深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A toxic mashroom grown in Fukagawa~Fukagawa Extra III Anastigmat2"f2~

Fukagawa_anastigmat_03.jpg
さて、今宵のご紹介は予告通り、久々の工房作品をご紹介します。
といっても、今回のは出来合いのレンズブロックにマウント付けたり、或いはマウント換装したりという、ちょっと気の利いたマニアなら誰でもやりそうなおイタぢゃなく、完全自社設計光学系の第三弾です。
見た目は、冬にも関わらず、季節はずれの毒キノコみたいなカッコしていますが、前群がゾナーの2群4枚構造、後群が2群3枚のガウス構造で、そう、昔々のトプコール5cmf1.5だかの構成を参考に前をジュピター8Mのエレメント選抜隊、後をキャノン50mmf1.8の曇らない特製エレメント入りアッセンブリを使っています。
しかし、エレメントの硝材、曲率、そしてコーティングも合わせて専用設計したわけではなく、エレメントの組み合わせで前後アッセンブリを組み、そしてそのクリアランスを試し、焦点距離を51.6mm付近とし、像面湾曲を抑える、という大よそ21世紀の手仕事とは思えない手法で、またしても作り上げたという代物です。
では、そんな大人のおイタがどのくらい性能を発揮出来るのか、実写結果を見て参りましょう。
ロケ地は浅草、カメラはX-Pro1での絞り優先AEでのオール開放撮影です。

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まず一枚目のカットですが、銀座線の出口から上がって、雷門周辺でモデルさんを物色していたら、居ました、居ました、ちょいとヒネてて物好きそうな黒人がこれまたひと癖もふた癖もありそうな白人女性と口角泡飛ばしながら、胸にはX-E1にアダプタ経由、エルマーみたいなレンズつけてたので、卒爾ながら、と声を掛け、モデルさんになって貰ったもの。
撮らせて貰ったあと、この画像を見せ、アンタらは世界で一本しかないレンズで撮られたのだぞ、とか恩着せがましく教え諭したら、高かったろう、どこで買ったんだ?とか聞き返されたので、「殆ど手間賃、ハンドメイドで~す♪」とか云ったら、両手と顔を天に向け、何てクレージーなんだ、とか苦笑してウケてました。
周辺はかなり甘いですが、画面中央付近の解像度も色再現性も悪くはなく、まぁまぁ面白く使える玉だということが判りました。

kinoko_002.jpg
二枚目のカットですが、いつもご好意に甘えて、いたいけな店番の小姐達を撮らせて戴いている仲見世入ってすぐの「黍だんご あずま」さんの前でかいがいしく働く、ショートカット新顔の小姐のお姿を一枚戴いたものです。
ここでも、タングステン光と蛍光灯のミックス、そして外光も入ってくるというかなり難度の高い光線状態ですが、このキメラの子は全然お構いなく、X-Pro1の正確無比なEVFのクロップ拡大の力を得て、かなり忠実に、若い小姐の柔肌やら、愛くるしいピンクのコスチュームのテクスチャなど精緻に描き出しています。
また前ボケも、名だたる銘玉でも見苦しいものが結構有る中で、及第点上げられるレベルではないかと思いました。周辺が甘いのはここでも同じですが、まぁご愛嬌ということで。

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三枚目のカットですが、ここも定番撮影スポットのうち、あずまさんの北西に位置する扇屋さん店頭のオブヂェの図です。驚くことに11月に入ったいうのに、まだ夏の季語であるほうづきがこれ見よがしに飾ってあったので、いつもの団扇だけのカットとは若干アングル変えて撮ってみたもの。
ここでも、ピンを合わせた、かろうじていまだに色味が残っているほうづきの実は文句無く、シャープで色再現性も良いですが、周辺はコマ収差と像面湾曲の影響でえらいことになっています。尤も、離れた後ボケはなかなかナチュラルに融けるようなボケでそこそこ味わい深い、というのが不思議な現象ではありますが。

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四枚目のカットですが、仲見世をまた宝蔵門方向に歩いていたら、健気にも着物姿の小姐が二名、いそいそと歩いてきたので、またしても卒爾ながら、と声掛けて並んで一枚撮らせて貰ったもの。
向かって左側の小姐の左目の睫でピンを合わせていますが、本人の髪の毛に一本一本までかなり微細に描写してはいますが、このレンズ、或る程度以上、反射率の高い被写体は大の苦手と見えて、色白?の小姐のお肌の様子はかなり飛び加減でデテールは省略していますし、白の着物に至っては完全ハイライト飛びを起こしています

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五枚目のカットですが、伝法院通りを西に折れ、暫く行くと天丼の大黒屋さんの前辺り、伝法院の南の通用門の前のちょいと引っ込んだ辺りで複数台の人力車が停車し、観光案内なんぞやっていたので、これ幸いにとばかりに一枚戴いたもの。
ピンは二台並んだ奥の力車の姐さんの横顔で合わせましたが、この距離になると、周辺の流れというか崩れは結構目立つようになり、比較的きれいなものだと関心していた前ボケも周辺領域になると、像面湾曲やらコマ収差、非点収差なんかが入り乱れ、大変なことになってしまいます。

kinoko_006.jpg
六枚目のカットですが、力車が停車していたすぐ近くに番屋もどきの建物があり、その障子戸の脇には、時代劇さながらの防火用水桶が積まれています。
ここでは、ピンは中央付近の桶上の「伝法院通」の文字に合わせていますが、全体的にコマフレアが覆い、周辺はぐずぐず気味で、まさに収差のデパート、もとい、よろず屋さん状態です。

kinoko_007.jpg
七枚目のカットですが、また仲見世に戻り、浅草寺まで着いたところで、久々に経済復興でも祈願すべくお参りしようとか柄にもないことを考え、まずはお清めとばかり、手水場に寄ったところ、ここでもイイ光線加減の上、いたいけな童子に「ハィ、しっかりと手を清めてね♪」などとオモニが優しく教え諭しながら水など掛けてあげている姿がいかにも平和的で日本的風景そのものだったので、EVFのピーキングモードで決め打ちしたもの。
ピンは当然、いたいけな極小姐のご尊顔に合わせていますが、中は薄暗く、外からの自然光で水面はかなり反射し、また参道の石畳もそこそこ照り返す、という悪条件で、よくもここまで撮れたものだ、と改めてX-Pro1の高性能さにも関心してしまったものです。

今回の感想としては、出来たのは三番目ながら、石垣島に行った四号機や、江ノ島で活躍した五号機に先を越され、この佇まいからしてオリヂナルっぽい三号機の登場は生誕から1年近く経ってしまいましたが、X-Pro1との組み合わせで、R-D1sやM8と組んだ弟、妹にも負けない出来になったのではないでしょか。

さて、来週はまた続々新規入荷中の附設秘宝館コレクションのご紹介です。乞うご期待!!

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2013/11/17(日) 21:00:00|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

原型はジュピター8ですか。

いやはや、ボケがすごい(笑)
キヨハラのソフトフォーカスもかくやという感じで、1枚目の様に狙った被写体に近接して撮影するのがベターなレンズかなって印象を受けました。

引いて撮ると周辺の像のぼやけ方が場合によってはうるさくなる時もあって、焦点合っている箇所がすごい狭い印象を受けるのですけどね。

ただ、見慣れてくるとこのボケ方がモザイクがかった記憶の様にも見えてきて、味わいになりそうです。

それにしてもフルチューニングでこういうレンズを作ってしまうと、バランス取りが難しいと思いますけど、すごいなあと感じるばかりです。

うちのジュピター8もこういう映りになるのか、来年あたり試してみませんとね。
  1. 2013/11/17(日) 21:13:21 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:原型はジュピター8ですか。

出戻りフォトグラファー さん

有難うございます。

そうです、このレンズ、前群とハウジング前半分はジュピター8Mのものを貰い、後群とヘリコ&マウントアッセンブリはキャノンL50mmf1.8のものを用いています。

このシリーズ、そもそも一号機の開発背景が、後群の凹レンズがすぐ白濁し、しかも交換以外、回復の道が無いので、それならば、ということで、同じ焦点距離のジュピター8Mの後群と交換し、周辺が甘いものの中央部はシャープでヌケが良い玉が出来たので、次の試みとなる二号機ではジュピター8Mの後玉に代え、オリンパスOMの後群を装着し、この三号機では一号機の反対の構成としたのです。

なお、四号、五号機は全く別のレンズのエレメントで構成しています。

ところで、このボケはなかなか強烈ですが、慣れると美味しく思えるようになるかも知れませんね、まさにくさやとか鮒寿司とか、シュルストレーミングとかそんなもんかな(苦笑)
  1. 2013/11/17(日) 23:42:12 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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