深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Combat eye returns~Biotar40mmf2 mod.MII~

Biotar40mmf2II.jpg
さて、今宵のご紹介は予告通り、工房の改造作品いきます。
登場したのは、Biotar40mmf2、モデルとしては二回目となりますが、前回とは別の個体で、元々の成り立ちも、仕様も全くの別物で、従って描写も全く異なるため、敢えてネタとして温存していたという次第。

このレンズ元々は鏡胴のパーツの一部がニッケルメッキになっていて、ローレットなど細部ももう一本の個体と違っていて、どうやら、大東亜戦争末期に独空軍用として作られた個体のようです。

実はこの個体の方が工房に入ったのはずっと先だったのですが、あまりに曇りが酷かったので、分解してクリーニングしようとしたところ、急な擂鉢状の絞りユニットしかり、パスルのようなリング連動部の結合しかり、直すのが面倒臭くなっちゃったので、ずっとパーツを透明ビニール袋に入れ、目に付くところに置いておきました。

それから幾星霜、或る時、ふと閃くものが有って、工房主の頼みならたいがいのことは聞いてくれる、川崎八丁畷の協力工場さんに、「分解はしておいたので、研磨再コートと調整、組み立てお願い」とか厚かましいお願いしたら、破格の工賃で上げてもらったので、あまりの仕上げの良さに感銘し、急遽、Mマウント非距離計連動仕様で改造したという次第です。

では早速実写見ていきましょう。カメラはX-Pro1 絞り優先AE 全コマ開放、ロケ地は上野恩賜公園です。

Biotar40mmf2II_001.jpg
まず一枚目のカットですが、公園の北の外れ、国立博物館近くの大きな人工池には噴水がありますが、その池の畔の縁石みたいなところは腰掛けて、世間話したり愛を囁いたり、色んな語らいの場になっていると思うのですが、思いつめたような表情のいたいけな童子2名が夕凪に鏡の如く静まり返った水面を眺め、人生の来し方行く末を思ってしんみりと語らい合っていたので、しら~っと一枚戴いたもの。

今回、この殆ど逆光みたいなカットを狙ったのは、オリジナルとは異なる"T"コート相当のコーティングを全面に施しているので、もう一本のノーコートモデルなら真っ白けかゴースト大会になりかねない構図をどう写しとれるのかを試したかったからです。

ここ2週ばかり、化物なみの性能を持つモダンレンズの登場で、あまりインパクトはないかも知れませんが、それでも、光る水面からフレアが上がり、いたいけな童子達を喰ってしまうこともなく、キレイにエッヂが立っていますし、APS-Cでも周辺の甘さは見てとれますが、暗部もなかなか良く拾っているのではないでしょうか。
後ボケはざわざわ気味でこればかりは幾ら手間隙掛けてレストアしても如何ともしようがないです。

Biotar40mmf2II_002.jpg
二枚目のカットは池の畔のベンチでバンヂョーなど奏でていた、洒落者の御仁に声掛けて撮らせて貰ったものです。

先方は、自分がクラシックな趣味なもんだから、同じくクラシックカメラ愛好家が声掛けてきたものだとばかり思っていたらしく、礼を述べ方々、背面液晶で写った画像をお見せしたら、そっくり返りかねないくらいびっくり仰天していました。そういった意味では、X-Pro1のパッケージンというか外観デザインは大成功と云えます。

このカット、背景はやはり崩れ気味でざわざわし、決して褒められたものではないのですが、立体描写が物凄く、このバンヂョーをぢさんが周囲から浮かび上がっているかのような描写になっています。悪く云えば、テレビや映画などでのひと昔前の背景の合成カットみたいなカンジです。

Biotar40mmf2II_003.jpg
三枚目のカットは、バンヂョーをぢさんにお礼を述べ別れてから、また人工池の方に向き直ってみれば、今度は、思いつめたような表情の中年オモニが乳母車を傍らに置き、夕陽を眺めながら時の流れに身を任せています。こんなテレサテンの歌みたいなシチュエーションもなかなかないし、また逆光でのテスト撮影だわい、とか独りごちて、背面液晶使ってのライブヴューで一枚戴いたもの。

ここでも、画面中央付近の解像力は素晴らしく、オモニの帽子から被写界深度内のピンクの毛布までかなりシャープかつクリアに描写していることが見てとれます。

一方、オフフォーカスかつ、中央付近のスイートスポットから外れた乳母車の後車輪辺りはやはり外コマ収差というか像面湾曲の影響で外側に流れるようなボケ傾向が見てとれます。

Biotar40mmf2II_004.jpg
四枚目のカットは、国立博物館敷地に入ってすぐ、外タレさんご一行か?と思ってしまいそうなイケてる白人さんグループが目の前を通り過ぎて行ったので、振り向きざまに一撃与えたもの。

ここでも、EVFのクロップ拡大で以てピンを合せた、背の高い小姐のブロンズの髪の毛の描写は精緻に見えますが、やはり24x24のフォーマット用に最適設計されたコンパクトレンズだけあって、メンバーの膝から下、そして左側のオフフォーカスの茶色ダウンのアヂュモニの姿は流れて見えます。

Biotar40mmf2II_005.jpg
五枚目のカットは国立博物館本館前の中庭に植わっている巨大な老木の雄姿を捉えたものです。

ここでも、画面中央付近での樹木の木肌の描写は極めて精緻ですが、枝葉に行くに従い、描写が甘くなり、前ボケとなる画面向かって左の枝などは嵐の晩に激しく揺れる枝のようにも見えます。

また左端のベンチも老夫婦も外側に流れ気味のボケで国立博物館がモチーフなのに上野の森美術館辺りにありそうな抽象画を見ているような錯覚を覚えました。

Biotar40mmf2II_006.jpg
六枚目のカットは、上野の帰り、銀座でメシを食べて帰ったのですが、その帰り道、婚礼衣装屋さんのショーウィンドに浮かんだドレスが、また内側にも背中向けでデスプレイされた白い衣装があり、ちょうどすれ違っているような構図になっていて面白かったので、一枚戴いたもの。

ここでも、ハロゲンのかなり強めのスポットを浴びているにも関わらず、見苦しいフレアは殆どと云って良いくらい発生しておらず、やはり"T"コート相当の全面コートの功徳を感じぜずにはいられません。

特に手前のマヌカンの胸の膨らみのカーブを描く白い肌と背景の暗闇との境目が切り取ったように区切られていたのには感心しました。

今回の感想としては、う~ん、3万円かそこらなら、また古いレンズをフルレストアしてみたいなぁ・・・と云うこと。

さて、来週はローテーション通りでいけば、工房附設秘宝館から何か出てくる筈ですが・・・乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2013/03/31(日) 23:08:20|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

1枚目の写真、いいですね~~~~

自分には、なかなか撮ろうと思っても撮れないカットですよ~~~
  1. 2013/04/01(月) 20:24:15 |
  2. URL |
  3. わたなべ #-
  4. [ 編集]

Yさん
有難うございます。
撮ろうと思えば、撮れないことはないでしょう・・・可動液晶が売り物のNEXと目玉おやじのコンビを以てすれば・・・笑

しかし、二枚目のカットのバンヂョーをぢさんしかり、この童子達しかり、X-Pro1みたいなクラシックカメラ然としたカメラでの撮影には概ね好意的ですね。

そろそろ関東周辺でもお祭りのシーズン始まりますから、Yさんも機材の準備ともども出てくる準備お願いしますね。
拙者は、ヤマザキ春のパン祭りから、花王ヘアケア祭り、そして東映こども映画まつりに到るまで、今年はお祭り全部制覇したいと思ってます・・・マテ!!
  1. 2013/04/01(月) 22:53:52 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

前回よりも、より戦中ロボット用によりふさわしいシャープな描写の40mmです。
以前の色味とフレアーがないのもコーティングのおかげなのか、このほうが当時を彷彿させるかの戦闘的な感もあります。
frickerにもf8に絞った同レンズでの撮影見本がありましたが、もともとf2に開放値を抑えただけあってかすさまじくシャープな画像でした。

マネキン撮影の背景光源が収差でゆがんだり、キツメの収差で背景が歪んだりと、レンズの原初的なイメージも多く残り、時代背景を思い浮かべながら少々緊張感を漂わせながら散歩がてらスナップに出掛けるのもイイものですね。

ミラーレスのおかげで、こうしたロボットレンズが非常に身近になったものです。
コーティングの成果もとても参考になり、しかも上々なようですね。
  1. 2013/04/03(水) 09:16:05 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

実は先般のノーコートのものを鹿沼祭りの一日目に使い、あっちゃ~↑とか思ったほどの低コントラストとフレアっぽい、極端に云えば、小生の好みとは180度真逆のレンズだと思っていましたが、川崎八丁畷マジックで、ほうらこの通り、構図や距離によっては大暴れする危険なDNAさえ上手く宥めれば、シャープだし、色ノリもコントラストと階調再現性のバランスも高いところで折り合っているし、やっと使える玉になったというカンジです。

だいたいにおいて、希少性だとか、歴史的な価値とか云って、まともに写らないレンズに高い金を払い、鑑賞の妨げになるような破廉恥な収差まで"味"の一言で片付けるようなマゾ的趣味趣味は持ち合わせていませんので、古かろうが、新しかろうが、要は意外性と描写力、これに尽きますね。

そういった観点では貴兄のご慧眼の通り、良く出来たミラーレス機は、まさに荒くれ名馬に対する名伯楽みたいなものでしょう。
  1. 2013/04/03(水) 23:01:19 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

2枚目と6枚目かな。

2枚目の様に被写体に寄って撮影するか、6枚目みたいにバックが黒一色になるような物撮りが似合うレンズと言う気がします。
1枚目とか3枚目の様なパターンだと、背景がどうも気持ち悪いんですよね、自分とこのモニターで見ると。
ぼけすぎと言う気がしまして。
いっそのこと背景をすっ飛ばして被写体だけクローズアップする撮り方がこのレンズには合っているのかもしれません。
  1. 2013/04/07(日) 17:33:46 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
実は、旧ミノルタのレンズを改造し始めてから、というか、フルサイズEOSで使えなかったため、改造したまま死蔵されていたRokkor55mmf1,7をEOS20Dで使うようになってから、改めて感じたことがあります。
それは、レンズの産まれた会社の名声やレンズ自身の知名度、希少性、そういったものと描写の力は全く連関性が無い、ということです。

このBiotar40mmf2は八丁畷でのフルレストアに近い作業の工賃と元々の電子湾からの調達費用からすれば、ジャンクコーナーで半ば埋もれ掛け、顧みる人ももう居ないRokkorの値段はそれこそ何十分の一でしょう・・・が、しかし、その実力の差はもう既にお判りの通りではないでしょうか。

要は高い玉でも写りがダメなものはダメで、それをレンズに求められる本来の性能であり、レゾンテートルであるべき、実体に忠実な描写、とは別の次元の味とか好みとかそういうもので片付けてはいけないのではないかと思うのですよ。

或いはこのレンズは絞って使うことを想定していて、開放での性能を求めてはいけない、という評価が実のところなのではないかと思いました。

尤も高いから良く写って欲しいと思うのは人情であって、充分理解は出来ますが・・・苦笑
  1. 2013/04/08(月) 22:29:18 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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