深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

L'esprit combatif de son second fils~FOCA UNIVERSEL R~

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【撮影データ】カメラ:FOCA UNIVERSEL R、レンズ:OPLAR50mmf2.8、全コマ開放、フィルム:Super Centuria100
さて、今宵のご紹介は、予定通り、秘宝館のコレクションからのご紹介です。
とは云っても、本来アップする予定のレンズを土曜日に撮りおろしに行けなかったので、急遽、工房の膨大なフォトCDアーカイブスから発掘したFOCA UNIVERSEL Rをご紹介します。

このカメラ、1955年発売のおフランス製でライカっぽい外観ではありますが、レンジファインダーで135判を使うのとシャッターが布幕横走りという以外、コンタックスとライカくらいの相違があります。

マウントは独自、おまけにファインダ窓と距離計窓の位置までがバルナックライカとは反対で、オペマみたいに距離計の窓は向かって右端に肩部に付いています。

ただ、この前年に発売されたM3とは較べるべくもないですが、レンジファインダーは距離計とファインダー一体式の一眼になっており、薄青みがかった視界に黄色っぽいコントラストの低い二重像ではあるものの、軽快なレバー式巻上げと相俟って、少なくとも、同世代のバルナックIIIF辺りや、日本製のライカコピー達と比べれば、速写性に優れ、スナップには向いていたようです。

またこのカメラのユニークなところは、シャッター音です。コンタックスともライカとも異なる、「チュゥ」というゼンマイ仕掛けのおもちゃみたいな音がして、何故か和ませてくれます。

レンズはOPLAR50mmf2.8で、3群4枚のエルマー型、工房主は開放でしか撮らないので、どーでもイイことですが、絞りのブレードは、ライカのエルマー同様、L1の直後に配置され、絞ってみると、蒼い目をしたフランス人形の瞳みたいで面白いです。

では、さっそく実写結果見て行きましょう。フィルムがスーパーセンチュリアってのが時代を感じさせてくれます。

まず一枚目。

アメ横でのスナップは結構気を使います。

同じ業態の築地場外の各店は観光客やスナッパーに対し、寛容で好意的なケースが多いのですが、翻ってここアメ横は、歩きながらぱぱっと撮る分には誰にも文句を言われないのですが、店の横に陣取って、決定的瞬間でも狙う素振りでも見せようものなら、店主、店員の罵詈雑言とともに追い立てを食らうことが多いです。

こうなると、アメ横でのスナップには、速写性の良いカメラ且つ、目立たない小さいものでないと宜しくないワケですが、このFOCA、大きさはバルナックとどっこいどっこいですし、ガシャというフォーカルプレン機に有りがちな人目を惹くような音を立てないし、隠密性にも優れ、なかなか良い仕事をしてくれそうでした。

そこで、曇天の午後、店頭の灯りと天然光のミックスライト状態でスナップを狙える時刻を狙い、懐にこのおフランスのRF機一台を忍ばせ、通りを徘徊し、ここぞ、という瞬間にシャッター切ったものです。

ここでは、八百屋の店先で、大声で商品説明を求める老婆に店員が気を取られている隙に買い物客の人垣からそっとカメラを向け、ちゅっ♪と撮りました。

老婆の髪のシャープさ、そして背後の割合いになだらかなボケはなかなか好感が持てると思います。

普段使っていたM型やCanon VIL、そしてNikon SPに較べれば、ファインダーの表示範囲が甘いため、服の袖が一部写り込んでしまったのも御愛嬌です。

そして二枚目。

またエリア内を歩きながら、被写体を探します。

すると、中田商店の前のやや開けた、交差点の路上で、お好み焼の小型版をふぅふぅ云いながら食べている、関西の小姐がいました。

そこで、すかさず声を掛けて、食べてるところを撮らせて貰ったのがこのカット。

ここでも、右の小姐の髪の毛、そして左の小姐の指の指輪、これらが妙に生々しく描写され、一方、背景はこれまたなだらかにボケてくれていますので、3群4枚の玉とは思えない、立体感を醸し出してくれています。

それから三枚目。

陽気な小姐達に礼を述べて、その場を後にし、また被写体を求め、人ごみを縫って歩きます。

すると、良く築地場外でやってるような、画面内に強い点光源を入れたモチーフが取れそうなシーンに出くわしました。

アクセサリー類を並べて売る人相悪いヲヂさまと如何にも人が良さそうなヲヂさまが、ぼそぼそと小声で話しながら、品定めみたいなことをやっています。

そこで、少し離れた位置から、そぉっと一枚戴きました。

ここでは、点光源はやはり盛大にフレアになりましたが、どうしても解せないのが、画面向かって左サイドの黒い布地にペンダントヘッドみたいなものが並べてある板の流れです。

何せ5~6年近く前のことですから、位置関係までは正確に思い出せませんが、画面で見る限りでは、充分被写界深度に入っている筈なのに、左サイドだけが流れるというか、結像が崩れかけているように見えます。

このレンズ、直進ヘリコイドなので、他のカットでは認められないだけに何故か不思議な気がします。

続いて四枚目。

あまりの人出の多さに人酔いしそうになったので、アメ横の人ごみでごったがえす商店通りの南にある、比較的閑散とした間道のようなスペースに出ました。

人工光の多いところを歩いていたので、あまり気が付きませんでしたが、この時間、空はまだ明るく、アベイラブルライトでも充分に写真は撮れます。

そこで、オープンエアでラーメン等中華料理風の飲食を提供する懐古的小規模飲食店の前まで歩いて行って、お客様各位が閑談に打ち興じている隙を狙い、一枚戴いたのがこのカット。

撮ってから数年後に見ながら、当時を思い出して解説を書いているのですが、今思うと、このシチュエーション、このレンズであれば、モノクロの方が相応しかったのではないかと。

何とならば、この時代から取り残されたような都会のエアポケットで、あたかも時間という概念を持たない古代インドの如く、ひねもすのたりのたりと無為に時の移ろいに身を任す人々の姿には、画面のそこここに姿を見せる共時性の象徴たる色彩などというものは、相容れない概念でしかないからです。

ここでは、手前の老小姐の肩辺りにピンを合わせたようですが、空間の奥行き感を表すボケがなかなか好ましいと思いました。

最後の五枚目。

空の見える鉄道高架の狭間から180°反対方向のガード下方向に目を転じると、こんなに空が明るい時分から、もう一献ニ献きこしめしている人種が居ます。

尤も、11時の開店時間から呑み始める人種も降り、朝の5時くらいまで呑んでいる人種も居るアメ横界隈のことですから、日没前とは言え、優雅なアフタヌーンティーの代わりにホッピーを傾け、定番のスコーンを口に運ぶ代わりにモツ焼の串を頬張り、口の周りぢゅうを脂だらけにしても、誰も咎めるものはいないでしょう。

そうです、山手や、品の良い下町である日本橋、深川の価値基準をものさしとして、人々の立ち居振る舞いを評価してはいけないのです。

しかし、こんな屈託無い人々の交歓の様子が、何故か元気を与えてくれるのもまた事実ではないでしょうか。

今回の感想は、テッサー型というか、エルマー型ってのは、ホント奥が深いですね。

メーカー、時代によって、全然、テイストが違ってくるのですから。

さて、次回はこのところ、猛ピッチで新規製造に励む工房製品のご紹介行こうと思います。乞う御期待。
  1. 2012/06/03(日) 22:00:00|
  2. 深川秘宝館
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コメント

フォカのセットが入っているカメラバック。



(家の閉所でしゃがみながら(失礼…)眺めていたのは、PHOTOという雑誌でIZIS(イジス)というパリをフイールドにしたカメラマンの特集でした。そこにはフォカのセットがギッシリ、こじんまりと収まっているという写真を一部紹介していました。
異郷からフランスを舞台にとはエルスケンのようですが、たとえばフランス人ドアノーやブレッソンなんかと違って、イジスは「よそ行きでないそのグローバルな当たり前さ」というどこにでもあるような(?)フツーのパリを紹介したのカメラマンという気がします。)


たぶん、イジスというカメラマンの油が乗っていた一時期はフォカだったと思いましたが、とりたてカメラを意識して雑誌を見ていませんでした。

こうやって改めてオプラーなる描写を拝見していると、f2,8でエルマータイプとは知りませんでした。

f2,8でも深度の深い描写だなーなんて思いました。
テッサーだったらこういった描写はf3,5というイメージですが、絞りが一枚目の直前という設計理念がライカが持つような《気配》に沿ったのかどうか、知る由もありませんが・・・。

ボケや背景描写の厚みに、街のざわめきが聞こえてくるようです。
  1. 2012/06/07(木) 23:52:54 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

そりゃ物も買わずに

店先陣取れば文句も出るでしょうに。
何か買っておけばまた違うかもしれませんけどね。

それはそれとして、雑踏の様子はマカオと同じように見えますね。
人の密集具合とか看板や店先の色合いとか。
これでいつものスピードパンクロでの撮影ならどう映ったのかと考えるのも面白いのですけど。

それにしてもシネレンズの作品群を見ている所為か、マニアックなはずのFOCAでも「FOCAなんだ、ふーん」で終わってしまうあっしの感覚は嫌ですねえ。基本に戻りませんと。
  1. 2012/06/08(金) 18:01:41 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
先週末はお疲れさまでした。
昼夜逆転生活?の中での昼夜ぶっ通しのイベントはかなりキツかったのではないかとお察し申し上げます。

さて、今回のテーマに関してですが、ホント、マウントを際限なく拡げてしまうと、在庫が膨らみ、財布は薄くなるだけ・・・出来ればRF機はライカMとニコンS系列くらいに集約して、その分、ヘンなレンズをマウント改造して楽しみたいとこです。

しかしながら、このカメラのキテレツ加減と、フランス製レンズの華やかな雰囲気に惹かれるものがあり、タイから復員して、経済的にもイケイケ☆だった頃、勢いに任せてカードで買っちゃったものですから、まぁ、若気に至りとでも申せましょうか。

とか、レスを書きながら思い出したのは、全くの偶然かも知れませんが、このカメラ、アメ横エリアに隣接する御徒町の時計・カメラ兼業の本職は質屋というお店で買ってたんですね・・・ホシは現場の舞い戻るってトコですか。
  1. 2012/06/10(日) 00:26:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Re:そりゃ物も買わずに

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

たまには何か買うこともありますが、スナップする店全部で何かしら買ってたら、カメラバッグのほか、大きなショッピングカートが必要になりますよ・・・(^ ^;

写真を撮って情報発信することが、ひいては商店街の集客にも繋がるのですから、築地場外の店員各位のように広い心と長い目で以て、我々スナッパーを迎えて欲しいものです。
しかも店先ってったって、真ん前ぢゃなく、控えめに店頭の脇で、物理的には自転車ほども邪魔にはならない存在なんですから・・・

さて、今回の画にアジアのマーケットにそこはかとなく漂う共通の雰囲気を感じて戴けたら何よりです。

ちなみに貴兄も良~く御存知の通り、沖縄の牧志公設第一市場とか、その近所の那覇農連市場辺りは完全な屋内なので、マカオとか、香港とか、バンコック、釜山、そしてここのようにミックスライトでの人物像が撮れないんですよねぇ・・・

やっぱり、活気あるところをスナップして歩くってのは、楽しいし、元気が出るような気がしました。

それにしても、このFOCA OPLAR40mmf2.8の画を「FOCAなんだ、ふ~ん 」ってのは、相当重症です(爆)

早く、御自分もシネレンズとか、特殊産業用レンズを買い込んで対症療法しないと・・・www
  1. 2012/06/10(日) 00:39:06 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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