深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Das Geist der alteingesessenen unfortunate~Rollei Distagon35mmf2.8~

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【撮影データ】カメラ:Canon EOS1DsMKII 絞り優先AE ISO400 露出補整±0、全コマ開放、ロケ地:東向島
さて、今宵のご紹介は予告通り、工房附設秘宝館からコレクションのご紹介です。

このレンズ、今は亡きRollei SL35用QBMマウントのDistagon35mmf2.8で、HFTコーティングのオレンジの銘も誇らしげに表記された銘玉で、かつては大きめの中古カメラ店ならまず1本や2本は見かけたのですが、EOS-QBMアダプタが某中国製メーカーの躍進で安く潤沢に出回るようになったのと反比例する形で、すっかり市中から姿を消してしまいました。

マルチコートの135判用Distagonと言えば、長野県のリンゴ畑産はさておき、ヤシコン用のT*のものが頭に浮かぶと思いますが、このCarlZeissがRolleiのために設計し、RolleiがT*の代わりに自社で施したHFTコートのレンズ、1970年のSL35登場後、初めはドイツのブラウンシュパイクで作られていたようですが、この"Made by Rollei"銘のモデルは1972年のシンガポール工場稼動とともに、コストダウンのためにそちらで作られた製品となりました。

構成は6群6枚、最小絞りはf22まであり、最短距離は40cmまでいけます。

では、このマルチコートも鮮やかで宝石のように優美な薄幸の銘玉の実力をスカイツリーのお膝元、東向島のロケで見ていきましょう。

まず一枚目。

東向島駅で降り、いつもの「キラキラ橘商店街」方向ではなく、反対方向に位置する、「白鬚神社」、「鳩の街」辺りで、裏通りから覗くスカイツリーの偉容を撮ってみたくて、散策を開始しました。

巨大なEOS1DsMKIIにカメラバッグを提げてキョロキョロしながら路地、裏通りを物色しながら歩く姿はどう見ても不審人物そのもので、それでも、心優しく声を掛けて下さる方々は居られるもので、住宅街の私道奥に見えるスカイツリーを撮っていたら、通りに戻る際に「イイの撮れましたか?」と声を掛けて戴いた初老の男性が居られたので、少しお話をさせて戴いて、隣の隣の路地からの方が、もっと足元からスカイツリーが撮れますよ、とのことで、お礼を述べその場を後にし、さっそく、アドバイスに従い撮ったのがこのカット。

夕刻の傾きかけた陽光が、左側の民家の壁を仄かに照らし、そこが微妙なグラデーションとなっていて、その先に屹立しているスカイツリーの雄姿を引き立てているのではないか、と個人的には思いました。

しかし、開放での撮影で無限にピンを合わせての撮影で、近距離もこの描写ですから、やはり優秀なレンズであることは疑いようがないと思いました。

そして二枚目。

また暫く歩いて、墨堤通りの手前まで来ると、比較的大きな公園があり、ここなら開けた場所でスカイツリーの全景に近い画が撮れるのではないかと思い、公園の中で一番高い、滑り台付きジャングルジムのような遊具のところへ歩いて行きました。

先客の童子達が元気に鬼ごっこだか追いかけっこだかして、盛り上がってましたが、「写真撮るんでちょっと登らして貰うよ」とか頭目格?の小々姐に一声掛けて、登ってから1~2カット撮り、それから降りて、遊ぶ子供達を入れてツリー全景を撮るのも悪くない、と閃き、「ツリーと一緒に写真撮らせて貰うけど、フツーに遊んでてね」と一声かけて、少し後ずさって撮ったのがこのカット。

ここでは手前の頭目格?の小々姐にピンをおいてますが、遥か後方のスカイツリーもきれいに画面い収まっていますし、梅雨時固有の低くて重いカンジの雲の表情も良く捉えているのではないかと思います。

それから三枚目。

童子達にお礼と別れの言葉を述べ、その場を後にし、「白鬚神社」まで歩いてみました。

実のところは、神社本体ではなく、その東隣に在った、「お化けアパート群」を撮りたかったのです。

ところが・・・歳月というか、経済原則とは冷酷なもので、時代から取り残されたような戦後すぐ建立の染みだらけの木造モルタルアパート群は姿を消し、小奇麗なレオパレスみたいな安普請のアパート群が代わって占拠していました。

仕方なくその場を後にし、次の目的地の「鳩の街」まで歩き、そこで何カットか撮りました。

商店街とは云っても、高度成長期前の戦後すぐに作られたようなこじんまりした街並みですから、幅などは、下手したら、練馬や世田谷の住宅街の私道よりも狭いくらいで、ともかく店らしきものが明確に営業しているワケでもなく、そもそも人が全然通りません。

そこで歩きながら、エキストラになってくれそうな人々を物色していたのですが、あろうことか、商店街?の中の民家で寄り合い?をしていた数家族が出てきて、軒先で帰り支度を賑やかに始めたので、通り過ぎざま、必殺レリーズを決めたのがこのカットです。

ここでは、ピンは辮髪姿?の小々姐に合わせましたが、商店街の遥か後方はなだらかにボケていますし、奥行き感が程好く表現されたカットになったのではないかと思います。

続いて四枚目。

この後すぐに雨が降り出してしまったので、カメラをバッグにしまい、早々に東向島の駅まで向かいました。

そして、アーケードがあれば何とか撮れるだろうとの目算で、いつものホームグランド、浅草、仲見世へと向かいました。

しかし、着いてから思い出したのですが、宝蔵門改築を機にだったか、仲見世のアーケード屋根は取っ払われてしまい、オープンエアになっていたのでした。

それでも、幸いなことに雨は小康状態になっていたので、EOSフラッグシップの防水性能を信じ、スナップを続行することとしました。

まずは定点観測スポットのきび団子屋さんの店頭です。

居ました居ました、きび団子娘?さん達が、途絶えることの無い観光客相手に八面六臂の大活躍でお店を切り盛りしています。

そこで、心持ち、客足が落ち着いた頃合を見計らっての必殺の一枚です。

ここで感心したのは、小姐の表情が余すところ無く捉えられていること以上に、背景の発光板が全然、フレアなどを生ぜず、全くといって良いほど作画の邪魔をしていない、ということです。

先にテストした35mmf1.4HFTしかり、このHFTコートの性能たるや、フルサイズデジタル機との組み合わせでも瞠目すべきものがあると思いました。

まだまだの五枚目。

仲見世を更に歩いて、雷門前に出ました。

すると、お、メキシコと思われる、陽気な観光客のご一行サマが他の堅気の観光客なども巻き込み、記念写真イベントみたいなことやっています。

工房主は元々こういうお祭り騒ぎ系が大好きで、見たらいても立っても居られない人種なので、首領と思しき、祭り装束の元?小姐に一枚撮らせてね、とか話しかけると、みんな、わぁぁぁ♪ってカンジで整列して、ハィポーズって云ったらこんな表情で、シャッター切ってから、ムチャスグラッシャス!とか云ったら、またどわわわわぁぁあ~と盛り上がった、といったノリで、なんだかこっちまで楽しくなってしまったご一行サマでした。

ここでも、深みのある発色、必要かつ充分なシャープネス、そして背景には遥か後方にきれいなボケと化した宝蔵門が見え、なかなか好ましい写りとなったと思います。

最後の六枚目。

浅草寺本堂は17時閉門ですから、たまにはお参りもしなきゃいけないなぁ・・・とか考え、また本堂方向に仲見世の側道を早歩きで移動しました。

無事お参りを済ませ、掲題でまた何か面白い被写体はないか物色していたら、居ました、居ました、このところ日本人よりも多いと目される、中国人観光客の一家が居ました。

スカイツリーを前にし、ヲヤヂさんはマイクロフォーサーズのカメラで写真を撮り、尾野真千子の眼つきをもっと優しくしたような色白の小姐とそのオモニは、明らかに雨笠と思しきカラフルな折り畳み傘をさして、ツリーの雄姿に見入っていました。

その一家の後姿が面白くて、一枚戴いたのがこのカット。

ピンはカラフルな傘のエッジに合わせていますが、背景のスカイツリーはやはりなだらかにボケて、明るい曇天に向かって撮ったにも関わらず、一家の装束は落ち着いた発色と程好いコントラストで描写されていて、やはり、このレンズは只者ではないことを証明した結果となりました。

今回の感想は、う~ん、紹介しちゃって良かったのかなぁ・・・ということ。

何とならば、アダプタ経由の使用でライカRレンズの広角が市中から払底し、次いでヤシコンの広角も同様の動きを見せる中、カメラ本体の商業的不成功?のお蔭で不当に低い評価だったこのQBM広角シリーズが人気出ちゃったら、次に欲しい28mm以下のものが買えなくなっちゃいますからねぇ・・・

さて、次回は工房、怒涛の新作ご紹介する予定です、乞う御期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2012/06/17(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

いつもより対象との距離間に余裕があるなと思ったら

デジタル一眼での撮影でしたか。

スカイツリーが完成して、ランドマーク兼観光名所になりましたねえ。
勤務先からも見えますんで、たまに昼の散策でスカイツリー近くまで足を延ばそうか頑張っているのですが、なかなか届きません。

それにしてもローライもこういうレンズ出していたのですね。映りが素直ですし、前回のレンズとはまた違った魅力がありますねえ。
  1. 2012/06/17(日) 21:05:46 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

わたしも、データが出るまでフイルムと思いました。

QBMも25mmはちょっと買えませんが、50mmや135mmは安いですね。1万するかしないかなのに、ヤシコン見慣れた目にはコッテリ感の無いプラナーはとても新鮮でした。しかも50mmf1,4のロー・コントラストには驚きです。

85mmや35mmf2,8もありますが、なかなか出番がなくて・・・。でも、これを見て、やっぱり持ってて良かったと思いました。

ローライの機械式カメラ・レンズならなんでも直せると、数年前にローライ専科の通称ロイさんの元へ品物を受け取りに飯能まで直接出掛けました。二眼のfやVbはもちろん、デッドストックの35シルバー+カビ付プラナーは完璧に仕上がりました。(当時でも社長さんは体が悪いなんていっていましたから、もう弟子さんの時代かな?)

きちんと作った機械は後々まで面倒をみてくれるもので、話は変わり申し訳ありませんが、数年前買った日本製で20数万円のH社の50ccスクーターなどシャッター・キーが無くなっただけで「新型をお勧めします」と、修理を受け付ける様子もありません。
むかしのH社はメーカーのサービス・ファクトリーがありがたくも直接修理してくれましたが、今では販売店すら見捨てます。時代はかわりました。


電気式カメラ群は不明ですが、これらはシンガポール製でも意外としっかりしている製品群です。(蛇足~ロイさんではSLXもOKと当時は言っていましたが、2000シリーズ等は怪しいですね。)
  1. 2012/06/17(日) 23:01:54 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:いつもより対象との距離間に余裕があるなと思ったら

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

スカイツリーってのは、なかなか面白い建造物で、多角形の根本から、上に行くに従い円形断面になるという構造で、それ以上に、南側から見る姿と北側から見る姿は、麓の街並みが全然違うので、雰囲気自体が全く代わって見えるのですね。

ここにアップしたのとは別にスマホンで何枚か撮ったカットに東向島駅前の風景越しのものが有りましたが、これを見せた同僚は、「何故か通天閣みたいですね」と感想を述べていました。

それはそうと、Rollei製のQBMマウントレンズ、これらは穴場中の穴場かも知れませんね。

電子湾ではライカのRに較べれば、まだまだ見かけることが多いですし、人気の35mm、28mmもここでご覧戴いた通り、フルサイズのデジでも全く遺憾なく性能を発揮してくれますし、是非とも揃えたいマストアイテムではないでしょうか。
  1. 2012/06/17(日) 23:41:39 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

逆説的に申せば、カメラ自体が華奢で壊れ易く信頼性が今ひとつだったので、ガシガシ酷使されたRレンズやヤシコンYCと違い、レンズの方は程度の良い個体が比較的廉価で入手出来たのかも知れません。

確かにご両名に言われてみれば、一見、デジとは見えない、不思議な発色、線描写でRレンズとも、また同じルーツであろうヤシコンYCともこれまた違う面白いレンズではないかと思いました。

しかし、貴兄もこのQBMシリーズを所有されていたというのは、驚きであり、自分の品物を見る目も間違ってはいなかったと再認識するに至りました。
  1. 2012/06/17(日) 23:50:30 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

又これも白人好みのRの発色が良いですね。
独逸、仏蘭西、英吉利、瑞西、白人の国で製作されていたレンズは日本製と違いRの発色が良いですね?
シネ用に限らず全体に西洋製はRの発色が良いのではまる日がが多く成りそうです。
  1. 2012/06/23(土) 15:18:50 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

hiroさん
有難うございます。
そーなんです。
このレンズ、フレックスSL35のダメダメボディとしょっちゅう経営破綻ばかりしていた会社自体のイメージの悪さで、評価は高くないですが、まごうことなきCarl Zeissの力作レンズ、シネレンズにも通じる、臨場感と質感再現性に優れた端正な描写を魅せてくれます。

もう既に高くなり切ってしまったRレンズよりも、日本人向けに味付けをいじってあるようなヤシコンツァイスよりも、こっちのツァイスのラインナップをフルサイズEOSデジ用の広角として揃えるのも面白いかも知れませんね。
  1. 2012/06/23(土) 23:54:59 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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