
さて今宵のご紹介は週末の天候が不安定だったのと、新作レンズの制作に掛かり切りで撮りに行けなかったため、撮り貯めデータの中から、Signet80用の美麗な玉をX-Pro1で試写したものをお届け致します。
まずは簡単にレンズのプロフィールから。
この玉はコダックが大衆用カメラとして発売したSignet一族の最終且つ高級版、1958年発売のSignet80の広角用交換レンズです。
分解していないので、正確には断定出来ないですが、構成は3群4枚のテッサータイプか、3群3枚のトリプレットタイプと思われます。
因みにこのレンズ、コダック製なのにEktarとかEktanarとか名乗らせて貰えず、Signet Wideangle lensなんて継子みたいな扱いを受けていますが、これはSignet80発売当時はf2.8のものがEktanar銘を名乗ったのに対し、恐らく構成も開放値もスペックダウンして登場したこの玉はいかにもエコノミーモデルですよ♪とのイメージから、ブランドネームを名乗らなかったのではないかと思いました。
しかし、結構ずっしりとしっかりした作りのアルミ削り出しポリッシュ仕上げの鏡胴は大衆品には勿体無いくらいの品位で、改造しても使いたいと思わせるに充分な質感を備えていたのもまた事実です。
では早速、実写結果見て参りましょう。ロケ地は先のT2 Sonnar改Mと同じく今秋に豊洲で行われたオクトーバーフェス会場でした。カメラはX-Pro1、絞り優先AE、全コマ開放での撮影です。
一枚目はお馴染み、フェストの会場付近で案内パンフ兼折り畳み帽子を配っていた気立ての優しい小姐のお嬢さんです。
実は、こちらのカットの方が先に撮っていて、会場着いてすぐに目に付いたモデルさん候補だったので速攻声掛け、T2 Sonnarの方はまたしても帰りがけに撮ったカットだったのです。
当然のことながら、画面中央付近でピンの有っている小姐は十分シャープにしかもヌケが良く写っていて、ヘタすると、T2 Sonnarよりもこっちの方が好みである、などという意見も出てしかりですが、APS-Cの撮像素子でも四隅はかなり甘めです。

二枚目のカットは、そもそもららぽーと豊洲自体が元々は石川島造船所の跡地に出来た施設なので、周辺にはドック地代の残滓の如き遺構があちこちに残っています。
そこで会場を一旦通り抜け、今は上がったままになっている跳ね橋の全貌を、青空を背景に撮ってみた次第です。
このカットでは遠景ということもあり、四隅の崩れは殆ど認められません、またかなりの高反射率のオブジェではありましたが、フレアやゴーストが発生しなかったのはさすがコダック、と思いました。
かなりのピーカンでR-D1sにf2.8のレンズでは開放では完全に露出オーバーになってしまうような撮影条件でしたが、このX-Pro1、まだ来て早々、たぶん二回戦めくらいだったのではないかと思いますが、こういったシチュエーションでのアドヴァンテージをさりげなく見せつけ、M8サブ機の地位を脅かすカットとなったのも事実です。

三枚目のカットは跳ね橋のすぐ真横にある、真っ白にペイントされた錨の実物です。
これもクラシックと呼ばれるレンズには相当意地の悪い構図で、主題自体が真っ白く反射ししかも空には光る雲、背景は光る波間と来たら、フレア&ゴースト大会でEVFの中は大変な騒ぎだろうな・・・とか思いカメラを向けましたが、さにあらず、ファインダを覗きながら露出をちょこちょこっと回したら、ほーれこの通り、ほぼドンピシャの露出で撮れてしまうから、最新のデジタル機器は恐ろしいものです。

四枚目のカットは再び人物を撮らにゃならん!てな変な義務感に突き動かされ、カメラ2台を首と肩から提げ、目を千葉真一状態にして会場に舞い戻り、へへへ、丁度イイモデルさんが居ました居ましたとこの画面手前の小姐と背後で知ら~とした顔でビラを配る小姐がヒマをイイことに歓談中だったので、ちょっとレンズのテストしていますんで、お一方はモデルさん、もうお一方はボケ担当ってことでお願いします♪ってことで配置まで決めて撮らせて貰ったカットなのです。
ここでもモデルになってくれた小姐は充分シャープにクリアに写っていますが、あ~ら不思議、後ろのボケご担当の小姐の背景のハナミズキか何かの花はそれこそ時空の裂け目か何かに吸い込まれていくが如く見苦しい渦を生じてしまっています。

五枚目は渦が出たカットを撮ってしまったので会場をもう少し移動し、テストチャートみたいな構図で何か撮れないかと眺め回したところ、斜めに走る枝葉と水平方向に並ぶ看板といううってつけのシーンがあったので、ここで一枚撮ってみたカット。
ピンは一番手前の黄色いスケスケフラッグの文字に合わせましたが、近距離では、やはり画面周辺、しかも前ボケに当たる位置のものが激しく流れるような傾向が有るようです。
ただ、化繊か何かの黄色いスケスケフラッグの質感再現はT2 Sonnarにも勝るとも劣らずでした。

六枚目のカットはそろそろ隅田川ラインの水上バス、「卑弥呼」号が入港して来る時刻となったので、再び、会場海側のテラスを通り抜け、バースに向かいます。
埋立地を結ぶ道路橋が出来てしまったが故、ドックは役割を終え、このようなショッピングセンターやイベント広場となってしまいましたが、それでもかつての造船所の心意気か、こういった未来志向の船舶の停泊地になっており、またこれが決まり過ぎて、ついつい胸が高鳴るほどです。
そこでこのX-Pro1+Signet Wideangle Lens、R-D1s+T2 Sonnar、そしてスマホンの3台で釣瓶打ちに撮りまくりましたが、やはり露出レベルの問題で、ベストのカットはこのX-Pro1の組となったのです。
手前のさざ波立つ水面こそ崩れ気味ではありますが、秋の陽光を浴びてメタリックな輝きを惜しげもなく辺りに撒き散らすこの未来の船の雄姿を余すところ無く捉えてくれたのではないかと思います。

さて、来週こそは秘宝館から何か紹介しましょう。X-Pro1が有るので実写し易いですしね♪ 乞うご期待。
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テーマ:街の風景 - ジャンル:写真
- 2012/12/02(日) 22:46:08|
- Mマウント改造レンズ
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お疲れです。
自分のコダックエクターと比べると、順光でもあっさりした写りですね。
ただ、4枚目奥の女性のエプロンはコダックらしい赤で映ってますし、強烈な光であればコダックらしさが出るのかもしれませんねえ。
最初にレンズデータを出してないと、最近のレンズと勘違いしそうなすっきりあっさり系の写りなのに、製造が古いのは驚きです。
X-Pro1の影響もあるのですかねえ?
- 2012/12/04(火) 23:14:11 |
- URL |
- 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
- [ 編集]
出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
確かに今回は極力破綻の少ない無難なカットを選って載せたので、あまりコダックらしさが強調出来なかったかも知れません。
しかし、このX-Pro1というカメラ、ミラーレスという範疇でひとくくりに出来ない、かなりのポテンシャルを秘めた21世紀の暗箱であるような気がしてきました。
距離計連動機構を考えなくても良いので、これからレンズシャッター機の交換レンズとMマウントの簡易アダプタを作って、どんどん銘玉を発掘していきたいとも思いました。
ステーブルとか、エナとか、ノンライツの隠れた銘玉が次々発見出来るかもしれませんね♪
- 2012/12/04(火) 23:21:29 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
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