深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

孤高のキメラ~Nikkor50mmF2・H改深川スペシァル

Nikkor50mmf2.jpg

nikkor01.jpg

さてと今宵のご紹介は、一見、ドノーマルの黒ニッコールがごく普通のSP黒にはまって画面に横たわっているありきたりの平凡な画像にも見えますがさにあらず、この個人工房が、日本光学工業のレンズを再加工してアッセンブリした記念碑的作品なのです。

当工房は基本的に光学系エレメントはそのままで、腰から下、つまり、ヘリコやマウントの改造や新設で以って、とにかく、ライカやニコンのボディに嵌って、距離計連動で撮影が出来るレンズにでっち上げるのをなりわいとしていたのですが、実はニッコール50mmf2のL、Sの程度のイイもの悪いものが合わせて4個ばかり溜まってしまったんで、まぁ、4個イチでもやって、まともなレンズを1本でも組めればめっけもん☆とばかりに、後ろ玉をはずす工具まで新調して、全て光学エレメントを群単位までバラシ、来週以降ご紹介するナゾのレンズともう1本、この黒のSマウントのものに組み上げようとしたのですが、実は開けてビックリ玉手箱ではないのですが、このNikkor50mmF2というレンズは、初期~前期"H・C"銘のものと、後期~末期の"H"銘のものとでは、構成は同一とは言いながら、中の部品形状が全く異なっていたのです。

特に今回組んだものでは、肝心要の後玉の貼り合わせユニットの被写体側が全く異なる形状で、この最後期型の鏡胴に前期の後玉をねじ込もうとしても途中までは入るのですが、中玉と絞り羽根アッセンブリのクリアランスを保つ部分が、本体側にあって、一方、レンズ側も前期型は中玉を土手で囲むようにスペーサ的な部位があるので、どうやっても、所定の位置まで入りません。

そこで、当日、友邦ドイツからUボートで到着した?超硬バイトの極細中グリ刃で以って鏡胴内部のクリアランスを取る部位をキレイに削り落とし、レンズ側にクリアランス保持部位の有る、前期モデルのキレイな後玉ユニットを挿入し固定したワケです。

ただ、それでは、外からみたら、何の変哲もない、黒いSマウントニッコールですから、ここで当工房の得意技術を一点投入。

それは、レンズ先端のリングにご注目。良く見ないと判りづらいのですが、このパーツはキズだらけだったんで旋盤で一回皮むいてから、工房得意の時代ニッケルメッキをかけたのです。
通常のニッケルメッキに比べ、シャンパンゴールドっぽく、時代がかって見えます。
これは、かつて購入したA型改DIIブラック&ニッケルのメッキ色を参考に工房で多層メッキと熱処理による界面合金化によって実現したものです。

で、肝心の写りはというと、勿論、元がニッコールですし、計測してオリジナル通りに組んで、ピント基準機でも、比較のメーカーコンプリート品と同一の合焦性能を持つことを確認し、レーザー光測定で光軸ずれが無い旨確認してからフィルムで試写しましたから、まともに写らない筈がなく、ハイライトはフレアッぽく、そして、シャドーはくっきりと締って、という、なかなか味の有る写りになったと思います。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2008/07/15(火) 00:22:58|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:12
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コメント

こんばんは。
複数の同一レンズから1本のレンズを組み上げても、普通はオリジナルのレンズを超えるものではありません。
1×1×1×1は、4ではなく1です。
これが、charley944 さんの手にかかると、4には達していないかもしれませんが、少なくとも1よりは大きい数字に変化させています。
これぞ、charley944 さんの魔術といえるものでしょう。
どこかに不調のあるクラシックレンズは、charley944 さんに集中するようにしましょう。

残念ながらニッケルメッキ部分は、はっきりと確認できません。
メッキ部分の面積を広げることは難しいのでしょうか。
メッキの耐久度も気になります。

作例もすごいですね。
シャープな部分と柔らかい部分の同居は、信じられないレベルです。
少なくとも開放には見えません。
このレンズのために、わざわざモデルを雇ったのでしょうか。
映画の1コマのように見えます。
  1. 2008/07/15(火) 22:16:59 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
過分のお褒めを戴き恐縮です。
>これが、charley944 さんの手にかかると、4には達していないかもしれませんが、少なくとも
>1よりは大きい数字に変化させています。
たぶん、クラシックレンズ達は時空を超えて我々に邂逅しているわけですから、さまざまな経年変化を受けていますし、或いはことによると杜撰な修理を施されてきたかも知れません。
その状態を100として受け取っているなら、新品には及ばないまでも、そのレンズの生れ落ちた時の性能に一歩でも近づくお手伝いくらいは出来たのかも知れませんね。

ニッケルメッキは確かにモニターの条件では見づらかったですね。
このメッキは一番大きなものではアカレッテのフロントエプロン一枚丸々やったことがあり、それでもムラが出なかったですし、耐久性はファクトリーメイドのクロームメッキには耐摩耗性、耐指紋性等、到底及ばないですが、少なくとも熱処理の結果、下地の真鍮との密着性は増して居る筈ですし、耐摩耗性、耐指紋性、そしてマイクロピンホールによる腐食に対しては、このメッキ層の上にフッソ樹脂、もしくは繊維ガラスコートを施すことも出来ます。
今は風合いを大事にしてシリコン系の極薄塗膜しか付けていません。

なお、今回のロケ地も早起きして築地へ行きましたが、場外の方々は一人一人が観光地の代表として、また都民の台所を守る立場から豊洲移転に反対し、一人でも多く築地のファンを増やしたいとの思いから、スナップ写真について、うるさいこと言われないどころか、寧ろ協力的ですらあります。
今回はさすがに発表を遠慮しましたが、テリー伊藤氏の兄さんも「一枚イイすか?」とカメラを構えたら、あのコワイ顔で弟の看板の前でポーズとってくれましたよ。
  1. 2008/07/15(火) 22:51:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

返信ありがとうございます。
いえいえ、新品出荷時より光学性能が上がっているのではないですか。
商品ではなしえなかった設計者の狙いを再現されていると思います。

わたしもニッケルメッキは大好きです。
以前、香港製のコンタックス・アダプターを見つかってしまいましたが、あれはニッケル時代のゾナーやテッサーが欲しかったからなんです。
それが後加工できるのであれば、こんなにありがたい話はないです。
さすがディテールにも手を抜きませんね。

築地の件は、納得です。
そういえば、テリー氏の写真は先日拝見しましたっけ。
築地とその周辺はなかなか風情ある町と聞いていたので、いつか散歩したいと思っていました。
もういい加減オリンピックや赤字銀行はいいですから、町並みや文化の保存に力を注いでもらいたいです。
おおっ、いま報道ステーションを見ていたら築地が出てきて、このお兄さんそっくりな人が登場です。
いやっ、ひげがないか…。
  1. 2008/07/16(水) 22:25:57 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

再びコメント有難うございます。
タイムマシンにでも乗って1958年当時にこのレンズを持っていかなければ、本当のことは判りませんが、実はインダスター沈胴で10コイチをやって、Gプラナー並みの性能のレンズを1本作ったことがあるので、万が一という希望は有るかもしれませんね(笑)
ところで、ニッケルメッキがお好きとのことでしたら、M同心改め、謎の深海生物氏と趣味が合うかも知れません。何せ、カレはそれが本職で旋盤加工の片手間にやってる深川のやさぐれ職人とは気合いの入れ方が違いますから。
  1. 2008/07/16(水) 23:14:51 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

希望いっぱいですよ。
まつたく未使用のレンズと使い込まれたレンズで、前者の方が描写が良いとは限りません。
やはり知られざる何かがあるはずです。
メッキも深海さんに一任したいですね。
プロジェクターレンズの改造の話はお受けいただいてよろしいでしょうか?
  1. 2008/07/17(木) 23:05:55 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

コメント有難うございます。
まぁ、楽器などでは、エージング自体が音質の改善になり、再現不能、かつ現代科学でも解析不能な事象とされていますから、ことによると、SiO2と鉛、バリウム、カリウム、ランタン等の混成物であり、切削、熱処理を受けた加工物であるレンズの硝質が、エージングにより、設計当時では期待し得なかった光学性能を発揮することはあり得なくもないと思います。
ただ、そうであれば、このニッコールに新たな力を宿らせたのは深川の隅に暮らす偏屈な職人のワザなどではなく、まさに神の気まぐれでしかないと思います。

ところでニッケルメッキは、深海生物氏に相談するとイイですね、彼?も本来の得意ワザなんで、喜んでホイホイ乗ってくるでしょう。

それから、プロジェクターレンズの改造ですか・・・
構成はWガウスかトリプレット系(含むゾナー系、ヘリアー系)でしたっけ。

絞り羽根を追加する改造がなければ、深海生物氏も工作理論はなかなか判っているようなので、時間掛かりますが出来ないことはないと思いますが、どーしても絞りを追加するとなると、レンズ鏡胴をいじりたくはないので、レンズ間ではなく、最後玉の後面に絞り羽根を内蔵したディスクユニットを追加して、艶消ガラスによる保護面を追加(絞り羽根からの金属削り粉、オイル垂れがCCDに付着するのを防止するため)という方法をとるか、さもなくば、銘板が隠れるのをガマンして、最前面に同様の絞りユニットを追加するのです。

画質的には、最前面新設の方がイイですが、クラシックレンズの場合は見た目が勝負ですから、銘板が隠れちゃいますとねぇ・・・

深川には50mm換算でF1.8用のディスクユニットとF2.8、F3.5のものが在庫してありますので、これを深海生物氏に分譲し、練習がてら改造させるのもまた一興かと。

いずれにせよ、明日、浅草でミニ撮影会やってから松坂屋呉服店に乗り込みますが、18:30までは深海生物氏は同伴し、そのあとはまた鶴見川か馬入川経由、駿河湾経由小笠原海溝に戻るみたいなんで、ご持参戴ければ、彼?の腕、知識で対応可能かどうかも含め、検証致しませう。
  1. 2008/07/18(金) 10:54:43 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

詳細にありがとうございます。
楽器のエージングというのはありますね。
ヴァイオリン族の楽器で言えば、木やニスは生きていて毎日毎日鳴らして細かく振動させることで、より繊細に響くようになるといいます。
ならば、ガラスやバルサムも生きているのでしょう。
毎日、光を通してやり、ときどき調整してやることで、同様のエージングを起こしていくと解釈することにしましょう。

レンズはダブルガウスですし、前2群と後2群がばらせるので、ここに何かできそうな雰囲気はあります。
いずれにしても、明日、時間調整しましたので、お持ちしてみることにします。
よろしくお願いいたします。
深海さんにも、よろしく、です。
  1. 2008/07/18(金) 22:04:36 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。、
たぶん、レンズのエージングは、楽器と異なり、ただ時間が経つと、何もしなくとも硝質中の各成分が馴染むのでしょう。
勿論、何もしないのと、適度に光を通し、温度変化の少ないところに置いてこられた個体の年の取り方が違うのは自明の理だとは思いますが。

ところで、今日は残念でしたね。
またの機会をお楽しみに。
  1. 2008/07/20(日) 00:04:09 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。
事前に時間等確認しなかったため、ダブルブッキングのような中途半端な形になってしまいました。
がっくりです。
これに懲りず次回もよろしくお願いいたします。

密かに格安レンズをゲットしました。
40mmなのですが、絞りはついています。
来週には到着が見込まれますので、こちらも診断お願いいたします。
  1. 2008/07/20(日) 01:43:22 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

有難うございます。
仕方有りませんです、誰しもカラダは一つ、しかし、しがらみは幾らでも・・・というのが、人の世の倣いです。

しかし、今回、中将姫光学さんのご来臨無しで、ホッと内心胸を撫で下ろした、気色あらん深海生物が一体居ました(笑)
仲間内の面前で、敬愛する有名ブロガーにたってのお願いをされたら、断るに断れず、お代官様の昆布巻き同様、あれぇぇ!と悲鳴を上げる間に手篭め同様、恐ろしいものを手渡されるという、プレッシャーに耐え切れなかったのでしょう(爆)
しかも、電話を受けた直前に「いやぁ、何回も失敗して、旋盤に噛み込みぐちゃぐちゃにしたレンズもあれば、天井、まですっ飛ばし、レンズが恐るべき凶器に転じたこともあり、そこまでやんなきゃ一人前になれない、上州の知行地には、夜な夜な枕元でコサックダンスをして通り過ぎていった哀れなレンズの犠牲者のため、鏡玉供養の慰霊碑建立してある・・・」とオドロオドロしく話しをしたら、「そんなん、聞いてないですよぉぉぉ」と浅草のマターリした某舟和二階喫茶コーナーでムンクの叫び状態だったことも背景にあったのです。

まぁ、まず易しい練習問題から提供して頂ければ、おいおい、一人立ちして、レンズの怨霊達にもめげず、結界の中でゴマでも磨りながら、黙々と鏡玉供養、もとい、加工をすることでしょう(激爆)
  1. 2008/07/20(日) 22:46:32 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

「感想」・・・ 初投稿です。

‘純真無垢‘と言われるような時間が過ぎ去ってしまった目には、二コンSマウントにキャノン標準レンズを組み込むという暴挙に対して、観念的には無駄なことだと念じつつ、ミレ二アムS3や再発SPの可能性をどこかに求めていました。それがエンラージロッコールやへんてこリプロダクト二ッコール付きを経て確信しました。そのカメラスタイルと映像への指向性は新奇性=エポックメイキングと認めざるをえません。 要は写真だよ、とは言いながら、引き伸ばしレンズの付いたカメラを見ながら新たな映像を模索出来れば、作品完成の第1歩が始まっているかもしれません。
  1. 2008/07/21(月) 14:26:20 |
  2. URL |
  3. 13 Ordre #-
  4. [ 編集]

13 ordreさん
初コメント有難うございます。
確かに当工房の作品には、実用、或いは経済合理性という観点からは、???というギモンを差し挟みたくなるようなパッケージングのものもあります。

しかしながら、工房の基本理念は、まさに活躍の場をを追われたモノ達への愛惜であり、リサイクル技術を駆使することにより、また新たなキモチでそのアイテムを愛して上げられるように手助けをすることなのです。
デジタルプリントに駆逐されつつある引伸機レンズしかり、古いアリフレックスレンズしかり、ジャンクの銀塩レンズしかり・・・

勿論、世の中にないものを作り出し、そのものの出来、そして写りを世に問う、という野心もあります。

ということで、また今後ともひとつご贔屓に。
  1. 2008/07/21(月) 21:01:40 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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