深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Levithan in the history of Japanese Optics~Konica AR Hexanon57mmf1.2~

さて、今宵のご紹介は予告通り、工房附設秘宝館のコレクションから、新春早々、超大物いっちゃいます。

その名もAR Hexanon57mmf1.2、国産レンズの中でも最大級の大きさと重量を誇るスーパーレンズです。

このレンズ、今は亡き小西六から、1960年代後半に発売となったARシリーズの目玉レンズのひとつとしてラインアップされました。

しかしながら、当時、国内では俗に言う「システム一眼5社」の牙城は崩すことが出来ず、結局は欧米を中心とした輸出に販路を求めたらしく、この弩級標準レンズをはじめ、Hexanonの珍品は国内ではまずお目にかかれず、あったとしても、逆輸入品であることが殆どのようです。

構成については分解したことがない上、物故メーカー製品なので反射面と絞りの位置から推定せざるを得ないのですが、おそらく絞りより前が2群3枚、絞りより後が3群4枚の5群7枚という、いわゆるズマリットタイプではないかと思われます。

ただ、並みのズマリットタイプと違うのが、このレンズの怪物たる所以なのですが、今なお恐るべき線量を誇る、アトミックレンズなのです。

噂には聞いていましたが、通関に2週間以上かかり、おかしいなと思ったのも束の間、夏の非ICSの中古カメラ博で面白半分に会場にハンディシンチュレーションカウンタ持込んでいた筑波の研究者のオッパーに測って貰ったら、これまでのアトムレンズのレコードを桁違いの値で塗り替え、「人体への影響はともかく、CCD,CMOSに接近して置いておくと画素抜けの危険性有り」ということで、今は鉛シートの中で単体保管です(苦笑)

では、国産光学史上屈指の怪物クンの実力を見て参りましょう。

今回のロケ地は横浜、中華街からみなとみらいを散策しながらのスナップ、ボディはX-Pro1、絞り優先AEによる全コマ開放撮影です。

Hexanon57mm.jpg

Yokohama_001.jpg
まず一枚めのカットですが、石川町から中華街に入り、すぐのお店の「Sale」の白抜き文字にEVFのクロップ拡大で置きピンし、通行人を狙ったもの。このくらいの距離であれば、後ろを通る小姐もギリギリ被写界深度に入っているようです。

Yokohama_002.jpg
二枚目のカットですが、中華街の入って暫く歩くと、公共駐車場ビルの近くの交差点でゴマ団子だかを売っているお店が有り、その小姐がなかなか好感度高い笑顔で接客していたので、少し離れた距離から一枚戴いたもの。ピンは物売り小姐の髪の分け目辺りで合わせましたが、シャープな売り子の姿に対し、お客のオモニはなだらかにボケています。

Yokohama_003.jpg
三枚目のカットですが、中華街の至るところで焼き栗の類いを売っていて、以前にも押売りに近い商法で問題になりましたが、ここは見るからに健全な小姐が、愛想良く道行く人々に味見をして貰いながら焼き栗を売っていたので、ついつい声を掛けて、う~んと迷っていたので中国語で撮ってもイイ?と聞いたら、反射的に「好、是!」と答えてくれたので、一枚戴いたもの。殆ど1mくらいの位置からの撮影ですが、目でピンを合わせたので、顔の各パーツまではピンが合っていますが、髪に半分以上隠れた耳は完全にボケと化しています。

Yokohama_004.jpg
四枚目のカットですが、関帝廟そばの路上で、店の前に立ちながら、あれが食べたい、これが食べたい、と口を尖らせ、オモニとアヂュモニに要求を行う、ちょっとおませな極小姐の姿が勇ましかったので一枚戴いたもの。ピンは極小姐の髪に合わせていますが、距離がそこそこ有ったので背後のアヂュモニも十分被写界深度に入っています。

Yokohama_005.jpg
五枚目のカットですが、中華街最大のランドマーク、関帝廟を守るコマ獅子の雄姿をほぼ最短距離で撮ってみたもの。
ピンは向かって左の鼻の穴周辺に合わせていますが、それほど鼻が高くないのが幸いし、眼まではなんとか被写界深度に入っていますが、頬からピィンと背後に反り返った耳は完全のボケと化しています。

Yokohama_006.jpg
六枚目のカットですが、久しぶりの訪問にも関わらず、なかなか得心のカットが撮れた中華街を後にし、赤レンガ倉庫を目指し移動する途上、日本大通りを過ぎた辺りのカフェの店頭で求愛活動?に勤しむネコの姿を撮ったもの。ピンは向かって左のネコが先に一匹で居たので、その眼に合わせていたのですが、瞬く間にファインダ-4内にもう一匹入って来たので、これ幸いとばかりシャッター切りましたが、二匹ともf1.2の玉とは思えないシャープさで捉えられ、ビックリしました。

Yokohama_007.jpg
七枚目のカットですが、象の鼻埠頭の入口に昔から在るカフェの側面、港側に面した壁面に飾られた年代物の錨がイイ案配に錆びていたので、このレンズのシャープさを発揮させるべく至近距離で撮ってみたもの。さすがにハイパーロモ35mmみたいに最新の光学理論で作られたf2クラスの玉を凌ぐまでには至りませんでしたが、このカットを見てf1.2とは誰も思わないようなシャープさは発揮してくれたのではないかと思います。

Yokohama_008.jpg
八枚目のカットですが、象の鼻埠頭から、赤レンガ倉庫へ向かう途上の公園広場のようなところに象の鼻をイメージした、愛くるしい仔象のオブヂェが有ったので、一枚戴いたもの。曇天気味とは云え、空を反射するツルツルのボディにもそれほどフレアを発せず、程好いシャープネスで質感を再現していると思いました。

Yokohama_009.jpg
九枚目のカットですが、赤レンガ倉庫に着いたら、なんと、この期間、屋外の期間限定スケートリンクを営業していたのが目に留まり、シャッターチャンスを待ち構えていたら、欧風の赤レンガ倉庫から抜け出てきたような白人男性がこれまた外国風の洗練されたコミュニケーションスキルを発揮している国産女性とえもいわれぬ好き雰囲気を発していたので、倉庫を背景に一枚戴いたもの。ピンは男性の横顔に合わせていますが、被写界深度が浅かったため、ハイパーロモのように切り取ったような輪郭となならなかったですが、独特の距離感で以て描写していると思いました。

Yokohama_010.jpg
十枚目のカットですが、倉庫前面、大桟橋方向のグリーンハウスを入れて撮ってみたもの。ピンは出入口のガラス扉の向かって左側のガラスサッシの手前側の枠に合わせましたが、その前後の部分以外は前後ともイイ案配になだらかなボケとなり、ガラスと赤レンガという色合いも肌も違う素材のコントラストが面白い描写になったと思います。

今回の感想ですが、いやはや、このレンズ、びしっと決まると身の毛もよだつ描写を見せますが、EVFのクロップ拡大でもピンが合う部分はヘリコイドの回転で云えば、距離にもよりますが1度~3度という微妙なコントロールが必要で、まさにクルマで云えば、フェラーリかアストンのV12の車でヒルクライムをやるような難度だと思います。

さて、次回のアップは久々に工房製品の紹介でもいっちゃいましょうかね。乞うご期待。

テーマ:街の風景 - ジャンル:写真

  1. 2014/01/26(日) 22:58:42|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
<<CMタイム~第七回ノンライツRF友の会写真展@JCII Club25 | ホーム | 開運!? 新春川越乱写ツアー2014より>>

コメント

何かすごいのキター!!

Charley944さん
お疲れです。
奇しくも土日で時間をずらして同じネタになるとは(笑)
手札をオープンにされましたので、私の方も次回からオープンにします。

使いやすさで行くと、ちょいと癖玉らしいところはありますが、F1.2級とは思えないシャープさを発揮してますね。N-FD50/1.2Lとどっちが良いかってところはありますが、この時代の1.2級は今のところ悉く外しがない様に思えてなりません。

3枚目、4枚目がいつものCharley944さんらしい作例になっているので、こちらに注目してしまいがちですが、私としてはX-Pro1ユーザーと言うことを考慮し6枚目の猫の写真に注目したいですね。
普通のAF機ならいざ知らず、X-Pro1のマニュアル操作+EVF撮影で求愛中の猫二匹を空気毎切り撮ったかのような凝縮した瞬間の写真は見飽きません。
これプリントでも見てみたいなあ。

そんなことを思いました。
さて、こんなモンスターレンズをさりげなくオープンにして、次回はどんなレンズが出てくるのかドキドキします。またインパクト大のものが出てくるんだろうなあ。
  1. 2014/01/27(月) 21:19:55 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:何かすごいのキター!!

出戻りフォトグラファー さん

有難うございます。

えへへ、遂に怪物登場です。

今日も会社で写真のことがかなり判る人間も含め、画像を見て貰いましたが、やはり合焦部の比類なきシャープさとボケのマイルドさの絶妙のバランスなのです。

が、しかし・・・デジカメに嵌めっぱなしにしてはいけない、鉛のシートで梱包して保管している話をしたら、皆さん、一挙の敬遠モードに入ってしまったようです。

因みに今回の写真展でも大トリのカットは、韓国、台湾の美女を押しのけ、美しさを輝かせる日本の美女をこのリヴァイアサンが捉えたものを用意しています。
  1. 2014/01/28(火) 23:30:58 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

とうとうお披露目になりましたね。

わたしも、どうにか購入がフルサイズミラーレス発売までに間に合ってよかったとは考えていますが、といっても、皆様の評価は不明ですし・・・。


わたしの好みは、全体の色調トーンが揃っているようなスケートリンクで外人さんとお話し中の写真です。
三枚目の人物アップや象のオブジェなどの背景ボケ具合は、昔の距離計時代のヘキサノン60㎜を思い出します。
背景被写体と距離でボケ具合変化が大きいので、やはりこの点ではムズカシイ使い勝手だと思いました。また、今回ご指摘のようにピント合わせが非常に難しく、この点だけは所有者方々は同意見ではないでしょうか。

いろんな色が入り込んでいると、ざっくばらんな色調が取り巻いている気がするのは、FL時代のキャノンとどことなく似ていると思います。
しかしながら、ネコのカットのように色数が少ないととても素直な色気ですし、再現性のすぐわかる今日のデジカメの時代では、非常に楽しめそうなレンズだといえると思いました。








  1. 2014/01/30(木) 22:18:34 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

おそらく、このレンズ、発売当時から、廃盤になるまで、銀塩のボディでの使用前提では全く実力が評価されることなく、従って売れ行きも悪かったのではないかと想像してしまいました。

何とならば、貴兄も重々ご承知の通り、EVFの10倍クロップでかなり厳密に行きつ戻りつしないと、絶対焦点面が発見出来ないのです。

正確には、絶対焦点面をピンが通る瞬間にエッヂが立つので、一旦戻ってから前後しないとそこを探り当てられないのです。

しかし、じっくりピンを捜して撮れば、7枚目のような完全な作例カットでも、大口径の玉の至近距離に有りがちな球面収差やコマフレアによる滲みなどもなく、f2クラス以下で撮ったかの如きシャープなカットも撮れるのです。

是非、貴兄も2/15のCP+ツアーでは愛玉をX-Por1につけて、新製品の咲き誇る会場でメーカー技術者に喝を入れようぢゃありませんか(笑)
  1. 2014/01/30(木) 23:02:54 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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