深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Love letter for a certain optical applience manufacture~Kowa Prominar50mmf2 mod. EF~

Prominartommf2.jpg
さて、今宵のご紹介は、今は亡き興和の写真機器部門が送り出した傑作レンズの長男坊、Prominar50mmf2をお送り致します。
が・・・よくよく考えてみれば、秘宝館からの紹介とは云いながら、EOS_EFマウントのProminarなんて、世界中何処探してもないわけで、これもまた、工房の技術を駆使し、レンズシャッター機のレンズを取り外し、複雑なボディ側のシャッター機構を介して制御される絞りをダイレクトに制御出来るよう、連結金具を開発したりして、それなりに苦労してEFマウント化したものでした。
では、この稀有なレンズはどういう氏素性なのか?
今はカメラ業界から撤退した興和が1960年に送り出した、レンズ固定式のレンズシャッター機であるコーワフレックスEのレンズとして、4群6枚のオーソドックスなオーピックタイプのレンズですが、特徴としては、小径のレンズシャッタ-にマッチさせるため、後玉が前玉に比して著しく小さいことです。
これは、なにもこのレンズのみのウィークポイントというワケではなく、だいぶ前にアップしたKallo140
用のProminar50mmf1.4も、他社ではヴォイクトレンデルのプロミナも、ウルトロンも同様の傾向があります。
では早速、実写結果を見て参りましょう
カメラはEOS20Dでの絞り優先AEによる開放撮影、ロケ地は今年の晩春の江ノ島です。

Kowa20_01.jpg
まず一枚目のカットですが、洲鼻通りから橋を渡り、島へ上陸すると正面に見える江ノ島弁才天社の鳥居があり、その麓で楽しく語らい合いながら土産物の仕分けに打ち興じていた、いたいけな若いカップルの姿が微笑ましかったので、そおっと一枚戴いたもの。
これがレンズシャッター機の状態であれば、ガッシャポンとかけたたましい音を立てるので、次の瞬間は、驚いた顔のカップルが見られるのでしょうが、サイレントEOSの呼び名も高い20Dのこと、その場の雰囲気を壊さずにイイ画をモノにしてくれます。
ピンは手前の小姐に合わせていますが、背景のおっぱーまで被写界深度はかろうじてセーフ、背景の雑踏はやや芯が残り気味のボケですが、変な崩れや流れがないので、それほど鑑賞の邪魔にはならないと思いました。

Kowa20_02.jpg
二枚目のカットですが、鳥居を過ぎてすぐ右手から、裏江ノ島、岩屋方面にショートカットする道があるので、そちらを上って行った時、中腹の藤沢の海岸が一望出来る辺りで犬を連れた、これまた若いいたいけなカップルが、おっかなびっくり断崖の下を覗き込み、我関せずを決め込んだお供のワン公がこっち見て尻尾振ったり忙しい光景が面白かったので一枚戴いたもの。
このカット、実はかなり光線状態はシビアで、鬱蒼と茂る木立の間からはピーカンの青空、午後の陽光を浴びて輝く海面やら陸地が照り返していて、右手の小姐の朱鷺色のTシャツが反射し、海側に立った兄ちゃんの白いTシャツと言わず、ガードレールと言わず、ほんのり朱鷺色に染まっているのが窺えると思います。
そんな激しく輝度差の異なる部位があっても、この稀代の銘玉と、往年のベストセラー機のコンビは、黙々とプロの仕事をしてくれた、というカンジです。

Kowa20_03.jpg
三枚目のカットですが、ショートカットの俄か山道を更に登っていくと、ヤクルト小母さんよろしく、なんとヨークシャを二匹もバケットみたいなものに入れて押して来ている妙齢の熟年女性が居たので、声掛けて、お犬さまのみ出演願ったもの。
ここでも、背景の海側からかなり強い陽光が射してきていますが、内面反射が元々少ない設計なのか、深川で分解後、内面反射処理を施された改造レンズ並みのコントラストの高さと対フレア、対ゴースト性能を示してくれました。
心地よいシャープネス、発色のナチュラルさが醸し出すリアリティは今更述べるべくもないですが、背景のボケもイイ按配に映っているようです。

Kowa20_04.jpg
四枚目のカットですが、ショートカットルートを登りきり、とある売店の横から、裏江ノ島エリアの岩屋に続く道に出て、更にその先にある、幸福の鐘(便宜上つけた仮称)でその鐘を鳴らすのはあなた、とばかりにいたいけなカップルが仲睦まじく海に向かい鐘を鳴らそうとする前に、「卒爾ながら!」と声かけて、一枚撮らせて貰ったもの。
ホントはもうちょい海側に立ってた小姐にピンを合わせていたのですが、オッパーが鐘を鳴らした途端、その音響に怯み、耳を押さえて手前側に身を引いてしまったので、ややピンが甘くなってしまったのです。
しかし、午後遅くの春の海の水面も、手前の崖の上の樹木の枝葉もなかなかイイ按配にボケてくれてます。

Kowa20_05.jpg
五枚目のカットですが、また"鐘の鳴る丘"からメインストリートに戻り、岩屋方面に歩いていたら、江ノ島名物の半野生化猫(野良猫と言うケースもあります)がのんびりと日向ぼっこなんざしていたので、至近距離までアプローチし、一枚戴いたもの。
たぶん1m以内くらいでの撮影ではなかったかと思いますが、このレンズ、f2にしては最短付近での被写界深度が著しく浅く、猫の顔面でピンを合わせると、首から後ろの方はもうアウトフォーカスになってしまうくらいでした。

Kowa20_06.jpg
六枚目のカットですが、島の周囲をほぼ一周し、さて、洲鼻通りを戻って、片瀬江ノ島辺りで茶でもしばこうかいな、とか思って表参道を歩いていた時、青銅の鳥居近くの団子屋前で外国人の家族がおやつなんか食べて寛いでいるようすだったので、声掛けて、二つ返事でいたいけな極小姐を撮らせて貰ったもの。
ここでも最短距離まで寄らせて貰い、この愛くるしい極小姐が団子なんか豪快に平らげるところを撮ろうとしたのですが、いやはや、ファインダ越しに見つめ返される、純真無垢ながら力のこもった視線のレーザービームにすっかりやられてしまいました。
稀代の銘レンズはこんな素敵な仕事をプレゼントしてくれたってことです。
ここでは、マイルドな背景のボケがこの天性のアイドルを浮かび上がるが如き描写となるのを手助けしています。

Kowa20_07.jpg
七枚目のカットですが、いたいけな極小姐の天使の微笑み的カットを撮ることが出来、そのままこの神域で即身成仏してしまいそうな舞い上がったキブンでもう一箇所撮影スポットが有ったことを思い出し、帰る前に急遽赴き一枚撮ったもの。
参道を左に逸れたヨットハーバー方向への舗装道路の裏道に当たる生活道路沿いに古風な佇まいの喫茶店が在り、その店先に置かれ、潮風や雨風に弄ばれるまま、どんどん年を経ていく不思議な古自転車があるのです。
しかも、新品当時はクロムメッキも燦然と輝いて、晴がましい姿を誇っていたであろうこの自転車も長年の月日が通り過ぎ、殆どが錆に覆い尽くされ、すっかり年取ってしまったかの様相を呈しています。
それでも、ホーローのエンブレムは往年の誇りを今でも失わない、との心意気の如く、そのままの姿で残っていたので、この誇り高き老自転車の雄姿を撮ってみたという次第です。
錆の質感もエンブレムの色合いもそして背景の葉の色もイイ按配でハーモニーを奏でているのでは、と思いました。

今回の感想としては、ミノルタ、コニカ、ペトリ、そしてコーワと絶版メーカーの玉が最新のデジタル機器と組む時、当時は予想だにしなかったパフォーマンスを発揮してくれることがままある、と改めて感じ入りました。
実は、工房ではそのうちひとつについては、先週、実戦テストが無事終了し、国産の絶版メーカーきっての実力派ながら、アダプタがなく、実写が挙げられていなかったスーパーレンズのミラーレス適用化もほぼ5割方工程が完了し、来週には実戦テストに出る予定です。

さて、来週は工房製品のご紹介いきましょう、何が出るかはお楽しみ、乞うご期待♪

テーマ:EF_mount mod. lens - ジャンル:写真

  1. 2013/09/23(月) 17:35:21|
  2. EOSマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

本当にやっちゃったの!?流石深川工房。

いや、自分もhiroさんの要請でコーワSLRを入手した際にマウント部見ましたけど、むちゃくちゃ複雑な作りだったじゃないですか。
よくまあEOSマウントにしましたね。
コーワはSWが自分の中ではヒットしてましたが、現物を見るとどうも手が出ませんでしたね。
当時でも距離計非連動で目測照準だったので、とても値段とか考えたら無理でした。

で、話には聞いてましたがまさかやっちゃうとは流石深川精密工房。
その内、中共辺りからマウントやレンズを確保しにエージェントが来るんじゃないですかね。

それはそれとして、これまた懐かしいというか来年には健康面を考えても戻りたい江の島の景色じゃないですか。良いですねえ江の島。
またオールドジャパンレンズとよく合うことで。
今回は3枚目と7枚目が好みですね。
犬の毛並とか錆びた自転車の質感が良く出ている様に思いました。
また4枚目の様に野良猫を至近距離で撮影できるのもこの江の島の特色ですね。
EOS60Dなら背面モニターを動かしてモニター撮影できるのでより近づけるかもしれませんね。

それと江の島はヨットハーバー近くの裏路地も撮影スポットとして最適なんですよね。あそこで一日カメラ片手に過ごすのも良さそうです。
早く戻りたいわー、江の島と言うか湘南。

で、この前ミランダは出ましたから、違うレンズのお披露目ですね。いよいよ来週実践テストですか。
こちらは先日入手したFL58/1.2用にFDマウントアダプターをちょっと改造しようかなと言うところです。まさか絞り操作用の棒がレンズ後玉ガードに当たるとは思いませなんだ。

まだこちらもチェックしなきゃならないレンズがあるので、10/5まではこちらも色々トライしときます。
でもそちらの隠し玉にはやられそうですねえ。
  1. 2013/09/23(月) 22:08:13 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:本当にやっちゃったの!?流石深川工房。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
研磨と再コートと文字刻印以外はたいていのことが出来ますから、特段、驚くには値しません(笑)
要は手間かけて、細かい作業をやり通すかどうかのモチベーション次第です。

それから、FL58mmf1.2の絞り操作用の棒ですが、間違っても、その周囲の二箇所のネジを緩めて、斜めに膨らんだプレス製パーツを外そうなどとは思わないでくださいね、根元の細かいベアリングが飛び出し、辺りは一瞬にして修羅場と化しますから・・・笑

当日、上手く逃がす方法を伝授致しましょう♪
  1. 2013/09/24(火) 22:55:06 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

すごいですね

はじめまして。 いつも楽しく拝見させて頂いております。
後玉枠がよくミラーに当たらなかったなと思う一方で、あの絞り機構を制御が出来た事に
感心すると言うかその努力に称賛しております。
KOWAはカメラが動かなくなる事象が多々ある為、何らかの形でも利用救済できたらと
常々思っている次第ですので。

ところでKOWAのレンズは50mmもなかなか良しですが、100mmも侮れません。
機会があったらぜひ、宜しくお願いします。 (^^)
  1. 2013/09/26(木) 13:40:11 |
  2. URL |
  3. ポンペイ #Ydn.PT/.
  4. [ 編集]

あれ?このレンズ確かバックフォーカス38mmで、
結構ギリギリっていうか..入ったのか。凄いな...。

このレンズ(というかコーワのレンズ)、確かそれほど逆光性能が良くなくて、光源入るとどうにもならなかった記憶があるのですが、そこらへん、どないな感じだったのでしょうか。

しかし、ボケが素直でいいレンズですねぃ。
これはちょっとソソる。工作とか無理だけどw
  1. 2013/09/26(木) 16:22:37 |
  2. URL |
  3. JY #1Nt04ABk
  4. [ 編集]

Re:すごいですね

ポンペイ さん
有難うございます。
実はコーワについては、だいぶ前に幻と言われながら、ヂャンクはたまに八百福辺りで見かける、Kowa140ことKallo140の50mmf1.5をMマウント距離計連動化改造し、その国産トップレベルの描写性能に驚愕し、もしやと思い、電子湾にて格安で回遊していたフレックスEを買っておいて、或る日、改造方法を閃いて、一気呵成に改造したという次第なのです。

100mmもたぶんSER用の交換レンズでしょうけど、SER本体を調達し、交換式マウントが出来たら、試してみましょう。

コーワ製品は確かにどのモデルもボディは故障し易く、反面、レンズの描写はたぶんに魅力的ということで、国産絶版四天王ことペトリ、ミランダ、トプコン、マミヤに相通ずるものがあるのかも知れません。

当工房では、まだまだプロが度肝抜くような改造アイデアとネタを押さえてますから、どうぞこれからもご贔屓に♪
  1. 2013/09/26(木) 23:08:33 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。
或る意味、本改造は成功でもあり、失敗作でもあるのです。
何とならば、前々にもお話した通り、一番初めにAuto-Rokkor55mmf1.7をEOS EFマウントに改造したら、1DsMKIIでレリーズ出来ず、ぢぇんぢぇん使えなかったので殆ど捨て置いたのですが、或る日、20Dを買って、モノ試しとばかりにくっつけて撮ってみたら、あ~ら大不思議、良く写るんでねぇの!?ってことで、フルサイズは捨てた前提で改造を始めたことによって初めて実用化となったものなのです。
ところで、逆光性能ですか?う~ん、意識して試してなかったですねぇ・・・今週末か来週の金曜日にでも、もうすぐ完工するスーパーレンズの試運転を行う際、ベンチマークとして持ち出し、比較テストしてみましょうかねぇ・・・
で、この性能に刺激を受け、改造を始めたいという方も居るかも知れませんね。
つーか、NOCTOの岡村さん辺りにヂャンク持ち込めば、結構安めに改造してくれるかも・・・
  1. 2013/09/26(木) 23:18:49 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

色傾向の黄緑傾向もシネ・プロミナ―に似ていて、こんな黄色い古いキャノンのようなコーティングが、(デジカメ独自の色補正があったとしても)どうしてそれぞれ異なる発色するのか不思議なものです。

実際の(世界的には)高価すぎるシネ・プロミナ―と、硝材やレンズカーブも含めた違い比べでもあったら楽しいのに、こうした実際の撮影結果も含め、どこかで特集でも組んで欲しいものです。

マニアか雑誌社でも特集がくめれば、企業の研究費も削減できるだろうに・・・。
  1. 2013/09/30(月) 03:49:59 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
まぁ、シネプロミナー50mmf2もこのフレックスE用50mmf2も同じスペックではありますしねぇ・・・
その違いは、世界でも稀有なシネプロミナ50mmf2保有のhiroさんからお借りし、貴兄向けにリザーブしてあるフレックスEとじっくり較べられてはいかがでしょうか。
しかし・・・マニアや雑誌社が特集組めば、企業の研究費が削減というのは本末顛倒ではないでしょうか???
企業は営利活動の一環としてレンズの研究、開発を行うのですが、それをアマチュアやマスコミのデータに頼るというのは、プロとしてはあってはならないことではないでしょうか(苦笑)
  1. 2013/10/01(火) 23:08:21 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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