深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

カラー時代の覇者、赤鉢巻のDNA~CANON NFD50mm f1.2L~

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今宵は、目先を変えて、LレンズはLレンズでもライカ互換のL39ぢゃなくて、キャノンがプロユースに堪えうるラインナップとしてN-FD以降送り出した"L"シリーズのうちの、所有する中で最もお気に入りのN-FD50mmf1.2Lをご紹介します。

このレンズは1980年に発売されたもので、組み合わされたボディとしては、モデルチェンジ直前、機種としては、約10年間の生産を経て熟成されたF-1Nに組み合わされての市場投入です。従って、このN-FDレンズは、F-1Nから翌年9月にバトンタッチされ、同社のフラッグシップモデルとなったNew F-1との組み合わせがメインとなります。このコンビは1996年にNew F-1が製造中止になるまで15年の長きに亘り、国産最強のハイスピードレンズではなかったのかと思います。

確かにニコンも天体撮影用を主目的にしたと思われるノクトニッコール50mmf1.2を出していましたが、街撮りで、特にネオンの派手な色から電灯の淡い色調まで濁り無くクリアに描写するという用途では、個人的にはこちらに軍配が上がり、更に昼間の撮影においても、ボケが素直でより立体感が出ているように感じました。

コストパフォーマンスをも性能に加味するとすれば、今でも世界No.1のハイスピードレンズであることは間違いないでしょう。 何とならば、ノクトニッコールが5倍弱、ノクチルックスに至っては10倍ものプライスタグが付けられているのですから。

では、この赤鉢巻を巻きつけて、Lの称号は何を意味するのか。
キャノンの説明によれば、”L”は"Luxually"で豪華とか、高級を表す区分で、各焦点距離のレンズのラインナップで最上級モデルを示すということだそうです。
そして、その赤鉢巻と"Luxually"の称号を裏付ける性能、品質は何によって裏付けられているのか。
それは、鏡胴などの材質が高級であるのみならず、このレンズでは手研削の非球面レンズが後群の一面に奢られていること、そして、全"L"レンズ共通ですが、一般のレンズより高い組立て精度、そして厳しい検査基準で出荷されていること。まさにプロの酷使にも耐え、如何なる状況下でも期待された使命を果たす、という産まれもっての誓いを表すのです。

実際にこのレンズを買ってから、街撮りに連れ出すのは、夕暮れから夜の帳が下りて以降です。
特に夜のネオンサインに浮かぶ人々の暮らしざまをスナップするのが楽しくて、この人目に付かないオリーブドラブのF-1Nとの組み合わせによる、夜間遊撃撮影はまだまだやめられそうにありません。

テーマ:Canon FDレンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/09/02(火) 22:57:06|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:10
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コメント

ネオンが崩れないところに実力がうかがわれます。
まったく滲みませんし、空気感が強く感じられるように思います。
50mmf1.2Lといえば、レンジファインダー用を連想しますが、あちらも優秀かつコストパフォーマンスの優れたレンズでした。
比較すると、キヤノンの進化の程が見えてくるかもしれませんね。

ところで、前面はLを残してわざと消したのですか。
カメラにあわせてレンズもオリーブドラブにしたくなりそうです。
オリーブドラブといえば、肩を怒らせた青年、もしかして、これからハルクに変身するところでは?
そしたら、このカメラを持たせれば、カメラ自体はもっと目立たなくなります(真面目な記事に、不真面目なコメントをお許しください)。
  1. 2008/09/03(水) 21:19:36 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント一番乗りありがとうございます。
そうですね、肉眼で見たよりヴィヴィッドに写し撮っているかも知れません。
実は、今日、写真工業の市川編集長殿のお誘いを受けて、新宿某所で開かれている彼のプライベィト写真展に行ってきたのですが、まさにこの景色の中を歩いてきて、帰宅後、モニターでこのカットを見ると、う~ん、こんなに鮮やかにくっきり見えたかなぁ・・・と首をかしげてしまう写りです。
そういった意味では、サジタルコマフレアや球面収差でソフトにフレアっぽく写るのが一種のデフォルメであれば、このように人間の知覚を超える映像を作り出すレンズもまた創作をするレンズなのかも知れません。

ところで、この銘板の黒塗り修正は、何も税関を通る時に修正を求められ、しぶしぶマジックで塗りつぶしたワケではなく、買った時にはもう既に塗りつぶしてありました。もう今は亡きアキバの昭和通りのお店の店長曰く、「プロの人がキャノンのサービス部門で塗って貰ったというのだけど、商品価値が半減してしまって・・・」ということで、信じられないくらい、良いコンディションのものを破格値で買えたのです。
確かに良く見ると、塗った部分はマジックとか墨などではなく、専用の光学機器用艶消し塗料で丁寧に塗ったようにも見えます。

上の作例右側の兄ちゃんですか・・・う~ん、小生は実際に実写版のハルクをTVで見た世代なんで、変身前がこういう今風の若者だったか?と言われるとハテナというカンジで、撮った直後は、デビルマン変身前の不動明が「魔界都市新宿」の妖しげなネオンを睥睨している・・・というイメージだったのですが(笑)

あっ、そうですね、新宿には、「小田急ハルク」が有るから、そこで飼育しているニュータイプが逃走してきたのかも知れません。早速、神宮寺老人に連絡してニューロンブラスター銃で意識を失わせて捕獲して貰わねば(爆)
  1. 2008/09/04(木) 00:12:25 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

charley944さん、こんにちは。kinoplasmatと申します。中将さん,ksmtさんのところではよく拝見させていただいているのですが、直接のご挨拶が遅れて申し訳ありません。日頃見事な改造技術にため息をたれ、また新しいレンズの発掘を楽しまさせていただいております。自分自身にはこのようなことは才能も含めて不可能で、常に忸怩たる思いをしておりますので、こちらの改造結果の見事さには常に喝采を感じています。
今回は少し趣きを変えているようですが、やはりCANONの当時もレンズは見事なものですね。日頃ボケが崩れるものばかり見ているものですから、目の前が晴れるような描写力です。CANONには同じくASPHERICALもありますね。以前から比較してみたいとは思いつつ、デジタルへのマウントの問題もあり、放置していたことを今回のcharleyさんの記事をみてはっと思い出しました。
これからもいろいろと勉強させてください。よろしくお願いいたします。(倫敦より)
  1. 2008/09/04(木) 18:14:44 |
  2. URL |
  3. kinoplasmat #lpavF/Xw
  4. [ 編集]

kinoplasmatさん
コメント有難うございます。
中将姫光学さんやksmtさんのサイトで、貴兄のコメントを拝見し、いやぁ、世の中にはホントお詳しい方が居られるんだなぁ・・・などと恐縮し、ただ横から眺めるばかりでしたが、まさか、弊サイトをご覧頂いていたとは、ましてや過分のお褒めを頂戴し、光栄至極です。

ところで、今やその営業戦略等々で賛否両論のキャノンではありますが、この頃までは凄かったと思います。
実はまだ登場待ちですが、弊工房で4個イチやったL39の50mmf1.2の夜間の作例を初対面のれんずまにあさんに挨拶代わりにご覧戴きましたら、「こりゃ非球面要らずだね・・・」と嬉しいお言葉を戴きましたし、また、先にご紹介した35mmf1.5は昼間だとコマフレアでぼんやりしたソフトレンズですが、夜になると、この非球面の優等生レンズや、ノクチとはまた違った、人間の官能に訴えるような、肉眼に近い程好い滲み加減の画が撮れるんですね。

そういった意味では、もういっぺん、キャノンの大口径については、昼夜一通り撮ってみての再評価をすべきなのかも知れませんね。

こちらこそ、今後ともご指導ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。
  1. 2008/09/04(木) 22:11:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こちらこそよろしくお願いします。先日の一時帰国時は中将さん、ksmtさんともお会いできて、楽しい話を聞かせていただきました。次回機会がありましたら、ぜひお話させてください。よろしくお願いします。
  1. 2008/09/05(金) 04:34:27 |
  2. URL |
  3. kinoplasmat #lpavF/Xw
  4. [ 編集]

kinoplasmatさん
次回の一時帰国は、ksmtさん、中将姫光学さんともども、是非お声がけ下さいまし。
お目にかかれることを心待ちに致しております。
  1. 2008/09/05(金) 13:27:48 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ノクトニッコール!

ご無沙汰しております、むらさき茄子!です。

newF-1を新品で買った時、この50mmf1.2Lが欲しかったのですが高くて断念!
普通の50mmf1.4で我慢のまま今に至っております。
今は確かに安くなりましたね。

当家の家宝!ノクトニッコールは祇園祭宵山には大活躍しております。
今年もニコンFに付けて出動しました。(いつも上手くは撮れないのですが・・・)
夜限定!のレンズです。

また自己満足丸出しのプログを始めました。
お暇な時にちょっとお寄りくださいませ。
決して面白いプログではありませんが・・・。
  1. 2008/09/09(火) 23:14:06 |
  2. URL |
  3. むらさき茄子! #kqgYIJQs
  4. [ 編集]

むらさき茄子!さん
こんばんは。
コメント有難うございます。
ノクトニッコールで祇園祭宵山の撮影ですか・・・
とても素晴らしい使い方ですね。
日本の伝統的なお祭りのように自発光被写体でも派手な蛍光が入らないものは、淡くきれいに撮れますね。
実は、小生も今から8年ほど前にはノクトニッコールを所有していたのですが、金属フードをつけて街でスナップ中、不注意で電柱だかにぶつけ、ぶつかって凹んだフードの反対側の前玉が貝殻状に欠けてしまい、青くなってニコンに持ち込んだところ、この玉はもう修理出来ないので、絞ってでも使って欲しい、と通告され、逆上して、帰ってきてから、独身寮裏側の玉川上水に投げ込んでしまいました。今思うととても苦い思い出です。
貴ブログも拝見しに伺いますので、宜しくお願い致します。
  1. 2008/09/10(水) 00:07:25 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

あの頃のLは

本当に値段分の値打ちがありましたねぇ。カミソリのニューFD50mmF1.2Lは現行のオモチャと違い、研削非球面でなければ出ない開放からの異常なキレ、真空状態のようなヌケがありました。ニューFD85mmF1.2Lも同じく研削非球面コンビは現行高級レンズでも勝ち目はありませんね。もう、あのような職人が魂を込めて造ったレンズは発売されないでしょう。135版レンズの頂点ですね。
  1. 2008/12/15(月) 00:31:24 |
  2. URL |
  3. ニューF1モードラ #q6NeFhPI
  4. [ 編集]

ニューF1モードラ さん
コメント有難うございます。

>開放からの異常なキレ、真空状態のようなヌケ

まさに言い得て妙の表現ですね。自分も「空気を写すどころか、空気を剥ぎ取った、純粋な概念としての色と形を捕えるレンズ云々」と仲間内では評してきましたが、このレンズへの畏敬の念は貴兄と同感です。

キャノンの研削飛球面は、このN-FD50mmf1.2L、そして同85mmf1.2L、そして同20-35mmf4Lの3本を保有していますが、どれも素晴らしい描写性能です。

特にこの50mmf1.2Lは相当な"当り玉"だったらしく、ノクチ225万台のハンド研削を前後2面に奢ったものとタイマン張っても引き分け以上に持ち込める実力を有しています。
とりわけ、近距離での開放では、キャノンの誇るフローティングフォーカス機構が素晴らしい効果を発揮し、ノクチを上回るシャープな写りを発揮します。

また、今後もどうぞ弊サイトをご贔屓に。
  1. 2008/12/15(月) 10:23:21 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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