深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Cost performer reborn in 2013~Tokina SZ-X200 mod.N/EF~

Tokina_SZ_X200.jpg
さて今宵のご紹介は1990年製のサードパーテ-製ズームレンズ、Tokina SZ-X200 80-200mm f4.5~5.6を工房で元のミノルタSRマウントからNikon Fマウントに改造し、更にそれをF/EFマウントアダプタ経由、Canon EOS1DsMKIIで以てフルサイズ撮影したものです。

このレンズの特徴は、1990年当時のサードパーテー製レンズと言えば、とかく性能は純正に追い縋ろうとしても、同じような値段では買って貰えないと諦めていたのか、とにかく、鏡胴の材質、造りにコストダウンが顕著で、正直、モノとしての質感は議論に値しないものが多かった中で、オール金属鏡胴、しかも直進ズームで精度も高く、開放値もf4.5~f5.6とムリをしていないだけあって、デビュー当時の評価は玄人筋を中心にまずまずのようだったようです。

しかし、ここでひとつ素朴なギモンが生じます。何でレンジファインダー機のレンズ、一眼でも大口径単玉が好みの筈の深川精密工房でこんなレンズが出てくるんぢゃ!?ということです。

それには二つ理由が有って、ひとつ目は、先に購入し、大当たりだったCarenar135mmf2.8の二匹目のどぜうを狙い、馴染みの中古カメラ屋さんのヂャンクコーナーから、これはと思うお値ごろ品を目利きして、ばんばんと買って帰っているので、改造ドナーが増えたから、二つ目は国産のサードパーテーメーカーが実は海外有名ブランドのレンズをOEM供給していたことがあり、某L社と某S社のズームが鏡胴のパッケージングこそ違え、光学系は一緒という有名な話もあり、このT社もおフランスのTarres社の民需用ズームレンズをOEM生産していたという話しもまことにしやかに囁かれ続けてきたので、もしかしたら☆、ということでお値段も丸の内ランチ価格程度で玉もそこそこキレイだったので、買い求めて家に連れ帰ってきたということです。

では、早速実写例を見て参りましょう。ロケ地は先週のフジノン55mmf1.7同様、深大寺一帯です。

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まず一枚目のカットです。真っ先に訪れた深大寺城址で駆け寄った蕎麦の花畑で、ニホンミツバチ達が健気にミツだか花粉だかを集めていたのが目に留まりました。

そこで、早速、このレンズの特徴であるマクロ機能を使って!とか思ったのですが、全然使い方が判らないので、とりあえず、200mmで寄れるだけ寄って、臆病なミツバチを驚かさないよう細心の注意で撮ったのがこのカットです。

さすがにフルサイズで撮ってしまうと周辺のアウトフォーカス部の流れというか崩れについても、一目瞭然ですが、これがレンズの設計当時のものなのか、経年劣化によるものなのか、或いは工房の加工精度による片ボケなのか、ここでは判りませんが、少なくとも距離、構図を替えた別カットでは殆ど見当たらないことから、工房の加工ミスや加工精度の限界等リマウントによるものではなさそうです。

勿論、中央部に鎮座まします主役である、ニホンミツバチはやっと肉眼で判別出来るくらいの大きさではありますが、精緻に描写されています。

SZX200_003.jpg
二枚目のカットは深大寺城址から下って、閉園間際の水棲植物園で午後の遅い木漏れ日を浴びて黄金色に光るあやめ畑の全景図です。

被写界深度内である画面中央左寄り付近の陽光を浴びたあやめは勿論シャープに描写されていますが、後ボケはフジノンほど暴れず、ゾナー系ほどではないにせよ、油彩風のマイルドなボケ加減で個人的には好感持てました。

さすがに先般の潮来のぴちぴちのあやめ達を見た後だと、盛りを過ぎ、しなだれ始めたこちらのあやめ達の姿は痛々しいものが感じられないではないですが、それも午後の傾きかけた陽光の中だと、何か人生に対する暗黙の示唆のような気もして、これはこれでそこはかとない趣きを感じました。

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三枚目のカットですが、水棲植物園を後にして茶店街までやって来た時、秋には彩り鮮やかな紅葉の木の下で楽しそうに語らい合う、いたいけな学生さんカップルが居たので、ここでまた声を掛け、趣旨を十分理解して戴いた上での演技指導後の撮影です。

ピンはやや後方に立つ小姐の髪で合わせていますが、背景の緑濃い紅葉の木の葉に映えて、赤いブラウスがとても艶やかに見えます。

また背景のボケは距離の関係なのか、紅葉の木の葉が若干ぐるぐる傾向でざわついて見えるほか、遠い背景の点光源に口径食の影響が認められ、あまり美しく良くない形で写り込んでしまっているのが少々気になりました。

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四枚目のカットは深大寺山門から茶店街を見下ろした眼下で眼つきの宜しくない?童子達が、その表情に似合わず、童心に帰ってヨーヨー遊びをしているのが面白くて、200mmのロングショットで撮ったものです。

ピンを合わせた画面向かって左のヨーヨー童子の衣服も髪もかなりシャープに余すところ無く描写されてはいますが、左後方のアウトフォーカス部の狸の置物その他が流れているように見えます。が、よくよく画面を拡大してみれば、これらが流れているのではなく、遥か手前、眼前の紅葉の機の枝の葉が流れて悪さをしていたのでした。

色合いも肉眼で見たのとまず違和感なく、良く再現していると思いました。

SZX200_006.jpg
五枚目のカットですが、実は山門入ってすぐのおみくじ売り場で熱心におみくじの写真を撮っていた韓国人の小姐に声掛けて撮らせて貰っていたのですが、夕刻の木陰でしかもF4.5超の暗いレンズですから、こんな薄着の小姐なんかを撮っていたら、当然手が震えてしまい、失敗してしまったので、カムサムニダとか声を掛けて立ち去る後ろ姿を代わりに撮ったものです。

山門手前に較べれば、夕刻とは言えまだ残光が石畳を照らす参道はかなり明るいので逆光状態に近い構図でしたが、さすがEOS1DSMKII、露出に関しては、補整の必要もなく、一発勝負でほぼ的中域に持っていったのは大したものだと改めて感心しました。

ただ、背景からの浮き具合いを考えれば、潮来でデビューしたCarenar135mmf2.8の方が印象的であり、カバンの入れておけば・・・と少し後悔したのも偽らざる事実です。

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六枚目のカットは山門から降りて、茶店街の石畳に立ち、何か面白いシーンがないか辺りを睥睨している時、ふと山門を背にして右側、即ち西方向に伸びる木立の道を自転車を押して楽しそうに語らい合いながら歩く若い夫婦者みたいな人達が目に留まったので、これまた200mm域で撮ったものです。

手前の幟、残光を浴びて光る石畳、そして遠方の木製の看板、木漏れ日のパターン・・・これだけでも、自転車を押しながら歩く二人の舞台装置には充分だと思ったのですが、シャッター押す寸前に茶店街の何処かのお店のスタッフが画面に飛び込んだのです。

小生もその場は舌打ちなんかしてこのカットを捨ててしまおうかとも思ったのですが、セミシルエットと化したニヒルな横顔がこの牧歌的な二人が醸し出す空間への絶妙な隠し味になっているようにも思え、逆転採用とした次第です。

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七枚目のカットですが、茶店街で犬の散歩を兼ねて、夕刻に家族連れで近所の住人がやって来て、遅くまでとは云っても17時近くまで開いている茶店でアイスなんか買い食いしているところを観光客然として最短の80mm域で撮ったものです。

ピンは手前の買い食い小姐のご尊顔に合わせてますが、それでも開放値が暗いズームだけあって、足元のいたいけなトイプードルの良く手入れされた茶色い毛並みの質感まで余すところなく捉えているのはさすが、と思いました。

SZX200_010.jpg
八枚目のカットは、もう17時も回り、そろそろ撮影切り上げて深川に戻ろうか、と参道入口付近の京王バスのバス停でバスを待っている時に、飛んで火に入る何とか・・・ではないですが、店仕舞い状態の深大寺に鼻歌加減でやって来た中国人カップルが通り過ぎて暫くしてから、そう、ねずみ男の前辺りを通り過ぎる間合いを測って、最大レンジの200mm域で撮ったものです。

見ようによっちゃ、ねずみ男が「新婚さん、いらっしゃ~ぃ」とか気の早いことを云っているかのようにも見えて面白いカットになったのではないかと思いました。

今回の感想としては、それほどカリカリにシャープなワケではないですし、開放値もf4.5~5.6とかなり暗めですが、陽光燦燦たる観光地で開放で昼の祭りなんか、ロングショットで狙い撮り、なんて使い方なら充分威力を発揮するのではないかと思いました。これで、原価がランチ1回分ですからねぇ・・・

さて、来週は、当時、国産最強とも思われた激レアのレンズシャッター一眼レフ用改造玉の驚天動地の実写結果でもご紹介しようかと思いましたが、紹介したらば、欲しいのに買えなくなっちゃうよ~ぉとか云うクレームもままあるので、もうちょい緩めのテーマで行きます。乞うご期待。
  1. 2013/06/23(日) 20:55:17|
  2. ニコンFマウント改造レンズ
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  4. | コメント:4
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コメント

工房でとうとうサードパーティのズームですか!といっても、じつは先日わたしは、仕事用でパナの12-42(?)とかコンパクトになるレンズを購入したばかりです。

zoomの画像って、とろーんとしたりシャープになったりは良いのですが、そういった癖がそれこそ
無段階に変化しそうで、これを取得するすべを今までは見出し辛かったです。
(今日のAFのzoomは、そこそこシャープはシャープですね・・・。それだけですが。)

今回の画像はそういった「無限変化」を催しそうで、ルーペでネガを見るような気に(あ、デジですね・・・)ならなければ、見る側からすれば楽しめます。使う側考えると煩雑そうですが。

たとえば、ペンタの45-125はzeissの影響があるとか、まだまだこれから発掘できる話題もありそうですね。


三枚目のシャツ白飛びや、妙な古典レンズ風のボケは好みです。
六枚目自転車を押すシーンも、暑さに枯れたような風情を感じます。


全体に、ZOOM(あるいはバリフォーカル・レンズ)が好みの場面ですぐに構図を作れる良さを、きれい所の女子達に見受けられ、よいものです。
まさにこうした女子たちの取り巻く空間それ自体がその一点で輝くかも知れず、近頃のTVでのちょろスナップ告発的な不見識なクレームには悲しみを禁じません。ルネサンス芸術、イタリアご自慢のようなイコノロジーや人体形態学とか、日本では全く日の目を見ない寂しさを痛切に・痛恨とし・痛々しく感じる次第。

感化を受けやすいわたしは、nexでMF参加したいものです。
  1. 2013/06/24(月) 17:42:39 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

このレンズ、実は例のアキバの1000円ぽっきり店で発掘したのですねぇ・・・

思うにMF時代のズームレンズについては、曇りとカビさえなければ、何とでも使えるのではないかと思うのですよ。

でも、AFになってから酷くなりましたね。

良く買って、マウント金物取って、あとはゴミ扱いのEFマウントのサードパーティズームなんざ、鏡胴の材質は内外でエンプラ使いまくるし、駆動ギアなんか、すぐ欠ける白いナイロンもどきだし、金属部品が有るかと思えば、亜鉛ダイキャストだったり、もう見えないところは何でもアリアリ大会でしたね。

それからすれば、このレンズ、まだまだ日本のモノ作りの矜持が覗えます。

それはそうとして、街頭スナップ難しくなりましたね、特に全般的に薄着になる夏場は、これまで以上に注意が必要かも知れませんね。

ただ、やはり大事なのはTPOを弁えて、邪念なく撮影するということではないでしょうか。

思想は感染するとか良く言いますが、いやらしい妄想たっぷりで夏の満開小姐なんか撮ろうと思えば、やはり、何処かしらにその痕跡が現れ、喩え微妙なサインでもお年頃の小姐は感づくものです(苦笑)

ぢゃ、どうすれば撮れるかって!? それはひたすら、精神修養を積むことと、街頭撮影で勘を養うことしか無いように思えます(笑)

余談ながら、先般の台湾ツアーで丈の短いボトムの小姐を十数回撮りましたが、台湾在住が長かった人間に云わせれば、台湾の小姐は日本人より恥ずかしがり屋だから、普通はこんなカッコで居る時に写真なんか撮らせてくれないし、ましてや、ピースなんかする筈が無い、とか云う見解で、ホントそうなのかな?とか改めて首を傾げた次第です。
  1. 2013/06/25(火) 23:05:25 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

とうとうサードパーティに・・・。

お疲れです。

サードパーティですと、タムロンとかシグマが思いつきますが、トキナーとは。
しかも写りがこれだけ良いと夜間でもゲインアップで何とかなりそうな勢いですね。

NEX-7にシグマレンズをつけてAF撮影した時もしっかりとした写りでしたし、ましてこの時代ならプラスチックオンリーでもないでしょうから、腰痛に気を付ければNEX-7の苦手な広角側もカバーできていいですね。

しかし、これで今度は中古市場からトキナーが消えるのかも(笑)
  1. 2013/06/26(水) 21:38:03 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #-
  4. [ 編集]

Re:とうとうサードパーティに・・・。

有難うございます。
まぁ、先のコシナの55mmf1.2もサードパーティっちゃ、サードパーティなんですが、ズーム、しかもこんな望遠域寄りの80-200mmのf4.5-5.6なんて暗めなのは、日頃の言動と一致してないですわな(苦笑)

でも、これでSRマウントだったとはいえ、ランチ1回分でカビもクモリもない良好な光学系の個体が買えたのですから、アキバの魔窟、恐るべしです(笑)

COSNINA、TAMRON、SIGMA、TEFNON、POLAR、OSAWA、そしてTOKINA・・・ずいぶん色々なズームをバラしましたが、どの時代のものでも、素材屋の眼からすれば、TOKINAが一番凝った造りだと思います。

まずプラは極力使わないし、外装もメカも金属削り出しが、造型の基本のようですし。

一山百円扱いの中古サードパーティレンズにおいて、TOKINAの真面目なモノ造りは、価格面でもっと評価されてしかりと個人的には思いました。
  1. 2013/06/27(木) 23:41:11 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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