深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A crystal of passion through long years~ Fukagawa Extra Anastigmat IV 50mmf2.8S~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s(S-Lカプラ使用) 絞り優先AE、ISO200、露出±0、全コマ開放、ロケ地;江ノ島
さて、今宵のご紹介は予告通り、工房製レンズのご紹介です。

今回のこのレンズ、何処かで見たことあるような、無いような不可思議な佇まいではないでしょうか。

それもその筈、レンズは絞りを挟んで前半分と後半分が全く別の会社の別の用途のアッセンブリを真鍮丸インゴットから精密切削で削り出した内外面ネジ加工付きスペーサ等の付加的パーツ作成を行うことによりキャノンの内鏡胴にねじ込み、しかるのち、完成した内鏡胴をS-ニッコール50mmのマウントユニットに超ヂュラルミンの内部スペーサリング兼ブラケットで固定して最後面からオリジナルの全周スクリュー止めしている、という聞いただけで頭がこんがらがるような複雑怪奇な生い立ちのレンズだからです。

え、こんなに具体的に書いちゃってイイの!?マネされない???と御心配の向きもありましょうが、まず、こんな面倒なことをマネしようという人は滅多にいないでしょうし、マネ出来るくらいの技術レベルの人間が読んでいたら、自分はもっと別のレンズを開発したろうぢゃんか!と考える筈です。

で、肝心の構成は3群5枚の前群ガウス、後群ゾナータイプのコンビタイプとなっています。

なお、IVというコードは当工房で様々なエレメントやアッセンブリを組み合わせてオリジナルの光学系を作り出したうちの4番目の試作品ということで、開発のロードマップではあと2タイプの試作を行うこととなっており、一通り終わった時点で、一番良かったタイプのダメ出しを行い、その改良したものを、中国やらタイやらヴェトナムではなく、神奈川県某所の工房が最近めきめき腕を上げて来たようなので、そこで仲間内向けに強制的に量産させよう、という魂胆なのです(笑)

とまぁ、冗談はさておき、実写例のご紹介いってみましょう。

まず一枚目。

今週末の土曜日は、天気も良かったので、仲間内で久々に湘南撮影会でも洒落込もう、とか甘い算段で楽しみにしていたのが、何のかんので皆脱落し、「最後の一兵となっても戦う」という旧陸軍みたいな絶望的精神主義に蝕まれ、メンバー百数十人に告知かけている手前上、誰が気まぐれで来るか判らないので、朝の10時かっきりにのこのこと1人で鎌倉駅小町通口に降り立ったワケです。

が、あにはからんや、やはり誰も待っていよう筈もなく、仕方なくとぼとぼと小町通りの裏表を撮り、鶴岡八幡宮の境内にもちょっこしお邪魔し、テキトーに撮ってから、12時前に江ノ電経由、江ノ島に直行したのです。

で、その移動途中の江ノ電の中で、たぶん従姉妹同士でしょうか、同じような年恰好の小々姐が別々の良く似たオモニの元から海岸と水平線が見える窓際に駆け寄って、あーだら、うーだら指さしながら、閑談に打ち興じていたので、しっかりと一枚撮らせて戴いた次第。

ここで驚いたのが、こんな逆光の酷い条件下もものかわ、II型、III型プロトまでは全滅だったのが、このマルチコートの前群を持つコンプレックスレンズは、全く意に介せず、小々姐達の愛くるしい色違いのリボンやら、やわらかそうな頬っぺたの質感までかなり忠実に捉えてくれています。

この画面サイズではいまひとつピンと来ないかもしれませんが、江ノ電の向かいの席からリボンに目がけてシャッター切って、なんとピンクのリボンは、オリジナルのR-D1sのJPEGデータでもモニターの倍率を上げれば、水玉模様のひとつ、ひとつがくっきりと判別出来るほどにピンと来ているのです。

そして二枚目。

目的地の江ノ島駅に着き、洲鼻通りを通って、島へと向かいました。

昼時はちょっと前後にずらした方がお店が空いてくることが多いので、12時は回っていましたが、小一時間島内の目ぼしいところを撮ってから、お目当ての食堂に向かうこととしました。

そこで、今回はいつも帰り際にちょっこし寄って申し訳程度に何枚か撮るだけの「岩本楼」と「ゑじま食堂」の間の路地を抜けたところに在る小さなビーチ界隈を撮ろうと思い立ち、「ゑじま食堂」の前を通り過ぎた時、逆光に浮かぶ、キレイなチューリップの花々が目に留まりました。

真ん中の花弁のふちが淡いオレンジのグラデーションになっている花を主役に最短距離付近でシャッター切ったのがこのカット。

ここでも、水平線上の明るい空が画面のかなりの部分に写り込んでいますが、それでも、フレアやゴースト、或いは画面全体のコントラスト低下による「眠い画面」化は起こっていません。

バックのボケに非点収差による、ぐるぐると色収差による虹のようなものがハイライト部との境界線付近に認められるものの、主役の中央のグラデーションチューリップは充分に浮かび上がって存在感を主張しているようですし、至近距離からの花の撮影でこのくらいの出来なら、まずまずの及第点なのではないでしょうか。

それから三枚目。

島内で15時過ぎまで、御馳走を食べ、思う存分写真を撮って、夕刻からの新宿での用事に備え、帰り時間の小田急までの時間を過ごすべく、片瀬海岸方面へ足を急がせました。

すると、洲鼻通りの橋を渡りきる辺りで、フィリピン人と思しきオモニが、ハスキーボイスでポージングの指示などしながら、愛くるしい小々姐の写真を撮っていました。

そこで、「姐さん、混ぜてもらいますよ」と一声掛け、おもむろに後ろに立って、シャッター切ったのがこの一枚。

小々姐のジャケットの胸付近の金具類は異様なほどにピンが合っていて、オリジナルJPEGデータをモニタで拡大すれば、それこそファスナーの節のひとつひとつがきれいに分離して見えるくらいですが、小々姐の愛くるしいお顔は、ソフトフォーカスレンズで撮ったかの如く、ほんわりと写っているのが不思議なカンジです。

また、背景の江ノ島も意外にマイルドなボケとなっています。

この後、お礼代わりにお二方の並んだ写真をオモニのコンパデジで撮って差し上げ、その場を後にしたのです。

続いて四枚目。

新江ノ島水族館の隣は、ミニ海浜公園みたいになっていて、長いウッドデッキやら、整備された突堤みたいな施設があって、禁止を承知で磯釣りをするおぢさまがそこここに居たり、土産物屋のアルバイトでしょうか、目を血走らせて、砂浜の貝殻拾いと、その区分をしている中学生くらいの小姐分隊が居たりして、ほんの限られた時間のそぞろ歩きでも退屈しません。

そんなのどかな非日常風景の中で水平線をバックにウッドデッキの端に佇み、娘さんの自転車漕ぎの論評をしている風変わりな一家が居ました。

そこで、気配を消し、音も無く近づき、ぱっと一枚戴いたのがこの一枚です。

ここでも、明るい水平線付近の空が画面の半分近くを占めていますが、ゴーストは皆無、フレアも問題となるほど発生せず、開放にも関わらず、中央付近に位置するピンクの小々姐のスエットなどは、皺がくっきりと判るほどシャープに捉えられており、ドナーとなったレンズ達のDNAを図らずも実感したカットとなりました。

まだまだの五枚目。

突堤のウッドデッキを先端方向に向かっていくと、先ほど、工房主を追い越して通り過ぎて行った、スケボー異邦人二人組が引き返してきました。

そこで、居合い宜しく、或る距離まで来たら、予め置きピン状態で降ろしておいたカメラを構え、秒殺状態でシャッターを切ったのがこのカット。

この陽気なヤンキー達、撮られたのがよほど嬉しかったのか、先頭の兄ちゃんはウィンクして右手を上げ、後の兄ちゃんは、満面の笑顔で奇声を上げて通り過ぎて行きました。

小生も大声でサンキュー、ほなさいなら!と笑顔で返しました。

最後の六枚目。

突堤の先端まで行って、引き返す途中、家族で魚釣りをしている一家に出会いました。

たぶん、今晩のおかずでも獲りに来たのでしょうか。両親は竿を構え、子供達は二人して、獲物のバケツのお当番です。

しかし、頑是無い童子達のこと、大人達の暮らしが掛かった切迫した事情などどこ吹く風で、平気の平左、バケツから魚をつまみ出しては、やれこっちの方がカワイイだの、やれ、こっちの方がオシャレだの、いやいや、この魚はクラスの何の誰兵衛に似てるだの、もう、云いたか放題、魚も殆どおもちゃ状態です。

そこで、おもむろに近づき、「魚屋さんごっこしてるとこ、一枚撮らしてね♪」と声掛けたところ、「え~やだぁ、魚屋さんなんかぢゃなぃ~」とか二人してコロコロ笑い出し、「でも、可愛く撮ってね☆」とか云って、必殺ポーズを決めてくれたのがこのカット。

ピンは画面向かって左側の小々姐の左目に合わせているので、この小々姐の愛くるしい笑顔はきっちりと捉えていますが、向かって右側の小々姐はやや後方だったため、魚を捕まえた手のみが生々しく写り、御本尊様はちょっこし崩れた後ボケとなってしまいました、ゴメンなさいです。

御両親にも鄭重にお礼を申し述べ、その場を後にし、デニーズでちょっこし遅いティータイムと決め込み、16時31分片瀬江ノ島発の小田急ロマンスカーでお江戸内藤新宿まで戻って来たという次第です。

今回の感想としては、レンズってやっぱり難しい、特に距離によって収差の出方が全く変わってしまうので、オールラウンドなオリジナルレンズを是非、設計、施工してみたい、と新たにファイトを燃やしました。

さて、来週は攻守交替、工房附設秘宝館からコレクションのご紹介行きます。乞う御期待。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2012/04/22(日) 22:53:59|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

うーん。すばらすい。
私にもこれくらいの技術があったら
手元にある変なレンズを使ってやることもできるのですが...Heligon1.3/32とか(汁
ヘリコイドどころか、絞り無いんすよねこの子。

それにしてもなんというか、写るとか云々もそうですが、
工作精度の高さに相変わらずびっくりします。
外観だけで欲しがる人が居そうですよね。
  1. 2012/04/26(木) 17:24:30 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。

小生の場合、いけない、いけないとは薄々意識してはいますが、撮ることよりも、寧ろ道具誂えに血道を上げているような気がして、作品作りにストイックでシビアなJYさんの爪の垢でも煎じて呑ませてもらわにゃならん気がしてなりません(汗)

でも、鉄道マニアにも、切符集めるのが好きなのも居れば、乗るのが好きなのも居れば、写真撮るのが好きなのも居ますから、まぁ、それぞれの立ち位置で写真というものを遊び倒せばイイのかも知れませんね。
  1. 2012/04/27(金) 23:30:55 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

その時間寝てましたわ。

どうも。
ようやく自分の時間が戻ってきた感じですよ。

江の島行かれましたか。
あの辺りも今日はにぎわっているんでしょうねえ。
晴れましたし。

さてさて、最近色々な写真を見ていた(1日で260枚はきついですね。目が痛くなります)身としては、3枚目と6枚目辺りはヒットするかなとか、4枚目はもっと範囲を絞って中心の男の人と子供だけにしてみた方が、5枚目はスケボーヤンキーと爺さんだけに絞ってみた方が、等と考えてしまいます。
まだまだ感覚が抜けきってないようです。

それにしてもレンズ加工の妙は相変わらずですね。
それだけに人に寄った際に周辺部がぼやける仕様は使う人を選ぶようにも思えますねえ。
  1. 2012/04/28(土) 15:46:44 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:その時間寝てましたわ。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます、そして審査員、お疲れさまでした。

今回、鎌倉、江ノ島は故あって、結局、"撮影ツアーひとり"になってしまいましたが、それでも行動に最大限の自由度があると、集合時間や、メンバーのはぐれ具合い等に気を使わなくて済む分、場所的にも、被写体的にも、かなり挑戦的な選択が出来ます。

今回、かなりいつもと違う撮り方もしましたし、構成上、掲載は見送りましたが、前半のタイプII改アナスティグマットで撮った鎌倉もいつもとは一味違う、なかなか面白いカットも撮れたと思います。

それにしても、まさに鋭く、開発課題を突かれましたね。

理想は、開放から周辺まで歪みなく、わずかにコマフレアが残り、半絞りほどでシャープでキレの有るカットが撮れるレンズなのです。

今の仕様だと、像面湾曲が残っているのと、軸上色収差が盛大に出ているようなので、中央付近の被写体しかシャープネスを発揮出来ず、しかも被写界深度の中心から外れると、急にぐずぐずになってしまうというピーキーな特性なので、一番有望なタイプIIIをベースに内部構造を再検討して、コンセプト通りの玉を作ろうと考えています。
  1. 2012/04/29(日) 00:27:36 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

それこそレンズ工学を学ばないと

クリアできない課題の様に思えてなりません。

一からレンズを作り上げるという状況にはただただ見守るしかない状況ですが、それこそ既存レンズを分解して前玉はアナスティグマット、後ろはニコン、なんて感じでやってかないと理想形にたどり着かないのかもしれませんねえ。

それこそこういうレンズ開発とか改造レンズだけのコンテストなんてのができると面白いのですけどねえ。個人的には。
  1. 2012/04/30(月) 18:26:35 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:それこそレンズ工学を学ばないと

出戻りフォトグラファーさん
再び有難うございます。

確かにレンズ光学を習得し、そのセオリーに則った設計、製造を行うのが一番確実かも知れません。

ただ、それは、量産を前提とした高額な測定機器、検査装置を導入して成り立つお話であって、個人~町工場レベルでは、或る程度完成された製品のエレメントやら、モヂュール(≒群)を組み合わせて実写した方が手っ取り早いんです。

I運営委員殿も先般云われてましたが、たまに銘玉が出たコムラーなんてのは、そんなカンジのレンズ組み合わせの試行錯誤で製品化していったんではないかと・・・

実は今さっきも、KOL XEBEC試作品クラス(たぶん世界で1本か2本の存在確率)の極稀少レンズを谷さんとこの作業場のご協力も戴き、内部パーツを殆ど削り出しで拵え、丸々一本復元したところです。

これには、極限までの金属加工技術、そして一番難しいL1,L2エレメント間のクリアランス測定には、高額な三次元測定器に代わる江戸時代からの知恵と相違工夫が込められています。

それから、まぁ、オリジナルレンズとか改造レンズ専門のコンテストは、月刊写真工業が復刊でもしない限り、まずムリでしょうねぇ・・・
  1. 2012/04/30(月) 22:26:12 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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