深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Nostalgic but still practical~Biotar4cmf2 mod.M_uncoupled~

さて、今宵のご紹介は、ここのところ、ちょいと遊び歩き過ぎて、工房の作品である改造レンズのご紹介を随分とサボってましたので、久々の工房作品のご紹介行きます。
Biotar40mmf2.jpg
このレンズは、元々はROBOT用のBiotar40mmf2でシリアルが224万番台ということはノーコートということもあり、まごうことなき戦前のツァイス製品です。
構成は4群6枚のオーピックタイプ、真鍮削り出しの小さくてもずっしりとした鏡胴に収まった「山椒は小粒でも」云々の当時では高性能の銘レンズでした。

このレンズ、これまで工房創設以来、防室庫の奥底で眠っていたのですが、その理由は、マウントネジ径とヘリコイドの直径の関係から、回転ヘリコイドを用いた傾斜カムによる距離計連動が物理的に加工出来なかったので、完全主義?の工房主は「目測レンズなんて・・・」とか思いなかなか改造に踏み切れなかったのです。

ところが、今年の秋口、お祭りシーズン直前にX-Pro1を入手し、遂に距離計との連動を考えずとも心置きなく撮影が出来る、ミラーレスの世界に足を踏み入れたため、それではということで改造を行ったという次第。


ま、距離計連動機構がなければ、元々ヘリコイドも絞りも有るいっぱしのレンズですから、専用のマウントアダプタを拵えたといった方が近いかも知れません。

もちろん、ミラーレスで使うからといって、無限出し等に手抜きをしよう筈もなく、ライカマウントカメラに装着すれば、目測ながら、距離指標を頼りに撮影も出来るのです。

なお、今回の作例は全てX-Pro1による絞り優先AEの開放撮影、ロケ地は先月の鹿沼祭りです。

では実写を見て参りましょう。
biotar40mm_01.jpg
一枚目は鹿沼祭りの二日目、R-D1sのBaltar35mmf2.3とX-Pro1の二挺拳銃状態で祭り会場を徘徊していたら、梅澤富男ばりの流し目で、老人アマチュアカメラマン各位を悩殺せんと試みる、山車上の妙齢の小姐の姿が目に留まりました。
そこで、かなり至近距離まで歩み出て、流し目現場を一枚戴き。

ここではかなりピーカンだったため、ノーコートで内面反射も大きくなってしまっているBiotar4cmf2の欠点モロ出しではありますが、この紗が掛かったような描写も、彫刻バリバリの山車上から色白の美形小姐が曰く因縁有りげに流し目を送るカットにはなかなか宜しい演出になったのではないでしょうか。


biotar40mm_01a.jpg
二枚目はメイン会場の大通りを歩いていたら、背後から金棒曳きの小姐に率いられた山車がやって来たので、振り返りざまに数カット撮ったうちの最初の一枚。

残念ながら、こちらがまん前でシャッター切っているというのに、この小姐が気付いてくれたのが、カメラをR-D1sに交換してから、従って、このX-Pro1でのBiotar4cmf2のカットはこのよそ見しているものだけです。

さすが往年の銘レンズ、周辺付近の解像力は開放からかなり高く、今でも充分実用に供せられるレベルでしょうが、周辺、特に24x24フォーマット用のレンズということもあってか、長辺部に当たる上下はかなり甘くなっているように見受けられます。


biotar40mm_02.jpg
三枚目は休憩中の山車周辺で息抜き中の金棒曳きの小姐達が目に留まったため、小走りに駆け寄り、周りの世話役の大人連にも聞こえよがしに、一枚撮らせて貰いますよ、と声掛け、注意喚起しておいた上でシャッター切った一枚。
ここではEVFのクロップ拡大モードで以て手前の小姐の目にピンを合わせていますが、40mmの準広角といえどf2開放での近距離撮影では被写界深度はかなり浅めで、前の小姐が極めてシャープに移っている反面、後方でしっかり目線くれて笑顔まで見せてくれている、これまた気立ても器量も良さげな小姐のご尊顔は後ボケと化してしまっています。

なお、前のカットでは背景での非点収差は気にならないレベルだったと思いますが、ここでは、背景の人達の着物の柄模様、小道具などに僅かながらグルグルが認められます。

biotar40mm_02a.jpg
四枚目は会場を徘徊している際、精緻な木彫りを施した山車が数珠繋ぎ状態で小休止していたので、ここでも、世話役各位にちょいと御免なさいよ、と至近距離まで近寄り、前後の山車を入れて撮ったカット。ピンは手前の山車の提灯の文字に合わせています。
ここでは、背後の山車も遠景の建物も流れや崩れみたいなそれほど見苦しいボケは生じていないように見受けられました。

biotar40mm_03.jpg
五枚目は会場を徘徊していたら、軽妙な笛や太鼓の音が突如、背後から響いて来たので振り返ってみたら、通り過ぎて来た山車の一台でアトラクションとも言える獅子舞をおっぱじめたので、これまた見物客が少ないのを良いことに最前列に歩み出て、激しく踊り狂う様をしっかりと撮らせて貰った一枚。
このカット、実は大変興味深い現象が出ていて、反射が殆ど無い獅子舞の緑の幌はそれこそ皺にひとつひとつから、それこそ布地の糸の一本一本まで見分けられそうな解像力で描写され、赤い光沢を湛えた獅子面もまた同様なのですが、おそらく被写界深度内に収まっている筈のおかめの白っぽい面は激しいフレアで殆どと云って良いほどテクスチャが潰れてしまっています。ここでノーコートレンズの弱点が出てしまったカンジです。

biotar40mm_04.jpg
六枚目は獅子舞が終わり、またしてもモデルさんになってくれそうな人達を探して会場を徘徊していたら、こちらの意図を察してか、目が合った瞬間に微笑み返し攻撃で応えてくれた金棒曳き四人衆が居たので、嬉しくなって、早速駆け寄り、一枚撮らしてね、とか適当に声掛けて、概ねみんなが笑ってこっち向いてくれた時にシャッター切ったカット。
ここではやはり正方形フォーマットの影響なのか、左から二番目の一番先に笑顔を返してくれた小姐にピンを合わせて撮ったら、やはり両脇の小姐が被写界深度から外れていることもあってか、結構、激しく流れてしまっています。

今回の感想としては、ノーコートで70歳以上の古玉が、最新のデジタルと組んでここまで働ける、ということに新鮮な驚きを禁じ得ませんでした。

実は、工房にはもう一本、Biotar4cmf2が有って、こちらは絞りリングがニッケルの軍用タイプと云われるタイプなのですが、これを工房主のムリを殆ど聞いてくれる、川崎八丁畷の協力工場にメンテナンスに出して、可能であれば、全群研磨後、コーティングしてくれるということなので、何処まで性能が上がるか楽しみにしています。

さて、来週はローテーションで行けば、工房附設秘宝館からのコレクション紹介となります、何が出るかはお楽しみ。

テーマ:日本の祭り - ジャンル:写真

  1. 2012/11/25(日) 21:13:18|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

内面反射もうまく生かせば

ソフトフォーカスっぽい仕上がりになりますね。

色彩も豊かに出ますし、周辺のぼやけ方がトイカメラにも見えますけど、アップで人物を撮らなければそんなに気になりませんね。

それにしても最近はロボットのレンズも流行りになるのでしょうか。大森の店でも案内が出てましたし、やはりツァイスってところがミソなんでしょうけれども。
  1. 2012/11/26(月) 07:33:31 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

ビオター40mmは、たしかブラック・コンタックスにも供給されていたような竹田某氏の記事があったような気がしましたが(45mmでしたっけ?)、珍しい作例だと思いました。

若干58mmf2ビオターの気配を感じながら拝見させて頂きましたが(4枚目のY~M?っぽい空の青みが手持ちの58mmにそっくり)、一枚目で立派な用い方の作例を見せられた感があります。これがシャープ過ぎると重たげな気がして、流し目の色気に淡いベールを、レンズから軽やかさを授かったようです。

同じようなレンズ構成でも、クセノンほどの青味感は感じそうもなく、また、クックのオーピック其の他との微妙な違いを探るのも楽しそうです。日本勢と比べても、ほんとうに色がよくでるものですね。

ビオター58mmはレンズ構成こそ40mmとは違うもののコーティングはあり、たしか絞ると色再現もよりシッカリし更にシャープさが増しますが、整備中のもう一本のビオター上がりともども、未見だった面白いレンズがビオター属の中に足されたようですね。

多彩で似たようなダブルガウス・タイプの微妙な再現違いが、貴重でありとても興味深いものでした。
  1. 2012/11/27(火) 05:12:29 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:内面反射もうまく生かせば

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
そうですね、下でG13さんも云われている通り、ちょっと目元キツめのお姐さんの流し目を下からムーディに撮るなんて特殊用途には、まさにうってつけのレンズかも知れません(笑)

しかし、或る意味、ミラーレスのショートフランジバック機ってのは新たなる沼の入口みたいなもんで、これまでは、距離計連動が構造上不可能と思えば、それほど気にもかけなかったレンズがどんどん使えるようになっちゃうのですから、よほど自制心持って暮らしていかないと大変なことになりそうです(苦笑)

次はアカレッテ/アカレレのスピゴットマウントとL39の距離計非連動カプラなど拵えようかと企んでいます。
  1. 2012/11/27(火) 23:56:17 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
このミラーレスという暗箱、まさにパンドラの函状態で今まで精密撮影には向かなかったレンズがどんどん実写に使えるようになり、開放からかなりピントを追い込んで使うという撮り方が出来るようになったので、まさに目からウロコで新しい作例がどんどんと出てくるのではないでしょうか。

そう、このレンズ、旧コンタックスの外爪マウントでリリースされていますが、生産量もかなり少なかったようで、オリジナルのCXマウントのものが出たら、最量販品?であるロボット用の10倍のプライスタグは覚悟しなければならないかもしれませんね。

確かに面白いですね、40mmf2クラスのオーピック型であれば、戦前戦中でも周辺まできっちりと写るような設計も可能だったはずですが、ご覧のように長辺両端部はだいたの撮影条件で大甘になってしまっています。

しかし、これが経年劣化、ないし伝世の過程での何処かでの整備不良によるものなのか、川崎市八丁畷の協力工場で完全OH+全面再研磨+コートの処理を受けたものを2ヶ月先に受け取ったら、是非、X-Pro1で限界性能を試してレポートしてみたいと考えています。

また、ミラーレスのEVFライブビューであれば、たいがいのレンズは使用可能なので、アカレッテ/アカレレをはじめ、面白そうなレンズの距離計非連動改造にも目を向けていきたいと思った次第です。
  1. 2012/11/28(水) 00:07:51 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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