深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Gran misterio en la historia de la Leica~Xenon5cmf1.5~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE、ISO200、全コマ開放、ロケ地:浅草
さて今宵の演目は、工房附設秘宝館からのコレクションのご紹介です。

このレンズ、名前はXenonと云いますが、レーザ光スリット照射による反射面検出、そして絞りの位置からすると、どうやら、5群7枚のズマリットタイプのLeitz Xenonの係累ではなく、3群7枚のいわゆる"苺印"のSonnarの構成に近いような印象を持ちました。

しかし、ここで不思議に思えるのが、ライツ自身がシュナイダークロイツナッハ社の協力を得て、英国のランクテーラーホブソンのオーピックのライセンスを用いてズマリットの先行モデルであるLeitz Xenon5cmf1.5を1936年に発売しているのに、何故、同時期かそれ以降に全く同じレンズ名称"Xenon"で構成も外観デザインも違う全く別のレンズがシュナイダークロイツナッハ銘でライカ向けとして販売されていたのか?ということです。

しかも、ヘリコイドの回転角が適切で、今でも十分過ぎる速写性でスナップの強力な武器となるLeitz Xenonに対し、この"鈍重な"時代がかった一部エナメル塗りの大型レンズは、それこそほんの1mかそこらのピント合わせにヘリコイド一周近く回さなければならず、個人的にはストレスが溜まることこの上有りません。

今回の撮影結果は、先般の深川チューンのJupitar5とペアで行いましたが、まぁ、好き嫌いは有るとして、同じゾナー形式?でも戦後に作られたものと、戦前の硝材と光学理論で作られたものと差のようなものもあるのではないかと思い、これもまた一興と思った次第。

では、撮影結果、見て参りましょう。

まず一枚目。

メトロ線浅草駅の雷門から一番近い出口から地上に上がると、まず目に入るものは、人力車の群れと、その乗客をスカウトすべく、果敢な営業活動を行う、車夫(婦?)各位の姿です。

そんな中、ふと目を車道に向けデパーチュアー直前の人力車を見たら、今時珍しい、マッシュールーム頭でふくよかな顔立ちの童子が車夫氏との会話で微笑んでいます。

これはシャッターチャンスと思い、急いでカメラを向け、ヘリコイドを回し合焦を試みましたが、なかなか行き着かない・・・でもやっと寸でのところで間に合い、シャッター切ったのがこのカットです。

R-D1sはISO200でシャッター速度が2000分の1までしかないですから、実質的には、フィルムカメラで1000分の1秒までしかないカメラと同じです。

しかもネガと違い、CCDは露出オーバーサイドのラチチュートが狭いので、ちょっと露出オーバーで白っぽい眠たげなカットにはなってしまいましたが、それでも、童子の艶やかでふっくらした頬っぺたの描写など、必要かつ充分な情報は余すところなく捉えているのではないかと思います。

ただ、周辺はAPS-Cの撮像素子での画面でもほんの僅かながら流れが認められます。

そして二枚目。

シャッター切った瞬間に気付いた童子にウインクして手をふって謝意を示し、その場を離れ、次の獲物を探します。

すると、またまた居ました・・・車夫ならぬ、車婦さんがお客さんに対し、真摯な眼差しでコースの説明などしています。

そこで、横で書類板持って案内役やってた同僚の兄ちゃんに「姐さん、イイ顔してるよね、ブログ用に一枚撮らせて貰うよ」とか声掛けたら、「ええ、是非お願いします、イイ宣伝になりますから・・・」とのことで快諾して貰ったので、さぁ、一番イイ表情撮ろうかいな、とヘリコイドを回せど回せど、なかなか行き着かない・・・でもやっと間に合い、シャッタ-切ったのがこのカット。

姐さんの真摯な表情は言うに及ばず、明るい栗色に染めたしなやかそうな髪や藍染の半纏の生地のテクスチァまで余すところなく捉えていますが、ここでも露出オーバー基調は変わらず、まだコントラストが低く、ちょっと眠い印象を受けます。

ここでは、背景が崩れに崩れ、何か、「後ろの百太郎」が「恐怖新聞」を届けに来そうなおどろおどろしい印象のバックのボケになってしまった感があります。

それから三枚目。

案内役の兄さんにお礼を云いつつ、R-D1sの背面モニターの撮影結果を見て貰い、何故かお礼など反対に云われて、妙に気恥ずかしい気分でその場を後にし、雷門至近に在る、定点撮影スポット、扇屋さんの店頭の団扇を撮りに行きました。

中段のひょっとこの鼻先にピンを置いて撮ります・・・と一言で書いても、1メーター近くまでレンズを繰り出すのはえらい手間で、それこそ何周もしないと、至近距離の撮影など出来ません。

いやはや、このレンズで訓練したら、通常のライツレンズなら、スナップの達人になれるかも・・・とか不埒なことを考えながら撮ってみれば、ほれ、この通り、ひょっとこだけが浅い被写界深度のおかげで露出オーバーでコントラストの眠い画面の中でも目立ちますが、背景はぐずぐずの大暴れ、なかなか一筋縄ではいかないレンズのようです。

続いて四枚目。

適当な被写体を物色しながら仲見世を歩きますが、速写性皆無のこのレンズのこと、接近戦でシャッターチャンスが瞬時に現れては、夢幻の如く消え去る、雑踏の仲見世で、満足行くスナップなど撮れよう筈もなく、比較的クリアランスがとれ、シャッターチャンスに対し、時間的、距離的余裕が見込める境内までじっと我慢の子でした。

そこで境内に着くと、居ました居ました、午後の傾き始めた陽に背中を照らされ、仲睦まじくガイドブックなぞ検分するカップルが居ました。

そこで、ある程度の距離から真新しいチタン屋根も美しい本堂をバックにそのカップルのお姿を借景です。

ピンは後姿の小姐のちょんまげに合わせていますが、髪の毛の艶やかな繊維の一本一本、そして、ちょんまげを束ねるフェイクファーみたいな材質のバンド?のふさふさ感も良く捉えているのではないでしょうか。

ここでは、何故か、バックはそこそこ穏当に写っています。

最後の五枚目。

本堂の横にも定点撮影スポットが有り、緑青色に厚塗りされた上に篆刻の如き意匠化された文字が縁取る天水桶が在って、この天水桶越しに数キロ先のスカイツリーの全景を撮るのです。

今回は、露出オーバー気味もあって、スカイツリーの白い姿は殆どすっ飛んでますが、しかし、タワーのてっぺんは・・・あたかも地震で揺れまくるかの如き軌跡を描いて写っています。

また、天水桶の一部、ちょうど画面の左下ではやはり僅かながら流れが見られ、なかなか使いこなすのが難しいレンズであるのは間違いないと思いました。

しかし、古き佳き時代に産まれたこのレンズは、慌しい現代のスピード感や遠距離での人工構造体など想定していなかったのかも知れません。

さて、来週は、またローテーション上、工房作品による深川の桜でもお届けしましょう。 乞う御期待。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2012/04/15(日) 23:33:12|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

うは。これは...。
土曜日に「Xenonて種類多すぎてなにがなんだか」と話したばかりで
まさかこんなレア玉が出てくるとは...うーむ。

てゆかあの会話がリクエストになってしまったみたいで
かなり申し訳ない気分ですw

しかしこのレンズ、堅実なSchneiderにしては、
めっちゃくちゃに暴れますねコイツは。でもブルーはよく出ている。
番号がわからないので年代がわからないですが
コイツはいったい何者なんでしょうか...。

Xenonには手を出さないほうがよい気が、さらにしてきました(苦笑
  1. 2012/04/16(月) 00:42:19 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
土曜日は、雨の中、最後までお付き合い戴き、お疲れさまでした。

さて、このレンズの登場ですが、実はもう2月に撮り溜めしていたもので、たまたま日曜日にレンズ工作に熱が上がっちゃって、作例撮りに行けなくて、登場したって経緯ですから、お気にして戴くには及びません。

ところで、この謎に満ちたレンズ、通?の人たちの間では、ダルマクセノンとか言う通り名で、或る説によれば、ロンドン辺りのライカのディーラーが、戦前に、お金持ちのマニア(ってか、当時、ライカなんか持ってるのは皆お金持ち!!)から希望者を募って、或る程度ロットが纏まったところで、一定以上の技術力を持つレンズメーカーに交渉して、ライカマウントの交換レンズを作らせたのでは・・・というハナシです。

当時のL39マウントとか距離計連動カムなんかはまだライツのパテントは生きていますが、何せ、特許とは云いながら、実質的には日本の実用新案程度のものだったらしく、有力ディーラーがライツにも交渉して幾ばくかのパテント料を握らせたら、カメラの拡販にも役立つ、交換レンズのラインナップ増ですから、黙認した、とかそんなとこぢゃないでしょうか。

まぁ、こんな新品のASPHズミルックス並みに高くて、ジュピターよりも良く写らないような玉には、手を出さないのが賢明でしょう(苦笑)
  1. 2012/04/17(火) 22:59:58 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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