深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

轟動交換的光學~W-Nikkor35mmf2.5S tuned by F.G.W.G.~

W-Nikkor35mmf25.jpg
さて、今宵のご紹介は工房が今年に入ってから製造した超大作、W-Nikkor35mmf2.5Sです。
え、何の変哲も無い、ニコンSマウント用普及版レンズぢゃね!?とかページ変えようとしている、そこの貴方、ちょいとお時間下さいな、何処がどう違うのか、今、説明しますので・・・
まずはこのレンズの氏素性を説明しますと、母体となったW-Nikkor3.5cmf2.5Sは1952年にニコンS用広角レンズとしてリリースされ、1956年に軽金属製の黒塗り鏡胴モデルが出るまで、アマチュアから報道の第一線まで用いられた銘玉で、27650本ほど作られたとされています。
ただ、この緑に輝くアヤシゲな光学エレメントは当然1952年当時に実用化されよう筈もなく、今年になってから移設された、元はニコノス用W-Nikkor35mmf2.5のもので1976年から製造された新種ガラスにマルチコートされた、オりジナルのものとは比較にならない高性能のものが奢られています。
一般的にニコノス用Nikkor35mmf2.5は元がNikon S用W-Nikkor3.5cmf2.5の光学系を元に新種ガラスの採用とコマ収差を逓減すべく主に絞りから後の光学系の設計をリニュアルしたものとされていて、ちょっと遊び心有る人間なら、曇ったり、傷ついたりしたW-Nikkor3.5cmf2.5Sがあれば、ニコノス用の玉はスペック同じだし、子孫なんだから交換出来てしかり、と思うのも人情ですが、精密機械の世界ではそういう思いつきや思い込みは往々にして通用しません。
実は前々からこの世紀?のスワップを考えていて、たまたま新宿のカメラのKタムラでW-Nikkor3.5cmf2.5Sの光学系が擦りガラス状のジャンク寸前のものが1万円台前半で出ていて、手元にニコノス用W-Nikkor35mmf2.5のレンズブロックが有ったので、初めは、ニコノスのものを旋盤で削るかしてSの方の鏡胴に収めることを考えていたのですが、買って来てからおもむろに分解したところ、絞り羽駆動のピンの位置と太さが違い、またレンズを鏡胴に固定する最後端の全周ネジまでブロック後端が届かず、またレンズブロックの太さも途中から微妙に太くて、削って確かめながらしかるべき位置に固定するのは容易なことではないことがすぐ判り、オリジナルのレンズブロックハウジングにニコノスの前後エレメントアッセンブリを固定することとしたのです。
しかし、これもなかなか大変で、前群は難なくねじ込んで所定位置に固定出来たのですが、後群が微妙にスカスカで固定出来ない・・・普通のアマチュアであれば、アルミ箔かなんかネジ部に巻いて太さ合わせ、はい固定完了、改造一丁上がり!としたいところでしょうが、それでは厳密なセンター出ませんし、工房の出荷基準である「1500万画素のデジタルカメラでの開放撮影で全紙撮影可能」をクリア出来ません。
そこで、不可逆改造とはなってしまいますが、レンズブロック側の内周を全周ネジの強度ギリギリまで切削して広げ、そこに超ヂュラルミンのスペーサーで0.5mmピッチのネジ切ったものを焼嵌めしそれを経由して後群を固定し、完成したレンズ
ブロックを鏡胴に嵌めて無限に合わせてスペーサを削りだし、やっと完成したという次第。
では、そんな手間隙掛けた改造レンズの貴公子みたいなものがどのくらいの性能を発揮するのか、先日の横浜山手ツアーの際の撮影結果を見て参りましょう。
カメラはX-Pro1、全コマ絞り開放の絞り優先AEモードです。

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まず一枚目のカットですが、当日の水先案内人である出戻りフォトグラファーさんの案内で石川町駅からまず向ったのが山手地区洋館街の中の一軒、外交官の家で、庭にバラ園なんか有って、建物自体もなかなか宜しい風情の佇まいだったので、ちょいと逆光にはなりましたが、北側から南方向に向って、空を入れて建物を撮ってみたもの。

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二枚目のカットですが、庭を回って表へ出ようと移動途中に陽光を浴びて水のしぶきを迸らせるレトロなイメージの噴水が有ったので、これもテストパターンにはもってこいとばかり、肉眼で見たら数秒と目を開けていられないくらい明るく照り返した水面も入れて一枚撮ってみたもの。

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三枚目のカットですが、この洋館の北側の庭園にあるバラ園の一本がちょうど風景の開けたアングルに花も盛りに咲き誇っていたので、みなとみらい方面を背景にこの可憐なバラの最短距離近くでのアップを試してみたもの。

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四枚目のカットですが、一軒目の洋館を後にし、次なる目的地へ、洋館南側の比較的広めの生活道路を歩いていたら、古い洋館ではないものの、その街並み造りの趣旨に賛同したのか、なかなかクラシックな佇まいのレンガ状タイル張りの個人宅が三叉路に面して建っていたので、その特徴的な形状が判るような構図で一枚撮ってみたもの。

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五枚目のカットですが、これも同じ生活道路を辺りをきょろきょろしながら歩いている途中見つけた洋館風建造物で、何か企画系の会社のオフィスのようでしたが、ちょうど南側に空が開けていて、塀から建物の配色まで、相当気を使っているのが感じられる素敵な建物なので、塀の外から一枚撮らせて貰ったもの。

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六枚目のカットですが、同じ生活道路沿いにあった古いカソリック教会門扉の石柱の特徴的な文様を対の門柱や門脇の植栽を背景として一枚撮ってみたもの。

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七枚目のカットですが、二軒目の洋館、確かベーリックホールではなかったかと思いますが、そこに到着して中を見物していたら、広いダイニングと思しきところのテーブルにとてもおっされ~なデコレーションが施されていたので、皆で寄ってたかって撮ったうちの一枚。

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八枚目のカットですが、その二軒目の洋館はいまでも現役として、パーティやら講演会、演奏会などでフル稼働のようで、お邪魔したキッチンも古い造作と新しめの調理器、什器類が上手く折衷して置かれていたので、窓から斜めに差し込む冬の陽光に鈍く輝くステンレス製大型コンロの様子を一枚戴いたもの。

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九枚目のカットですが、その洋館を出て、また少々歩き、移動して入ったのが当日最後の洋館、エリズマン邸で、その二階の寝室に隣接して造られていたRelax Roomという謎のスペースが今は室内温室状態で可憐な胡蝶蘭などが栽培されて今を盛りと咲き誇っていたので、一枚戴いたもの。

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十枚目のカットですが、さて時間も15時近くになったので、お茶でもしますかい?と洋館街のメインストリートを歩きながら、入れるお店を捜している時に雰囲気イイが、この並び具合いぢゃ・・・と諦めた洋館を改造したカフェレストの庭先の様子を一枚戴いたもの。

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十一枚目のカットですが、無事、お茶をして、じゃ、そろそろ山を下りながらみなとみらい目指そうかね、ということになって、最後の撮影スポットとして寄ったフランス山公園の井戸汲み動力用水車を下から見上げる格好で空を入れて一枚撮ってみたもの。

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十二枚目のカットですが、同じくフランス山公園の風車したのフランス駐留軍の駐屯地の遺構の一部と思われるレンガ積の構造物の残滓が冬の夕陽を浴びてえもいわれぬ風情を醸し出していたので、一枚撮ってみたもの。

今回の感想ですが、いやはや、造った張本人が言うのもなんですが、こういう企画ものは性能は二の次で、何とか写れば、お!すっげぇ~となろうかと思いますが、いやはや、十分に実用レベルを超えていると思いました。しかも、レンズブロック自体は古いものをそのまま使っていますから、これをLマウントのW-Nikkor3.5cmf2.5に嵌めて持ち出せば、LeicaM8で距離計連動で遊べる・・・
ただ、今回、根性が無くてギブアップした、ニコノス用W-Nikkor35mmf2.5のレンズブロックを切削やらエクステンションを削り出して組み合わせ、そのままSマウントのオリジナルレンズブロック同様に交換ユニットとして嵌め込めるような加工法も継続研究したいと思いました。

さて、来週は、秘宝館入りした形見のレンズ真打ちの高性能ぶりをご披露いたします、乞うご期待!!
  1. 2015/03/01(日) 23:59:33|
  2. Sマウント改造レンズ
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  4. | コメント:2
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コメント

見るたびに驚きとインパクトが。

Charley944さん
お疲れです。

当方のブログでも先行公開しましたが、このレンズは被写体をくっきりはっきり写して本当にクラシックレンズかと首をひねりたくなります。
コーティング一つでこうも性格が変わるものですね。

ただ、よく見るとクラシックレンズ特有のボケも見えて面白いです。

11枚目の風車も迫力ありますし、12枚目の煉瓦の立体感もすごいと思います。

そう言えば2枚目の写真の露出はどの辺りに合わせたのでしょうか。自分もあそこで撮ることがあるのですが、どうも極端に暗くなるか白とびになってしまうので迷うのですよ。

時間ある時にでもメッセージで教えてくださいませ。
  1. 2015/03/02(月) 08:14:00 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

Re:見るたびに驚きとインパクトが。

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。
このレンズ、Nikonos用のエレメントに全換装していますが、NikonS 用のものとは、硝材からエレメントの大きさ、形状、そしてクリアランス、コーティングまで全くの別物というのが、開けてみて両者のパーツ較べて判ったことで、よくもまぁ、無謀なことをしたわいと、我ながら呆れたり、感心してしまったり・・・
でも、このレンズ、細工の面白さよりも、性能に注目したいと思いました。
実は、前後のエレメントのクリアランスが若干変ったのか、センター部はより先鋭になり、周辺が気持ち甘くなっているような気もしましたが、APS-Cサイズの撮像素子で使う分には全く問題なく美味しいところだけ味わえるので、X-Pro1との組み合わせでの出動が今後増えそうな気がします。
それから二枚目の噴水の露出ですが、何のことはない、EVFの実像見ながら露出補正掛けて撮ったまでのことで、exifデータ読んだところ、ISO200でシャッター速度1/2900、露出補正は-2/3となっていました。
  1. 2015/03/04(水) 00:20:47 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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