深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A great riddle from stock yard~Zeiss Sonnar5cmf2 L39~

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【撮影データ】カメラ:Canon VIL フィルム:S-Centuria100、全コマ開放、ロケ地:鎌倉小町通り
さて、今宵のご紹介は、予定通り、工房附設秘宝館からのコレクションのご紹介いきます。
とはいっても、本当は、今日のお昼過ぎにでも、M8かR-D1sで別のレンズを近所でちゃちゃちゃっと実写例作って上げれば、ハイ一丁上がり!ってな目論みだったのですが、そうは問屋が卸してくれず、工房での一段落後のランチタイムから、都内は雨模様になってしまったので、さすがにフィルターなしで沈胴のクラシックレンズとデジRFという雨に弱い両極端の組み合わせで撮り歩きに出る度胸はなく、仕方なく、そのままランチから戻り、加工を継続して一本仕上げてから、撮り溜めのアーカイブスからフォとCD-Rを探し出して来た次第です。

しかし、探せばあるもので、わざわざ撮りに出なくとも、過去の撮り溜めCD-Rで2~3ヶ月分の秘宝館は余裕で繋がるくらい、撮ってお蔵入りの写真が有るのには正直驚くやら呆れるやら・・・

さて、今回のレンズは、L39のゾナー5cmf2ですが、正直云って、真正品か否か、今も自信がありません。

ツァイスの電話帳とか云う本に載っているものだけがホンモノと云う向きもありますが、果たしてそうなのでしょうか?

確かに電話帳に載っているものは真正品というお墨付きかも知れませんが、載っているものが真正品だからと云って、「逆は必ずしも真ならず」からすれば、載っていないものは全て贋物というのもおかしな気がします。

なぜ、こんなことを云い出すかといえば、実はこのヘリコイド&マウントユニットはロシア製の最初期のジュピター5のL39でも類似の外観のものが見られるのですが、一回、そのジュピター5の最初期型を買って、分解したことがありますが、少なくとも、内部構造はCXマウントのものとは全く違い、キャノンやニコン、そしてライツのレンズのように光学ブロックとヘリコイドが分離出来るような構造にはなっておらず、これを刳り貫いてCXマウントの光学ブロックを填め込むのはスペースとアルミパーツの強度の問題から現実的ではないと考えられ、そもそも、このフィルター枠が無く銘板が先端で直接剥き出しになっている、レンズ先端部のデザインからして、CXマウントのゾナーでは見たことがありません。

更に、工房主には最もどーでも良い、製造番号と製造年代の関係でも一般的にツァイス製レンズは300万番台未満は1945年以前にイエナで作られた製品であり、285万番台という番号、そして1936年にアレクサンドル・スマクラ博士が発明し、軍用から採用された"T"コートの赤の刻印からして、少なくとも、レンズエレメントと金物は真正品で、但し、それがカールツァイスの正規の品質管理基準での製品検査を経た出荷品、つまりカールツァイス製真正レンズか否かまでは判らない、ということなのです。

とまぁ、難しい話しはここまでにして、この謎に満ちたレンズの実力を見て行きましょう。

実写例は全て、3年ほど前の秋に鎌倉小町通りで今は亡き、Konica S-Centuria100で撮ったものです。

まず一枚目。

鎌倉駅の小町通り口で降り、小町通を鶴岡八幡宮方面に向かうと、数箇所の撮影スポットがありますが、まず一番目がこの小町通りを横切る小川に迫り出した民家とそのテラスの鉢植えです。

ここはいつもは大抵日陰でありながら、日射角度によっては小川のせせらぎに射し込む陽光が反射して美しく映えることがあり、今回も涼しげな水面の照り返しと、テラスのささやかな鉢植えの対比が閑静な佇まいを醸し出していて惹かれるものがあったので、一枚戴いた次第。

このSonnar、銘板剥き出しでレンズの第一面もかなり前にありますから、逆光などではひとたまりもなく、フレアやゴーストが大発生してしまい、せっかくの描写が台無しになってしまう虞れも懸念されましたが、こういうシチュエーションではコントラストも解像力も申し分なく、風情有る作画を見せてくれました。

そして二枚目。

この橋の先から西側の路地に入って黒塀の古風なカフェやら、その前の赤いスクーターなどを撮るのが定番となっていますが、今回のネガにはそれが見当たらなかったので、そのまま、またぐるっと回って、小町通りの雑踏に戻ったものと思われます。

通りのまだ駅に近い辺りのお煎餅屋さんでは、店頭で焼いた煎餅に醤油をつけて道行く人々に販売しており、暫く眺めていたら、丁度イイ被写体の親子連れさんがやって来たので、そのまま知らん顔で一枚戴いたもの。

前のカットでは判らなかったですが、このカットで見て取れることは、後ボケは素直で美しいこと、そして、残念ながら、四隅が若干周辺落ちでブラックアウトしかけているということです。

しかし、この解像力とコントラストと階調再現性のバランス感、そして50mmクラスにしては遠近感有り、立体的な描写、やはりドイツの往年のレンズ、と唸らざるを得ないと思いました。

それから三枚目。

また暫く八幡宮方面に歩くと、鎌倉という土地柄でしょうか、沢山の幟を立てたお好み、もんじ焼のお店があり、この幟のボケ加減を捉えるのも悪くはないと思い、一枚撮ったものです。

ピンは奥から3枚目の赤い「お好み焼」の幟に合わせていますが、奥の、今まさにお店に入らんとする2名の小姐まではギリギリ被写界深度に入っているように見えます。

ここでは、前ボケの傾向が画面右側の幟と上部の木製の看板で見て取れますが、ここでも後ボケ同様、イイ味を出しているのではないかと思います。

ただ残念なのは、画面向かって左下の植栽と小石混じりのアスファルト舗装が非点収差による、ぐるぐる傾向を見せてしまっています。

続いて四枚目。

更に通りを奥に進んで、半分くらいまで来た辺りだったと思いますが、くず餅だったか、わらび餅だったかを店頭販売しているお店があって、ここでも人だかりが出来ていたので、無辜の観光客のフリをして、カメラを構え、シャターチャンスを狙い、店のスタッフの小姐と呼ぶにはいささか高齢の女性が品物を顧客に渡す瞬間、白熱灯に照らされ、後ろ髪が光った瞬間を撮ったものです。

ここでは、構図上、後ボケは評価出来るほど写り込んではいませんが、前ボケは、ソフトクリームのオブジェと左手の妙齢の大姐の佇まいで判りますが、何れにせよ、後ボケほどは素直にならなかったようです。

まだまだの五枚目。

お店の前を後にして、また奥を目指します。

すると、確か川崎大師名物の筈だった「せき止め飴」がコンキリコ♪ コンキリコ♪と軽快なリズムに乗って切り分けられ、好奇心旺盛な童子達がその音に惹き付けられ、家で待つ親御さん達へのお土産でしょうか、なけなしの「遠足お小遣い500円で」をはたいて買い求めていました。

そのけなげな姿を背後からそっと戴いたのがこのかっと。

まぁ、このサイトではありふれた人物描写っちゃ人物描写なんですが、ここで一点、改めてこのレンズの性能面で驚いたことがあります。

それは、画面中央奥の煌々と照る白熱灯を斜め60度以内から捉えた部分です。

旧レンズでは、コマフレアで光芒が膨らんだり、流れたり、或いはゴーストが出たりすることがままありますが、この赤"T"レンズ、あたかもライカのノクティルックス50mmf1.2や、Canon50mmf1.2Lを彷彿とさせるような、見事な点光源の描写をやってのけたのです。

最後の六枚目。

親孝行の童子達の幸多き将来を祈りつつ、その場を後にし、また八幡宮方面へと進んでいくと、もう、通りの突き当たりも見えてこようかという辺りで相州塗りの箸を売っているカウンターのお店があり、ここにも結構人が集まっていたので、暫く遠巻きに眺めていました。

そして、犬連れのベレー帽にチョビ鬚という小洒落た中年男性が何か買って、お店から離れようとする刹那、カメラを構えた小生の只ならぬ雰囲気を察知した愛犬が、おもむろにこちら側に向き直って、尻尾なんざ振り始めたんで、その愛嬌に感じ入って一枚戴いたのがこのカット。

ここでは、解像感はいわずもがなですが、コントラストと階調再現性の絶妙なバランス、そして、締まった発色が相俟って、かなりソリッドで硬質な印象を与える描画となっています。

今回の感想としては、う~ん、偶然の降雨のおかげか、慌てて死蔵写真の棚卸をしたため、シネレンズもかくやあらんばかりの性能を発揮している謎のレンズの描写性能を再発見出来ました、やっぱり、CarlZeissの看板はダテぢゃない。

さて、来週は攻守交替で工房作品となるところですが、来週末、再来週末と上総の国でお楽しみのお祭り2連荘なので、どうなるか、乞う御期待♪

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2012/07/01(日) 21:26:23|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

収差が現れている様子と周辺光量落ちの様子は、35mmシネ用だったら全く違和感がないのですが、シネ用のブロックという事はありませんか。また、5cmとしても、実際短い側という画面の感じもします。焦点距離がmmだと幾ら位なのでしょう、知りたいです。(コンタックスで使えるのかどうか)
  1. 2012/07/04(水) 21:26:42 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

う~ん、シネ用の50mmはツァイスはf2はプラナー、f1.5はゾナーというラインナップですから、ライカ基準かコンタックス基準かは別として、RF用以外は短フランジバックのものはないと思います。

それから、実焦点距離ですが、レーザー光源を使った結像の大きさ、そして光学ブロックの無限から1mの繰り出し距離から大雑把に計算してみたところ、焦点距離はズミクロンの51.6mmよりは寧ろ長く、実際の焦点距離が52mm強有る、ロシアのHelios103よりは短かったという結果で、たぶん51.8~52mmの間くらいで、寧ろライカ基準よりはほんの僅か長いということではないかと思います。

たぶん5cmとしては短いという間隔は普段使用するM8が画角1/1.3、R-D1sが1/1.5ということから起因する135判フィルムによる画角の広さからではないでしょうか・・・
  1. 2012/07/04(水) 23:03:54 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

今回は、外見からだけの判断でまことに申し訳ありませんが。

再び気掛かりになってしまい、コンタックス・ゾナーf2も所有していませんで申し訳参考程度ですが、手持ちのジュピター二つと比べてみました。

最前列のガラスを押さえる金物(プラ製?)の飾りで、10条くらいで同心円状の段はシルバーのナンバー58xxxやクロの022xxxとそっくりです。

シルバー玉の最前部出っ張りリングを外して、絞り側に折り込んで絞り連動にすれば、前面の刻印部はジュピターからの修正可能という感はあります。

しかしながら、見たところコーティングはシルバー玉の赤紫とクロ玉の黄茶どちらとも違いますが、コートを比較する実例も少なくこれ以上は検討つきません。どちらかといえば、クロ玉の黄色がかり側ににています。



以上で申し訳ありませんが、あとは似たような品を所有するか、コンタックス・ゾナータイプに熟知の方々にお譲りするしかありません。

更には、組立具合やレンズを分解できる工房見解こそ有意義と思った次第です。
  1. 2012/07/05(木) 02:55:27 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:今回は、外見からだけの判断でまことに申し訳ありませんが。

treizieme ordre さん
再びの貴重なご意見、ご感想有り難く存じます。

このレンズ、手持ちのツァイス製品で何に似ているか調べてみたら、まさに「灯台元暗し」ロボットロイアル36の50mmのゾナーのコート、硝材にそっくりでした。
特にここでL3の凹面のアンバーパープルのコート
の干渉色は、戦後49年製ジュピター8から70年代に入ってからのヘリオス103まで100本以上のレンズブロックありますが、同様のものは皆無で、やはりこのレンズブロックはツァイス純正品とみた方が間違いなさそうです。

それから金物についてですが、今も仔細に検分して
みれば、レンズ押さえのリングはアルミに黒の半艶消しのエナメル焼付けですが、銘板部にもある絞りのインデックスのドットは、やはり後から穿孔して白
のリキテックスを入れたものではなく、焼付塗装時点で開いていた窪みに白のマーカーを流し込んだと見た方が自然な気がしました。

なお、お手持ちのジュピターも50年代初めまでに
作られたZK(ゾナークラスノゴルスク)と呼ばれるものと、ツアィス純正とも云われる沈胴ゾナー5cmf2と造型、材質ともほぼ同一ですから、ジュピターと細部が似ているから、そちらに近いというのも、やや乱暴な議論かなぁという気もしました。

そういえば、47~48年製のジュピター8の固定鏡胴の内部パーツ使って、戦前の沈胴ゾナーをレストアした話も紹介してましたね。
  1. 2012/07/05(木) 23:57:44 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

このベタベタの発色はシネレンズに共通するきらいもありますが、
私的には好きな方向です。
クックやシュナイダーとも発色が違うようですが、
好きですね_
  1. 2012/07/07(土) 21:26:09 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

hiroさん
有難うございます。
シネフィルムの申し子、EKTER100に較べれば、発色が濁り気味とも評されるS-Centuria100ですが、このレンズでの描写を見る限りでは、賢兄の看破された通り、かなりシネレンズに近い色ノリではないかと思います。
少なくとも発色とコントラスト・階調再現性バランスというモノサシでは同世代のズマール、ズミターでは勝負にならないカンジです。

実はこのレンズ、まだM8で使ったことがないので、シネプラナーやら、ローライHFTプラナーといった一族の銘玉とタイマン張らせたら面白いかも知れませんね♪
  1. 2012/07/07(土) 22:50:24 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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