深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

ノスタルジーへと運ぶUFO~De Oude Delft Minor 35mmf3.5~

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さてさて、今宵のご紹介は、秘宝館の収蔵品からです。
並み居る珍品・銘品をさしおき、先々週、海の向こうからやってきた新しいお友達、De Oude Delftの
Minor35mmf3.5です。
このレンズの外形と写りを見て、こんな空想をしてしまいました・・・

或る夏の日、夜が明けたら、深川公園の広場にいかにもそのものズバリというアダムスキー型の円盤が着座していました。

この付近の住民各位はTVロケ慣れしているので、たとえイトーヨーカ堂に第二次大戦中の「隼」が鎮座して、その横で特攻服姿の石原慎太郎が絣もんぺの岸恵子を口説いていてもまず驚いたりはしません。

従って、このいかにも、というメタリック感も生々しいUFOを、無粋にも自衛隊や政府に通報したりせず、みんな遠巻きに、これからどうなるのかと見守っていました。

すると、中から、タラップが降りてきて、初老のしょぼいピエロと、酸いも甘いも噛み分けたような深い皺が刻み込まれたお年寄り達のちんどん屋の一行が、巧みな口上と懐かしいジンタのメロディを奏でながら、地上に歩み出てきます。

本来なら、体を張ってでも無辜の住民を守らねばならない交番の巡査さえも、口をぽかぁんと開けたまま、この一行の一挙手、一投足を見守るばかりです。

この奇妙な一行の口上曰く、あなたの帰りたい昔を垣間見せましょう、思ひ出を大切にしましょう♪と。

何でも。この装置の中に入れば、誰でも一番帰りたい昔を画像で見せてくれるというのです。

ちょっと聞く限りでは相当胡散臭いハナシですが、何せ、なりはそのものずばり、ベタなちんどん屋一行でも、正体不明のUFOから出てきた連中ですから、どんなカラクリを持っているのか、また何の目的でこんなことをするのか、誰しも図りかねていました。

しかし、たまたま通りがかった独居老女が、「もうお迎えを待つばかりだし、大東亜戦争に取られた息子との時間が戻せるなら、試してみようぢゃぁないか・・・」と名乗りでました。

そして、初老のピエロに手を引かれ、円盤の中へ入ること10数分、さきほどまで、精気を失い、うつむき加減だった老女は別人のように目を輝かせ、円盤から降りてきました。

さすがに疑い深い野次馬達も、タダで面白い見世物を見せて貰えるというので、我先にと行列し、円盤の中に乗り込んでいきます。

子供の頃の家の前の運河に浮かぶ船、父親と遊びに行った公園、路地裏の無意味なオブジェ・・・皆が忙しくて、とっくに記憶の奥底に仕舞いこんだまま忘れてしまい、振り返られることもなくなった記憶達が、銀河の中心から来た宇宙人達の未知のテクノロジーで、あたかも目の前の出来事の如く、三次元映像で甦ります。

しかし、記憶の中の映像というものは、どんな技術を以ってしても、どうしても紗がかかったように見えてしまうようです・・・

この深川の奇跡は、やがて全国の物見高い民衆に知れ渡ることになり、あくせくと将来のことを考えるばかりでなく、時には思い出に浸り、そして過去へ目を向けることの大切さがマスメディアなどでも大きく語られるようになります。

今から遥か数千年前、科学技術の進歩に奢り高ぶり、脇目も振らず前に進むことのみ追求し、しまいには自然を、そして、その一部である自分達の在り方まで見失っていってまでも、来た道を振り返ることをしなかったために、結局、科学技術の行き詰まりで滅んでしまった或る惑星の高等生物が、まだ幼い宇宙の迷い子たちが同じ道を辿ることがないよう、惑星最後の日に祈りを込め、送り出したアンドロイド達だったのです。

とまぁ、恥ずかしげもなく、へたくそなショートショートを書いてしまいたくなるような、何となく懐かしい外観と写りを見せてくれるレンズなのです。

このレンズは、1950年代初めに、柿右衛門のコピーであるマイセン焼の更にコピーであるデルフト焼で有名な、オランダのデルフト市に有るDe Oude Delft社が唯一、ライカ用に製造したL39マウントの広角レンズです。

戦後の作りにも関わらず、コーティングがありません。しかし、金属加工、表面仕上げの美しさは特筆すべきもので、オリジナルのライカにも全く遜色がありません。

作例は、全て工房近傍の深川一帯で撮影したもので、RD-1Sに装着し、全コマ開放でテストしています。
  1. 2008/07/21(月) 20:49:03|
  2. Arri改造レンズ群
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コメント

「美しいガラス」

「美しい星」を思い出させるふしぎな短文でしたが、エルマー35mmとの違いは何でしようか。物神化ではありませんが、イメージさせる物=オブジエのありかたが気になります。・・・あらゆるテッサーtypeで、28mmf8はこんな画角の広いのがあると驚き、二コン35mmf3,5や Y-C45mmは抜けがいい。そして初期のエルマー35mmはブレッソンや木村伊兵衛で見かけるぐずぐずした画像でしたが、現代におけるトリプレットみたいに味付けしやすいタイプかな、と思いました。個人的には、周辺が落ちてる背中の写真がいいですが、LENSに付けられたふしぎなドットで絞る映像を是非とも見たいです。
  1. 2008/07/24(木) 00:12:52 |
  2. URL |
  3. 13ordre #-
  4. [ 編集]

わたしは、チャーリーさんをショートショート作家ではなく、詩人だと思っていましたので、この味のあるオチまであるストーリーを星新一ではなく宮沢賢治にしてほしいです。
>紗がかかったように見えてしまうようです・・・
これは、このレンズの特徴なのでしょうか。
それともくもり等のダメージ?
コーティングがないということは、アルパ用のレンズの方が後から作られたものなんですね。
2つの赤点はそれぞれここにセットすればパンフォーカスになりますよ、というおせっかいな印のように見えるのですが、そんなものを欲する人のためのレンズなのでしょうか。
まったく訳の分からないレンズです。
ヴェストバーンシュトラーセの店のサイトに出ていて気になっていたのですが、怖くて手が出ません。
  1. 2008/07/24(木) 01:35:22 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

13ordreさん
コメント有難うございます。
残念なことに、当工房付設秘宝館の蒐集方針からすると、35mmのエルマーは対象外なんで、コレクションにありません。従って、エルマー35mmとの違いは、自分の経験に基づくコトバとして語れないのですが、ただ、50mmのエルマーはノーコートの全周型ニッケルの古いものがありますので、クリーニング前に同じ深川界隈を開放オンリーでスナップした画像を較べてみますと、ハイライトのフレアの出方、全体的にフワッとしながら、合焦部が中央付近にきた時のシャープアさ、周囲の甘さ、確かに似ているかと言われればよく似ています。
ましてや、今回、RD-1Sにて撮影していますので、デルフトは画角換算で約53mmになりますので、
ほぼイコールコンディションでしょう。

ただ、同じF値のものでは、ズマロン35mmf3.5の新型鏡胴に入っている個体の、ズミクロンを凌ぎ、マイクロニッコールに肉薄するシャープさ、発色の艶やかさ、コントラストと階調再現性のバランス、画面隅々までの均質性には到底及びません。

35mmのF2未満でズマロン35mmf3.5をベンチマークとすれば、コストパホーマンスという観点で買う価値があるものは、かなり限られてきて、せいぜい、ローデンのヘリゴン35mmf2.8、Wコムラー35mmf2.8、そして、CXマウントになってしまいますが、プラナー35mmf3.5、ビオゴン35mmf2.8くらいではないかと個人的には考えています。
  1. 2008/07/24(木) 09:41:31 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
肉眼で見て、はっきり判るほどの曇りはないですから、元々の"味"とも考えられます。

M同心改め、深海生物ドノもこの戦前タイプのf4.5を秘匿していて、いっぺん、東向島界隈でスナップツアーしたとき、海底から持ってきましたが、これもやはり、煙ったようなフレアに覆われ、全体的にコントラストの低い"眠い"画だったと記憶しています。

ただ、先にご紹介したノンコートのニッケル全周エルマー50mmf3.5もクリーニング前には、この手のフレアがもっと酷く、曇空が画面の4分の1も入ったら、半分以上が煙ったようなフレアに覆われてしまい、川崎の某工場でクリーニングしたら、このレンズよりもうちょいマシになったことから、クリーニング出せば、もう少しコントラストが上がり、フレアっぽい写りが改善されるのかも知れません。

個人的には、色ヌケがよく、シャープでハイコントラストなレンズを溺愛していますので、全面研磨の上コートしてパキンパキンに写るように更生したいのですが、仲間内から悲鳴が上がり、そういうレンズがイイなら、ズマロンか、ヘリゴン使ってくれぇぃ~と喧しく言われてますんで、そこまではやりませんが(笑)
  1. 2008/07/24(木) 09:55:05 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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