深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Amazing rebirth of Japanese enthusiastic optics~Aires Coral 4.5cmf1.9 mod.M uncoupled~

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さて、今週のご紹介は予告通り、工房製品行きます。
このレンズ、フィルタを嵌めているため、ちょいと見ずらいかも知れませんが、銘板には「Aires Coral 4.5cmf1.9」と刻印されています。
少しでも、国産カメラにお詳しい方であれば、え、Airesって、ライカマウントの玉って出してたっけ???とその異常さに驚かれると思います。

それもその筈、元々はレンズシャッター付きのヂャンクから、ほぼ新品を作る手間を掛けて再生したのですから。

元々、新宿東口駅前の山岳系の店名のお店を毎回覗くと、結構な珍品を信じられないような値段で買えることが年に数回あるのですが、このAiresの玉も前玉には擦り傷、無可動のレンズシャッターに前後のブロックが付いた状態でヂャンク箱の中に誰にも省みられることなく転がっていたのを、最初は前にKodakのシグネットでやったことがある、絞り機構以外のレンズシャッター内部部品を外してしまい、云わばどんがら状態のレンズヘッドにヘリコイドをつけてしまえば良いだろうと思い買って帰り、その週末には大久保の名人の元に持ち込み、エレメントの修復を依頼したのでした。
ところが磨き&再コーティングから上がってきて、首下のネジに合わせて、削りだしたシャフトを合わせようとしたのですが、これがなかなか上手くいかない上、絞り機構も妙に引っ掛かり感があって、得心出来なかったので、他にも魅力的なレンズヘッドの在庫が複数有ったため、数年間、防湿庫の中で眠りについていたのでした。
そして、この工房主に有りがちな、”降りて来た系”の閃きがあり、前後の光学アッセンブリを別の鏡胴に嵌めて、その間に絞りを入れれば良いと、まさに深川アナスティグマットシリーズ1~6号機までの開発ノウハウを活かした加工法で再生すれば良いと気付いたのですが、はてさて、それは削り出して、絞りを入れた上で前後にネジ切って光学アッセンブリを装着するのか、或いは何か既存のものを使って、径の違いをネジ付きスペーサ削り出して、それを噛まして装着するのか?・・・結局、基本構想から工作着手まで更に数週間を要し、既存の有りふれたヂャンクの鏡胴を使って再生すると決めてから、また前後のクリアランスを割り出すのにも手間取り、結局、通常の改造の3本分以上の手間隙を掛けた挙句、この稀有なレンズが甦ったということです。

このAires Coral4.5cmf1.9というレンズ、1957年にアイレス写真機製作所から発売されたアイレス35IIILというレンズシャッタ-式レンジファインダカメラのレンズで、4群6枚、素人眼には当時のキャノン、ニコンとも遜色のない良い硝材が採用されているように見えます。

では、約58年ぶりに甦り、21世紀の景色を撮ることになった、当時の外貨獲得の担い手、Aires Coral 4.5cmf1.9の写りを夏の浅草の景色とともに逐次追って参りましょう。

カメラはFuji X-E1、全コマ開放による絞り優先AE撮影です。

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まず一枚目のカットですが、浅草寺境内は本堂前のご焼香を行う、屋根付き巨大線香立て付近、手水場をバックに何がしか語らい合う、異国のいたいけな若者達のグループの様子を捉えてみたもの。

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二枚目のカットですが、浅草寺本堂を背にして、宝蔵門に向った方向で、自らのスマートホンで精一杯腕を伸ばして晴れ姿を撮ろうとしていた関西からの健気な小姐二人組に声を掛けて、シャッター押して上げる代わりにモデルさんになって貰ったもの。

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三枚目のカットですが、浅草寺境内から南南東の方向に位置する弁天堂の前の道、仲見世の東側側道に面した店舗前で、お堂の階段での童子達の追いかけっこに疲れたのか、軒先で、息も荒く、一休止している、いたいけな地元民の極小姐の後ろ姿を捉えてみたもの。

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四枚目のカットですが、同じく仲見世の東側側道では、観光客を載せた人力車がバンバン通るのですが、たまたま、この通りに面した何箇所かの説明スポットである旧「暮れ六つ」の前で、ここで行われる料理と江戸演芸について、若い車夫さんがたどたどしいカタカナ英語で一生懸命説明したあと、それヨイショ!と走り出す刹那を捉えたもの。

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五枚目のカットですが、途中から仲見世に戻り、雷門方面に歩くと、いつもの撮影スポット、美人茶屋「あづま」さんが道の向って右側に在り、店頭では年端も行かない小姐各位がかいがいしくきび団子やら、甘酒やら、青汁、もとい冷やし抹茶を観光客相手にひさいでおり、今回はその裏手のイートインスペースで、幸せ一杯オーラを放ちながら、冷やし抹茶ときび団子を堪能するカポーの様子を一枚戴いたもの。

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六枚目のカットですが、同じく美人茶屋「あづま」さんの店頭、仲見世に面したきび団子売場で、中国から来た健気な小姐が飲みかけのペットボトルの緑茶も放っぽり出して、カウンター越しの和装のギャルソン小姐から、きび団子と冷やし緑茶を買い求めようと、財布から慣れない異国の小銭を取り出して支払っている様子を一枚戴いたもの。

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七枚目のカットですが、雷門前で暫し佇み、画になりそうな被写体の登場を待っていたら、渋めの柄の浴衣にアップの髪型もバッチシ決まった、小柄でイケてる小姐が独りで、下駄の音もカランコロンと、ゲゲゲの鬼太郎か、牡丹灯篭のお露さんかとばかり軽快に響かせ通り過ぎて行ったので、追い縋りざまにその粋な後ろ姿を一枚戴いたもの。

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八枚目のカットですが、もう陽も傾き掛けて、人工光が目立ち始めた時分、雷門周辺にたむろする商売熱心な車夫諸兄は、スマホンやら、コンパデヂで記念撮影をせんと欲する、いたいけな小姐達を目ざとく見つけては、ビヂネスチャンス到来とばかり、まず、無償でシャッタ-押して上げて、しかるのち、思い出作りと云えば、人力車みたいな非日常体験がもってこいですよ♪などとセールストークも巧みに乗車へと勧誘していくのですが、雷門提灯真下で行われていた、その勧誘の様子をちゃっかりと一枚戴いたもの。

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九枚目のカットですが、陽も暮れて、辺りもとっぷりと暗くなりかけてきた、雷門の全景を道の反対側の歩道の上から捉えてみたもの。

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十枚目のカットですが、深川への帰り道、営団地下鉄銀座線の乗り場へと繋がる、日本最古の地下商店街のひとつ、浅草駅地下街の様子をノーファインダで捉えてみたもの。

今回の感想ですが、実は、オリヂナルの状態での写りを見たことがないので、周辺がちょい甘いとか、ハイライトが若干滲むという、今回の試運転で出た特徴が、果たしてクリアランスの違いによるものなのか、或いは、もともと開放では撮らない前提でこんなものなのか、いまひとつ判りかねますが、何れにせよ、この加工法、即ち、リハウズィングが、死にかけたレンズシャッター機の希少レンズ復活の有効な治療法であることは判りました。

さて次回は秘宝館から何か紹介しましょうかね、乞うご期待!!
  1. 2016/01/31(日) 17:34:44|
  2. その他Lマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

浅草もまたいろいろな顔がありますね。

charley944さん
お疲れです。

コーラルで撮影するとこんな色合いなんですね。
確か以前座間キャンプの撮影に同行した際に初めてこのレンズを見たような気がするのですが、あれとはまた違うコーラルでしょうか。
5枚目のカットが手前側だけでなく、奥側で起こるドラマも見せていて、引き込まれますね。

レンズはともかく私も撮影に出かけないとなあ。
  1. 2016/02/07(日) 19:23:48 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #nOJiXcNY
  4. [ 編集]

現代のレンズとは違う様な色合いや、硬めの背景ボケも含めて、とても面白いレンズだと思いました。

このレンズの付いたカメラで、こうしたピントの厳しい開放性能を保つことは不可能と思われますので、今回の改造は新発見に近いものだと思います。これがこうして確認できたのも、こうしたレンズシャッター部品レンズでさえもオーバーホールを請け負っていただけたメンテナンス業者の方が居たという、見識が合致した貴重な例だといえます。

レンズシャッター機を分解するような人も少なく、さらにそのレンズをOHして使ってみようという珍しい例だった様ですし、コラール系は単体レンズは無かった様なので、なおさら貴重な作例だと思いました。

(今回のレンズをNEXマウント化している例がたまたまこの時期にヤフオクにありましたが、さすがにOHまではしていない様でした。)
  1. 2016/02/08(月) 17:59:34 |
  2. URL |
  3. treizieme ordre #-
  4. [ 編集]

Re:浅草もまたいろいろな顔がありますね。

出戻りフォトグラファーさん
有難うございます。
これは国内物故メーカーアイレスのCoralで、あちらはまだ未登場なので詳しい説明は避けますが、イタリア産です。
でも、味わいという観点でみればイイ勝負かも。
このレンズに限らず、浅草ってゆっくり、ネタを拾いながら撮り歩くと、はっとするような画が撮れることがあるものなのですよ。
  1. 2016/02/08(月) 23:39:55 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

treizieme ordre さん
有難うございます。
そうですね、或る意味、3年ほど前にどんがらだけのR-Serenar5cmf1.5を内部部品を全部削り出して復刻したのを皮切りに、色々なエレメントを組み合わせて光学系を作り上げて来た技術の延長線上にあるので、こういったことが出来るのが当工房の強みであり、今後も外観、性能双方の面から発展、拡充を図っていきたいと思っています。
  1. 2016/02/08(月) 23:46:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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