深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

ゼロの焦点21st~Switar2"f1.4改M~

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さて、今宵は、旧同盟国であったドイツからの挑戦者に対し、深川精密工房がこれまでの改造技術の蓄積の集大成として迎撃用に急遽製造した、Bolex用Switar2"f1.4改Mマウントです。

実は、このレンズは、IVOTAR2"f1.4がやってくるまでは、防湿庫の底で透明ポリオレフィンのフィルムに包まれ、永い惰眠を貪っておりました。

というのも、このBolexマウントのレンズというのは、手許に着いて初めて判ったのですが、オリジナルのスクリューマウント付きだと、フランジバックはライカ、ニコンSに比べ大幅に短く、しかも、お尻の直径が大きく、L39はおろか、Mマウントの内径にも入らないほどなのです。

こうなると、レンズ改造の基本セオリーからすれば、ヘリコイド付きでは改造不能、と分類されてしまいます。

また、精密機械の国スイスで製造されただけあって、レンズの分解、ヘリコイドと光学系の分離などということも一筋縄にはいきません。ネジをはずしてもリング回しても、忌々しい小径ネジの着いた太いアルミ削り出しのマウント基部は一向に外れる気配が有りませんでした。

かくして相当執拗な改造マニアの工房主も、暫くは改造を諦め、たまに何か閃いては夜な夜なレンズを防湿庫から取り出し、ためつ眺めつ、エイャっと小さく気合いを上げ、引っ張ったり回したりしても全然事態が改善に向かわないので、放って置かれたのです。

しかし、先般のCマウント改造の見事なIVOTARが挑戦状として送られてきて、実写性能も息を呑むようなものだった以上、黙って引き下がるわけにはいきません、ましてや、ドイツ人がイギリス製のレンズヘッドを使って高性能レンズを作ってしまった以上、こちらも、そのひねりというか、ユニバーサルな創意工夫に対する返礼を行わねばなりません。

そしてふと閃いたのが、かつて、海軍の主力戦闘機、零式艦上戦闘機の主力武装はスイスエリコン社製の機関砲だったという事実。

そこで、短絡的に、ぢゃスイス製レンズヘッドってことね、と、前々からバラしたまま放っておいたALPA用のマクロスィターに新たなマウントを真鍮塊から刳り貫いて作るのと、ダメもとでBOLEXスィターを分解して既存のヘリコ&マウントにくっ付けるのとどっちがラクか・・・と考え、いちかばちかでBOLEXの方を分解する方にかけたワケです。

ここまで覚悟が決まると行動は早い、今まで工房の片隅にはあったものの、素材の真鍮、アルミは切っても、絶対にレンズ本体には使わないようにしていた、糸ノコの登場です・・・

糸ノコで兜割り宜しく、アルミ削り出しのマウント部を縦に割って、そしてペンチで引っ張ったら、すぽ~ンってなカンジでレンズヘッドのみ外れました。勿論、かっこイイ、絞りリング付きです。

そして、ここで初めてフランジバック、メカニカルバック測定です。

ピント基準機を使って計測してみると、まぁフランジバックは相当キツく、マウント座面から3mm程度しかありません。

そこで、おっかなびっくり、レンズのハウジング底部を削ってはピント見て、削ってはピント見てという試行錯誤を繰り返し、カムもドンピシャに合わせて無限でのセットは完了しました。

しかし、その夜、新宿の溜まり場の南蛮茶店で店内テスト撮影を行ってみると、近距離が激しく前ピンになってしまう・・・

まさかピント基準機に不調で無限がおかしいのでは・・・と不安が胸をよぎりましたが、次の休日の昼に屋外、屋内で精密チェックやってみたら、何と焦点距離が48mm弱しかない・・・そこで傾斜カムを切って問題解決です。

で、実写の作例ですが、最初のものは、南蛮茶店の店内で1mちょい先の椅子の背凭れの彫刻を撮ってみました。
合焦部は、極めてシャープで質感再現性にも優れていますが、f1.4のコンパクト大口径だけあって、ボケは相当クセもので、挑戦者IVOTARとで、後ボケ対決、人気投票やっても面白そうな球面収差と非点収差の夢の競演状態になっています。
二枚目は二件目の新宿ゴールデン街のスナックのカウンターでたまたま居合わせた喫煙者の方に目印として、たばこをつまんだ手を供出して戴き、これも1mそこそこの距離で撮影したものです。
これも合焦部である手は柔らかくも芯のしっかりした描写になっていますが、後ろは抽象絵画のフォービズムか何かの壁画みたいにデフォルメされてしまっています。

さぁ、皆さんは深川&スイス連合軍と英独連合軍、ご注文はどっち!?

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/09/25(木) 23:36:46|
  2. Mマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
<<大陸からのチャレンジャー~ASTAN50mmf3.5 | ホーム | 海の彼方からの挑戦者~Cooke Ivotal 2"f1.4改M~>>

コメント

それは間違いなく、深川&スイス同盟国軍でしょう。
すばらしい改造です。
(わたしのは51.7でした。不思議ですね。これを持って土曜から1週間遅い夏休みの予定です。復帰後、すぐにお会いできたら嬉しいです。)
  1. 2008/09/26(金) 02:52:53 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
早速のコメント有難うございます。
そして、弊工房作品への清き一票、重ねて御礼申し上げます。
ネタを明かしてしまうと、実は、オリジナルのレンズヘッドの値段自体がとても比較にならないそうです。
片や消耗品のTVカメラ用のアナスティグマットグレードのレンズヘッド、片やお金持ちが道楽でプライベィートで動画でも撮ってみよっか!?なんて時に持ち出すために作られたスイス製の超高級16mmシネカメラ用のアポクロマートグレードのレンズヘッド。
どちらも本体を失い、失業状態だったので捨て値同然だったのですが、再び活躍の場を与えられれば、出自の差は歴然と言えましょう。

デートのお申込み?の件、了解しました。10月の3連休の週は金曜に一日休みを足して4連休として、国内のどこかに行ってしまう可能性無しとはいえないので、5日の日曜でいかがでしょうか。
  1. 2008/09/26(金) 09:27:42 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2008/09/28(日) 23:19:19 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

注文の回答その2

ひさしぶりです。 あちらこちらのサイトを徘徊しておりました。巷では台風F0.95が吹き荒れるなか、深川辺りでは謎の雷鳴が響いている様子です・・・。 課題は難題にて、まず、ここのところカメラ雑誌データには無い種類の固体がつずいて途惑いを感じていました。 しかたがないので、頭の中の映像データで調べたところ(つじつま合わせということですが)、エルネマンの6*9用135mmF6.8,たしかデデクティブ・アプラナートとか言うオールドレンズにcookの写りが似ていると出ました。ショウも無い比較で申し訳ありません。 スイターは初期型50ズミルクスのボケに成る程同じ1,4だと似ているなと。 ぱっと見で、cookはクリアで郷愁を誘う少し歪む像のボケが気に入りました。スイターは撮影条件が、少々厳しいと思いました。*** とにもかくにも、これらの固体は写真界では異物であり、別な系統に分岐して生息していますが、映画畑ではスチルと呼ばれとても親しい関係を写真に込められています。これらのlensが離れてしまった距離を思い起こし、その遥かさに想いを巡らせてくれました。 
  1. 2008/09/30(火) 23:21:00 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordre さん
いつもながら深遠なるコメント有難うございます。

これらのレンズは、確かに今までと異なり、一般的には、フランジバックが短く、またイメージサークルが短いため、オリジナルのボディというか、メディアである、Bolexでは16mm銀塩フィルム、IVOTARではイメージオルシコンなどの撮像管、を失って、一時の眠りについていたのですが、RD-1Sという画期的且つあらゆるレンズに寛容な画像取得システムへの機械的接合を可能としたことによって、再び活躍することになったのです。

元々はたまたま同じCマウントだったとは言え、こういった全く別の出自ですから、それぞれの描写云々を比較しようもなかったのですが、今、同じCCD上での結像を対比、観賞出来るのは、或る意味僥倖かも知れません。

また、製作者の立場からすれば、打ち棄てられたに等しい高性能レンズに再び光を与え、こうしてファン?の皆様にお披露目出来るのは、職人冥利に尽きます。
  1. 2008/10/01(水) 17:08:35 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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