深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

海の彼方からの挑戦者~Cooke Ivotal 2"f1.4改M~

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さて、今宵は少々目先を変えて、改造レンズながら、秘宝館の収蔵品からのご紹介です。
このレンズは、当サイトを見たというドイツのマニアないし、セミプロの業者さんから、オファーがあったものを比較用に購入したものです。

お気付きの方はもうお気付きだとは思いますが、当工房の屋号は、日本語の他の欧米語表示が、何故かドイツ語表記になっています。

これは、欧州のブラウザにより引っ掛かり易くするため、一計を案じたものです。

その甲斐有って、電子湾で何回かレアレンズを買ったことの或る出品者から、「あんたんとこのサイトを見て、自分でも出来ると思い、CマウントTV用のCooke Kinetalをライツ純正のヘリコイド&マウントに据え付けたものを作った、大幅に値引きするから、短時間しか出さない、Best Offerのところに値段を入れてくれ」、とのメッセージを貰いました。

ここの業者から買ったレンズはどれも状態が良く、値段も適価だったので、まぁ、有象無象の跳梁跋扈する電子湾内ではかなり信頼出来る業者だと思っていましたし、提示された大幅値引きを鑑みれば、レンズヘッドの値段はだいたい判っているので、ライツのオリジナルパーツ使って、手間かけたら、自分ではや~だよ!ってなレベルのマージンしか残らないんで、相当、お買い得だと思いました。

それに何よりも、技術で勝負の深川精密工房が、挑戦者からのオファーを受けないワケにはいきません。

そこで、早速、購入し、待つこと10日間、手許にレンズがやってきました。

Cマウントレンズと聞いていたので、親指くらいの可愛いレンズヘッドと思っていましたが、あにはからんや、かなり大きく立派で、押し出し感の有る鏡胴でこれも英国のレンズの伝統に則って、精緻な刻印が数箇所に刻まれていました。
ライツのMエルマー50mmf2.8のマウントパーツと合体した姿は、ちょっと見ると、超レアなプロトタイプの純正ライツレンズと言っても通ってしまいそうです。

う~ん、実写性能のみならず、見た目のマニアックさ、美しさまで追求してくるとは、当工房の運営理念とも相通ずるものがあり、相手のやる気をひしひしと感じざるを得ませんでした。

また、レンズ構成については、売り主曰く、4群6枚のWガウスタイプとのことでしたが、羽根の位置がかなり後ろに位置していること、絞りより前が一枚多く見えることから、コンパクト設計でf1.4を実現するために前群を一枚多くした5群7枚構成でないかと思いました。

で、肝心の実写ですが、この明るさを活かすため、シェイクダウンテストはいつもの溜まり場のすぐ側の新宿西口の路上です。

RD-1Sに装着し、感度ISO800で試写してみました。勿論、全コマ開放での撮影です。

まず一枚目のカップルの後ろ姿ですが、女性のしなやかなウェーブがちな髪も、男性の白い木綿のショルダーのストラップも程好いシャープネスとナチュラルな発色で質感を良く捉え、とても好感持てる写りになりましたが、ただ、後ろはかなり渦巻き系で背景の若者達が非点収差の影響でムンクの「叫び」のようにフワーと渦巻いてボケています。

そして2枚めですが、これは自発光式の屋号表示板の上に魚類の漢字名を書いた湯呑みをモチーフとしたオブジェを載せた看板ですが、これも一字一字、くっきりと捉えるのみならず、素材の光沢や、質量感まで巧みに捉えています。しかし、後ろは非点収差と球面収差が程好くミックスされ、なかなか味の有るボケを形作っています。全体の発色バランスも極めてニュートラルです。

こうして見てみると、カッコもなかなか素晴らしいし、使い方によっては、独特の立体感を活かした面白い画が撮れそうな優秀な改造レンズだということが判りました。

そして、何よりも、今まで手を出してこなかったCマウントレンズがこれほど使えるものだと気付かされたのが大きな収穫だったと言えます。

では、この海外から遥々やってきた、異形の改造レンズを素直に褒め称え、深川精密工房は、潔く参りましたと降参するのか・・・

いいぇ、答えはノーです。

このレンズを入手して以来、今まで、Cマウントレンズはフランジバックがライカ規格よりもまだ短く、またイメージサークルも小さ過ぎるので、たとえRD-1S専用でも改造は出来ない、という通説が覆されたワケで、当工房でも長いこと眠りについていた、BOLEXマウントのスーパーレンズの改造に急遽取り掛かり、これに成功したのです。

To be continued....

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/09/17(水) 00:31:29|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

charley944さん、これまた奇遇ですね。私も数ヶ月前にCマウントのIvotalを購入したところでした。マウントがCのままなので、防湿庫のこやしになっておりますが、値段が諭吉以下でしたので放ってあります。今回のものは立派に使えますね。ボケもソフトななかに面白い流れみたいなものがあって非常に興味をひかれるところです。私のものもいつか実写に写してみたいですね。
  1. 2008/09/17(水) 06:40:21 |
  2. URL |
  3. kinoplasmat #lpavF/Xw
  4. [ 編集]

Kinoplasmatさん
コメント有難うございます。
ホント奇遇ですね。またもや同じレンズを所有していたなんて。
このレンズは、確かにCマウントで普通に考えれば使い道の無い、"終っちゃった"レンズなんで、二束三文なのでしょうが、腕に覚えの有る人間が丹念に加工すると、ご覧のようなパフォーマンスを示します。
この写りにシビレちゃって、実際に一本買っちゃった人が仲間内に居りますし、まだレンズヘッドを探している人も居ます。
貴兄所有のレンズも、うちの見習職工が工場を立上げ、量産が軌道に乗れば、使えるように改造して差し上げられるようになるやも知れませんね。

しかし、このドイツからの刺客を迎撃すべく、工房で拵えた、コードネーム「ハーヴキャンディ」は更に強烈な外観と描写性能を誇ります。
何せ、内々のお披露目でシビレた中将姫光学さんが、レンズを衝動買いしてしまったらしいのですから・・・
  1. 2008/09/17(水) 11:42:38 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
以前タイミングよく実物を拝見しましたが、このような経緯で手に入れられたのかと唸ってしまいました。
こういう話を読むとレンズの世界はより距離が狭まっているのが実感できます。
また、限りあるオールドレンズは、同じ考えの人でシェアーできればよいと思います。

それにしても、1枚目の写真は傑作です。
3組の顔の見えない男女がすばらしい空間を創り出しています。
1組は左上を、もう1組は右上を、さらに1組は手許を見やっています。
1組はふたりの脚がX交差、1組は体がキュウリのようにふにゃー。
おもしろくて、何度も見返してしまいます。
非点収差の同心円状のボケはなぜだか2枚目では感じられません。
気まぐれで、ツボにはまると手の付けられないレンズのようです。

ハーブキャンディは、まだ手許に届きません。
のどがいがらっぽいので、はやく舐め舐めしたいです。
いえ、それよりも、charley944 さんと kinoplasmat さんは、趣味がぴたりと一致するようですね。
レンズの奪い合いにご注意ください。
  1. 2008/09/17(水) 21:32:04 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
このところ、ピタリと二番手以内につけられていますね、さすが鵜の目、鷹の目、テッサーの目を持つと言われる好事家ですね(笑)
このレンズは、持ち主である小生よりも、新宿西口写真修錬会の面々の方が、ツボに嵌っちゃったみたいで、みんなで欲しがってれば世話ないですね。
まさに海の彼方のドイツ人のおっさんは、この波及効果を狙って大幅値引きで出してきたのなら、レンズ加工の技能以前の頭脳戦で完敗でしたね。

それにしても、RD-1Sの功績は大きいと今回、改めて思いました。
すぐに結果が見られて、しかもイメージサークルがハーフ判とほぼ同程度という特徴を活かし、今まで見捨てられてきたあまたのレンズ達に再び新たな活躍の場を与えたのですから・・・

活躍の場を失った名レンズ達に最小限の改造で、しかも可逆的な加工によって可能な限り美しい外観を与え、性能を余すことなく再活躍させる・・・この深川精密工房設立の理念を幅広く敷衍させるのに大きな力を発揮してくれていると思います。

それにしても、ハーヴキャンディはまだ到着しませんか?遅いですね。
「深海生物工房」改め、「おしゃれ工房なかよし苑」の苑長センセイは触覚やら、首やらを長くして難加工材の到着を心待ちにしているようです。

う~ん、しかし、趣味が完全一致だと、確かに電子湾の海戦で同士討ちで相互撃沈・・・なんてなってしまったら、ヤヴァィですね(笑)
  1. 2008/09/18(木) 00:02:49 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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