深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Classic but good enough~Canon FD 35mmf2 S.S.C.~

FD35mmf2.jpg
【撮影データ】カメラ:X-Pro1 絞り優先AE ロケ地:浅草 全コマ開放
さて、今宵のご紹介は、意表を突いてSLR用の玉行ってみます(笑)
この草餅色のボディにくっついているFD35mmf2SSCを実のところX-Pro1にアダプタ経由くっつけて浅草でちゃちゃっと試写したものです。

このレンズは1973年にキャノンが近距離での非点収差補正用にフローティング機構を初めて採用したという技術的にもエポックメーキング的な製品でこの世代では世界最先端の技術であったとも言われている、カラーバランスをレンズシステム内で統一したSSC(スーパースペクトラムコーティング)技術を投入した、まさに非球面や人造蛍石を採用していないだけで、実質的にはL規格の赤鉢巻製品群に匹敵する性能を有するとも云われていた、隠れた銘玉
です。構成は8群9枚のレトロフォキュタイプです。
ではさっそく実写結果を見て参りましょう。

FD35mmf2_01.jpg
まず一枚目は浅草が誇る都内下町屈指の美女、現代の笠森おせんとも言うべき、仲見世のみたらし団子屋の看板娘、沢尻メイサ改めF嬢です。
今回は広角レンズなので、遠巻きに知らっと撮って立ち去るという、一撃離脱戦法は使えないので、正攻法で、彼女が甘酒販売担当なのを良いことに、100円で一杯買って、あ、ちょっと持ってるとこ一枚撮らしてね、え、あたしですか?そう、あなたよ、あなた!!とか緩いトークの後、すかさず撮ったカットです。
このエキゾチックな笑顔、たまりませんね・・・でも背景の看板というか、蛍光灯でこれ見よがしに光るオブジェが有るので、人工的な逆光状態になってしまっていて角度的にはあまり宜しくありません。それでもこのおん年39歳のレンズの今なお優秀なコ-ティングはゴーストもフレアも皆無でこの屈指の美小姐のお姿を在りのまま捉えてくれたのでした。

FD35mmf2_02.jpg
二枚目は仲見世を奥まで進み、宝蔵門の前までやって来て、視界が開けたので、無限での宝蔵門撮影です。
このレンズ、F2の開放値を誇りながら、意外と被写界深度広く、このくらいの距離であれば、前ボケとなる筈の打出の小槌みたいな空中看板もくっきりとは言えないまでも概ね原型を遺した状態で捉えられています。
それにしても、カリカリこそしていないものの、無限遠でのチタン瓦のシャープな描写、赤系統のヌケの良い発色、APS-Cフォーマットながら四隅までの破綻無き画質均質性、このレンズの下馬評が単なる思い入れとか、思い込みと云ったものではないことを感じさせてくれます。

FD35mmf2_03.jpg
三枚目は境内でのいつもの定点撮影スポット、おみくじ頒布所です。
ここで、中国人一家がおみくじをひくようなので、母親と思しき妙齢の女性にカメラを指差し、フォトOK?と聞いてみたら、ウンウンと首を縦に振って笑ってくれたので、この眼鏡小姐のおみくじ初体験?を物陰から狙います。
ところがこの御籤箱の中に親の仇でも居るかの如く、シェゲナベエィビー♪とばかり腕と一緒に頭まで振ってくれちゃっているので、僅かにブレが残っているようです。
それでも、小姐の黒のダウンジャケット、手前のステンレスの板、周囲の柱や童子の赤や緑といった様々な色彩を素晴らしいバランスで描き出しています。

FD35mmf2_04.jpg
四枚目は本堂直前にあるご焼香場です。
ここで、線香の盛大な煙越しに人物を撮ってみたらどうなるか?と思い実験的に一枚撮ってみました。
その結果、ご覧の通り、人物の衣服のディティールまで良く捉えています。
向かって右の小姐の赤いマフラーは言うまででもなく左の小姐のらくだ色のジャケットも煙越しながら良く質感を捉えていると思いました。
ただ、低照度になると急に動きには弱くなるミラーレスの特徴で、凄まじい勢いで煙を体い擦り付ける手の動きには追従出来ず、盛大な被写体ブレ大会になってしまってます。手前の人の手のような色の残像も工房主の横の極小姐連れのおっさんの年老いた手が特別出演したものです。

FD35mmf2_05.jpg
五枚目は陽も沈みかけた頃、得物を待ち構えていた手汲み井戸の傍らから、宝蔵門越しに五重塔を眺めてみたら、ライトアップの光と残照がイイ案配でミックスライトになって素晴らしいコントラストを見せてくれていたので、近くまで歩み寄り、宝蔵門の軒下越しに五重塔を撮ったものです。
ただ、当初の意図からはちょっと変節し、五重塔よりも、宝蔵門の軒下の桟やら構造物の描き出す陰影の方が何故かしら美しく感じられたので、ピンは手前の軒桟に合わせ、五重塔はバックとして配置しました。
ここでも、このレンズの端正な写りに心動かされました。
X-Pro1の3インチそこそこの背面液晶で見ても、この軒下の造形美と劇的なコントラストの描写は惹き付けられるものがあり、やはり、カメラ自体は既に過去のものとなってもFDシリーズのSSCラインナップはまだまだデジタル時代になっても生き永らえる素質を持った普遍的銘玉なのではないかと思いました。

今回の感想としては、う~ん、この個体をX-Pro1で試写して噂に違わぬ性能であったら、自分で改造してEOS用EFマウント化してしまおう、とか思っていましたが、もう一本買ってからにしようと思いました。

X-Pro1のAPS-Cフォーマットの写りが、EOS1DsMKIIの全紙全倍まで伸ばせるフルサイズの怒涛の高性能と組んだらどうなるか?・・・今考えるだけでもワクワクもんです。打倒、Rズミクロン35mmf2、打倒ディスタゴン35mmf2T*

さて次回のご紹介は何にしようかな?来週までに考えておきます。乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2012/12/09(日) 22:42:10|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

こんな手があったとは。

お疲れです。
只今旅の空です。
それはともかく、画像を見せてもらった時にはSSCでこんなにきれいなのかと驚きました。
ミラーレス機はレンズがなかなか揃わないのが惜しいところですが、手振れ防止が必要な望遠レンズ以外であればレンズアダプターを使って往年の名レンズを使うのもありですね。マニュアル撮影になりますが、慣れればAFより早く撮れますし。
浅草の写真ですがいずれも色がスッキリ爽やか系ですね。これがキヤノンSSCの方向性なのでしょうか。
コダック系統のような濃厚な色合いとは異なりますが、目に優しい色合いにも見えました。
ニコンのAiーsレンズやミノルタのMDレンズだったらどう映るのか楽しみです。その前に家にあるcマウントレンズももっと使わないと・・・。
  1. 2012/12/11(火) 23:11:25 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:こんな手があったとは。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

このX-Pro1によるFD/SSCの発色、線描写等は、シネレンズと較べてもデジ臭くないナチュラルなもので、実のところ、ブログ書きながら自分でも感心してました。

そうなんですねぇ、ミラーレス機を買うってことは、その極端に短いフランジバックを活かして、マウントアダプタ経由のレンズ遊びの世界をどんどん広げて行くってことなんでしょうね。
もちろん、即写性ではまだまだM8やR-D1sの二重像合致式の電光石火の合焦には敵わないまでも、レンズの透過像をそのまま見て撮る醍醐味といい、この存在はまた新たな水平線を切り拓いてくれたようなものです。

しかし、反対の意味では、マウントや距離計の制約があって、野放図にレンズ漁りの沼に入らなかったのが、フルサイズの手頃なのでも出たら、みんなズブズブ沼の底・・・ですね(苦笑)
  1. 2012/12/11(火) 23:36:06 |
  2. URL |
  3. charley944 #lICd2zaU
  4. [ 編集]

OD色

OD色のキャノンボデー懐かしいですねー
自衛隊の仕事していた時は全ての機材この色に塗りました。
海自向け2000mm反射式の赤外線撮影用のレンズ納入時にもこの色指定でしたがさすがにレンズ鏡筒は塗りませんでしたが、レンズ架台や操作装置はこの色でした、
陸自用の有線ミサイルの制御用双眼鏡の三脚もこの色でした、

今思うに色々な物を製作や開発して来たものです。

  1. 2013/01/09(水) 18:01:23 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

謹賀新年

この正月に、ブリーチロックFDの50mmf1.4でSSCを見つけました。

じつは同50mmでもSSC刻印が無い初期モノを所有していたところ、今回発見したのは掲載品35mmf2SSCと同様のSSC刻印でした。

最後玉が、旧FDのマゼンタコートがSSCだとパープルからグリーンへのコートとして反射します。

重量とヘリコイドの重さで敬遠しがちなブリーチロックのレンズですが、今回掲載の画像でも色安定した感を得るようですね。

(アサカメカメラ診断室では、1971年CANON・旧F1テスト時に、FD50㎜f1.4no,14228が開放にてJIS/条線3本線で開放解像力200本を達成。MTFは不明ながら、こうしたものが数千円で購入できるのも驚きです。)



  1. 2013/01/10(木) 12:13:31 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:OD色

hiroさん
有難うございます。

出た時はとてもインパクト有った、この草餅色のF1も既に今年で40年選手なんですよね・・・

小生も実家近くの富士重工関連施設が戦後賠償施設だったか何かでしょっちゅう進駐軍の兵隊さんを街中で見かけましたし、駅前でジープから降りた将校にハーシーズのチョコを貰ったこともあり、また中学くらいでは、相馬ヶ原や熊谷といった自衛隊基地関連もあったので、結構、お祭りなどで兵器展示など目にしたり、戦車の体験登場なんかやったことあるので、ノスタルジックな色でもあるのです。
  1. 2013/01/10(木) 23:13:30 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Re:謹賀新年

treizieme ordre さん
有難うございます。
見捨てられたマウントかつ、ボディがフィルム時代のF1系統以外しかまともに使えないということで、FD、NFD系列はその光学系の性能の高さに比して、不当に低い評価に甘んじているとしか云い様がないと思います。

しかし・・・某所ではFDをEOSマウントに改造する試みも行ってますし、その結果は栃木で実証済みですし、これがまたNEX-9でフルサイズになれば、アダプタ経由、ライカMデジと同様にフルサイズでこの往年の高性能の銘玉シリーズが使えるようになるので、早晩、ライカの広角系(M,Rとも)同様、市中から払底していくのではないでしょうか・・・
  1. 2013/01/10(木) 23:18:43 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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