深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A optic extremly thin but claimed to be "Toxic"~Tessar35mmf3.5T* mod.M~

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さて、今宵のご紹介は予告通り、当工房秋の新作、コードネーム"フグ刺し"ことTessar35mmf3.5改Mです。

このレンズ云わずと知れた、今は亡きYashica/Kyoceraの製品、T-AF、T-AFDに奢られていたCarl Zeiss銘の銘玉です。

実は、このレンズの改造、当工房が一番乗りということではなく、遥か昔、まだ右も左も判らない一介のクラシックレンズ愛好家だった工房主に根気強く、改造のノウハウを無償で伝授して戴いた、船橋の改造老師が自ら開発されたパンケーキタイプのヘリコ&マウントユニットでL/Mマウント化されており、今はパーツが払底しているとかで受注はされていないような話しを聞きますが、一世を風靡した画期的なレンズだったのです。

構成は3群4枚のオーソドックスなテッサータイプで少なくとも貼り合わせ面を除く全面に最後期のYCマウントレンズと同様のモスグリーンを基調とした極低反射のT*コートが贅沢に奢られ、しかも、絞りが光学系の内部になく、ボディ内のシャッターユニット一体化でヘリコイドの真後ろに配置されるという不思議な設計となっていたのです。

なお、今回の一号機では、描写性能を見るため、最低限の改造装備しか行わなかったので、複雑な機構になる割には、まず使うことはない絞りユニットは組み込みませんでした。

この後発売されたオールチタン製のT2以降のモデルに較べれば、まさに安物然としたテカテカのプラカメですが、あにはからんや、そのレンズの描写は、T2のSonnar38mmf2.8を凌駕しかねない恐るべき高性能ぶりで、まさに「羊の皮をかぶった狼」とでも申せましょうか。

では早速、実写結果を見て参りましょう。ロケ地は深大寺、カメラはR-D1s、絞り開放AE撮影です。

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まず一枚目のカットですが、深大寺のバス停を降りて山門に向かうと、すぐ目に入る左右に伸びた茶店街の名物、深大寺窯の店頭を飾る大小の焼き物の狸ですが、これをモチーフに店頭の様子を一枚撮らせて貰ったもの。

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二枚目のカットですが、同じく深大寺窯の店頭、ちょうど狸の置物群の真上辺りに飾られている、焼き物製の風鈴の相並ぶ姿がいかにも風情あったので、店舗の軒下辺りをバックに一枚撮らせて貰ったもの。

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三枚目のカットですが、ここも深大寺茶店街の名所、というかいつも試写に使わせて戴いている、美小姐茶屋「八起」さん庭園の柵際に置かれた蹲の濡れた様子を一枚撮らせて貰ったもの。

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四枚目のカットですが、そろそろ15時も回ろうかという時刻になったので、時間制限有りの深大寺城跡公園に登り、そこで、まず、バンパグラスの小群生があったので、それをモチーフに南の空と名物「この樹何の樹」そっくりさんをバックに淹れて一枚撮ってみたもの。

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五枚目のカットですが、深大寺城跡公園お定まりの、芝生から屹立する、かつての館の建物の基礎柱の址を示す黒御影石の列を見渡すアングルで撮ってみたもの。

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六枚目のカットですが、心行くまで撮影を行った深大寺城跡公園から下り、神代水棲植物園までやって来て、秋の名物、水田を覆うオレンジの鳥避け網が秋の薫風に悠然とたゆたう様を撮ってみたもの。

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七枚目のカットですが、深大寺城跡公園でも、ここ水棲植物園でも群生していた秋の風物詩、曼珠沙華の可憐な姿をどことなく鄙びた植物園内のクリーク脇で撮ってみたもの。

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八枚目のカットですが、ここもお馴染み、水棲植物園の湿原上に張り巡らされた木製デッキの通路の様子を遠近法的な視点から撮ってみたもの。

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九枚目のカットですが、そろそろ陽もイイ案配に傾いてきたので、水棲植物園を後にして、山門前の茶店街へ戻り、そこで人工光源が目立つようになって来た、美人小姐茶店「八起」の店頭でいたいけな小々姐が渋いことに草餅の如きお菓子を買おうとせんところを一枚戴いたもの。

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十枚目のカットですが、同じく「八起」さん店頭の様子を山門サイドに移動して、みたらし団子の調理、及び接客、販売担当の若い小姐を撮ろうと暫く待ち構えていたのですが、今日はあいにく出払っていたようで、仕方なく、年輩小姐が持ち場についたのを潮時に一枚撮らして貰って、その場を去ったもの。

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十一枚目のカットですが、同じ茶店街の一等地、まさに山門の真下に建つ、老舗蕎麦屋の「嶋田家」さんの店頭では、石仏有り、花壇有りと観光客の目を惹くことこの上ないのですが、ちょうど、秋の頃には、お店手前の花壇にコスモスが咲き誇り、背後の羅漢像とイイ対比となっているので、ボケを強調する構図で今年も一枚戴いたもの。

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十二枚目のカットですが、再び山門上に上がり、暮れかかる秋の夕陽を浴びて、えもいわれぬ雰囲気を醸し出す、石灯籠とその背後の山門から左右に伸びる板塀の対比を撮ってみたもの。

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十三枚目のカットですが、山門下向かって右側には、どうぞ写真のモチーフにしてくださいとばかり、イイ案配に芒の小群生がありましたので、その芒の微風にそよぐ穂越しに山門を行き交う市井の人々の様子を一枚撮ってみたもの。

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十四枚目のカットですが、同じく山門から真直ぐバス停方向に伸びる参道脇に位置する、手打ち蕎麦の実力派、「門前茶屋」さんの座敷席への入り口の洗いざらしの綿布の暖簾と軒先の甕に生けられた芒の穂の対比がなかなか鄙の趣きを醸し出してイイ雰囲気だったので一枚戴いたもの。

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十五枚目のカットですが、ここ調布市の名誉市民、「水木しげる」氏監修の「鬼太郎茶屋」さんの軒先で、子供相手の有料くじ引きをやっていて、老若男女を問わず、人気の様子だったので、だいぶ空いてきた帰り際にその様子を一枚戴いたもの。

さて、今回の感想ですが、いやはや、先の石岡での活躍といい、ここ深大寺での転戦といい、あたかもデジタル専用に設計されたかの如き概ね破綻の無い描写で、この薄さといい、味わい深い描写といい、使えば使うほど旨さが判り、痺れるような画も撮れることから、その「Tessar」即ち「てっさ」という極上のフグ刺しにも通じる銘玉だと思った次第。

また、水木しげる先生の地元でのロケでしたから、こういう絶版国産プラカメの目玉オヤヂに活躍の場を与えて上げたいな、とも思いました。

さて、次回はこのフグ刺しと並走した、長野県のりんご畑産まれの、通称りんごパイレンズのレポートを秘宝館からお送り致します、乞うご期待!!
  1. 2014/09/28(日) 21:00:00|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

こういう形になりましたか。

フード内蔵型と言えなくもない形ですね。
しかも映りは現代レンズの*Tならではのもので。
今日の発表でT-SCOPEやT-PROOFのみならずヤシカT-AFDやT-Dなんかも部品取りに売れそうですね。

5~7枚目の線の細さをよく写し撮っているなあと思いました。さて自分も身辺が落ち着いたら改造依頼をかけないと。

来週の信州産リンゴも楽しみにお待ちします。
  1. 2014/09/28(日) 21:42:29 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:こういう形になりましたか。

出戻りフォトグラファーさん

有難うございます。

そうですね、このレンズ、とても不可思議な産まれと性能を持って、再びを命を吹き込まれた、というカンジで、昨日、新宿で色々聞き込みをしたところによれば、元々YashicaTやT-AFDの機種は、ハイアマチュア用のT2以降の高級機に対し、報道等プロのサブ機として耐えうる国際的戦略商品として開発され、このテッサーも富岡光学が社のプライドを賭け独自開発したものをツァイスに提案し、テッサーの称号を貰って製造し、結局、各モデルに対し継続採用され、都合100万本を製造したツァイス銘のレンズ中のベストセラーなんですと。

しかも、デジタルのデの字も無い時代の設計されたにも関わらず、発色、コントラスト、そして画質の均質性、全て、後ろ玉の小さな個体からの像とは思えない写りではないかと思います。

元祖船橋本舗では改造部品が払底し、再開の見通しは立たないそうですが、新たなチァレンヂャーが深川の技術を発展的に応用し、希望する人々に安くて美味しい"フグ刺し"として提供してくれることを切に望む次第です(笑)
  1. 2014/09/28(日) 22:35:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

こんばんは

今回のレンズ形状は、これだけフランジバックが短そうなレンズを改造できるパーツを上手く選択・製作したものだと思いました。奥行きのある形状は、たしかに興味深い姿です。

もとのカメラはわたしもT AF-Dで所有していますが、上面のパーツが無くなってしまったので、それ以来バリアーが塞がっていたままでした。(バリアーが幸してレンズ状態の良いままです。・・・ということは、カビ以外では中古でも良品に巡り合えるチャンスが大きい様ですね。)
わたしも、持っていたといっても、今回ほど良く写った記憶もありませんし、殆ど画像の記憶もありません。(カメラの巻き戻しがものすごく大きなモーター音があったような妙な印象だけでした。)

今回の暗めの被写体中に、深みがあってピントも良さそうで、背景ボケも意外と素直で、確かにこのような無骨なプラスチック・コンパクトカメラが再現する映像とは思えません。
元のカメラが伊達にネームをレンズ横に配したというデザインでなく、不遇な末路を迎えたヤシカ/京セラ陣に、35㎜f3.5という「本家」にも見受けない様な正式な35mmのテッサ―という、貴重な遺産だったようですね。となれば、f2,8仕様も気になりますが・・・。ここは欲張らず、もう一度このf3,5仕様のカメラを探してみたいものです。



今回は、ローライ35の40mm、y/s コンタックスの45mmと並んで、非常に興味深いテッサ―を確認できてよかったです。
  1. 2014/10/05(日) 21:15:09 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordreさん
有難うございます。

そうですね、このレンズ、当時のボディ精度、AFの測距、合焦能力ではその持てる能力の十分の一も発揮出来なかったのではないかと思いました。

ただ、このレンズを味わいつくすには、船橋の老師がかつて示唆し、優れた改造レンズを世に問うたように、やはり、距離計連動化改造し、デジタルであれ、銀塩であれ、この性能見合いのファインダなり、ボディ精度の高い暗箱で撮ってやる必要があると思いました。

あざみ野の新たなチァレンヂァーのヲヂサマが改造を検討してくれるようなので、ヂャンクお持ちならば、手を挙げてはいかがでしょうか?
  1. 2014/10/05(日) 21:59:43 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

光学系の後ろ絞り

光学系の後ろ絞りは蛙さんのカメラにも採用されて居た記憶が有りますが?
良き発色で又距離計連動にしてしまうとは!!最早深川の名工と言われる所でしょう。
  1. 2014/10/16(木) 18:07:38 |
  2. URL |
  3. hiro #xPR/ZykM
  4. [ 編集]

hiro さんへ
コメント有難うございます。
ご健在そうで何よりです。
  1. 2014/10/18(土) 10:59:12 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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