深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

移ろい行く老舗の誇り~Rodenstock Heligon35mmf2.8~

heligon35mm.jpg
今宵の紹介は、また工房附設秘宝館からの登場で、Rodenstock Heligon35mmf2.8です。

ここのブログでは、改造レンズである、Cine-Heligon50mmf2、Rogonar-S50mmf2.8、Rodagon50mmf2.8、そしてApo-Rodagon50mmf2.8が先行して紹介されてしまいましたが、今回ご紹介する35mmのHeligonだけが、ドイツ光学業界の老舗のひとつ、実力ではツァイスに比肩するとも言われる1877年創業のRodenstock社がライカ互換マウントのL39スクリューで1950年代にリリースした唯一のレンズです。
Rodenstock社は、技術力を誇示するかの如く、この超高性能レンズ1本のみをライカ互換でリリースして以降、活躍の場を大中判、引伸レンズへと移していきます。

そもそものこのレンズとの馴れ初めは、今から9年ほど前、タイから復員してきて、外地で稼いだ泡銭もあったし、そろそろ、ライカ互換の珍しいレンズでも漁ろうかな・・・という下心を持って、銀座の黄色い手榴弾のお店のショーケースを覗いていたら、たまたまこのレンズと目が合ってしまい、ふと頭をよぎったのが、んん、ローデンシュトック、お、これ、カッコェェ眼鏡のフレームとか作っとる西独の高級品の会社やんけ・・・見た目はイマイチやけど、もしかしたら、値段もそこそこ高いし、珍しいものかも知れへんから、ゼニようけ持っとるうち、買うたろう♪という、自己飼育の悪魔の囁きでした。

で、次の晴れた休日、深川界隈の風景、運河や、神社仏閣の参道の商店などを試写してびっくらしまくらちよこ状態でした・・・開放から、恐ろしくシャープで、色のヌケも良く、画面隅々まで歪み、崩れな~ぃ・・・しかも、合焦部の超シャープさと相反して、前後のボケもスーパ-ナチュラル!

ご覧の通り、カッコは地味目ですし、小ぶりなのでそれほど凄いレンズとは思えませんでしたが、ずっしりと重い密度感の塊である、このレンズの驚愕すべき試写結果をもとに、SマウントのW.Komura35mmf2.8と双璧の広角レンズ軍団の礎となったのです。

何せ、50mmでは、当時はSマイクロニッコール50mmF3.5が優劣を図るメートル原器のような役目を果たしていましたが、35mmでは、このHeligonを基準にして、シャープネス、発色、ボケを判断するようになってしまったのですから。

シャープさだけなら、キャノンのL35mmf2か前回ご紹介のW.Komura35mmf2.8でも十分太刀打ち出来るかもしれませんし、色ヌケの良さであれば、CXマウントの35mmf3.5のプラナーでも比肩し得るでしょうし、開放時の立体感やボケのなだらかさでは、ズマロン新タイプ35mmf3.5もイイ勝負を見せてくれますが、やはり、オーバーオールの性能を考えると、このHeligon35mmf2.8が依然としてチァンピオンと認めざるを得ないと思います。

余談ながら、ダブルガウスのDNAは隠せないと申しますか、このレンズに一番近い写りをして、時には同伴した主役のシネ改レンズすら喰ってしまう、驚愕のレンズが同じく4群6枚対称系のMロッコール40mmF2だったのです。
  1. 2008/08/18(月) 23:07:09|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

このレンズどういう経緯で作られたのか、ずっと気になってました。
ヘリゴンには50mmF2もあるのに、これはL39にはなってないですよね。
標準はいらないが、高性能の広角レンズが欲しかったのでしょうか。
ロ社では素敵な外観デザインにしたかったけど、バルナックの伝統をはみ出ない、おとなしめのデザインにしてと注文つけられたようにも感じます(地味ながらも)かっこいいと思います。
製造数も、多くはないですが、非常に少ないというほどではなさそうです。
どう推理されますか。

けっしてコレクションしているつもりはないのですが、レンズの味わいを知ってしまうと、ついついリストが膨らんでいきます。
将来達観して各焦点距離1本ずつでいいとなったら、35mmで残るのはこのレンズなのかもしれませんね。
色ヌケの良さが何といっても目をひきますが、逆光にも強くて、お日さま方向でも平気で使えるのがいいです。
でも、yellow grenade でこんなレンズを見つけなければ、ライカは見切って大判とか違う方面へ進んでいたかもしれないので、charley944 さんの人生を狂わせたレンズといえるのではないでしょうか。
  1. 2008/08/19(火) 23:09:01 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

コメント有難うございます。
このレンズはまさに謎の一本だと思います。
確かにローデンシュトック社は、レチナやカラート向けにレンズシャッター用50mmF2ヘリゴンを量産していたにも関わらず、極小数の注文生産品のようなものを除き、L39互換では35mmのこのレンズしかリリースしていません。

おそらく、50mmはゾナー、ズミクロン、小数ながら、クセノン、ノクトンと各社の優れたレンズ達の主戦場になっていましたし、逆に広角は、まだまだ各メーカーとも玉のラインナップが出揃っていなかったので、そこをマーケッティングの狙いとした、或いは、大胆な発想としては、敢えて自社の技術力を誇示するため、標準レンズよりは設計が高度でしかも或る程度のボリュームゾ-ンで真っ向からツァイスの誇る名玉ビオゴンに挑む・・・いや真相は誰も判らないのではないでしょうか。

生産数はおそらくは2000本を切ることはないと思いますが、市中で見かける数もあまりないことから、T長徳氏のブックを元にライカレンズのレア度を尺度に推定すれば、2000本~5000本の間くらいではないかと思います。

余談ながら、小学生低学年でキャノネットQL17とニコンFを手にして以来、35mmフォーマットと110、16mmといった比較的小判しか興味なかったので、この玉に出会うことがなくとも、大中判には絶対に手を出さなかったと思います。ただ、35mmのコレクションの軸足がRFではなく、SLRになっていたかも知れませんね(笑)
  1. 2008/08/20(水) 14:55:40 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

私もこのレンズ2本(連動と非連動を)持っています。
非連動の方が描写は良い様です。
50mmF2のヘリゴンはL39では存在しています。雑誌にも載っております。
ただcharley944さんが仰るように数は作られていません。フォクトレンダL39ウルトロンと同じく量産試作までかもしれません。(ノンライツのWiCAには標準装備されていました(これも数が極端に無いカメラですから)
50mmは35mmの真鍮胴鏡とは異なりアルミ胴鏡ですね。本物は1回見ています。
またCharleyさんが仰るようにレンズメーカと呼ばれているマイヤーやローデンなどは大手のカメラ総合メーカと同じモノを作っても太刀打ちできない(本体を作ってない)ので特殊な所で競うことを考えています。マイヤーなんかはL39で50や35を出していますが、どちらかと言おうと広角や標準よりも望遠系に力を入れた、メーカなんです。
たまたまルドルフが来てその力を借りて逸品を排出しています。
ローデンも特にツアイスがほんの少量しか出していないライカL39の広角に目を向けたのは当然なんでしょうね
ビオゴンとヘリゴンを比較したことがありますが解像度やコントラストなどはビオゴンの方が上です。ビオゴンと競合することではなくライツの広角と対等またはそれ以上にと考えたのではないでしょうか?
ビオゴンと肉薄したのはやはりコンタックスCXで出したマクロプラズマートです。F値が0.1明るいし、ビオゴンのレンズ性能とは別の解像度と諧調でを性能で競争しています。
CXマウントマクロプラズマートも1回実物を見ています。
一昔はヘリゴンは市場で良く見かけたレンズだったのですが最近は見なくなりました。
  1. 2008/08/24(日) 18:31:44 |
  2. URL |
  3. ジオグラフィック #JalddpaA
  4. [ 編集]

ジオグラフィックさん
コメント有難うございます。
そう、L39の注文品というのが、まさに貴兄の言われるWicaで、まさにそのHeligon50mmf2付が今相当安く都内某所で出ているので、昨日も見てきました。おひとついかがですか(笑)

なるほど、ライツの35mmがこのレンズの想定敵ですか・・・となるとF値からすると、ズマロンということになりますね。
しかし、ズマロンは時分の保有していた経験からすると、f2.8は2本ともシャープネス、色ヌケとも満足行くレベルではなく、ヘリゴン35mmf2.8どころか、キャノン35mmf2とも勝負にはならず、35mmf3.5モデルでやっと開放からほぼイイ勝負というカンジですね。

このヘリゴン35mmf3.5は都内ではたまに見かけますが、外装が擦れてみすぼらしくなってしまったもの、前後玉キズ、或いは中玉が風化しかけて曇ってきているもの・・・確かに10万円の値札付けていてもイイものがなくなってきましたね。
  1. 2008/08/24(日) 20:19:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

charley944さん、ヘリゴン50mmF2はWICA用だけではなく、注文品ではなくライカスクリュウマウント単体でも作られています。これはWICAより探すのが大変ですが。
>今相当安く都内某所で出ているので
興味はあるなぁー幾らなんですか?程度、完璧に動くのでしょうか?(笑)
レンズメーカーは、50mmでさえもライカと対等以上で競争できた時代ですから、ライツはシュナイダーと組んで行くんでしょうね
現在でもシュナイダーとの協力は続いています。
  1. 2008/08/24(日) 21:20:50 |
  2. URL |
  3. ジオグラフィック #JalddpaA
  4. [ 編集]

ジオグラフィックさん
再びコメント有難うございます。
ヘリゴンのWICA用以外の50mmF2ってのもあるんですね・・・知らなかった。尤も深川精密工房では、キネヘリゴン改造のL39とレチナヘリゴン改造のL39の2本のL39は有りますが(笑)
先ほども写真工業の市川編集長と電話で話しをしていましたが、まだまだ世界のライカレンズは発行出来そうですね。今回60本の枠を既にオーバーしたそうですよ。

Wicaの件、もしホントにご興味有るのでしたら、今週、もう一回、そのお店に行って、状態みて来ましょうか?お値段は8月になって下げていて、たぶん30万円以内ぢゃなかったかと思います。そうなると、ニュルンベルクのお店よりも安いですよね。

シュナイダーとライツの関係はRの時代になっても続いていますね、現に35-70mmf3.5のドイツ製はシュナイダーが設計、その関連会社が製造してOEM供給したらしいという話も聞いたことがありますし、Mマウントでも廉価版レンズはシグマから設計を買っても、高級レンズはシュナイダーに設計委託しているらしいというのはよく聞かれる話です。
  1. 2008/08/24(日) 22:48:10 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Rだけでなく、90mmF2.8のライカMレンズやフォコターなどがシュナイダーで作られているんです。
ちゃんと資料に明記されているんですよ。
今のライカにレンズは作れないんじゃない、すべてOEMかもしれません。
  1. 2008/08/24(日) 23:10:05 |
  2. URL |
  3. ジオグラフィック #JalddpaA
  4. [ 編集]

レス有難うございます。
な~るほど、もはやライカ社はブランド管理と企画するだけの会社になっちゃったと考えた方がイイのかも知れませんね。

何せ、コシナレンダーのASPHノクトン50mmf1.5を見てその性能に驚愕し、同じ国内メーカーのシグマにASPHのズミクロン設計を発注したというハナシがまことしやかに伝わってますしね。

それにしても、今回の新製品と称するエルマリートシリーズはスペックからすると高すぎますね。
まさにブランド商売になりきちゃってる・・・

あっそうでした、親会社がエルメスやシャンパンなんかやってるブルジョア御用達のブランドもの屋だったんですね(苦笑)
  1. 2008/08/25(月) 21:29:20 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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