深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

無印良品之王~Cosina55mmf1.2PK~

さて、今宵のご紹介は秘宝館からの珍品、Cosina55mmf1.2MCです。

マルチコートも美しい、5群7枚と思われる変型プラナータイプのKマウントレンズです。

このところの株高で気も緩み、ICSで買った某レンズの余勢を駆って、またしても、その翌週、新宿地区の外れの某店で特選品コーナーに並んでいたのをイケナイ、イケナイとか頭では理解しつつも、ついつい、マルチコートの大口径単玉ということで、手が出て、正気に戻った時はクレジットカードのサインを済ませていた、という曰く因縁有りの恐ろしいブツです(笑)

この玉、マニアの間ではそこそこ有名で、やれ富岡光学がコシナの為にOEM供給したとか、やれその逆だとか、さまざまなバリエーションがモノコート時代から有ったために、出自が色々と取り沙汰されていたようです。
本当のところは判らないですが、コートや硝材、そしてマウントの黄色っぽいクロムメッキの材質などから判断するに、製造したのはコシナと見て間違いないと思います。ただ、設計まではどうかと言うとこれは甚だ心許なく、やはり富岡光学の関与を疑わざるを得ないようです。

なお、発売はITバブルに沸く2000年前後のようで、お値段は2万円前後という破格値でしたが、何せ、ネームバリュ-が全く無い会社のf1.2mなど好き好んで買おうという好事家もそれほど居よう筈もなく、確かに2000年前後に某新宿の冥府魔道逝きの地図のお店でアウトレットとかいう名目で2万円もしない価格で叩き売られていて、自分も含め誰も手を出さず、暫く積まれたまま、売れ残っていたという記憶がありました。

ただ、年をとるとは恐ろしいもので、段々と人の手を出さないものにも手を出したくなってしまうのが人情というもので、10年以上前には見向きもしなかった無銘の玉を今回、新品同様で安かったこともあって、ついつい買ってしまった、ということです。

では、早速実写例見て参りましょう。ロケ地は金曜日の丸の内二丁目、パークビル周辺です。EOS20Dでの絞り優先AE、開放撮影です。

cosiha55.jpg

まず一枚目のカットですが、パークビル敷地内庭園の真鍮製と思しきキャストのオブヂェです。
美術館が併設されているだけあって、パークビル敷地内のミニ庭園にはなかなか趣き深い彫刻というかオブヂェがそこここに安置されています。
まずは木陰で真鍮の地肌色を鈍く輝かせている、この抽象彫刻みたいなものを撮りながら、いかに背景の人物がボケるものか試したものです。
ピンは手前のエッヂ部に合わせましたが、オブヂェの後ろ半分は既にボケと化していますし、10m近く背後の人物達はもうモディリアーニの抽象画の背景を地で行く様子となりました。う~ん、アートしているレンズだ!!

cosina55mm_001.jpg

二枚目のカットですがパークビルアネックスの1階皇居側に或る花屋さんの店先に色とりどりの花が可憐さや絢爛さで我こそはオンリーワン!とか咲き誇っていたのを目にして、思わず早足で歩み寄って、店の人に「キレイですね、レンズテスト用に一枚撮らせて戴いて宜しゅうござるか」などと声をかけ、衆人環視のもと、かなりこっ恥ずかしい思いで撮ったもの。
がしかし、大口径単玉の威力は眉目麗しい小姐のポートレートと花写真でこそ活かされる、とか確か大久保の人間国宝?だったかが云われてましたが、まさに浅い被写界深度がヴィジュアル的に見て取れます。
cosina55mm_002.jpg

三枚目のカットは丸の内仲通りまで出て、三菱地所が有り余るお金にモノ云わせて、常に生花などで飾り立てているこの通りの歩道にあるプランターの、かつてハウステンボスで見かけた、オランダ人にしては小柄で均整取れた容姿のチューリップ娘を彷彿とさせるような薄桃色のチューリップを最近接付近で撮って、背景のボケ具合いを確かめてみたもの。
今さらここで書くのもなんですが、この55mmf1.2というレンズ、一眼レフのファインダ越しに見ると、全く日常とは異なった視覚感が得られて、とても不可思議なキブンになります。
敢えて名づければ大口径酔いとでも云うべきか・・・要は視野倍率は肉眼とそれほど大差ないのに、被写界深度が極度に狭くなり、人間の視野であれば、オフフォーカスの部位は意識の外なので、具体的に知覚することはあまり無いのですが、ここでは、ほぉ・・・こんなにボケているのか?とかまさに不思議体験モノなのです。
肝心のチューリップは最強の50mmf1.2とも目されるCanon NFD50mmf1.2Lのように非球面+フローティングで完全武装している玉には遠く及ばないですが、それでもこれだけ反射率高い被写体に僅かな上品なフレアを纏わせているだけというのも面白いと思います。
cosina55mm_003.jpg

四枚目のカットは同じく丸の内仲通りに面した素敵なオープンカフェの屋外席の仕切り板を撮らせて貰ったものです。
向かって右手奥行き方向斜めに置かれた板の「lia」の辺りのピンを置いての撮影でしたが、これは個人的には今回のベストショットではないかと思いました。
要は、ビジネス街のど真ん中に置かれた、英字の記されたキッチュなオブジェ、肉眼で見れば、ただそれだけ、次の瞬間にはもはや知覚の外へ押し出されてしまうような存在なのでしょうが、この魔法の眼にかかれば、千代田区丸ノ内とミラノが時空のトンネルで通じたかの如き雰囲気で描写し、記録してくれたのです。
cosina55mm_004.jpg

五枚目のカットですが、このカフェの屋外席のお客さんに目を転じたら、ファンダの中の幻想が実体化したのではあるまいし、外国人の若者が極めて日常的にランチを摂り、パートナー達と楽しく語らい合っていました。
そこで、まぁ、半逆光だし、観光客も記念撮影しているとこだから・・・やっちゃえ♪ってことで、いつものRFでの常套手段、辻斬りスナップ宜しく、目測で距離指標をだいたい合わせ、一瞬のうちにファインダで構図とピンの調整やってシャッター切ったもの。
確かに陽光を反射する面ではフレアが認められますが、それでも、このEOS20Dのマット面だけでの測距でここまで男性のブロンズヘアのテクスチャを捉えるのは、レンズの性能の良さなのではないでしょうか。
cosina55mm_005.jpg

六枚目のカットは丸の内で数少ないオリヂナルの建築遺産、何処かの新築の煉瓦造りなんちゃって洋館とは、風格が段違いの明治生命本館の宮城側の街頭を撮ってみたもの。
このレンズ、逆光には少々弱いとの下馬評もあったので、画面の大部分に薄曇りの明るい空を入れての撮影ですが、なかなかどうして、雰囲気ある上がりになったのではないでしょうか。
ここでは、シャッタースピードは8000分の1秒でもオーバー気味でしたが、例えば、夕暮時に西の空が茜色に染まりかけた頃に撮ったら、レンズの性格をもっと引き出して上げられたかも知れません。
cosina55mm_006.jpg

今回の感想ですが、このレンズしかり、先週から大活躍のEOS20Dしかり、昔、見向きもしなかった、或いは、もっと良いと思う物に飛びついてしまい、見送ったものの良さに改めて気付かされることが多いということです。

何故か旅に出たくなりましたね、この昼も夜も精一杯働いてくれる無銘の高性能レンズと共に春の陽気に浮かされ、知らぬ地を彷徨うのも面白いかも知れません。

さて来週は工房作品行ってみましょう。乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2013/03/10(日) 17:40:19|
  2. 深川秘宝館
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  4. | コメント:4
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コメント

素性さえちゃんと表明していれば

売れた代物かもしれませんね。

コシナの2000年頃ですと、ふぉくとレンダーブランドでカラースコパー35mmのPとかC、ノクトン50mm1.5を売っていたころですから、宣伝のやり方さえ間違えなければ、あの頃のライカブームに乗っかるような形で、Kマウント→LorMマウントアダプターで買う人もいたのではないかなあと。

やはり良いもの作っても宣伝がうまくないとユーザーへのアピールはうまく行かないのかもしれません。

5枚目の写真は丸の内だと判っていても情報の取り方がうまいのか、アメリカとかヨーロッパの街角の一角と言っても通じそうですね。

自分も雪解け風景ばかり撮ってないで、こういう情景もまた撮らないとなあ。
  1. 2013/03/12(火) 22:41:46 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

ご無沙汰してます。
すっかり雪の中に埋まってました・・・・笑

このレンズは発売当初から知ってますが
50mmは、あまり使っていなかった時期でしたので
欲しいとは思いませんでした。

写りを見てみると
無難な写りで優秀ですね。
ボケですがF1.2の割にはボケ方が少なくて
癖も無くて、私には使いこなせない気がします・・・・笑
  1. 2013/03/14(木) 10:23:19 |
  2. URL |
  3. やまがた #-
  4. [ 編集]

Re:素性さえちゃんと表明していれば

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
ホント、勿体ないですよね・・・
しかし、ブランドビルディングというマーケティングの入門書にさえ書いてあるような手口は、なかなか面白い話しで、一旦、ブランド力を持ってしまえば、お金を掛けて製品(作品?)作っても、更にそれ以上の高利潤で売れて、キャッシュフローが潤沢になるからそれをマーケティングと製品開発に回すことで勝ち続けていく・・・まさに今のライカ社の姿そのものです。
一方、どんなに良いものを作っても、誰も手を出さないんぢゃ、コストをカバーするくらいの値付けすら許されないこととなり、高いものを作ったって売れない、ぢゃ安かろう悪かろうでしのぎ、とにかくキャッシュインだけ確保する・・・このマーケティングは日常品などの消費財ならともかく、趣味のための不要不急の出費には不向きですよね。 ましてや安いだけのマーケットでは果てしない値下げの消耗戦が待っているだけですから。

そこで、コシナは考えたんですな、ならばブランドを買っちまえ、京セラがやったみたいに・・・

片や小回り効かない上に部門業績が会計期間単位に厳しく問われる大企業、片や社長の趣味も含めかなり自由度の高いマーケティングの出来る中小企業・・・これがZeissブランドが同じ日本国内企業間で移動した理由ではないでしょうか。

それにしても、このレンズのコスパフォは驚異的です。うちの職場で一気に3名がデジ一眼を欲しくなってしまったくらいですから・・・内需拡大のため、もう一回ラインアップして、コシナさん!!
  1. 2013/03/14(木) 22:41:17 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

やまがたさん
お、やっと冬眠から覚めましたか・・・笑

さて、冗談はさておき、やはり貴兄もこのレンズ発売当時から知っておられましたか。

小生の場合は無銘メーカー且つ、20mmf3.5のFマウント版だかが1万円そこそこで叩き売られていたメーカーで、しかもお値段がニコン、アサペンタの半分以下、パチモンメーカーとして毛嫌いしていたリコーリケノンの兄弟レンズという風評が有っては手を出そう筈もありません、今と違い、大メーカー以外はまともなレンズなど作れっこない、と信じ込んでいたからでした。

でも、EOS20Dとのマッチングも多分に有ろうかとは思いますが、この意外とすっきりした写り、気に入ってます。

もう一本、凄いf1.2も先週仕入れていますが、さすがにそいつは、EOSマウント化出来なかったので、FD、FL兼用アダプタ経由、X-Pro1で試してみませう。

今年のブームは大口径単玉ですよ♪ まだまだ欲しいf1.2のレンズ結構有るんですよね。

やまがたさんも、遠洋まぐろ漁船だか、タコ部屋だかから開放されたら、また都内で一緒にヘンなレンズくっ付けて渋めの写真撮って遊びましょうよ☆
  1. 2013/03/14(木) 22:50:53 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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