深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

此奇貨可居~Pentacon29mmf2.8~

Pentacon29mm.jpg
まずはお詫びと訂正から。今週末のアップは工房作品からと云いながら、水曜日に衝動買いしてしまったレンズの試し撮りがしたくて、伴走機としてモノクロ専用機に転進したR-D1sを従え、湘南まで出かけてしまったので、浅草辺りでちゃかちゃかっと作例作って、ハィ今回も声掛けたらこれだけ撮影に応じてくれました♪なんて手軽な紹介とは行かず、急遽、差し替え、その衝動買い結果をアップさせて戴きます。

このレンズ、なかなか買って来てから気づいたのですが、なかなか変わっています。
まずは焦点距離、29mmなんてヘンテコなのは世界中捜してもこのモデルだけでしょう。
また、銘板には通常刻印されているシリアルNo.というものが全く見当たりません。

しかし、よくよく細かいところを見ていくと、1980年代作の外貨獲得用の輸出向けレンズとは思われますが、鏡筒内部やレンズ後端の反射防止処置は、1960~70年代のわが国の輸出用レンズのそれよりも良く出来ており、いかな東ドイツ国営企業製とは云え、元はカールツァイスだけあって結構几帳面な作り込みとなっていて、同時期の描写性能には当たり外れがあるものの、造りは概してシャビーだったソ連製の光学製品とは一線を規しているのではないかと思いました。

構成は7群7枚のレトロフォキュタイプ、Multi Coatingとこれみよがしに書いてある通り、緑の反射面も華やかなマルチコーティングのモダンなレンズです・・・が、同じ江ノ島でテストしたら、相手は50mmとは云え、見た目はしょぼいルビーもどきコートのロシア製シネレンズには逆光では全く持って太刀打ち出来なかったです・・・笑

では早速実写結果を見て参りましょう。

Pentacon29mm_001.jpg
まず一枚目のカットですが、稲村ケ崎の駅から降りて、海沿いの街道から一本山際に入った江ノ電の線路沿いの道には瀟洒な住宅が数多く並んでいるのですが、そのうちの一軒の門扉横にアルミ製の素敵な外灯が有ったので一枚戴いたもの。

このレンズ、実は25cmくらいまで最短距離が寄れるそうですが、なにぶん、気温が高めの日にカメラを首から提げていたため、ファインダアイピースが結露し、なかなかピント合わせが上手くいかず、このくらいの距離でやっとスプリットイメージの合否が判ったのです。

アルミ製の被写体は勿論のこと、背景の木製の塀もなかなか良い色具合で再現されていますが、ただ、その後ろの木々の枝葉は若干暴れ加減です。

Pentacon29mm_002.jpg
二枚目のカットですが、その線路伝いの道を七里ヶ浜方面に歩いていくと、線路の上、山肌にしもた屋風の再生家具屋さんがあり、いつも顔を出して、挨拶代わりに何枚か撮らせて貰っており、今回は家屋内で接客中だったので、外回りだけ何枚か撮らせて貰ったうちの一枚。

ピンは手前の芒の穂に合わせていますが、画面全体の発色もバランス良く、背景も映画の一シーンみたいに穏かなボケ加減となっていて、鎌倉のはずれの静かな冬の一日という雰囲気を醸し出してくれたのでは、と思いました。

Pentacon29mm_003.jpg
三枚目のカットですが、江ノ電沿いの道が海沿いの道と合流してすぐ目の前にある、七里ヶ浜駐車場から砂浜に降りてみたら、和装の妙齢の女性とその他一名が潮風と戯れておられるご様子だったので、背後から借景として一枚戴いたもの。

このカットでは、冬とは言え、晴天の昼下がり、1DsMKIIはISO200でもf2.8の開放は1/8000のシャッター速度を走らせていました。

なお、このカットではこのレンズのあらというかクセがひとつはっきり出ていて、それは、画面向かって左下の砂浜の足跡が、非点収差の影響か、波以上に盛大に動いているように見えることです。

Pentacon29mm_004.jpg
四枚目のカットですが、腰越漁港で一旦降りて、江ノ島に着いてから洲鼻通り経由、江ノ島へ向かう渡海橋への地下道から上がるところで、前を行くカップルの影が伸びていたので一枚戴いたもの。

実はテスト撮影の前日、古玉愛玩の同志Sunday_Photographerさんから、逆光には弱い、との事前情報を得ていたので、それでは、といつものテストパターンとしてトライしてみたもの。

画面中央最下部にクリオネそっくりのコーティングの補色のゴーストが出ていますが、まぁ上からは直射日光、下からは石張りの歩道からの照り返しがある中で、上出来なんぢゃね?というのが偽らざる感想で、ただ、被写体のお二方の頭部の毛髪が、EOS1DsMKIIの撮像素子の受光量の限界なのか、或いは光学系での強烈な光線の回り込みによるものなのか、輪郭がぼやけてしまっているのが残念に思いました。

Pentacon29mm_005.jpg
五枚目のカットですが、渡海橋を渡り、参道を通り抜けて、弁財天社の階段から元来た参道方向を振り返る格好で一枚撮ったもの。

ここでまた、このレンズの驚くべきクセが明らかになりました。
眼下の真直ぐな石の階段がわずかに円弧状に曲がっているのはご愛嬌としても、画面向かって右端寄りの黒のダウンパーカーの小姐のお姿があたかも左サイドからの強風に煽られたかの如くぎゅっと右方向にひん曲がっているかのように写り込んでいます。

まぁ、銀塩フィルム時代であれば、平坦度はシリコン半導体の撮像素子ほどシビアではなく、受光面自体も何μかあったので、ここまで目立たなかったのかも知れませんし、またAPS-フォーマットであれば、中央部のみのトリムとなりますから、不運な?ディストーション小姐の姿も写り込むことはなかったのかも知れません。

Pentacon29mm_006.jpg
六枚目のカットですが、弁財天社階段右手の坂道から島の裏手方向、岩屋方面へと向かい、その坂道の途中で木立が途切れて午後の傾き掛けた冬の陽射しが景観型のガードレールを照らし、素晴らしい陰影を作っていたので一枚撮ってみたもの。

明るい陽光の下や反射率の高い被写体ではいまひとつ良いとこ無しのこのレンズですが、こういう暗めの締まった配色の被写界はそこそこイイ線行っているカンジで、ただ、四隅がちょいと流れ加減なのが残念でした。

Pentacon29mm_007.jpg
七枚目のカットですが、島の裏手の道を歩きながら、反対時計周りでヨットハーバー方面に向かう途中、断崖絶壁に向かって視界が開けたところで岩肌に芒が茂っていたので、その対比が面白くて一枚撮ってみたもの。
ピンは芒の穂に合わせていますが、背景の断崖絶壁は若干崩れ気味です。

また前ボケも崩れ気味ではありますが、この配置ではシャドーとなってそれほど目立たないのがラッキーでした。

Pentacon29mm_008.jpg
八枚目のカットですが、前回のYashica DSB50mm f1.9のテストで好評?だったヨットハーバー近くの小田急
ヨットクラブの全景の図です。

ここでは、これまでのカットで見られたような四隅の崩れや樽状のディストーションはそれほど目立たず、寧ろ、控えめな発色や緻密な線描写が、やはりドイツのレンズの血脈を感じさせてくれると思います。

Pentacon29mm_009.jpg
九枚目のカットですが、江ノ電の鎌倉高校前駅ホーム上から撮った江ノ島に沈む夕陽の図です。

島での撮影が終わり、江戸表へ戻るため、江ノ島から再び乗車した車中から江ノ島に夕陽が沈むのが見えたので、江ノ島ツアーに良く連れて行ってくれた今は亡き新宿の老写友教えて貰った「夕陽は鎌倉高校前のホームから眺めるのが一番綺麗」という言葉を思い出し、前の席のちょいと美しい小姐二人組(の眺め)に心の底でサヨナラを告げ、鎌倉高校前で途中下車し、藤沢方面への電車を待ちながらスマホンで夕陽の撮影をする女子高生達に混じって撮った、刻々と海に沈むオレンジの火の玉はとても美しく、このちょっと落ちこぼれ気味?の東側に産まれた名門の末裔は最後に満塁ホームランを打ってくれたカンジでした。

今回の感想としては、フルサイズの撮像素子を持ち、測定器並にシビアなプロ機ではこのレンズもあらが目立ち、いいとこ無しですが、たぶん、50Dとか20Dで持ち歩けば、47mm相当でスナップには使い易い画角の上、四隅の流れも切られてしまうので、結構、便利に面白く使えるのではないかと。

さて、来週はこの1DsMKIIと伴走したR-D1sによるモノクロ撮影珍道中編をお送り致します、乞うご期待!!

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2013/12/08(日) 18:10:37|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

レンズの素性を探るなら

NEX系の機種で試写をやった方が良いかもしれませんね。
或いはX-Pro1のライブビューモードで。

EOS系はどうもファインダーと実際の画像のずれが気になるのですよ。
この前もhiroさんが指摘されてましたが、EFレンズと違って微妙にCMOSが合わない可能性もある様ですし。

それはそれとして、晴天下の光量では流石に東欧レンズというか元CarlZeissの面目躍如というところですね。
はっきりした画像になりますし、見ていて飽きません。
四枚目に関しては、逆光でもこれくらいならってところですが、人物の輪郭が頭側だけボケているのが気になりますね。やはりEOSの癖なんでしょうか。

六枚目と九枚目の写真はやはり光がちゃんと入っているだけあってきれいですし、光の差し込みがインパクトに繋がっている様に見えます。
特に九枚目の夕日はよく光が破たんしないできれいに回ったなあと思うのですよ。
NDフィルターとか使いました?
ただ、手前側の駅前照明の先端部がぼやけているのが気がかりです。
広角系だと普通遠景に合わせたら全体的にピントが合いそうなものなんですけど。
それと画面下部の線路への夕映えが色飽和を起こしたのか真っ赤なアクセントになってしまっているのがねえ。何かこう惜しいかなあと。

おそらく分解清掃をやった上でトライしていると思うのですけど、このレンズもしかして5~6m近辺で焦点合わせてスナップ撮影で使うのがベターなのかなと言う気もします。

同じような取り方だと思うのですが8枚目は手前から奥まできっちり焦点合っている感じに見えますし。

ちょっと微妙に癖がある広角レンズなのかもしれませんね。

それにしてもオールドレンズを試すときはやはり光量をちゃんとチェックしないとダメそうですね。
レンズの良いところを見つけないといけませんし。

  1. 2013/12/09(月) 21:40:53 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:レンズの素性を探るなら

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

実はこのレンズ、お値段もそこそこだったことから、中も外観もキレイな状態で、最初の面と最終面のみクリーニングし、無限のチェックのみ行って、実質、買ってきたままでトライしたのですよ。

でも、やはりEOSプロ機のシビアさには敵わなかったようで、貴兄の言われる通り、APS-C機でのテストがアラも目立たずちょうど良かったのかも知れません。

また50Dであれば、Digicが新しいですから、一番下のカットみたいに線路の光沢面に映る残照が真っ赤に飽和してしまうという現象も起こらなかったのではないかと思います。

しかし・・・実はこの1DsMKIIと未知数の東独レンズの伴走機のR-D1sでの国産35mmf2レンズのモノクロ撮影がとてもインパクト有り、早く来週のアップをしたいとワクワクしています。

え、臨時更新って手が有んぢゃね?って・・・あんまし頻繁にアップしたら、もうネタが切れちゃいますよ(笑)
  1. 2013/12/09(月) 22:57:10 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

EOSの実像とのズレは、ミラーかフォーカシングスクリーンじゃないかと思ってはいます。検証した所で対策は変わらないので、ズレの調整できるチップで補助してますけど、それでも中央以外はちょいちょい外しますね。

ここぞというときは、なりふり構わずライブビュー使う事にしています。
  1. 2013/12/10(火) 01:33:45 |
  2. URL |
  3. JY #mQop/nM.
  4. [ 編集]

JYさん
有難うございます。

この銀塩オンリー時代の設計である、広角レンズのいまひとつすっきりしていない結像の原因は実は或る仮説が立ってます。

要は、デジタル前提で設計すれば、シリコンフォトダイオードと空気の間のカバーグラス、UV/IRカットフィルタ、そしてマイクロレンズという屈折率の異なる境界面を幾つか通り抜ける前提で収差を設計することになりますが、一方、銀塩前提の設計であれば、そのまま、空気層を通ってダイレクトにハロゲン化合物を塗布した感光面に光線が到達する前提で収差設計することになりますから、特に光路長と結像の関係がシビアとなる広角レンズでは、このようにあらが目立ったのではないかと云うことです。

その対策としては、貴兄が言われる通り、やはり実像、即ち撮像素子経由の像を見てピンを合わせるしかないのかな、とも思います。

尤も1DsMKIIにはライブビュー機能はありませんが・・・
  1. 2013/12/10(火) 22:49:51 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

zeissも初期のころはgoerz社なんかも吸収して、(前玉が柔らかくキズが付きやすい難点があっても)ダゴールを再発したりして面白かったですが、今回のペンタコンも、ちょっと渋めのメイヤーの系統なんて気がしました。

メイヤーもすっきり写るトリプレット系は最近なかなか人気があるようで、100mmなんてかなり高価になってしまったようです。

その一方、人気が二分される35mmのプリマゴンですが、これもf4.5の開放でも収差が周囲に残るという恐ろしさをalpha7あたりで上手に習得(克服)すれば、使い方次第での個性的なレンズとして再評価されると思います。

ということで、このマルチコート・ペンタコン29mm攻略のヒントになれば幸いです。

***

これだけコントラストがあって収差もガッチリ系のふわふわ感の無い描写なら、モノクロではきっと使い易いという感じもしました。
Alpha 7のある現在、このクラスも容易に試写の射程に入るので、こうした奇妙な焦点距離なども見直されてきてもおかしくはないでしょうね。
  1. 2013/12/11(水) 06:53:38 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
確かにこのレンズ、光線加減も難しいですし、フルサイズ機ではフィルムより周辺のアラが目立ってしまうこともあり、構図にも気を回さねばならないので、人物を居合い斬りするようなキャンディドフォトに使うのは現実的ではないのかな、とか思いました。
しかし、仮にCCDでフルサイズの撮像素子を持つデジカメがあったら、モノクロモードで撮ってみたら面白いのかな、などとも思いましたが、あ、そうだ☆ 工房新製品のM42->FDカプラ使えば、愛機F-1ODでKentmareのモノクロフィルムでフルサイズ撮影出来るんだ(笑)
て、ことで次回はモノクロフィルムで試してみませう。
  1. 2013/12/15(日) 23:01:28 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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