深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Nostalgic but practical enough!~PETRI55mmf2CC~

Petri55mmf2-01.jpg
さて、今宵のご紹介は予告通り、工房附設秘宝館から、PETRI55mmf2CCの登場です。
このレンズ、中野と秋葉原で買われた2本から、イイトコ取りした上、エレメントクリーニング、鏡胴内部の反射防止策、そしてヘリコイドグリスを深川ブレンド入替えで組み上げたものです。

構成は通常の4群6枚の何の変哲もないPlanarタイプ、発売されたには1960年代前半から半ばと考えられています。

しかし、今以て不可思議なのは、PETRIのレンズというのは、両極端の程度のものが多く、前玉が江戸切子のウィスキーグラスの文様並みに多大なる擦り傷が入っていて、こりゃダメだわ、といいつつ、ヘリコやローレットには異常が皆無で、反対に前後エレメントは奇跡的に無傷でも、絞り羽が足りなかったり、中身のエレメント自体が足りなかったり、或いはヘリコ自体が食い込みか何かで不動だったり・・・そんな何処かしら欠陥抱えているものは、元々がデジタル時代にアダプタも無く、完全に取り残されてしまっている存在なので、値段は安く、1000円~2000円程度でよりどりみどり買うことが出来るのです。

ただ、SONYが満を持して発売したフルサイズのミラーレス兄弟は、ペンタプリズムみたいなデザインの突起が付いていて、妙にクラシックレンズとも似合いそうですから、こんな世間に忘れ去られたような、まさに秘宝もそのうち、手の届かないところに消えてしまうのかしれませんね。

では、早速、実写結果を見て参りましょう。
今回の機材も深川の秘宝、PETRI V6黒にモノクロフィルムはチェコ製のFomapan100EX36を詰めての全編開放撮影の浅草ロケです。

PETRI55mmf2_001.jpg
まず一枚目のカットですが、地下鉄浅草駅から地上に上がると、いつもの人力車の溜り場の傍らを通るのですが、そこで、東南アジアから来たと思われる観光客のカップルが物珍しそうに人力車に乗り込み、車夫の兄ちゃんもたどたどしい英語でリラックス、リラックスとか云って、必死にコミュニケーションを図ろうとしていたので、その様子を残すべく、一枚戴いたもの。
PETRIのレンズは開放ではそれほどシャープさを感じさせないチューニングのようですが、硬くなりがちなモノクロでもふんわりと、でも細部や質感の描写はしっかりとこなしている、という印象を受けました。
背景のボケは二線でもなく不可思議なボケで、特に面白いと感じたのは、かろうじて判別出来る、通り過ぎる自転車の車輪が、ドーナツ、もしくはかもめの水兵さん愛用の水色の浮き輪のように写り込んでいることです。

PETRI55mmf2_002.jpg
二枚目のカットですが、雷門前のちょっとした広場では、いつも途絶えることなく、世界各地からの観光客がやって来て、思い思いに記念写真などを撮っています。
このカットの極小姐もパパとママを採りたい、ということで、カメラを渡したお爺、お婆と思しき後期高齢者と広東語みたいな言葉で話していたので、中国からのお客さんなのでしょう。
モノクロには色彩情報が無いですから、その場の雰囲気を伝えるには、カラーに対し、かなりのハンデを負っているとも云えますが、それでも、この衣服のテクスチャから、笑った表情までデテールを余すところなく精緻に捉え、階調再現性に優れた描写によるハーフトーンの表現が一生懸命、両親を笑わそうと尽力する極小姐の奮闘をあますとこなく伝えてくれると思います。

PETRI55mmf2_003.jpg
三枚目のカットですが、雷門を通り過ぎ、仲見世通りを進んですぐの曲がり角にあるきび団子と甘酒のお店「あずま」さんの看板小姐の図です。
ここは先の毒キノコレンズの試写とほぼ前後して撮ったものですが、かなり強めの光線状態のため、全般的に程好い加減のハロが掛かった感じになり、えもいわれぬ雰囲気を醸し出しています。
また、この距離では背景の人物達の飲み食いする様子がやんわりとしたボケ加減でコミカルに描かれていると思いました。

PETRI55mmf2_004.jpg
四枚目のカットですが、先週の毒キノコ編でも登場戴いた、気のいい江戸下町の小姐コンビの図です。
先の登場ではどちらかと云えば、向かって左の淡色系着物を召された小姐主体に描写されたカットとなったのですが、今回は向かって右の濃い色の着物の小姐にピンを合わせて撮らせて貰っています。
ここでの描写を見てみると、現像されたモノクロフィルムをフロンテアでCD-Rに焼き込み、更にこのブログの容量制限に合わせて長辺830pに間引いていますからシャープネスはだいぶそがれるはずですが、向かって右の小姐の髪の毛に見られる精緻な描写は、やはりこのレンズは只者ではない、と思わせる説得力があります。
一方、背景は二線ボケを通り越し、それこそ油彩での抽象画の表現のように、それぞれの人、物の原型を留めない、凄い状態となっています。

PETRI55mmf2_005.jpg
五枚目のカットですが、仲見世通りの中ほどに在る、人形焼とおこしを店頭で製造販売しているお店で、いつもと違う若い衆が店先でニヒルにキビキビと働いていたので、「ちょいと兄さん、一枚撮らして貰うよ♪」と声掛け、はぃ、どうぞ☆とのことだったので、ぢゃ、そのままお仕事中のところを、ってことで早速一枚戴いたもの。
モデル役の兄さんの姿は勿論細部までビシっと描写していますが、このカットを採用した理由は、その奥、更にまた奥で働くおぢさま達との姿がとても佳き構図でボケの変化と共に楽しめるところなのです。

PETRI55mmf2_006.jpg
六枚目のカットですが、仲見世を中ほどで西に折れた伝法院通りの伝法院南側通用門前のちょっと引っ込んだところでの人力車揃い踏みの図です。
ここも毒キノコで撮りましたが、毒キノコでは、画質の均質性が非常に宜しくなく、中央部はシャープで周辺は結像がグダグダになってしまうという、それはそれで面白いエフェクトで描写しましたが、この真面目な逸品、PETRIの玉はそんな変化球ぢゃなく、まさに剛速球ど真ん中の極めてオーソドックスな描写で、程良いコントラスト、画面全体に亘る安定した画質で記録的でありながら、何処となく叙情的なテイストも匂わす作画を見せてくれたと思いました。

PETRI55mmf2_007.jpg
七枚目のカットですが、宝蔵門近くのお店の店先で、日本の伝統的遊具である竹とんぼで戯れる親娘が目に留まったので、ダッシュで出演交渉、まぁ、珍しいカメラだこと、ホラ撮って貰いなさい、ということで、一枚撮らせて貰ったもの。
本来であれば、この臨場感溢るる、極小姐の弾んだ声さえ聞こえてきそうなカット、是非ともその場でお見せしたかったのですが、何せ、フィルム、しかもミニラボぢゃ手に負えない存在になってしまったモノクロですから、残念ながら、この上がりはご覧戴けていないのです。う~ん残念。

PETRI55mmf2_008.jpg
八枚目のカットですが、宝蔵門をくぐり、浅草寺境内に入り、お参りしてから、中を散策しながら、色々と撮ったのですが、その中で、おみくじ売場越しにスカイツリーを撮ったカットが面白かったのでアップしたもの。
ここでは画面向かって左端のカップルにピンを合わせたのですが、面白いことに後方はかなり被写界深度に入っているようにも見えるのですが、手前に位置する右側のリュックの小姐はより被写体に近い筈なのに後方の人物よりボケ加減が大きく見えます。
曇天気味の天気だったという記憶ですが、肝心要のスカイツリーはまさに空に溶け込むような白色系の塗料だけあって、このカットでは空に滲んで屹立しているようにも見えます。

今回の感想としては、PETRIの標準レンズでの撮影は今回で3回目、フィルムでは今夏の富岡八幡宮でのお祭りでのEKTAR100の撮影に次いで二回目ですが、PETRI V6黒もミラー、ファインダアイピース系を交換し、巻き上げ、シャッタ-周りもきちんと清掃、注油して整備してありますので、なかなか信頼性も高く、巻き上げ、レリーズのフィーリングも素晴らしく、気持ち良く撮れ、描写も現像してガッカリってことが無く、良い方に裏切られ続けていますから、産まれ落ちた1964年当時とは異なり、少なくとも21世紀の深川ではNikon、Canonのフラッグシップ機と同等に活躍して貰えそうです。

さて来週は、今週土曜日の深大寺ツアーからのレポートをお送りしようと思います。乞うご期待。
  1. 2013/11/24(日) 19:59:41|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

モノクロフィルム+ペトリ=?

Charley944さん
お疲れです。

PetriのレンズはこちらでもNEX-7との組み合わせで取り上げてますが、中々良い画が撮れるので重宝してます。
それに仰る通り今のところアダプターが市販されてませんから、より取り見取りでそれなりに程度の良いものを確保できますね。
今回の作例は、フィルムの性状に寄るのかもしれませんが、いつものデジタル画像よりも奥行きが感じられます。
それに二・四・七枚目は瞬間を上手く切り撮って凝縮した様な印象があります。
PointAndShootingじゃないですが、ファインダー越しに上手く狙ったなと言う印象を持ちました。

それ以外の写真も記録写真と言うか観光地紹介の写真ぽい印象です。

やはりPetriV6との組み合わせ、更にはチェコ製のモノクロフィルムの味わいなんでしょうね。
ネオパンやTX400だとこんな風には行かないかなと思いました。

とは言え現像代+CD-R焼き込みで1本1000円だと考えてしまいますね。
三本撮れば、中古市場でM42マウントの程度の良いレンズが買えちゃうわけですし。

とは言えこういう作例を見てしまうと、やはりフィルムでも撮りたくなるのがなんともはや。
金もないのに贅沢しちゃいけませんねえ。
  1. 2013/11/25(月) 22:00:44 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:モノクロフィルム+ペトリ=?

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

このところ、隔週くらいでフィルム1本くらい撮ろうと心掛けています。

実は先週末の深大寺ツアーではM42の適当なボディが無かったので、何とF-1ODでM42使えるようにアダプタこしらえ、富岡のレンズで一本撮ってみたのですが、まさにF-1がクラウンやセドリックみたいなその時代の高級車で、ずっしりとした安定感ある撮影フィーリングで撮り進められるのですが、このV6はまさにカローラレビンとかサニーなどのツインキャブモデルみたいに軽快にキビキビとした操作フィーリングでスリルもあって、撮れた画への期待も大きいですよね。

まぁ、確かにモノクロの現像+CD焼一本1050円が高いか安いかは、ランチに毛が生えたくらいという見方も出来ますし、3本撮ったら、M42のそこそこのヂャンクが買える、という考え方もあります。

しかし、良いヂャンクを買うと、是非、フィルムでも試してみたくなりますので、まさにどっちから行っても行き着く先は泥沼ってことかも知れませんね(苦笑)
  1. 2013/11/25(月) 23:18:42 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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