深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Milagro nació del mestizaje~Auto Tele Rokkor 100mmf3.5 mod.EF~

Rokkor100mm.jpg
さて今宵のご紹介は、工房で同じくEFマウント化改造に成功した旧Milnolta製Auto Tele Rokkor QE 100mmf3.5です。
このレンズ、先にご紹介した35mmf2.8同様、SR時代の交換レンズで、1960年代前半の製品、また"QE"の記号は4群5枚を示しますから、構成はクセノタータイプと思われます。
しかし、不思議なことにこのレンズ、何故かグリーンの反射面が見当たらず、このトップ写真の如く、アンバーとパープルのみのコート面で、だいぶ前に登場したSuper Rokkor 50mmf1.8のコーティングや硝財に似ていると思いました。
例によって例の如く、実力に反して人気薄の旧Minolta製レンズは何処へ行ってもヂャンク箱の主と化していて、ローレットがゴムの加水分解でベタベタのC社製ズームやら、白内障が悪化して産廃同然のレンズ専業メーカーの廉価ズームやら、そんな誰が買うのか到底想像も及ばないような仲間?たちに混じって転がっていたところを値段も手頃だし、何よりもとても綺麗な状態だったので、直ちに「しっかりせよ!と抱き起こし」とばかりに救い出し、数枚の漱石肖像と引き換えに工房に連れて帰ったのです。
改造するレンズヘッドが半年分以上滞留する当工房のことですから、難加工のRF用シネレンズ改造2本と先にご紹介した35mmf2.8などを完工してから、ちゃちゃちゃっとやって、先々週完成し、先週の土曜日、そう新宿高島屋にて行われていた「世界のクラシックカメラ博」にかこつけたミニ撮影会でデヴューしたという次第です。
では、当日の足跡に即して、実写結果を見て参りましょう。
カメラはEOS50Dによる絞り優先AE、全コマ開放での撮影です。

Rokkor100mm_001.jpg
まず一枚目のカットですが、当日の一行3名はまず隅田川こと大川の堤防伝いの道を散策してから、今戸神社に入ろうということになり、そこで何枚か撮ったのち、待乳山聖天社へ移動する途上、遊歩道公園みたいなところで、ふと見上げた枝に蝉の抜け殻がびっしりと付いていたので、APS-C換算で150mm相当の画角を活かし、葉の裏に留まる蝉の抜け殻を捉えたもの。
抜け殻までの距離はだいたい3m弱くらいで木漏れ日の影響でアンダー気味になりましたから、補整を+1掛けています。抜け殻の鼈甲色も木の葉の色もかなり忠実に再現していますし、シャープネスも充分と考えます。
また木漏れ日が口径食でぼんやりとした水玉模様のボケと化しているのも面白いと思いました。

Rokkor100mm_002.jpg
二枚目のカットですが、程なく着いた聖天社の説明などしながら境内を徘徊し、定点観測スポットのうちのひとつである、手水場の屋根の瓦を撮ってみたもの。
或る意味、この被写体はレンズのテストにはもってこいで、シャープネス、コントトラスト、対角線方向の画質、そして背景の葉でボケ具合いまで見てとれます。
そういった意味では、本瓦の質感が余すところなく精緻に描写されているのは言うまでもなく、前ボケは極めてナチュラルで変な崩れもなく、背景の葉のボケが心持ちざわついているのが気になるくらいでしょうか。

Rokkor100mm_003.jpg
三枚目のカットは人力車で聖天社にやって来た今風の小姐2名組が、焼香場でこちらに背を向け、しおらしくもご焼香なんかしていたので、リーチの長さを活かし、赤いリポンにピンを合わせ一枚戴いたもの。
このカットで面白いと思ったのは、他の色がほぼ目で見たままなのに対し、赤いリボンのみがΔab*の色差スケールで2~3以上赤く発色しているカンジで、浮き上がっているかのようにも見えます。
また、距離の関係か、ここでは背景の首にタオル巻いたオサーンが、ごく僅かな芯は残したものの、全体として油彩の人物みたいになだらかなボケと化しています。

Rokkor100mm_004.jpg
四枚目のカットは、聖天社を後にし、ランチを戴く予定の駒形「蕎上人」まで歩く途中、駒形橋との交差点で、花嫁+花婿を乗せた晴れの人力車を目にし、信号が変わる直前でしたがダッシュで亘り、花嫁側の交差点南からこれまたリーチの長さを利して撮ったものです。
開放値がf3.5という控えめなスペックだからでしょうか、背景の群集からは肝心の花嫁・花婿人力車が浮き立って見えるところまではいきませんでしたが、それでも、健気なこの老レンズは赤い花嫁衣裳を心なしか強調し、この晴れがましい雰囲気を充分描き出しているのではないでしょうか。

Rokkor100mm_005.jpg
五枚目のカットは「蕎上人」のお店の直前、駒形の路上で或る店舗の店先を飾る粋でいなせなオブヂェを見掛けたので、早速一枚戴いたもの。
時代物の火鉢の精緻な染付けの模様と呉須のえも言われない色合い、そして瑞々しい植栽の葉の緑にほうずきのオレンヂ、まさに江戸の夏を感じさせてくれる秀逸な取り合わせで、地味ながらも、この家の主のセンスが光る、見知らぬ通り掛かりへの、素敵な視覚の贈り物と思いました。

Rokkor100mm_006.jpg
六枚目のカットは「蕎上人」にて天上の甘露とも比されるべき極上の手打ち蕎麦を戴き、身も心も満たされた後、午後の撮影に出掛けようと店を出てすぐ、目の前でアヤシゲな気ぐるみと一見コンパニオン風の年輩の小姐が甲斐甲斐しく路上を駆け回っていたので、往来の切れ目を見計らって通りを渡り切り、すかさず声を掛け、拙者に任せておけば、深川発で江戸中に宣伝して上げるからなどと甘い言葉を囁きながら撮ったものです。
ここでも、やはりこじんまりと纏まったカラーバランスの中で赤系統のみが突出している感なきにしもあらずです。
しかし、150mm相当のファインダを覗いていると、普段の標準とか広角では全く気にならないのに、わざわざポーズを取って上げてくれた左手の指輪までくっきり見えてしまうので、望遠での撮影ってのも視点が変わって面白いものだなぁ、とか思いました。

Rokkor100mm_007.jpg
七枚目のカットは雷門まで辿り着き、その裏手にあるいつもの定点観測スポット、扇屋さんの店頭にほうずきの鉢が吊るされていたので、これ幸いに、と一枚戴いたもの。
ピンはもちろん手前の鉢のオレンヂ色のほうずきの実に合わせていますが、いつもは主役の店先の江戸画うちわが後ボケと化していますが、これがなかなか滑らかなボケでイイ雰囲気を醸し出しているのではないかと思いました。
また、空を映し込んだ風鈴のガラスの質感も涼しげで面白いと感じました。

Rokkor100mm_008.jpg
八枚目のカットですが、午後の撮影地、浅草寺へ向かう途上、いたいけな幼い兄妹と思しき男女を乗せた女車夫の力車が路上で一時停止をし、観光案内してんだか、夏休みの宿題たる浅草の街の歴史の故実にでも、一緒に悩んでんだか、なかなか面白い仕草をこれでもか!と繰り出していたので、望遠のリーチを活かし、何カットか撮ったうちの一枚。
ここでも赤系統のひざ掛けが目立ち、不思議な情景となっているように思えました。

Rokkor100mm_009.jpg
九枚目のカットは、浅草寺境内の本堂近くで観光ガイドのポーズを交互にとって、写真の撮りっこをしていたいたいけな観光客の小姐の姿があまりにも夏っぽかったので、これも長いリーチを活かして戴いた一枚。
被写体の小姐との距離は5m弱くらいだったと思いますが、ここでは、まさに狙い通り、背景からの浮き上がり効果に成功しています。
品の良い夏物のレースからすらりと伸びる小姐の右腕は健康的であり、同時に艶かしく、まさに過ぎ行く夏への餞けにも思えました。
また背景にはかなり多くの人々が遠慮会釈なく行きかっていましたが、これぐらい滑らかにボケていれば、底抜けに陽気で夏の象徴みたいな健康小姐への充分な演出効果ともなるのではないでしょうか。

今回の感想としては、やはり旧Minolta侮り難し・・・先のPETRIしかり、KONICAしかり、今は亡きメーカーにもデジタル化の現代でも通じる魅力は充分残されているのではないかと思います。せめてレンズメーカーとしてでも生き残っていてくれたら・・・そう思うのは業界事情には全く疎い、ただの物好きの素人の戯言なのでしょうか。

さて、次回は秘宝館からのご紹介いきましょう、乞うご期待。

テーマ:EF_mount mod. lens - ジャンル:写真

  1. 2013/09/01(日) 15:57:37|
  2. EOSマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<Redoni la malnovan ĉerizarbo~Konica Hexanon AR 50mmf1.4~ | ホーム | 歷史遺留下來的激情復活~Auto W Rokkor35mmf2.8~>>

コメント

8枚目以外は今のレンズと紹介しても納得しそうですね。

Charley944さん
お疲れです。

あの時のレンズの作例を拝見しました。
1:3.5のレンズはこのくらいの焦点距離から威力を発揮するのかなと感じました。
8枚目のみ古さを感じさせる絵柄になっている感じですが、それ以外は今のレンズと紹介しても納得してしまいそうな気がします。
自分もオールドジャパンレンズの迷宮に飛び込んでますが、この年代のオートロッコールとかオートニッコール、オートタクマー、FL系統のレンズは当時の製造環境が良かったのか、設計に余裕があったのかNEX-7と組み合わせてもそれほど破たんせず、良い色合いで映っている様に感じました。

ジャンクコーナーとか丹念にチェックして、上記の絞り優先対応とかのギミックが入る前のレンズに焦点を当てる方が良いのかもしれませんね。

それにしてもこの100mmテレロッコール、助けてくれたオーナーにちゃんと恩返ししているじゃありませんか。
助けてくれた恩を忘れないのは、犬ばかりじゃなさそうですね。
  1. 2013/09/02(月) 20:58:02 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:8枚目以外は今のレンズと紹介しても納得しそうですね。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

そうですね、いまだ、新発見が続くAuto Rokkorは未曾有の鉱脈なのかもしれませんね。

しかも、或るパーツ2点外せば、案外簡単な旋盤加工でEOSのAPS-Cシリーズには装着出来る玉になりますしね。

ところで、レンズの恩返し、なかなか愉快な喩えですね、ヂャンク箱から助け出した国産レンズが美女に化けて、雨の日にマンションを訪ねて来て、暫く逗留するうち、恩返しとばかりに旋盤を掛けている部屋は絶対覗かないで下さいとか云われたのを覗いたとたん、スパイ衛星の目玉になって、宇宙に飛び去ったりとか、そんな真夏の怪談も面白いでしょうが・・・
  1. 2013/09/03(火) 22:48:29 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/338-4e321e83
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる