深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Old meets A new~EBC X Fujinon 50mmf1.6~

fujinon50mmf16.jpg
さて、今宵のご紹介は秘宝館からEBC X-Fujinon50mmf1.6となります。
このレンズは、1970年台末にフジフィルムがカメラのAE化を睨み、これまでのM42のスクリューから、キャノンのEOS EFもかくやあらんばかりのショートフランジバックの大口径バヨネットに換えてシリーズ一新すべく登場させたもので1980年発売のAXシリーズ専用マウントとなっています。
このEBCのマルチコートも美しいf1.6のレンズは、4群6枚の典型的なプラナータイプですが、エレメントのゴーヂャスさとは裏腹に鏡胴のかなりの部分がエンヂニアプラスチック化されています。
それでも、内部パーツやマウント金物が金属製なのは、コストダウン一辺倒ではない拘りを感じて嬉しくなりました
実はこのXマウント、今のX-Pro1のXマウントは勿論のこと、一時期ハッセルと共同開発でコアなマニアには人気があったというTXシリーズのバヨネットとも全く互換性がありません。
では、何故、知らっとX-Pro1に装着しているのか???
それはまさに必要は発明の母とばかり、当工房でX⇒Mの距離計非連動手動絞り機能付きのアダプタの開発に成功したからです。
では、世界初と思われる新旧Xマウントレンズとボディのコンビネーション、実写結果を見て参りましょう。
カメラはX-Pro1、絞り優先AEでの開放撮影、ロケ地は鎌倉です。

Fujinon50mmf16_01.jpg
まず一枚目のカットですが、小町通を一本西に逸れた裏通りにある、「Milk Hall」なるカフェの店先の佇まいが黒で統一されてなかなか眼を惹くので、一枚戴いたもの。
当日は軽い曇天とは云え、お昼前の陽射しはかなり強く、このオフベーヂュで反射率の大きい日傘は完全にハイライトがすっ飛んでしまっています。
それでも、ピンを合わせた「Open・・・」の黒地に白文字の洒脱な看板をはじめ、シックな黒の佇まいはあますところ
なく雰囲気を捉えられているのではないかと思いました。

Fujinon50mmf16_02.jpg
二枚目のカットですが、小町通りに戻り、商店の店先などにも何か面白げなものはないものかと物色していたら、或る物販店の店先にガラス細工の小物がところ狭しと並べられていたのが目に留まり、店の方に断った上で一枚戴いたもの。
最短距離での撮影ですが、ピンは中央付近の頭部がオレンジ色のふくろう親子の眼に合わせています。
被写界深度はかなり狭くて、このふくろう親子と等距離のガラス細工だけがくっきり結像し、その前後は滲むようなボケとなっています。

Fujinon50mmf16_03.jpg
三枚目のカットですが、小町通の真ん中よりもう少し鶴岡八幡宮方面に歩いていった先の裏通りの民家のガレーヂにいつも停まっているイタリアンレッドのミニクーパーの姿です。
このカットでは赤はかなり見た目通りの発色なのですが、クロムメッキのパーツは概ね飛びがちとなっており、それでも、EBCマルチコートの功徳か、輪郭を崩すような不自然なフレアは殆ど皆無のレベルまで抑え込まれています。
背景のボケはなかなかイイ案配に融けるようなカンジで写っていて好感持てました。

Fujinon50mmF16_04.jpg
四枚目のカットは、そのミニクーパーのガレージのもう少し奥の路地に咲く、ひるがおの花の可憐な姿です。
最短距離付近でEVFの10倍クロップ拡大機能を活かし、花弁の中央部奥にピンを合わせていますが、伴走機の50Dに付けたもう一本の同世代の50mmf1.9の手の切れるが如きシャープな描写に比べ、ややマイルドなテイストに思えました。
背景の葉は近くは滲むように、離れたものは融けるようになかなかイイ雰囲気の後ボケとなっています。

Fujinon50mmf16_05.jpg
五枚目のカットは小町通りの奥付近にある飴の製造販売実演店店頭で味見をしながら一心不乱に店員さんの口八丁手八丁の説明に聞き入るいたいけな女子中学生の一団の姿です。
ピンは一番後ろの小姐の赤いプゥマのバッグのマークに合わせていますが、3m超の距離からの撮影でしたが、奥へ二人目辺りからボケ始め、画面左奥の店員の兄ちゃんはかろじて顔が識別出来る程度のボケと化しています。

Fujinon50mmf16_06.jpg
六枚目のカットは小町通りを奥まで歩いて行って、また元来た道を辿って駅方面に戻る途中、ここも定番撮影スポットである、老舗レストランの店先とその前を行き交う通行人諸氏を撮ったもの。
ピンは「Coin de rue」の文字の書かれたキャノピーに合わせていますが、通行人の多い通りで大っぴらにカメラを構え、これから一枚のみならず二枚三枚と撮ろうという気合いを感じてか、目線をくれる人間は何人か居たのですが、まさに被写界深度内の兄ちゃんだけがばっちり目が合った、という趣きの面白いカットとなったのではないでしょうか。

今回の感想ですが、ふふふ・・・これはまだほんの始まり、プロローグでしかない、従って、伴走機である50Dに装着された同世代のベーシックレンズにシャープネス、コントラストで一歩譲ってもこれもまた一興。そうこのX→Mアダプタはこのベーシックグレードのレンズ一本のために開発されたのではなく、超弩級ハイスピードレンズのためだったのです。

さて、来週は或る地方のお祭への出張撮影か、或いはこの金、土、日に行った湘南、佃島、深大寺の何処かのレポートをお送りしたいと思います。乞うご期待。
  1. 2013/10/06(日) 22:29:38|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
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コメント

今行きたい街ナンバーワンの

鎌倉やないですか。

今ならもうちょっと上手く撮れそうなんですよ、と思いつつ神奈川復帰の日を待っている今日この頃です。

50/1.6の描写はどうかとおもいましたが、フジノンらしい映りでこれもマウントアダプターがないことが惜しまれますね。
エレフォト辺りで販売してくれるといいのですが。

2枚目や4枚目の写真は夏らしい写真に見えますけど、これ撮ったのこの前の金曜日でしたっけ。
ひるがおがまだ咲いているんですね。

コアンドルの前のカットは、奥の男性だけ顔がはっきり写っているのが面白いですよね。
こういう雰囲気のカットは鎌倉の雰囲気を伝えてくれるので、早く戻りたくなりますわ。

並走の50/1.9も気になりますが、次回はあれが出ますね?
首を長くして待っております。
  1. 2013/10/07(月) 20:34:17 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:今行きたい街ナンバーワンの

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
そうですね、伴走機では鎌倉から江ノ島まで一貫して同じレンズで撮ってましたから、そっちを先に出しても、よりカバーしている行動範囲が広かったので、更に興味をそそったかも知れません。
ところで、金曜とは言え、平日の江ノ島は人物カットを撮ろうというのが主目的ぢゃなければ、とてもイイところですよね。
某断崖絶壁上の和風シーフードレストランなんか、独り客なのに窓際で一番眺めのイイ席に案内してくれるし、さざえのつぼ焼きも心なしか少し大きいカンジだったし、お店に入った時間がランチタイムの終わり頃だったためもあってか、生しらす丼のしらすの盛りも尋常ぢゃなかったし、帰りのロマンスカーも空いてて静かだったし、いやはや、またクセになりそうな楽しい一日でした。
  1. 2013/10/07(月) 23:00:18 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

変わった開放fナンバーのレンズで、これまた変わったマウントなので気になっていたレンズでしたが、FUJI独特のコントラスト高い仕上がりはかわりないようですね。

M42時代からコントラストは高いようで、フジの小型カメラ用は結構難しいレンズだと思いました。


肝心なのはマウントアダプターですが、このころはマミヤZEシリーズやチノンやコシナやら、バブル末期の様相を呈していたのか、多くの異端カメラやAF併用レンズだとかAV・Tv両優先マルチオートだとかで妙な盛り沢山な時代でした。
  1. 2013/10/08(火) 03:26:48 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
貴兄のリクに従い、今回のアップは岡谷ではなく浦和産のレンズを当選としました(笑)
確かに70年半ばから80年初めにかけて、第二グループ以下の光学機器メーカーは生き残りをかけ、電子化の波に乗らんとし、マウント更新を含め、さまざまな策動があって、ダイナミックで面白い時代だったのかも知れません。
そんな中で、実は今年になってからだったのですね、フジが一眼レフでM42以外のバヨネットマウントなんか極めて短期間とは云え、リリースしていたとは・・・
たぶん、動かなくなったAXシリーズなど、ペトリよりも多いでしょうから、何処かのカメラ屋のヂャンクコーナーで出会ってはいたのでしょうが、関心が無かったので、気付かなかっただけ、というのが真相かも知れませんね。
でも、この不動ボディと無理心中する格好で仮死状態だったAXフジノンも適切なアダプタさえ作ってやれば、またフジの21世紀の主力機と仲良くコンビ組んで楽しい画を吐き出してくれると思うのですよね。
富士フィルムさん、純正品アダプタ作りませんか???
  1. 2013/10/10(木) 23:04:21 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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