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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Are you lucky now?~Fujimoto50mmf2.8mod.M~

Fujimoto50mm.jpg
【撮影データ】カメラ:EPSON R-D1s 絞り優先AE、全コマ開放、ロケ地:中野~浅草~新宿
さて、今宵のご紹介は工房作品からとなります。
このレンズ、実は新宿の中古カメラ店で2本だけ出ていたのですが、素性は不明、今まで見たこともない鏡胴のデザイン、硝質、コーティングということで、丸々2本買って帰ってきちゃったってことです。

銘板からすれば、"Lucky"の商標で有名な藤本写真工業の製品にも思えますが、引伸用でこんなデザインのものは最近の用品カタログにも載っていなかったし、何らかの特殊産業用のデッドストックが何かの拍子で市中に放出されたと見るべきなのかも知れません。

ところが・・・買って帰ったはイイものの、フランジバックというか、バックフォーカスが異様に短く、一番カンタンお手軽なニコンSマウントではとても無限が出ず、かといって、ライカマウントでもマウント金具の座面から1mmもない位置にレンズ後端が来る上、後玉枠金具が結構太いので、マウント内部に入れる前提でヘリコイドを装着するという小径の広角玉での常套手段も使えません。

そこで本業の堅気のリーマン稼業も忙しかったため、比較的加工が容易な玉だけちゃっちゃっとやって、コイツらは年の暮、師走まで防湿コンテナの中で長い眠りに就いていたというワケです。

しかし、このディスク型ヘリコイドユニットを数個いっぺんに買えたので、失敗して元々、とヘリコの底板を測りながら削って、無限を見ていくという手法で強度ギリギリまで削ったマウント金物と、新たに真鍮丸インゴットから削り出し、1mmと0.5mmの2ピッチのネジ切りの技術を駆使して新造したリングスペーサでもって、何とかこのように実装に成功したという次第。

もう一本、同じレンズヘッド残ってますが、もうこんな面倒な加工は当面やりたくはありません(笑)

なお、このレンズ、焦点距離が47mm強しかないことが加工段階で判ったので、緩い傾斜カムを切ってMマウントレンズとしています。

分解などしていないので、構成については、絞り位置とスリット光での推測によれば、4群6枚の普通のオーピック型です。

では、早速、実写例を見ていきましょう。
FMAO2_01.jpg
一枚目は、中野の某専門量販店にX-Pro1用のアダプタを調達しに行った帰り、夕刻の約束まではまだ時間が余っていたので、路地裏を撮ってみたうちの一枚で、良くある"XX漁港直送"とか"XX水産"ってな系統のお店に吊る下がっていた、浮き玉ガラスを最近接付近で撮ってみたもの。

ガラス玉はカリカリではないものの、充分なシャープネス、コントラストで写っていて、問題なく及第点ですが、寧ろ、たまたま背後を通りかかった、山高帽にコートの中年男性の姿が、印象派の油彩のように滲んだようなボケ方になっているのが面白かったと思います。

FMAO2_02.jpg
二枚目は同じく中野の路地裏で、適当な被写体が来たら、シャッター押して、街の一部としてしまえ、という、少し乱暴ですが、純粋なスナップの手法でチャンスを待っていたら、ちょうど、地元の女子高生がカメラを構える工房主の横を通り過ぎて行ったので、これは、後姿を撮られることに対する黙認の意思表示有りだな、と勝手に判断し、エイヤっとシャッター切ったものです。

ピンは左側の女子高生小姐のマフラーの下部のひらひらに合わせていますが、ここでも、カリカリは感じさせないものの、マフラー、そしてその下のウール製と思しき白セーターの生地の質感を良く捉えていると思います。

ただ、ここでは背景が大変なことになっていて、非点収差から、口径食まで入り乱れて、ぐるぐるのぐちゃぐちゃになりかけているのが、少々残念ではありました。

FMAO2_03.jpg
三枚目は時間も下り、浅草で夕暮の西空がとてもきれいな夕焼けだったので、伝法院通りの街路灯、店舗の灯火とのミックスライトで人物のシルエットを撮ったら面白かろう、てな魂胆でシャッター切ったカットです。

このカットではピンは前行く2名の小姐の持つ白い紙袋を利用して二重像を合わせたのですが、いやはや、この低照度域でも、紙袋に印字された文字も左側のラクダ色の装束の小姐の外套の皺も、こっち向いて歩いてくる眼鏡のヲヤヂさんの表情も、なかなか良く捉えています。

また遠景となった菫色の空の色も、セミシルエットと化したROXビルの窓の明かりに映え、とても雰囲気有るカットに仕上がったのではないかと思いました。

FMAO2_04.jpg
四枚目はまた時間が飛んで、仲間内の呑み会の後、酔い醒ましを兼ねて、参宮橋から代々木、サザンテラス経由、新宿三丁目へ至るルートで撮ったカットのうち一枚。

ちょうどサザンテラスのハンズ側へ亘る跨線橋の手前辺りのイルミネーションがとてもキレイだったので、ISO800まで上げ、撮ってみたものです。

ピンは手前の立木に巻かれたLEDの灯りで二重像を合わせていますが、それほどコマ収差の悪さが目立たないのと、背景のイルミも流れは極僅かに認められるものの、点光源がグズグズというようなダメダメレンズの特徴とまではなっていないようです。

FMAO2_05.jpg
五枚目は跨線橋をハンズ側に渡り切ったところで設置されていた、レインボーイルミネーションの様子を撮ってみたものです。

ここでも、人っ子ひとりいない無人の荒野状態で妖しく光る七色のイルミを撮っても、面白みはないので、適当な通行人が通り過ぎるのを待っての撮影です。

ピンは一番手前のオレンジのイルミに置きピンで、ちょうど人物がシルエットになる位置で呼吸を合わせ、シャッターを切ったのがこのカット。

当然、人物には合焦していませんが、シャープかつクリアに写っているオレンジの光源にいたいけな小姐の甘めのシルエットが写り込んでいる構図になっていて、これはこれで面白い構図になったのではないかと自分では思った
次第です。

FMAO2_06.jpg
六枚目はサザンテラスを通り抜け、東口の大通りから新宿三丁目の駅まで歩く途中、新しく出来た"ビックロ"の建物の白い壁と支柱、そしてその光を受けた銀杏の黄色い葉が如何にも新宿の初冬というカンジで風情が有ったので、一枚撮ってみたカット。

ここでは、「ユニクロ」の看板が有るカーテンヲールの次の支柱のエッヂにピンを置いての撮影となったことから、人物も、銀杏の葉も前ボケとなっていますが、意外にナチュラルなボケ方でこれはこれで街撮りの表現法としてはアリなのかも知れない、と思った次第。

もちろん、煌々と輝く照明に照らされた白いカーテンヲール素材の表面にも、ヘンなフレアやゴーストを全く発生させていないところは、新しいレンズだけあってさすがだと思いました。

今回の感想としては、一見、食べられないような素材でも手間隙、そして愛情を掛ければ、美味しい料理になる・・・そんなカンジでありました。

さて、次回は一週空けて、いよいよ年内最後の更新、たぶん、何処か南の島からのレポートになるのではないかと思います、乞うご期待!!
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テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2012/12/17(月) 22:12:03|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

何だかこう化けそうで化けなそうで。

お疲れです。
現物をこの前の忘年会で見させていただきましたが、小ぶりな割に良く映るなあと言うのが第一印象でした。

ただ、今回掲示した写真を見ると、F4とかF5.6くらいを標準で使った方が良いのかなと言う気も致します。

いずれにせよ経過観察って感じで、次の撮影会の時に振り回してきて初めて真価が見えるのかもしれませんねえ。
  1. 2012/12/18(火) 19:34:24 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:何だかこう化けそうで化けなそうで。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
う~ん、今回のレンズというか、実写例はあまりお気に召さなかったようですな・・・何せ、工房主にとっちゃ、開放で使えないレンズとは、是即ち産廃以外の何物でもないですから(苦笑)

実際には、距離計連動カムのプロファイルがピークから微妙にズレてて、ミラ-レスでは良く写った気がしたが、距離計連動機では中間距離域で何か甘いカンジが・・・という現象を惹起したのだと思います。

ま、明後日の出発には間に合わないので、今回の西方浄土ツアーのスタメンからは外しますが、新春の川越ではM8と組んで大化けさせる予定なんで、そこんとこヨロシコです♪
  1. 2012/12/20(木) 23:58:28 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

面白い

面白いレンズですね、
発色は私好みですが良く探しますね?
マウントしていないほうのレンズよければ譲って欲しいぐらいです。
非距離計連動でL39マウントにしておくのも良いと思いますよ。
  1. 2012/12/22(土) 14:53:31 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

一・二枚目は、最初はX-pro1で撮影したと思っていましたが、RD-1とは意外な感じでした。
けっこうクリアーなところが好感もてます。

二枚目の白も、わたしも好みです。

夜間撮影は特殊照明でよくわかりませんが、f2,8というのはあまり夜間向きでないかもしれませんね。

ラッキーは、メオプタの35mm専用引き伸ばし機もありましたし、カラー用の70タイプ(6x7まで?)散光式の引き伸ばし機もありましたし、意外と凝った製品も懐かしいです。(現行でもあるかもしれませんね。)

フジモト・ラッキー・トキナーは、最近ではケンコー・トキナー銘の単焦点レンズなど、昔とちがってうるさ型のマニアも納得させるような商品も展開しています。

60年代頃のラッキー・トキナーは、たしか開放性能は価格相応なんてありましたが、かつては球面ズミルクス35mmf1,4だってカメ毎でひどい批評でしたし、好んでわたしも中古市場でLucky-Tokina (35mmf2,8)M42マウントで探し出しました。まあ、素性はライツとは全く違うかもしれませんが。


今回のレンズはフランジバックの件を伺うと、工業用なのでしょうか?
一枚目についてなら、距離が適当なのか非常に良い好印象ですが・・・。
  1. 2012/12/24(月) 01:13:26 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:面白い

hiroさん
有難うございます。
なかなか面白い玉ですよね。
なかなかシャープなのにカリカリしていないですし、このカラーバランスとコントラストは、クラカメ好きにも、モダンレンズ好きにも共に好ましいレベルではないかと思いますが・・・
良いですよ、新年の川越ツアーの際、未使用の方の玉を進呈してしまいましょう。
これぞ新春お年玉!?
  1. 2012/12/26(水) 00:19:48 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
そうですね、R-D1sはもはや実質的に新作レンズのテストベッドと化し、作品作りからは引退同然なのですが、まだまだその実力たるや大したもので、今でもレンズとの相性さえよければ、はっとするような画を吐き出すことがままあります。

たしかに夜景はちょいと悪乗りし過ぎた感なきにしもあらずではありますが、その真価はやはり至近距離での対人戦で発揮されるのではないかと考えます。

ついては、貴兄もぜひ、NEX-6か X-E1、或いはM-Eでも新調の上、川越ツアーに参加され、ご自分で試食してみて、評価を下してくださいますよう、ご案内申し上げます(笑)
  1. 2012/12/26(水) 00:31:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

イヤーうれしいなー

イヤーうれしいなー
新年の川越ツアー欠席出来無い状態になりました。
私もインダスターのM42ヘリコも有るので非距離計L39マウント化にチャレンジしますよ。
  1. 2012/12/26(水) 14:04:35 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

Re:イヤーうれしいなー

hiroさん
再びのコメント深謝です。
なかなか手ごわい"お年玉"ですが、どうか美味しく調理してやって下さいな(笑)
  1. 2012/12/28(金) 11:52:50 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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