深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

One of riddles in the history of Japanese optics~Auto Miranda E 50mmf1.4~

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さて、今宵のご紹介は、予告通り、工房附設秘宝館から、AE-1ショックにより、1974年12月10日、そぼ降る氷雨の朝にひっそり息を引き取った伝説の光学機器メーカー、ミランダの最後の銘玉、Auto Miranda E 50mmf1.4の実写レポートをお送り致します。

まずはこのレンズの産まれですが、1972年から倒産した年の1974年の間のかなり後期に作られたものと考えられます。

実は、ミランダは、色々なメーカーからレンズの供給を受けていて、良く知られているのが、Zunowこと帝国光学、そしてZunowが倒産ののちにはケロヨンことコーワ、そして、この晩年近い時期に発売された、当時でもトップクラスの描写性能と考えられる、この50mmf1.4はセコールこと世田谷光機からのOEM供給品と考えられています。

構成は6群8枚、とはいっても、先週、鮮烈なデビューを果たしたNOKTON35mmf1.4SCのような、2群の後ろに曲率の緩い凸レンズを対向配置するいわゆるズミクロン8枚玉構成ではなく、L1の前とL6の外に一枚ずつ凸を増やした、現代の一眼レフ用大口径レンズにはよくあるタイプの構成です。

では、早速実写結果を見て参りましょう。 今回のロケ地は乃木坂の裏通りと翌日、Sundayphotographerさん、SKさんNoctoのOさんと回った本郷菊坂町です。

カメラは全コマ、X-E1での絞り開放AEです。

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まず一枚目のカットですが、当日は午後遅くまで国立新美術館でチューリヒ美術館展を観ていて、そこから、富士フィルムのギャラリー目指して歩きながら見つけた、たぶん、イタリア料理かなんかのレストランの窓際の格子と植栽の組み合わせが何となく、心に響くものがあったので、一枚戴いたもの。

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二枚目のカットですが、そのレストランの向かいのブティックかなんかの壁に、年季の入った錆び付いた錨がさりげなく立て掛けられていたので、最短距離付近で背後のガラスブロックのテクスチャなんかも意識しながら一枚戴いたもの。

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三枚目のカットですが、乃木坂からミッドタウン経由、麻布十番まで歩き通し、陽もとっぷりくれて、街の灯が恋しい時分になって来たので、十番商店街を歩きながら、ところどころで撮ってて、或る交差点、たぶん、豆源さんの前辺りで、ふと眼を凝らしたら、先方から垢抜けたハーフっぽい小姐が闊歩してくるのが見えたので、交差点に差し掛かったところで一枚戴いたもの。

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四枚目のカットですが、翌日、愉快な仲間達と本郷菊坂町へ街撮りに出掛けた際、まず肩慣らしとばかり、一番最初に訪れた「金魚坂」さんでの、いかにも幸せそうな親子揃っての金魚釣りの図。

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五枚目のカットですが、このとこと定番と化した、「金魚坂」さん東側エントランスが面した路地で看板をメインとし、背景にイイ案配に歳月を経たアパートを配して一枚戴いたもの。

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六枚目のカットですが、本郷菊坂町の三大名所筆頭、樋口一葉の井戸の真上に有る木造集合住宅を井戸の傍らから、見上げるアングルで一枚撮ってみたもの。

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七枚目のカットですが、その木造集合住宅の階段を登り、見下ろす方向で右手建屋の壁際というか、階段の端にいつも立て掛けられている木製の梯子を上から一枚撮ってみたもの。

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八枚目のカットですが、木製集合住宅と背後の崖との間の細い路地伝いには、狭いスペースを上手に活用し、色々な植栽が植え込まれていたのですが、一番、鐙坂方面への出口近くの住戸壁面から下がった蔓になっていたみずみずしいゴーヤを路地を背景に一枚撮ってみたもの。

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九枚目のカットですが、鐙坂を登り、金田一耕助一家の家の上の路地の奥まった位置に建っていた、これまた年季の入った木造住宅の佇まいを路地とそこに植わった植栽ともども一枚戴いたもの。

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十枚目のカットですが、少し遅めのお茶タイムをしようではないか、ということで愉快な仲間達ご一行様と、言問通りまで出たのですが、なかなか茶店が見つからず、その途上で見つけた、何故か心惹かれる雰囲気の壁面僧職があったので、みんなで仲良く撮ったうちの一枚。

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十一枚目のカットですが、お茶してからまた菊坂下通道りを撮りながら歩いて本郷三丁目まで戻る途上、一部、来たルートとは別の裏通りを通ったのですが、或る場所で、ちょうど北側の空が開けた路地の入口に千両みたいな植物が沢山の種を実らせていたので、これまた最近接付近で一枚撮ってみたもの。

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十二枚目のカットですが、また菊坂下道通りに合流し、樋口一葉の井戸の在る路地手前まで来たら、先ほどは見落としていた、ラッパ状の黄色い花を咲かせた植物の様子が曇り空を背景になかなか洒脱に見えたので一枚撮ってみたもの。

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十三枚目のカットですが、菊坂下道通りを歩いていると、ところどころに菊坂上道通りとの連絡階段兼大雨時の水路が見られるのですが、或る階段が、何故か尾道の山際の路地裏の階段みたいでとてもイイ雰囲気だったので、見上げるアングルで一枚撮ってみたもの。

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十四枚目のカットですが、住戸の主以外は、全部売り物です!みたいなことを謳って、Everyday Low priceならぬ、Everyday フリーマーケットと称するファンキーなアパートが菊坂下道通りに面して建っていますが、そこでの新入荷?の象の飾り物が妙に背景の壁の抽象画風ペイントとマッチしていたため、最短距離で一枚戴いたもの。

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十五枚目のカットですが、ここも定番と化している、菊坂町から、春日通りに面している、アーリーアメリカン風のダイニングカフェ店頭の看板的オブヂェ、真っ赤な消火栓の全貌を店先を背景に一枚撮ってみたもの。

さて、今回の感想ですが、乃木坂、本郷以前にもこのレンズはちょこちょこ使いましたが、特に低照度での描写がすばらしく、色気さえ感じさせてくれるような表現力ではないでしょうか。

このユニークなメーカーも、勿論、マミヤもペトリも、国民みんなが豊かになり、それなりに趣味にお金が使えるようになり、更に中国を中心にアジアの購買力が飛躍的に向上した今、多様性が求められる環境になったとも云えるので、この会社が雲散霧消した、或いはコンシューマーズマーケットから撤退した、というのは返す返す残念で仕方ありません。

そういった意味では、またしても写真レンズに舞い戻ってきたケロヨンレンズこと、コーワには否が応でも期待せざるを得ません。

さて、来週は何か工房作品をご紹介しましょう。何が出るかは乞うご期待。
  1. 2014/10/19(日) 21:00:00|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

しかし、コーワのレンズは来年2月以降らしいです。

charley944さん
お疲れです。

でましたねえ、ミランダE50/1.4。
こちらがまだ50/1.8の癖をつかみきってないのに、もうこっちを出されるとは。
早いところ自分も50/1.4を出さないとなあ。

しかし、自分の50/1.8でもそうでしたが、こちらの50/1.4も3枚目の写真が迫力あって好きですね。
案外夜景が合うレンズなのかもしれません。

それにしても、コーワは今年のCP+で発表されたのに、来年のCP+まで発売動向が見えないのだとか。
いっそXマウントやEマウントも発売予定とかぶちあげてくれるならいいのですけどねえ。
  1. 2014/10/19(日) 23:10:02 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:しかし、コーワのレンズは来年2月以降らしいです。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。

このマミヤ製の50mmf1.4、当時のニコン、キャノンと較べても、クリアでヌケの良い描写では一歩も引けをとらず、ただ、開放でのフレアを含めたムーディな描写では、ペトリや本家マミヤセコールの50mmf1.4には一歩及ばずという感想です。

しかし、まぁ、使いこなしているというほどではなく、会心の作に探り当たる確率は、かなり描写傾向の近いC.NOKTON60mmf1.4SCの方が高いですから、やはり難しい玉なのでしょう。

それでも、何とか他人様にお見せしようなどという気になるカットが何枚かは確実に撮れるのは、やはり、リアルタイムモニタリングがウリのミラーレスならではの芸当でしょう。

それから、コーワは全般の有楽町交通会館のどっかのお店、たぶん、金一辺りではなかったかと思いますが、ショーウィンドの上にさりげなく置かれてましたよね。

まぁ、時間が掛かる分、Xマウントでツァイスや純正レンズの向こうを張る画期的な製品を出してくれれば、確かに相当面白いことになると思うのですが・・・
  1. 2014/10/21(火) 00:35:00 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2014/10/22(水) 20:48:25 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

最初拝見した時はそれほど印象有りませんでしたが、何度となく拝見していると、非常に繊細な描写だと気になってきました。

多くのハイライト部分に微妙な滲みを確認し、看板の5枚目やゴーヤや、12枚目の花でも、ピント合致部分では意外なクリアさとピントの良さを確認できます。

そこから見ると、13枚目のなよらかな階段や、9・10カット目でも意外とピントが来ているようで、コントラストの低さで取り留めもない描写と思っていても、水玉のような円状のボケが意外と背景描写を整えている気もしてきました。

こうして文章で画像を再確認しても、どうしても気になるのが色再現の地味さです。しかしながら、10枚目などまるで中国か台湾での撮影描写の様な色感ですし、9や13のように撮影場所の雰囲気に寄り添えば、使い勝手に色々な名案も浮かんで来そうです。


なんだか極・主観的な感想で申し訳ありませんでしたが、国産初期の(50mm)f1.4モデルという設計上の頑張りどころには、一つも二つもそのレンズには個性があるのではないかという、そんな総括でした。
  1. 2014/11/06(木) 21:48:09 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。

確かにこのレンズ、最新の設計技術と飛躍的に選択肢が広がった硝材にドーピングされたネオクラシックレンズには、コントラストやピントの立ち加減では及ぶべくもないでしょうが、この時代の標準レンズ、特に高級ラインナップであった、f1.4クラスの玉には各社とも持てる技術の粋を尽くし、コストも二の次でフラグシップとして送り出したとも云われています。

ましてや、この玉は、先の高島屋の世界の中古カメラ博で、関西の業者から、「川崎八丁畷の修理業者でOH済」という触れ込みで買い求め、実際にその業者でもレンズの素性は熟知されていて、世田谷光機が末期のミランダのためにOEM製造した、極めて高性能の玉だったということでした。

しかし・・・ここまでは、あくまでもフィルム使用の前提であって、デジタルでは、投影面の反射率も色も違うので、性能は未知数だった筈です。

それでも、ここまでやってくれるとは新鮮な驚きでした。

そう、今回や、先般のAccura Diamaticもしかり、デジタル暗箱の新しい力を得て、まだ未知の大陸にも等しい、黎明期の国産やドイツ等の量産レンズの真価を解明していきたいとも思いました。
  1. 2014/11/06(木) 23:18:54 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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