深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

下町の心意気~洲崎弁天社夏祭り'12~

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【撮影データ】カメラ:R-D1s 絞り優先AE ISO200 レンズ:Apo-Rodagon50mmf2.8 mod.L39 全コマ開放
さて今宵のご紹介は、予告通リ、近所のお祭りシリーズ第一弾、洲崎弁天社の夏祭り'12からご紹介致します。

工房のある深川古石場三丁目は、ちょうど木場と門前仲町の中間辺りに位置し、かつては深川琴平町と呼ばれ、琴平神社、つまりこんぴら様が祀られていた地域です。

そのこんぴら様はよそに勧請されてしまい、もうその痕跡には保育所だかが経っているだけですが、その旧町名を受けた富岡八幡宮での神輿社中の名前では「琴平」の名を残しています。

話しは少々横にそれましたが、こんぴら様は無くなってしまいましたが、地理的に洲崎弁天社も富岡八幡宮もほど近く、夏になれば、両神社の夏祭りを楽しむことが出来る格好のロケーションなのです。

ここで洲崎弁天社の由来についても少々述べておかねばなりません。

時を遡ること1700年、犬公方として悪名高い徳川綱吉の御世、江戸城内の弁財天を護国寺の住職の助言もあって、木場の先の埋立地に勧請したといいます。

以降、埋立地の浮島に在った弁財天社は風光明媚な立地もあって、文人墨客の来訪を数知れず受け、また安東広重の江戸名所百景をはじめ浮世絵にもその名を残し、富ヶ岡八幡宮と並ぶ深川の一大観光地でもあったのです。

更にこの洲崎という地そのものが、東京の食文化のDNAに深く刻み込まれている「江戸前」という概念の根幹を為す重要なファクターなのです。

それは、何かと云えば、明治位までは、「深川洲崎の一番杭と品川洲崎の一番杭を結んだ内水面を江戸前と呼ぶ」という概念が有って、このエリアで上がった魚介類を江戸前の魚として珍重したからです。

では、早速、その江戸の薫り高い洲崎弁天社の夏祭りのひと時を、工房の誇る必殺兵器、Apo-Rodagon50mmf2.8で捉えた画をもとに見て行きましょう。

まず一枚目。

8月5日の朝、門仲交差点上の喫茶店でのゴーヂャスなモーニングを食しようと、木場駅まで歩く途中、祭り装束の一団とすれ違い、遥か洲崎弁天社の鳥居方面に目を凝らせば、子供神輿のようなものが路上の集結し、近所の住民各位は子供用プールから一斗樽に至るまで水をプール出来るものを思い思いに道端に用意し、いつでも放水出来るよう臨戦態勢です。

こりゃ、メシ喰ってるどころの騒ぎぢゃありません。そそくさとモーニングを食べ、大急ぎで地下鉄に乗り木場まで戻り、多少濡れても問題無い装備、R-D1sとApo-Rodagon50mmf2.8の組み合わせで撮って撮って撮り捲ることとしたのです。

そして興奮高まる神社周辺まで来て、陽光に輝く鳥居と提灯を捉えたのがこの一枚。

人物が全く写っていないカットだったのですが、はじめはボツにしようかとも思ったのですが、この鮮烈な赤の発色がその時の工房主の心の高まりを表すような気がして急遽採用とした次第です。

そして二枚目。

境内に足を踏み入れたら、まだ神輿の出陣前なのか、あちこちで小集団活動とばかり、和やかな雰囲気で大人も子供も語らい合って、えも言われぬ雰囲気を醸し出しています。

その中で、若い美人ママさん?がいたいけな童子達相手に笑顔で天下国家を論じている(んなワケないか・・・)ような場面に遭遇したので、早速一枚戴いたのがこのカット。

さすがApo-Rodagon、描写には全くケチをつける余地がないです。

シャープネス、コントラスト/階調再現性のバランス、艶やかな発色、そして素直なボケ。

何でこんな性能の良いレンズを撮影用としてライカマウント化して売り出さなかったのか理解に苦しむところです。

それから三枚目。

また境内を徘徊していると、居ました、居ました、いかにもお祭り好きで気の好さそうなおっちゃんが、健気な童子相手に欧州の金融危機に関する彼独自の処方箋みたいなものを語っています(んなワケないか・・・)

その楽しげな雰囲気に曳かれ、カメラを構えて一歩、二歩とにじり寄り、おっちゃんも童子達も"撮られる"ことに関する覚悟が出来た頃合いを見計らって、何枚か撮らせて貰ったうちの1カット。

真昼間からの振る舞い酒でおっちゃんは底抜けに上機嫌で、直前の噺がよっぽど面白かったのか、極小姐は破願したままですが、男の童子はしっかりカメラ目線くれているところが面白いです。後でも出てきますが、こういうお祭りではどうしても可愛い極小姐や小々姐にカメラを向けがちではありますが、撮られたがっているのは、寧ろ、男の童子の方が多いようです。

ここでも、この高性能レンズはシャープネス、発色、ボケとも素晴らしい性能を発揮してくれています。

続いて四枚目。

一杯引っ掛けて上機嫌のおっちゃんはおいといて、カメラ目線の童子達に軽く手を挙げ、サンキュー♪とか声掛け、次なる得物を探しました。

すると、時刻が迫って来たのか、いよいよ、数基の神輿が出陣準備を始めています。

そんな慌しい出陣準備を、ひとり佇み、暖かげな眼差しで見つめる祭り衣装の小姐が居たので、どさくさ紛れに背後に回り込み、一枚戴いたのがこのカット。

ここではピンは当然のことながら、後姿の小姐の祭り半纏の洲崎マークに合わせていますが、極めてシャープで質感再現も素晴らしい被写界深度内の結像に対し、背景の神輿とそれを取り巻く人々は、やや芯の残ったざわざわした感無きにしもあらずのボケとなってしまいました。

更に五枚目。

境内から最後の神輿が出て行き、通りで激しい放水攻撃を受けているので、そちらを観に行こうと考えました。

すると、その場の只ならぬ雰囲気に怯え、足がすくんだのか、鳥居の真下に立ちつくす親娘が居ました。

放水攻撃を受ける神輿群と立ちつくす親娘、こんな夏らしくて素晴らしい構図はなかなか巡り合えません。早速一枚戴きました。

この稀代の高性能転用レンズは、あまりの凄絶な光景にひしとオモニの腕を掴む、いたいけな小々姐の心の中の途惑いみたいなものまで映し出しているような気がします。

ここでは画面内に赤系統の被写体が無いためか、却って締まった発色に見えるところが面白く、また背景は前カットのざわざわとはうって変わって、ナチュラルでイイカンジにボケています。

まだまだの六枚目。

神輿が視界内から消えてしまわないうちに、或る程度距離を置いて追尾しました。ここでは、戦闘員、非戦闘員の区分が極めて曖昧で、誰彼構わず神輿の至近距離の人間には放水を行うため、プロをはじめ、熟練のアマチュアカメラマン諸氏はカメラマンコートというか、カメラに被せるビニールカバー越しに撮影していますが、丸裸のR-D1sでは、或る程度距離を置かねば、身の危険に晒される虞れが有ったからです。

そんな中で蛮勇を奮い起こし、かなり近寄って、放水の一瞬を捉えたのがこのカット。

ピンは激しく揺られる神輿には合わせきりませんでしたが、それでも手前の緑の祭り半纏の小姐の背中の洲崎マークにはバッチリ合っていて、画面一面に炸裂した水玉が、緊迫した一瞬の雰囲気を伝えるカットにはなったのではないかと思います。もちろん、背後からおおよそバケツ半杯分見当の水はぶっかけられましたが、ハレのお祭りの場、お互い恨みっこなしがルールです。

最後の七枚目。

ずぶ濡れの背中からの水分の気化熱で少し涼しい思いをしながら、奇跡的に水濡れから逃れた愛機を抱え、周辺での画拾いを行います。

すると、居ました、居ました・・・最新のルイヴィトンの白地にカラーロゴみたいなカンジのデザインのお揃いの祭り装束に身を固めた、をぢいちゃんとお孫さんが、子供用プールを水源として、水鉄砲で市街戦に参戦しているぢゃありませんか。

早速、声を掛けて、お揃いのツーショットで撮るには撮ったのですが、お揃いではない濃紺の祭り装束に身を固めた男児クンが、「え~、オレも撮っておくれよ~!」とリクエストしてくれたので、即時了解、急遽、三役揃い踏みで撮ったのがこのカット。

普段、写真を撮られることが少ないせいなのか、この日焼けした男児の胸を張った晴れがましい笑顔、イーぢゃありませんか!?

暗い話題ばかりの昨今、将来を担う、このいたいけな男児の笑顔が、まだまだ日本の将来だって捨てたもんぢゃないよ、と励ましてくれたような気がしました。

お三方に心から御礼を述べ、背面濡れ鼠状態の工房主は何か暖かいものを胸に秘め、1人の工房兼住居に戻って行ったのでした。

さて、来週は、いよいよ、この夏のメインイベント、深川富岡八幡宮本祭からの渾身のレポートをお送り致します。乞う御期待!

テーマ:日本の祭り - ジャンル:写真

  1. 2012/08/19(日) 20:00:00|
  2. 街撮り写真
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

5-7枚目は組み写真でも良いかも。

コメントを書いている間にまさかの更新。
やりますね。

今回のレンズ、あまり聞いたことない名前ですがシネレンズですか?
発色の良さは前回の記事に出てきたレンズより良いですね。
それと5~7枚目の写真がいかにも夏の神輿と祭りっぽくて良いですわ。
はやいところ自分も環境を整備してこういうの撮りに行きたいですね。
  1. 2012/08/19(日) 21:48:19 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #liuN1Pm2
  4. [ 編集]

Re:5-7枚目は組み写真でも良いかも。

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。

このレンズ、実は引伸用レンズなのです。
ローデンシュトックがカラープリント用として販売している、Apo-Rodagponの旧モデルの金属鏡胴のものをL39化したヤツなんです。

R-D1sと組んでこの性能ぶりですから、X-Pro1と組んでの初仕事は・・・もう期待に胸ワクもんですね。

今度、貴地で撮影する際は是非、NEX7ででもお味見下さい。
  1. 2012/08/20(月) 23:04:33 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは。
わたしはコレの新型を、先日、新古にも関わらず電子湾でけっこういい価格で落札しました。なにしろ国産では撤退メーカーもあって心配でしたので…。

今回は、以前の作例アップとは違い、僅かに赤・黄を帯びているような気もしますが、これが独逸好み(瞳の色違いでの偏向)傾向といってよいのでしょうか。どちらかって言えば青っぽいシュナイダーの同45㎜と比べるとオモシロイです。(シュナイダーのアポクロマートもほっしいですね~。)

ヤッパリコンストラストが高いですが、シャドウ側に強そうなので好ましいです。

なんにせよ、これが一般撮影用で使えるというのがすごいですが、SKさんでしたか(マチガエたらご免なさい…。)一般撮影用のパーツが市販されていたような情報も、あったような気もしました。


45mmというハードルはありますが、余裕があれば、ぜひともアポ・ロダゴンにも挑戦してください。コチラには、チョーク板固定の普及タイプがあるのも興味深いです。

では。
  1. 2012/08/21(火) 13:14:21 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

実はこのカット、撮って出しということでもなく、画像処理ソフトの「色調スライダー」若干、明度とコントラスト、そして色加減をいじってあります。

つまり、小生の瞳の色の関係か、どうしても、明るいカットになればなるほど、YとRに2目盛程度シフトした方が自然な色に見えるので、そのような加減となっています。

ところで、アポロダゴンの新古品をお買い求めになられたとか。

それはプラ鏡胴に絞りの角有りの現行品ですね。

今回使用したものは、モノコートながら、アルミ削り出し鏡胴の旧モデルで、これに限らず、ローデンのレンズを改造するケースでは加工の際の応力変形を受けずらいので、愛用しています。

それから、シュナイダのアポクロマートはアポコンポノン45mmf4HMのことですね。

仲間内ではJYさんが彼のブログで数多くの秀作をアップされていますね。

しかもEOS5DMKIIのフルサイズ撮像素子経由ですから、見応えのある力作揃いです。

では、工房で今から買って改造するかと言えばたぶん、すぐにはしないでしょう。

何とならば、かつて500ドル超したレンズヘッドが今や1200ドルを越えるレヴェルにまで上がってしまっていますので、よほどのレア且つ高性能でリセルヴァリューも良い銘玉ならいざ知らず、現行品で改造レンズのレシピエントに10万円超のお金を出す気は毛頭無いからです。
  1. 2012/08/21(火) 23:15:26 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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