深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

An expected original optics by F.G.W,G.~Fukagawa Extra AnastigmatIII 50mmf1.8~

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【撮影データ】カメラ:2,3枚目;Zeiss Ikon ZM、フィルム Kodak Ektar100、絞り優先AE、露出 +1/3、1,4,5.6枚目;Leica M8、ISO Auto、絞り優先AE、露出+1/3 絞り優先AE、絞り値は文中に表記
さて、今宵のご紹介は、予告通り、工房作品です。
しかし、今回のレンズは、いつもの"ただの"マウント改造の距離計連動レンズではありません。

複数のヂャンクレンズの健全なエレメントをあれこれシミュレーションの上、組み合わせて作り上げた、いわば、工房フルオリジナルのレンズなのです。

フルオリジナルといっても、市販パーツを組み合わせて、鏡胴内部を切削したり、光学系を固定する新たなリングをネジ切って入れたりして拵えたものですから、究極の改造レンズと言えなくもありません。

ただ、性能を左右する基幹パーツは今、ヂャンクでタダ同然に入手出来るのですが、使い道を広く不特定多数に公開してしまうと、元々が不自然に安い?値段とも言えるのが、品薄化とともに値上がりして、開発に支障をきたすので、ここでは、ヒントだけ出します。

まず、前群は某マルチコートの引伸ばしレンズのアッセンブリを取り出し、キャノンの内鏡胴に嵌まり込むよう、精密切削をし、それを前枠の全周スクリューで固定する、というロシアの現代レンズの加工法を踏襲しています。

そして、後群は、某一眼レフ用の標準レンズの後群をそのまま取り出し、接合部のネジ切りの部分のみ、切削加工し、新たな内ネジを切ったキャノンの内鏡胴に後ろからネジ込み固定しました。

これまでの経験から、とにかく、L3とL4の間隔、つまり、絞り羽根を挟んだ凹レンズ間のクリランスが大き過ぎると、像面湾曲やらコマ収差やら、色々と不都合が生じるので、五感を駆使してマイクロ超硬バイトで削り込みながら、組んではピント見て、削ってはまた組み直しという、かなり手間隙掛けて、光学系をでっち上げ、或る程度のところまで来たら、無限とって、R-D1sで試写し、球面収差が大きかったので、L1とL2のクリアランスを金物を数μm切削して縮め、やっと完成に至りました。

ただ残念なのが、前群の固定にキャノンの元の金具を使ったことから、強度と精度保持のため、極限まで前群を下げられなかったので、開放でのコマ収差がかなり残ってしまったことです。

完成した光学系はオリジナルのキャノン50mmf1.8の鏡胴とヘリコイドにそっくりそのまま納まり、最近接から無限まで、ドンピシャで距離計連動で撮影出来る、優れものとなりました。

そこで、完成した翌週末の八重山ツアーを初戦の場と定め、竹富島に持ち出したワケです。

では早速、作例見て行きましょう。

以下作例は全て一枚目が開放f1.8、二枚目がf2.8となっています。

まず、一件目(1,2枚目)

竹富島の中をカメラ下げて徘徊していると、いかにも、観光客の目を楽しませようと小粋な趣向を凝らしたお宅に行き当たることがままあります。

ここのお宅もまさにそんな一軒で、珊瑚石積みの塀の門柱に当たるところに、南洋名物?のガイコツみたいな巻貝がさりげなく置かれていました。

そこで、レンズの近接性能を見るべく、この巻貝にピンを置いてのお宅撮影です。

一枚目は開放f1.8ですが、やはり、白系統の色合いの貝は、フレアを纏い、輪郭もおぼろげになっていますが、後ボケの赤瓦の本宅はそれほど酷い崩れ方もしておらず、後ボケとしては寧ろ好ましい部類ではないかと思いました。

二枚目は、この前群の元々の開放値と同じくf2.8まで絞りました。

話しは前後しますが、今回、引伸ばしレンズを前群に使うに当たり、L3直後のf値を制限しているチョークリングを目一杯切削し、絞りの開口面積と同等まで拡げて使ったので、相当ムリさせているワケです。

ここでは、当然、貝の輪郭もテクスチャもキレイに再現されコマフレアも激減しています。

後ボケも、開放時よりは若干硬めになっていますが、まぁ許容範囲ではないでしょうか。

そして二件目(3,4枚目)

レンズの描写傾向を語るのに、赤い被写体を抜きにするワケにはいきません

先のお宅を後にして、しばらく物色していたら、真新しい赤瓦の屋根と、門の付近の艶やかなブーゲンビリアが咲き誇るお宅を発見し、早速、テストに使わせていただくことにしました。

ピンは屋根の上のちょっとコミカルな容貌のシーサーの眼に合わせています。

一枚目を開放f1.8で撮ります。

ここではやはり、コマフレアの影響か、全体的にゾフトなムードになり、それでも、爛々と光る?シーサーの眼がかろうじてピンの在り処を教えてくれます。

一方、シャドウとなる、家の中については、結構、細かいところまで描写しています。

二枚目をf2.8で撮ります。

すると、別のレンズで撮ったかのように、コントラストは劇的に改善し、シーサーをはじめ、被写界深度内の細かいテクスチャまでクリアに捉えています。

ただ、どちらも、画面周辺には、非点収差によると思われる、工房主の嫌いなぐるぐる傾向が少々見られるのが残念なところです。

三件目(5,6枚目)

夕方まで竹富島で撮って、高速船で再び石垣島の離島桟橋まで戻って来ました。

そこで、レンズのシャープネス見るのには手っ取り早い、無機質の被写体として、高速艇の舳先のステンレス製の金具を、港の水面をバックに撮る事にしました。

一枚目は開放f1.8で撮ります。

陽も傾き掛けてきた時間での撮影なので、金具そのものの描写は、かなりイイ線いってると思いましたが、やはり、白い船体での反射がフレアとなってしまい、画面全般的にヴェールがかかったような印象を与えています。

背景の海面の描写は硬くならず、甘めで何か南の海のイメージに嵌まったような気もしました。

二枚目はf2.8での撮影です。

ここでは、白い船体のフレアも皆無、ステンレスの金物も、潮風でくすんだテクスチャも精緻に描写し、構図の関係か、はたまた撮影距離によるものか、画面周辺の甘さも気にならず、云っちゃなんですが、きちんと写って、フツーのレンズみたいです。

今回の感想としては、幾つか試作をしている中で、一番、まともの写る可能性の高いオリジナル光学系は、この引伸ばしレンズを前群、そして某一眼レフの標準レンズの後群をそのまま使うのが一番、性能が良さそう、ということです。

実は、今日も一本試作しましたが、手間が掛かった割りには、この光学系にはとても及ばないことが判ったので、今後は、この光学系の熟成に努めたいと思いました。

さて、来週は工房コレクション、附設秘宝館からのご紹介となる予定です。乞う御期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2012/04/08(日) 21:00:00|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

うお、シャープだw
M42MOUNTSPIRALも無茶してたし、レンズマニアって結局最後は「自分で...」とかなるんですかね。そゆ意味では宮崎さんは憧れの的ですかね。

私は昔プラモデルを作っていまして、その改造度によって色々勝手に定義していましたが、
レンズでもこの改造レベルのカテゴリ分けみたいなのがいずれ、作られるかもしれませんねぃ。
  1. 2012/04/09(月) 10:53:43 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
確かに或る程度、レンズをバラしたり、組んだりしていると、どうしても、やりたくなっちゃうのが、オリジナル光学系の創造なんですねぇ・・・

時には、丸一日かけて作り上げたレンズが、スマホンどころか、写るんデスよりもダメダメな写りの時なんか、ホント泣きたくなることもままあります。

そう、そんなムダな時間かけるくらいなら、良く写る中古でも買った方がずっと経済的・・・という見方もありますが、それでも、世界にたった一本の手作りのレンズが像を結び、しかも、それがライカマウントで距離計連動までしてしまう・・・この喜びが何物にも代え難いんですねぇ・・・

そして、そんな失敗の積み重ねが、今回みたいに、成功への糸口を示してくれる場合も有るのです。

さぁ、今回の50mmレンズをクリアランスを自在に調整出来る改良版作ったら、今度は、35mm以下の広角をヘンテコリンなレンズ構成で拵えてみましょうか。

ただ、誤解無きように申し上げておきますと、小生にとっては、宮崎氏は、憧れの的というよりは、寧ろ、この世界に手を染めるきっかけとなった方で、改造のノウハウのかなりの部分を無償で教えて戴いたものです。

事有るごとに電話しては飽きもせず、質疑を繰り返し、改造のイロハに関し、手ほどきを受けたのです。

よって、小生も弟子の青年(中年?)に開発したノウハウを無償でトランスファーしているという次第です。
  1. 2012/04/09(月) 22:51:16 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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