深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

The great heritage for me~Nikkor 5cmf1.4S・C~

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さて、お待ちかね、今週のご紹介は先のオリムパスペンF用ズイコーオート38mmf1.8と同じく、遠縁のおぢさんの形見として約35年ぶりに本来の持ち主となるべきだった工房主の元へやってきたNikkor5cmf1.4S・Cライカマウントの実写レポートをお送り致します。
このレンズは、云わずと知れたツァイスのゾナー5cmf1.5を範として設計された3群7枚構成のコンパクトな大口径玉で、1956年に発売され、自社のS2用のSマウント内爪バヨネットとライカマウントL39のものが造られました。
但し、ライカマウントのものも、幾つかバリエーションがあったようで、この個体、ニッカIV向けに供給されたオールクロム銀のダブルヘリコイドの接写機能付きのものは、後になって出て来た黒鉢巻のものに較べると若干シャープネスに劣り、マイルドな描写だったという印象を受けました。
ではさっそく実写結果を見て参りましょう。
カメラはLeicaM8の絞り優先AEモードでの開放撮影、ロケ地は築地市場から勝鬨です。

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まず一枚目のカットですが、築地に着いて、まずは超人気店が混んで入れなくなる前に腹ごしらえと、一同打ち揃って某有名穴子料理店へ向い、食事の後、お店から出てすぐに目に付いた、通り沿いの豪華な銅板貼りの店舗兼住宅の佇まいです。

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二枚目のカットですが、まずは当日の安全祈願と被写体の豊漁を願い、築地の鎮守である波除神社にお参りしようと境内に足を踏み入れてまず目に付いた、巨大獅子頭社下の手水場の流水の中に沈んだ賽銭が陽光に照らされて揺らめく様で、水面にピンを合わせて、雰囲気を写し取ろうとしたもの。

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三枚目のカットですが、一同、築地市場内の外部者向けの食堂や売店があるエリアを散策しながら、何か面白いものは、と物色していたのですが、そこで、久々に海外からのシェフのような人物が、自分の好みの刃物を誂える様子がお店の外から丸見えだったので、一心不乱にコンパデヂで記念撮影か記録撮影を行っている仲間の女性の後ろから、店内の様子ともども一枚戴いたもの。

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四枚目のカットですが、市場の北側、ちょうどガンセンター方面への出口に繋がるバックヤードでいつも産地直送の氷詰めの鮮魚の小分けやら詰め替えを行う作業場が見学出来るエリアまで移動したのですが、あいにくそのような作業は行っておらず、仕方なく、建物やら設備を撮ってお茶を濁そうかと思った矢先、居ました、居ました、海外からのゲストが・・・そう、華南固有のゲコゲコした発音の中国語で愉しそうに語らいながら買い求めたばかりの安全この上ない日本製のイチゴを宝物の如く愛でながら堪能する中国人一家が居たので、お得意の中国語フレーズ「 ネイハオ! カーィパイヂャォ・マ?」と声を掛けたら、「ハィ!」との快諾戴いて若いヲヤヂさんと娘さんを撮ろうとしたところ、アタシも入る~とばかりのオモニも凄い勢いで画面に入ってきたので、ハィポーズ!と一枚戴いたもの。

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五枚目のカットですが、市場から場外へ出ようと歩いていたところ、かなりの勢いで築地名物のターレットがやって来たので、やり過ごしながら、背後の築地市場らしい建物が建ち並ぶエリアを背景に抜き打ちの一枚を撮ったもの。

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六枚目のカットですが、場外市場の辺りを暫し撮ってから月島方面へ移動しようということで、堅気の一般人相手に海産物を売り捌くエリアに足を踏み入れたのですが、天気の良い土曜の午後ということもあって、いつも通りの大賑わい、そこで長いさらさらの茶髪を午後の陽光に煌かせながら、虎視眈々と品定めをする、いたいけな小姐二人組が居たので、これ幸いと一枚戴いたもの。

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七枚目のカットですが、買い物客や観光客、そして我々のような物見遊山の冷やかしも含め、大勢の人出でごった返す場外の商店街をモデルさん物色しながら歩いていたら、後ろ姿ながら、これまた午後の陽光にさらさらの茶髪が煌き、一本一本が透けて見えるようなシーンが目の前にあったため、このレンズのテストケースに最適とばかり一枚戴いたもの。

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八枚目のカットですが、いつもよく撮らせて戴く、海老、蟹専門の卸兼小売のお店で、店先にて商談中の店員さんの邪魔にならないように気を使いながら、店先の蟹類にピンを合わせ、奥でタラバか何かを捌くお兄さんの姿を背景として一枚撮ってみたもの。

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九枚目のカットですが、海老・蟹専門店のちょい先の確かチェーン店系寿司屋さんの店先辺りで傍らの仲間の小姐とカン高いマンダリンの中国語で話し合いながら戦果を確認していた美形のリアル小姐の冬の陽光を浴びて燦然と照り返す白いダウンヂャケット姿が目に留まったので、人垣の合間から一枚戴いたもの。

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十枚目のカットですが、まさに撮影開始前の鎮守様へのお参りのご利益か、如何にも幸せそうな金髪碧眼の白人の父娘が冬の陽光をもろに浴びながら、美味しそうにソフトなんか食べてる姿が目に留まったので、ここでは英語で声を掛けて、モデルさんお願いしたら、快諾戴いたので一枚戴いたもの。

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十一枚目のカットですが、晴海通り経由、まさに月島へ移動せん、という矢先、一行のうち一名がはぐれてしまったようなので、仕方なく、電話で所在地確認して、待ちながら目の前にあった元は銅板貼りだったと思しき外壁を悪趣味な?オフホワイト塗りに換えてしまった店舗兼住宅をモチーフに往来を行き交う人々の様子を一枚撮ってみたもの。

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十二枚目のカットですが、晴海通りを歩いてほど近い距離にある、勝鬨橋までやって来て、そこで何枚か撮ったのですが、まずは橋の威容を表現すべく、いつも通り晴海方向に向け、通行人が多そうな頃合いを狙って全景図を撮ってみたもの。

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十三枚目のカットですが、天気も相当良く、気温もそこそこ穏かだったので、川沿いのテラスでは思い思いに寛ぐ人々の姿が目に付いたのですが、橋のほぼ真下付近で、何故か、縄跳びで親子?団欒を楽しむ三人組の様子がなかなか幸せそうに見えたので土手の上から一枚戴いたもの。

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十四枚目のカットですが、これも鎮守様へのお参りの功徳か、なんと一日で二回も河口へ向う下り方面の水上バス「ヒミコ」の姿を橋の上から目撃したのですが、これは勝鬨橋の上からちょうどやってくる姿を認め、橋の中央部付近で余裕を持って待ち受け、何カットか撮ったうちの一番大きく写っているもの。

今回の感想ですが、実は、Nikkor5cmf1.4S・CはSマウントのものや自分でL39に換装したもの合わせて4~5本は有ったと思うのですが、某八丁畷のハイテク修理業者さんで徹底的にレストア受けてフレア退治した個体を除いては、どれも開放では、湯気が掛かったが如きフレア&低コントラスト大会で本家ゾナー5cmf1.5に較べて、とてもスナップになんざ使おうという気も起きなかったのが正直なところですが、いやはや、この約35年間の眠りから醒めた銘玉は本家ゾナーとがっぷり4つに組んでも負けないですし、それを上回る目的で当工房でレストアしたJupitar3よりもまだ性能良いとの印象を受けました。
これからも事有るごとに有り難く大切に使わせて貰おうと思いました。

さて、来週は、また秘宝館からにはなりますが、先のICS世界の中古カメラ市でなかなか面白いレンズを買えましたので、その実力や如何に?ということでレポート致します、乞うご期待!!
  1. 2015/03/08(日) 23:11:19|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
<<Remarkable sharpness found in apature f5.6~Yashica T-AFD Tessar35mmf3.5 mod.M.II~ | ホーム | 轟動交換的光學~W-Nikkor35mmf2.5S tuned by F.G.W.G.~>>

コメント

わたしもゾナータイプのニッコールは何本か所有していますが、Lマウントは多少高価だったようで一本も持っていません。
拡大ピントのDⅢ以降バルナックタイプで使うなら軽快かもしれませんが、使い易さだったらこのようにMタイプですね。

近接の周辺ボケにクセがあったり、ハロが多いと云われていた割には昼間の殆どの条件でそれほど悪くはないのが分かります。どことなく重たげなクラッシック然とした描写と、ゾナーと比較すれば色再現も地味なようですが、遠景でもそれなりのシャープさがありますし、黒の背景の人物像には強烈な人物への光を緩和してくれるような独特の雰囲気描写があります。

M8の金色っぽい色の偏りが所々気になり、こういった場合はいっそのことモノクロ用でなんて思ってしまいますが、一枚目なんかまったくノーマルなのが逆に奇妙です。

ともあれ、昭和の時代史跡や雰囲気を狙うなら、戦後復興直後の市販高級レンズを用いる気分は最高でしょうね。現代のデジカメとAFレンズを同様な場所で駆使することを考えると、ひょっとしたら思わず「撮影禁止」なんて無粋な事にも遭遇しかねません。(たしかに勝どきあたりでは一部でそんな看板も見掛けたりします)
撮影に対するのぞみ方も、戦後のアマチュア写真ブームの頃の雑誌を見るにつけ、今の時代どころでない一般市民への波及度がありますし、プロらの啓蒙も盛んだったようですし、産業としての情熱も現代の車への政府助成に比類するような、相当大きな後押しが時代にあったように思われます。

専門家には不幸ですがプロよりも、むしろアマへの波及が強かった様子も注意されるべきです。もちろん、国産カラーフイルム開発も含め海外視察にはニコンS・S2を携えて出掛けた木村伊兵衛氏らの活動は記憶に留められます。

こういった全体的な状況を包括することこそ「文化」と云えるのではないかと、まさしくこのレンズこそ「戦後産業文化遺産」そのものだと思います。
  1. 2015/03/14(土) 11:02:10 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

LマウントとSマウントだと性格違うのですかね?

Charley944さん
お疲れです。
あの時のニッコールはこう映りましたか。
ちゃんと保存してあったレンズは良く映りますね。

10枚目のカットはさすがM8の神通力ですね。
海外の方には下手なカメラよりライカの方が印象良いとわかりましたし、次回は私もこういうシーンではM9を持って行こうっと。

ところでSマウントの50/1.4が家にあったので明日使ってみます。
さてどう違いが出るか楽しみですね。
  1. 2015/03/14(土) 17:27:57 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
確かにこのレンズには、まだまだ勢いがあります。
それはモノとしての出来の良さしかり、開放からの芯のしっかりした、カラーバランスも良好な描写しかり、です。
個体差はあろうかと思いますが、同時代のドイツ製のライカマウントと肩を並べる高性能ぶりではなかったかと愚考します。
そんな歴史と造った人間の心意気みたいなものを背負った銘玉をデヂタル暗箱で、気軽に性能を引き出せるとはイイ時代になったものですね。
  1. 2015/03/17(火) 00:16:51 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

Re:LマウントとSマウントだと性格違うのですかね?

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。
そうですね、文中にも書き記しましたが、うちにあるSマウントのレンズブロックは八丁畷で徹底的レストアしたもの以外はみんな"春のまどろみ"そのものの写りで、35年ぶりに撮ったL39がN1のサンプル数でこの性能ですから、元々の性能差が有ったのではないか、と考えるのもむべなるかなと思った次第。
確かに貴兄のものも、当方のSマウント個体と共通した写りですから、個体差とか経年変化の違いではなく、やはり両マウントでのレンズそのものの描写性能の差ではないかと思いました。
  1. 2015/03/17(火) 00:22:38 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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