入っているようです。

ここでは、手前のビニール袋の菓子類も、遠景の売り子のヲバサマもイイ案配に自然なボケ方をしていると思いました。

今回の感想としては、まさに中古カメラ、レンズの値付けは「外観のキレイさ」これだけに尽きるのでは、ということ、つまり、手擦れが有ることで、捨て値同然でも、エレメントをはじめ、内部の機構が健全であれば、「写す」という本来の目的には充分叶うことが可能であるということです。

さて、次回は工房作品の出番ですが、何を紹介しようかな・・・とか云っても、今回一緒にテストした春の新作レンズなんですが。

テーマ:風景写真 - ジャンル:写真

  1. 2012/03/12(月) 00:14:18|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

あら喰いつきが悪い。それはそうか(苦笑
しかし私は、charleyさんが現代(っぽい)レンズを使ったらどんな写真を撮るのだろう、と思っていたので、これはこれで。しかし四枚目は好きなのですが、そうですね、このボケはあまり...ちょっと惜しいなと思ってお蔵入りさせてしまうレベルですかね。万人に、平均に使えるようにチューニングした欠点が一撃で出てくるあたりがcharleyさんらしい気がしますw
  1. 2012/03/17(土) 05:36:57 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

結構重厚そうな外観ですが、こういったあっさりした感じは好みの色傾向です。

ニコンはニコノス・陸上用ニッコール28mmの試写で、現代のニコンへの興味を持った事がありました。これは廉価シリーズEのリメイクでしたが、5群5枚という張り合わせが無いというのが今回のレンズタイプと似ています。バルサム切れという中古での致命傷が無いのも好感をもってしまいます。

F2が出てしばらくして、新たにAi化した頃は、たしかシリーズからニコマートという名称が消えてしまったという記憶があります。
FMシリーズ・コンパクト寸前というのも、結構国産レンズ最後の黄金時代といって良いかもしれませんね。


デジのボデーのせいかも知れないですが、自分的(?)にはニコンを見直しました。
  1. 2012/03/21(水) 21:01:32 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
南十字星の下の島まで、新作レンズのテスト等々に出掛けていて、レスが遅れてしまいました、申し訳無かったです。

そうですね、日頃の小生の言動やら撮影スタイルからすれば、1DsMKIIにニコンの比較的新しめの単焦点レンズを付けての撮影なんて全く正反対のようなイメージすら与えてしまうかもしれませんね。

しかし、このフルサイズデジと銀塩時代のレンズとの出会いということが、またレンズ遊びのひとつの"彼岸"なんですねwww

貴兄もEOS系列を愛用されておられますから、よーくお判りの通り、JPEG撮って出しでも、このEOSフルサイズはカメラ側のパラメータ設定を適度にセットさえしていれば、フィルム以上にフィルム的な写りを提供してくれ、FD系列、エクザクタ、ALPA以外は殆どあらゆる一眼レフ用、焦点距離70mmを超える引伸ばし、映画用レンズ等が使えるので、「温故知新」の精神で以て、情報発信していきたいと思っています。

なお、このレンズはエレメントは拭き掃除をしたくらいで、チューニングなどという写りに影響が出るようなことは一切行っておらず、ただ機能回復を行っただけなので、このちょっと宜しくない前ボケはオリジナルの性能と思った方が良さそうです。
  1. 2012/03/22(木) 10:12:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

貴兄も重々ご承知の通り、この1DsMKIIを含め、EOSのフルサイズ系列は、パラメータのセッティング次第で、かなりフィルム臭い写りを演出することが可能で、しかも、かなり多くののレンズがアダプタ経由使えますから、レンズ遊びの手段としては、極めてフレンドリーで優秀な相棒ではないかと思っています。

今はミラーレス機が席巻していますが、やはりフルサイズでアダプタ経由、不特定多数のレンズを使いこなすにはスクリーン交換も出来、マニュアルフォーカスで開放からきちっとピントを合わせられるこの1Ds系列に敵うものはないでしょう。

1Dxの発表で益々値もこなれてきましたから、おひとついかがですか?
  1. 2012/03/22(木) 10:19:22 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

日本の風景は日本のレンズで撮るのがベターなんですかねえ?

レンズのパワーに振り回されてないなあという印象なんですが、それだけでなくて色合いとかすっきりしていて違和感がないんですよね。
いつもの写真と異なって。

それともEOSだからなのでしょうか。

FDレンズより自然に見えるのはきっとパラメータ設定がレンズと相性良かったから、なのかもしれませんけど。
  1. 2012/04/01(日) 16:56:57 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:日本の風景は日本のレンズで撮るのがベターなんですかねえ?

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

確かに先般のBiogon25mmf2,8は、M8で1.33xの画角換算となっているとは云え、普段使い慣れないレンジの玉なので、教科書通りの通り一辺倒の撮影しか出来ない、クルマで云えば、アクセル踏み込んで、テールスライドしたりして飛ばすということが出来ず、ただひたすら安全運転、という面白みに欠ける印象を与えてしまったかも知れませんが、この28mmという画角は一時期、RFのL/Mマウント用でライツ、ミノルタ、コニカ、そしてヤシコンG改と4本所有していたこともあり、そして、かつての銀塩時代の愛機、ライカREの常用レンズが28-70mmのバリオエルマーだったこともあり、結構、使い慣れたレンジなので、たとえ一眼レフであっても、RFとほぼ同等に振り回すことが出来ると思います。

しかし、相性という点でふと思い出しましたが、何も考えず、EOS1DsMKIIはフルサイズのデジ暗箱としか意識せず使ってきましたが、まさにキャノンのカメラはニコン製レンズが原点なのですよね。

ハンザキャノンの眼はニッコール5cmf3.5でしたし。
  1. 2012/04/01(日) 19:48:31 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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