深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

A tiny optics with extraordinary performance was excavated and restored~Cooke Kinic1 1/2"f3.5 mod.M~ 

さて、今宵のご紹介は先週の予告通り、久々の工房作品いきます。
このレンズは英国はRank Tayrer Hobbson製のCooke Kinic1 1/2と云い、戦前は1920年代の作と考えられる黒いエナメルと鏡面仕上げにローレットも美しい人差し指の第一関節くらいのノーコート、トリプレットのレンズヘッドです。
このレンズ、元々は4~5年前に、電子湾で兄貴格の2"を買い求め、その素晴らしい写りの気を良くして、同じ売主から第二弾として買い求めたのですが、安くしておくね♪という売主の甘言に乗せられ、ポチっとやってみれば、届いたレンズはカルピスを味のする限界くらいまで薄めた程度の白濁の上、不格好なDマウントの長い袴を佩いていて、これがどうにもこうにも分解も清掃も出来ないときたので、暫し諦めることとし、防湿庫の片隅に放って置かれたまま、半ば忘れ去られていたのです。
ところが、先の甲府信玄公祭りにて、その筋の専門家である同行者の方から、たまたまお使い戴いた、兄貴格の2"の方を望外のお褒めに与ったので気を良くして何とか使えるようにしようと思い、居間兼寝室兼書斎の机の上に置いておいたら、或る日、酒飲んで帰って来たら、閃くものがあり、道具を適当に見繕ってちゃちゃちゃ♪と分解し、あっという間に3枚しかないエレメントは占い師の水晶玉並みにきれいに透き通った状態になったのでありました。
残るは、不必要にメカニカルバックを伸ばし、しかも出穴が小さいことからAPS-Cサイズですらビネッティングの起こりそうな、有害無益なDマウントネジの袴ですが、こいつは、治具を工夫し、旋盤で切り落とし、絞りリング、そして後玉の位置を計算した部位に新たに0.5ミリピッチのネジを切って、新たなヘリコに装着できるようにした次第。
そして、昨日、久々の工作デーと決め、ヘリコ&マウントアッセンブリの中軸にネジを切って、この可愛らしいレンズヘッドを固定し、第二期工事として距離計連動も可能なようにカムも無限合わせて、内面反射防止加工して第一期工事を完了、今日の午後に世界各国からの観光客で賑わう浅草まで試写に出た次第。
では、さっそく、その実力のほどを見て参りましょう。
カメラはX-E1、全コマ開放による絞り優先AE撮影です。

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まず一枚目のカットですが、地下鉄から上がってすぐの定点撮影スポット、雷門周辺に出るので、そこで物色していたら、中国人のカポーがアキバ帰りと思しきグッズを抱えて、スマホンで腕伸ばして二人の姿を撮っていたのですが、ちょいと間に合わなかったので、その撮影結果をレヴューしている様子を一枚頂いたもの。
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二枚目のカットですが、今日は何となく佳きチャンスに恵まれそうな予感とともにこの可愛らしい相棒と仲見世に出たのですが、雷門くぐってすぐのところで、肩車しながら散歩していた地元民のお爺と、そのお孫さんの極小姐が居たので、声かけたら、日本人から声かけられるのは珍しいねぇ・・・とか苦笑してモデルさんになって貰ったもの。
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三枚目のカットですが、お爺とお孫さんにお礼を述べて仲見世を進んで行ったら、或る店舗の店先で、黒人の混血と思しき少年と、その少年をお兄ちゃん、と呼ぶ、三つ編みも愛くるしい、いたいけな極小姐が土産物屋の店頭でハローキテー系のグッズを一心不乱に物色していたので、そーっと近寄り加減でノーファインダで撮ってみたもの。
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四枚目のカットですが、いつもの仲見世での定点撮影スポット、美人茶屋「あずま」さんの店頭で、きび団子と抹茶ドリンクを買い求めようとしている、ファンキーなカンジの黒人カポーが目に留まったので、買い終わるまで暫し待ち受け、店頭から離れるや否や、ヘイブラザー、今日は決まってるな、一枚撮らしておくれよ♪とか相当馴れ馴れしく話しかけたら、破顔してOK,OKということでノリノリモデルさんになってくれたもの。
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五枚目のカットですが、仲見世の路上でノリノリのブラザー達にお礼を述べてから別れ、宝蔵門の方向へ向き直ったら、なんと、「あずま」さんの側道を挟んだ隣の犬小道具屋さんの店頭で、いたいけな白人の極小姐が物欲しそうにショーウィンドの中のお犬さまグッズを注視しているではないですか?ということで、気配を消して背後に回り込み、必殺の一閃でその可憐な横顔を捉えてみたもの。
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六枚目のカットですが、同じく仲見世沿いで、これでもか?と小物の類いを店頭に並べ商っている土産物屋の店頭で、妙齢の白人女性がこれも一心不乱に土産物を物色していたので、人の背中に隠れながら巧みに近づき、気配を消しながら、斜め後ろに立って、通行人が途切れた一瞬を見逃さず、一閃くれたもの。
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七枚目のカットですが、色々とシャッターチャンスを物色しながら、キョロキョロと挙動不審の一歩寸前で仲見世を歩いていたら、程なく宝蔵門の前まで辿り着いてしまい、ここでもいつもの倣いで、宝蔵門或いはその周辺の記念写真を撮ろうとしている海外からの観光客に狙いを定め、お誂い向きにひとり旅と思しき、うら若き白人女性が、今頃の若い人間には珍しくコンパデヂで宝蔵門の威容を捉えようとしていたので、ヘッドホンで外界の音を遮断しているのをイイことに、至近距離まで歩み寄り、その真剣な横顔を一枚頂いたもの。
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八枚目のカットですが、宝蔵門をくぐり抜けて、浅草寺の境内に入ったら、まず一番手近な定点撮影スポットである、人力井戸に視線を走らせると、居ました居ました、マレーシアからという親子のいたいけな姉弟が一生懸命に水汲むところを、オモニとアヂュモニが向かいのベンチからペットボトル入りの緑茶なんか飲みながら、声かけて注文しながらスマホンで撮影しているという家族が居たので、声かけて混ぜて貰い、一枚撮ってみたもの。
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九枚目のカットですが、今日は、というか今日も、地下鉄出てから全戦全勝の声かけ撮影に気を良くして、境内の宝蔵門の北東にある、伊藤園だったかの緑茶を振る舞う掘立小屋みたいなアトラクション手前の桜の造花というか人工木みたいなオブヂェの前で、いかにも写真撮らせて下さいと声を掛けられるのを待ち侘びているかの如き、小姐二名が居たので、まずは日本語で、すみません、声かけたら、ハィなんでしょう?と答えてくれたので、かくかくしかじか、加工したばかりの英国製の戦前のレンズの試写してるんでモデルさんになってはいただけませんでしょうか?とお願いしたら、快諾して頂いたもの。
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十枚目のカットですが、着物の日本人小姐お二方にさっそく撮影結果をご覧戴き、えーこんなキレイに撮れるの?ぢゃ、アイポンでも撮って貰おうかな☆とかいういつもの予定調和説に繋がり、数カット撮ったら勘弁して貰い、お礼を述べて別れたら、次なる定点撮影スポットである、お神籤売り場で、難解な日本語の籤を一生懸命に解読しようと雁首揃えている白人一家が居たので、至近距離に近づき、五重塔を撮るフリして一枚頂いたもの。
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十一枚目のカットですが、今日は素通りのつもりで来ましたが、幸先の良さにお礼でもしようと思い、いちおう本堂にお参りしてから、奥山方面に降りて行ったら、さっそくのご利益だったのか判りませんが、インド人の一家がつつじの植栽に囲まれた漢字の碑文の青銅製プレートを挟んで座り、記念撮影なんかしてたので、父娘の回の時、カメラマン役のオモニに声かけて、一枚撮らして貰ったもの。
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十二枚目のカットですが、話は前後しますが、今回のこのレンズの加工の特徴は、ヘリコイド留めの位置を工夫して、なんと20cmまで接写が出来る仕様になっているので、それを試すべく、影向堂とかいうお堂の前で今を盛りにつつじが咲き誇っていたので、毎日毎日飽きもせず、スマホンで撮ってる構図に改造レンズ+APS-Cミラーレスでチャレンヂしてみたもの。
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十三枚目のカットですが、奥山から花やしき方面の出口へ抜けると、一挙に海外や国内地方都市からの観光客による賑わいは影をひそめ、まさにディープ浅草という風情の、地元民や都内からの或る程度地勢に通じた観光客以外は通らない、閑散とした通りになるのですが、結構面白い画が拾えるので、今日も歩いていたら、大型犬を囲んで世間話をする一行が居て、しかも昼から深酒したのか、比較的若い女性の連れは、伴の年配男性にもたれて眠りこけている、という非日常的な景色が撮れたもの。
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十四枚目のカットですが、奥山からウィンズ方面を抜け、六区の飲み屋街経由、再び伝法院通りに戻るルートを歩いていたら、さすが浅草、日曜の午後も遅くだったので、道に面した居酒屋はどこも満員御礼、皆さん、この世の憂さを暫し忘れるべく、楽しく飲み食い語らっていましたが、いつも気になる、赤ちょうちんならぬ「生ホッピー」の白提灯の向こうで楽しく語らうグループが居たので提灯超しに一枚撮ってみたもの。
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十五枚目のカットですが、伝法院通りから再び仲見世に戻り、帰路も撮影しながら歩いていたら、来る時は混み合っていて、とても販売員の小姐各位のご尊顔など拝めそうになかった美人茶屋「あずま」さんの店頭も客がまばらで、ちょうど頃合い良く、いたいけな幼子を抱えた若いオモニがきび団子を贖おうとしていたので、頃合いを計り一枚頂いたもの。
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今回の感想ですが、うーん、戦前の英国の光学技術恐るべし・・・一説によれば、戦前のKinicはどれも硝材、曲率といった構成まで、基本的にはデニステーラーが1893年に発明したトリプレットそのままだったといいますから、最新とは言えないまでも、銀塩に比べればはるかにシビアなデヂタル機器でこれだけの画が撮れるということは、或る意味、19世紀には光学技術は或る程度の完成を見ていたということなのでしょう。

さて、次回は海外取材準備で一週お休み、翌々週からはたぶん三週連続くらいで、大陸の画いくと思います、乞うご期待!!
  1. 2016/04/24(日) 21:12:33|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

切れ味の良いレンズですね。1920年代の光学製品とはとても信じられない描写です。
  1. 2016/04/25(月) 21:26:53 |
  2. URL |
  3. salgadou #eCUuu8f.
  4. [ 編集]

また掘り出し物が出てきましたね。

charley944さん
お疲れです。

Dマウントでも加工次第でトリミングなしで撮影出来るのですね。
APS-Cならではというべきでしょうか。
なお、ピンク系の花とか看板とかを撮った際には、私のR-D1xGとかM9の様な原色ブーストがかかるのはこのレンズならではなのでしょうか。
3枚目とか10枚目は自然な色合いなんですが、12~13枚目はそんな色合いに見えました。

15枚目の店員さんの服は自然な色合いなんですけどねえ?

来週はGWで海外取材ですね。
ミサイルに当りませんように(笑)
  1. 2016/04/25(月) 22:26:50 |
  2. URL |
  3. 出戻りフォトグラファー #aYDccP8M
  4. [ 編集]

salgadou さん
有難うございます。
ホント、改造するまでは努々、思ってもみませんでした・・・だって、ホントちっちゃくて、白く曇っていて、撮れるかどうかすら判らないくらいだったんですから。
でも、兄貴分の2"の働きぶりがその筋の方に認められたので、生まれ変わりのチャンスを与えられたということです。

  1. 2016/04/27(水) 23:45:03 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

Re:また掘り出し物が出てきましたね。

出戻りフォトグラファー さん
有難うございます。
まさに埋もれたお宝でした。
着いた時に、もはや改造する気が失せて、先般の甲府での出来事がなければ、そのまま忘れ去られて、持ち主のご逝去とともにガラクタとして埋却処分・・・てな運命が妥当だったのかも知れません。
それでも、兄貴分の実力が、この不遇な弟分の才能を発揮するチャンスを与えたということで、今回の教訓は、ホント、レンズってもんは、結局は改造するなりして、撮ってみるまでは真価は判らない、ということなのでしょう。
  1. 2016/04/27(水) 23:49:34 |
  2. URL |
  3. charley944 #yjwl.vYI
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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