深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Taste of meister's skill~Short Elmar3.5cmf3.5 restored by Yamazaki's Labo. & F.G.W.G~

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さて、今宵のご紹介は、お盆休み明け第一発めということで、長い間、防湿庫に控えたまま、出番の無かった、Ernst Leitz Elmar3.5cmf3.5の前期ショートモデル、通称ニッケルエルマーを当工房で、山崎光学写真レンズ研究所の多大なるご協力のもと、レストアした希少レンズのご紹介いきます。

まず、云わずと知れたニッケル仕上げのエルマーは1936年までの製造モデルに特定され、シリアルはレンズ押さえ口縁に刻印してありますから、1934年から1936年までの製造のようです。

このレンズ、たまたま、新宿西口の某大手カメラ量販店の中古コーナーで一万数千円で売られていたので、ヘリコイド取りのパーツにしようか、それとも、手元に数百有る、USSR製インダスター50のエレメント入れ替えてやろうかとか色々悪だくみをして、その足で、用向きの有った、大久保の名人のところへ持って行って、戯言のひとつでお買い物自慢したら、こんな貴重な玉をおもちゃにしたら罰当たりますよ!と云われ、光学ブロックは預からせて貰います、ということでそのままお預かり、そして、無限が全然出ていないとの評価を受けたどんがらの鏡胴のみ深川へ持ち帰り、よーぃどん!で並行レストアが始まったのでした。
工房では、まず光学ブロックの入っていた筒内の埃、錆びの類の研削を行い、そして黒色ニッケルメッキとグラファイト焼付け塗装による無反射化、そして、外側の傷だらけで擦り傷も多かったシャフト部とヘリコイド&マウントユニットを分離し、酸洗し、微粒子アルミナ系研磨剤で磨き上げた後、古色蒼然としたニッケルメッキを再び施したのです。
そして待つこと三週間弱、大久保で再生された光学ブロックと深川で再生された鏡胴を調整の上、結合し、往年の銘玉のレストアが完成したという次第です。

では、早速、その描写性能を深川八幡祭りでの各シーンで見て参りましょう。
カメラはR-D1s、絞り開放AEによる全コマ開放撮影です。

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まず一枚目のカットですが、深川八幡祭りの神輿社中の先導と云えば、金棒曳の小姐達ということで、永代通りを颯爽と進む、越中島一丁目の金棒曳の小姐達のお姿を一枚戴いたもの。

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二枚目のカットですが、深川八幡祭りの別名は「水掛不動祭り」というだけあって、沿道には水桶やら、ホースやら思い思いの得物を手に、祭り社中のご一行を待ち構え、目の前に差し掛かるや否や、一斉に放水の洗礼を浴びせかけるのですが、まさに大振りなモーションの割には可愛らしい、子供の砂遊びに使うような白い小ぶりのバケツで散水する壮年男性の雄姿を背後から一枚戴いたもの。

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三枚目のカットですが、通り過ぎる神輿と、先の男性と同じ砲列のホースによる散水部隊が、神輿目掛けて、弾幕ならぬ水のカーテンで放水し、びっくりしながらも、何処となく爽快そうな表情の先棒担ぎの兄さんともども捉えた一枚。

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四枚目のカットですが、神職らしき初老男性が、路上で神輿と付き添い歩く幼子を呼び止め、かがみながら、にこやかにこの真夏のの炎天下の祭りの感想などを聞き、そして励ますという、心温まる交流のシーンを捉えたもの。

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五枚目のカットですが、続々やってくる神輿の一群の中に同世代の童子達の姿を見かけると、放水陣地の童子達は血中アドレナリン濃度が急上昇するのか、大人達向けとはまた異なった手荒い歓待ぶりを発揮するので、その楽しげな様子を水が掛かる危険地帯もものかわ、決死の一枚として戴いたもの。

Fukagawa14_006.jpg
六枚目のカットですが、目の前を続々通り過ぎる祭礼の行列を黙々と或る程度以上の距離から撮るのも能が無い話しなので、そこそこ器量良さげな中高生の小姐に声掛けモデルさんになって貰おうとして、ハィここに立ってね、チーズと云った次の瞬間、斜め横から出て来たいたずら中学生にバケツで水を掛けられ、おーっと、カメラに水が掛かると庇った次の瞬間にシャッター切ったもの。

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七枚目のカットですが、いたずらコンビに声掛けて何枚か撮らせて貰ったうち、神輿社中を目前に放水陣地守備隊の弾薬融通ならぬ、バケツの水のシェアを楽しげにやってる姿が後ろからみたら微笑ましかったので、一枚戴いたもの。

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八枚目のカットですが、放水陣地の童子達と遊んでいるうち、またしても、華やかな金棒曳の一群がしゃらり、しゃらりと歩んで来たので、ちょっとごめんよ、おぃおぃ、このお姐さん達には絶対水掛けんぢゃねーぞ、とか傍らで雑談にうち興じる親御さんに成り代わって注意を与え、永代通りの中央までダッシュして撮った決死の一枚。

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九枚目のカットですが、またしても定位置となった永代通り北側、八幡宮東側の放水陣地脇に控え、子供達混成軍の放水の餌食となるいたいけな祭礼参加者を待ち侘びてたら、来ました来ました、二人でくっちゃべりながらちんたらと神輿の後を歩いていたのを目ざとく見つかって、月に代わってお仕置きよ!とばかり子供達にホースで水をぶっ掛けられた、哀れな女子お不動二名様のお姿を有難くも頂戴したもの。

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十枚目のカットですが、放水陣地横に陣取っていると、時折、避けるどころか、侠気を見せようというのか、わざわざ陣地前で神輿を高く掲げ揉んで見せる社中が居て、目の前にも、スキンヘッドのこわもての兄さんが迫って来たので、本能的にシャッターを切ったら、結構良く写っているので、祭りの迫力を伝えるべく採用としたもの。

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十一枚目のカットは、放水陣地前で格好のパフォーマンスを披露してくれた町会への名残を惜しんだ餞別の如き盛大な放水を童子達が"せーの!!"で一斉に行ったので、その心意気に感じて、掛かる水しぶきもものかわ、至近距離で一枚戴いたもの。

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十二枚目のカットですが、神輿を担いで来て、何故か、放水陣地前で神輿の一群を離れ、陣地側に合流したうら若き小姐がなかなかカンジ良かったので、お声掛けして、祭りの熱狂渦巻く永代通りを背景に、ほぼ最短距離でモデルさんになって戴いたもの。

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十三枚目のカットですが、永代通りと琴平通りの交わる辺り、交通規制の最東端の辺りで黙々と、しかしながら盛大に祭り太鼓を叩くグループが居て、その中には、いたいけな女子中高生も居たので、励ましがてら声を掛けて、太鼓の屋台をバックにモデルさんになって貰ったもの。

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十四枚目のカットですが、R-D1sのバッテリゲージをそろそろ底を突き、本人も腹が減って来たので、木場ヨーカ堂でランチでも食べようか、と琴平通りを歩き出したら、もう神輿を仕舞に掛かる永代一丁目の町会ご一行様が後ろからやって来たので、遠方視力2.0の威力をフルに発揮し、社中一と思われる美形の小姐をスキャンし、停まったところですかさず声を掛け、神輿をバックにモデルさんになって貰ったもの。

今回の感想としては、昨日まで、田舎に隠遁してて、今朝には江都一の賑わいと気風と云われる深川八幡祭りです、いやはや、このギャップからなかなか撮影のカンを取り戻すのが大変でしたが、それでも、名人が精魂込めて敬意を払って再生した歴史的レンズの威力には、驚かされました。またR-D1sもカラーチャートで調整し直せば、まだまだカラー撮影でも行けそうです。

さて、来週はこのR-D1sと伴走したEOS20Dと珍しい国産ズームの撮影結果をお送り致します。乞う、ご期待!!
  1. 2014/08/17(日) 18:23:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | コメント:2
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コメント

いやもう、すんごい迫力で。

今年はR-D1sで撮影なんですね。
しかもニッケルエルマー。
換算75㎜でこうも情景を切り取るとは流石です。
かなり動いての撮影でしたでしょうし、2~3年前の様に撮影中に水を被らなくて何よりでした。

それにしても水しぶきの迫力がすごいですね。
迫ってきます。臨場感抜群って感じで、全てのカットが好きですね。
この前写真展に出していたカットも良いですが、このシリーズで出してもまた魅力ある展示になったような。
ストーリー性のある良い写真を見させていただきました。ありがとうございます。

それにしてもニッケルエルマーやエルマーの様にLマウントだと50㎜でもR-D1シリーズで普通に距離計連動で使えるのですね。ズミクロンだとだめだったのに。
市販品ではここまで映せないでしょうけど、ピーカンの天気でも絞り開放でここまで行けるなら、今度新宿の中古市場辺りでエルマーの程度良いやつ探すかなあ。
エルマーだけで何度売ったり買ったりしているんだ、って気もしますけどね(笑)
  1. 2014/08/19(火) 20:27:02 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:いやもう、すんごい迫力で。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

そう、今年はこのR-D1sと来週アップ予定のEOS20Dの二機体制で臨みました。

最初は一番軽快なX-E1を起用しようと思ったのですが、何せ、ストロボ内蔵式は高圧コンデンサを小型のボディ内に持っているので、万が一、大水被りしてしまったら感電の危険が有るため、スタメン落ち、M8も意外に防滴性が良くないという情報を得ていたので、以前から雨天でも難なく使用出来ていたR-D1sが登板することとなって、慌てて、距離計とカラーでの調整を行ったという次第です。

それにしても、今回はレンズを装着してのカラーバランス、コントラスト調整を丹念に行ったので、予備役ながら、主力機のM8やらX-Pro1に肩を並べる描写を実現出来たのではないかと思います。

後は慣れですね・・・R-D1sは限りなく銀塩のレンジファインダ機と近い感触の機体ですから、こういうAF機ですら厳しい、前後左右、上下での早い動きの有るシーンを数々モノに出来たのではないかと思います。

それにしても、モノクロでは銀塩と見紛う写りを実現し、カラーでも調整代が大きいため、レンズや撮影シーンによって使い分けが出来る、この総金属製の頑健なボディを持った稀代の名機が永久にディスコンになってしまったのは返す返す残念です。

これがX-Pro1のハイブリッドと二重像合致式測距を合体させ、しかもAPS-Hサイズのローパスレスで1600万画素くらいの撮像素子が入ったモデルが出れば、ライカのMデヂタルシリーズもSONYのヂャイアントロボのお頭みたいなミラーレスも不要と思えるんですがね。
  1. 2014/08/19(火) 23:54:17 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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