深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A port of deer~鹿港旅情’13②~

さて、今宵のご紹介はまた定常更新に戻り、先週の予告通り、台湾中部の旧跡都市、鹿港後編をお送り致します。

現地着は15時も回ってのことでしたが、何せ、滞在期間中は台北周辺は四日間の滞在期間中、ずっと雨との予報で、実際、その通りとなってしまったのですが、北回帰線より南部のここ台中エリアでは薄曇で時折、太陽の輪郭すら垣間見られる程度の天気だったので、ここぞとばかりに気合い入れ、日没まで36枚撮りフィルム3本とX-Pro1でのデヂタルでも100カット強を撮ったのでした。

機材は、カメラは全て、Zeiss Ikon ZにKentmare100EX36、レンズは1枚目のみErmarit28mmf2.8、2~10枚目がAngenieux35mmf2.5改M、11~15枚目がProminar50mmf1.4改Mです。撮影条件は全て絞り優先AE、フジフロンテアCD経由のJPEGリサイズでのアップです。
では、異国鹿港での休日、後編を見て参りましょう。

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まず一枚目のカットですが、老街の路地を八曲巷方向へ徘徊しながら、ふと見上げたら、それこそラストエンペラーか何かに出て来そうなレンガ積みの重厚な建築物の壁がそそり立っていたので、見上げる格好で一枚撮ってみたもの。

さすが銘玉の誉れも高い三代目Ermarit28mmf2.8、コントラストも十分高く、レンガ、鉄格子、それぞれの質感をモノクロでも余すところなく伝えてきています。

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二枚目のカットですが、先に写真撮ったレンガ造りの古建築のすぐ近くの路地の様子です。

本当は横着せず、もっと奥で撮ればよりクラッシックな雰囲気が伝わったのでしょうが、この路地の突き当たり、といってもT字路なのですが、やはり古めかしい木戸がレンガ塀に嵌め込まれており、狭くて薄暗い石畳の路地に佇んだ時のタイムスリップ感覚を掻き立ててくれたのでした。

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三枚目のカットですが、路地を通り抜けたら、おもむろに民草の生活の息吹溢るる商店街?みたいな通りに出たので、そこの乾物屋のような店付近にたむろしていた人々にネイハオ!とか声掛けて一枚撮らせて貰ったもの。

みんなこっち向いて、あさっての方向を指差して何か云っているように見えますが、指差おぢさんはこの後破顔しているので、たぶん、写真撮るなら、あっちにイイところが在るぞよ♪と教えてくれたのではないかと思います、確かに指差方向にこの後訪ねた鹿港随一の名所「掏乳巷」が在ったのですから。

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四枚目のカットですが、更に商店街みたいなカンジの比較的大きな通りを歩いていたら、市場?みたいな広場に辿り着いたので、奥の古めかしい雰囲気の建物をバックに八百屋みたいな店先を一枚撮らせて貰ったもの。

これまでのカラーでのデヂタル、フィルム撮影ではシャープな写りを見せてくれたAngenieux35mmf2.5ですが、このようなクラッシックな街角では、まさにまどろむが如き描写で、レトロな雰囲気をよりいっそう濃厚にしてくれたのでは、と思いました。

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五枚目のカットですが、市場のような広場から、来た時にバスで通った、メインストリート迄戻り、老街のランドマーク的な建物としてバス車中で目を付けていた中華風外装を纏った交差点付近のビルを通行人越しに撮ってみたもの。

どうしてなのでしょうね、初めて訪れた筈の異郷の街なのに、こういう中華風の建物が街の中心部に建っているのを見ると、そこはかとなく懐かしさを覚えてしまうのは。

きっと華僑が根付いた街は何処であろうと、彼らの共通の美意識で街造りをするので、駐在したことのあるバンコックでも、仕事で何十回も訪れた香港でも、そして日本の横浜でも神戸でも、長崎でも、彼らには普遍かのようなメインランドでの伝統的な街造りのエッセンスを無意識に目にしているからなのかも知れませんね。

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六枚目のカットですが、また市場に戻り、辺りを徘徊しながら被写体を捜していたら、赤子を抱いた若いヲヤヂさんが体を上下左右に揺さぶりながら、現地の子守唄?みたいなのを口ずさみながら、とある商店の店先であやしている姿が目に入ったので、声を掛けて撮らして貰ったもの。

まだ物心つかないであろう乳幼児ながら、小生のカメラを真直ぐに見据える目線と表情は、やはり華人という民族はしっかりした人物が出るのだろうなぁ・・・とか妙に感心し、たぶん、何を云ったか判らなかったかも知れないでしょうが、ヲヤヂさんには、将来、この子、大物になるかもよ、と英語で述べ、お礼を云ってその場を後にしました。

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七枚目のカットですが、市場から「八曲巷」捜しながら偶然見つけた、これまら時代物のレンガ造りの古建築です。

この頃には、冬の一番寒い時期でもあったので、全然気にはならなかったですが、亜熱帯に属するここ台中エリアで、冬は良いとして、夏場の気温や湿気が高い時期では、大陸の寒冷地仕様?の石造りやらレンガ造りの家屋では、エアコンも団扇を扇ぐ奴隷も居ない清代の台湾ではいったいどうやって過ごしていたのか、考えただけでも気が遠くなりそうでした。

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八枚目のカットですが、先ほどのレンガ造古建築のほど近くに在るレンガ壁に囲まれた路地の佇まいです。

カラーでは、現代の遺物、例えばその象徴的なものは、20世紀になってから発明されたステンレスで出来た、雨水タンク、或いは緑やら赤のポリバケツ、プラホースなどですが、モノクロの良いところはそういう邪魔者を消してしまい、ただひたすら過去の暮らしのイメージだけを伝えてくれるフィルターの役割をしてくれるところだと思います。

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九枚目のカットですが、また暫く歩いた辺りの裏通りの入り口付近にこれまた町並みとお揃いで誂えたかのような、クラシックなデザインのややくたびれたスクーターが壁にもたれかけて置いてあり、えもいわれぬ雰囲気を醸し出していたので、一枚戴いたもの。

石畳の路面とレンガ造の壁、そして古風なスクーターとくれば、「ローマの休日」を思い出してしまいますが、この直後、エクスキューズミーと言って後ろから来たのが、買物帰りのローカル高齢女性、あぁ、まさに「老婆の休日」実写版とはこのことでした。

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十枚目のカットですが、くだんのお婆さんがスクーターで去った後も裏通りを徘徊していて見つけた、漆喰壁の路地の佇まいです。

ここは路面も石畳ではなく、漆喰ないしモルタルで舗装されており、良い案配で時間を纏ってますから、遥か後方の中層ビルが屹立する姿さえなければ、それこそ、「燃えよドラゴン」とか、「酔拳」などのカンフー映画で主人公と華風悪役商会のキャスト各位が大立ち回りなんかやったら画になるだろうなぁとか思ったものです。

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十一枚目のカットですが、また迷路の如き裏通り探検をしていたら、市場広場に辿り着いてしまったので、ここで何組かに声掛けて、ローカル人物観察と決め込むこととし、まず手始めにと、如何にも人の良さそうなお婆ぁが、店番もそっちのけでお孫さんと楽しそうに遊んでいたので、思いっきり広東訛りの中国語で話し掛け、一枚撮らして貰ったもの。

ここから、フィルム撮影は初になるKowa Prominar50mmf1.4でのモノクロ撮影になりますが、デジタルでのカラー撮影でも、当時の国産最強の呼び名も高いRF用ハイスピードレンズは、モノクロでのシャープネスもコントラストも、階調再現性も、そして背後のボケもとても満足行くもので、これからはフィルムでもどんどん使ってやろうと思いました。

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十二枚目のカットですが、お婆ぁと孫の近くで落花生を商っていたお爺にも声掛け、モデルさんになって貰いました。

ここでも、街並みには及ばないまでも、幾星霜を経たベテランの商人のしたたかな雰囲気が滲み出て、とても気に入ったカットになりました。

撮影後、「多謝」と一礼して立ち去ろうとしたら、ニコニコ笑って、殻剥いていた落花生を差し出して来たので、旅先の撮影なので、買い物は出来ない旨英語で話したら、「プレゼント」と言って、一掴みの落花生を戴いてしまいました。

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十三枚目のカットですが、市場広場の奥まったところにある飲食屋台のエリアでの撮影です。

ここでは、麺類を啜るいたいけな極小姐を見守る手前のウインドブレーカーのヲッサンにピンを合わせましたが、距離がそこそこあったため、極小姐も、周りで暖かく声掛け励ますヲヤヂさんと思しき恰幅の良い大人まで被写界深度に入ったようです。

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十四枚目のカットですが、今回の街巡りのハイライト、「掏乳巷」の入口から通りを見渡した図です。

さすが、50mmf1.4、浅めの被写界深度を活かし、1.5mほど先の窓のエッヂにピンを合わせて撮りましたが、前ボケも後方に伸びる狭い路地の様子もなだらかなボケで幻想的に描写出来たのではないかと思いました。

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十五枚目のカットですが、その「掏乳巷」を写真撮りながら往復したのですが、その出口付近に着いて、反対側から路地の全景でも撮ろうかいな、とか思ったところ、すれ違った家族連れのやんちゃ坊主がよほど撮って貰いたかったらしく「ダァ~」とか絶叫しながら、まだ幼い妹と友にカメラを構える小生の方へ突進して来たのを反射的にシャッター切ったものです。

小生のところまで来た幼い兄妹は、息を切らしながら中国語で何か聞いて来ましたが、何を云っているのか全然判らず、「日本」(リーペン)と「拍照」(パイヂャオ)は聞き取れたので、遅れてやって来た親御さんに日本から来た、アマチュアカメラマンで初めて来た鹿港で面白い写真を撮らせて貰ったみたいだ、有難う、でもデヂタルぢゃないから、旨く撮れているかどうか、帰って現像しなきゃ判んないけどね、といった旨英語で説明し、向こうもグッドラックと云ってくれました。

今回の感想としては、やはり台湾は面白い、いつもの九份、淡水も勿論イイですが、たまにはこういう地方での偶然の出会いや突発的シャッターチャンスという僥倖に巡り合う旅ってのも素晴らしいと思った次第、次は台南でも行ってみっぺか。

さて次回は恒例、ノンライツRF友の会の愉快な面々との新春川越乱写ツアーからのレポートとなります。レンズ銘不詳、謎のモンスター広角レンズでのモノクロ撮影行をお送り致します、乞うご期待。

テーマ:旅の写真 - ジャンル:写真

  1. 2014/01/13(月) 17:04:29|
  2. 旅写真
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

KOWAがすごい!

何なんでしょうね、この時代のオールドジャパンハイスピードレンズの仕上がり具合は。
下手なライカレンズ買うより、こっちを買った方が満足度高そうじゃないですか。

Elmaritは安定の映りとしても、Angeniuexがフィルムっぽいもやっとした映りになるのに対して、フィルムを使っているのにKOWAはフィルムなのにデジタル並みのくっきりとした映り具合でびっくりです。
こういうのを見てしまうと欲しくなって行けませんね。
KOWAのレンズって、当時の特許を回避するためにとんでもないつなぎ方をボディとレンズ間でやっているので、マウントアダプター加工がとんでもなく大変なのに、これをMマウント距離計連動までやってしまうのですから、Charley944さんすごいですわ。
その内、どこかで技術委託できるところが出てきたら、自分もKOWAProminarを確保して加工を依頼したいものです。

それにしても15枚目があるからまだ通路だなって判りますけど、14枚目単体で何の事前説明もなく出されたら「デススター攻略用の排気口への誘導路模型」とか言われてもわかりませんわ。
質感が煉瓦に見えないんですよね。
何かこうプラスチックを加工してウェザリングを施したみたいな感じであまりに人工的な映りに見えるのですよ。
多分KOWAならではなんだろうな、この映り。

さて、KOWAでここまで映るとなると、次回の川越謎のモンスターレンズの出来が楽しみですね。
今から準備しとかないと(笑)
  1. 2014/01/13(月) 23:58:08 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:KOWAがすごい!

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。

確かに70年代はこのKowaにせよ、某35mmf2.5のウルトラレンズしかり、国産のレンズは尖ってましたね、ヘタに手を出せば、ケガするくらい(笑)

でも、色んなトライ&エラーして使いこなせるようになったら、こんな楽しいもんはないんぢゃないかなぁ・・・とか煽ってみたりします。

いずれにせよ、深川の技術にもう一工夫して、速い、上手い、安い、という三拍子揃ったアライアンス先も近いうちに出てくるでしょうから、この50mmff1.4といい、50mmf2といい、面白いレンズもより手軽に楽しめるようになるのではないかと。
  1. 2014/01/16(木) 23:17:10 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

カラー写真は、色が何故か時代の感性というのか時代を背負ってしまうと云うのか、数年すると『なつかしい、当時の色』なんて感慨を持つことがあります。その点、モノクロは時代を超越できそうですが、モノクロでも何故か『古い時代』という感性をとことなく担うことも時にはあるので、ムツカシイです。

今回の二枚目の店先ですが、細かい商品名を見たいという欲求が湧いてきます。カラーと違い、モノクロでは詳細を頭の中に叩き込んでから理解してゆく経過がありそうで、なかなかモノクロトーンという美的な観点からだけで見てゆくことが出来難いです。

煉瓦の裏通りなんかは、どちらかというとトーンだけで楽しむような美的な範疇に入りそうですが、それでも煉瓦自体の時代を背負った風格を見つけたいが為に、あたかも建築家が要求するような、細部を映し出す精妙な再現性も期待したくなります。

広角レンズでの裏通りというのも、パリの20世紀初頭までを撮影したアジェという写真家の写真を評し、無人の景色に対して『人の気配がする』と言わしめたように、人間の営みを感じさせるモノへの注視を誘います。
それは植木だったり、さっきまで点灯していたような街灯だったり、真新しそうな扉だったり・・・。


モノクロって、意外とカラーよりも写真的な感興があるのかななんて、思ってしまいました。

  1. 2014/01/24(金) 06:20:36 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

今回は特に難解なコメントなので、良く理解し切っていないのですが、要はもっと手が切れるくらいシャープな方が宜しいってことなのでしょうか。

実のところ、フィルムをフロンテアで撮ってそのデータを間引いてCD-R化し、更にそれをブログアップ用にリサイズしているので、或る意味、こういう使い方では、R-D1sやX-Pro1のモノクロモードの方が却ってシャープに映るのかも知れません。
  1. 2014/01/28(火) 23:22:00 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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