深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

鏡玉は見かけによらず~Steinheil Quinon5cmf2~

quinon5cmf2.jpg
quinon01.jpg
quinon02.jpg
「Charleyさん、またやっちゃったでしょ・・・どーして、わざわざマウント換装するの!?」とか、「ずいぶん、ごつい改造レンズですなぁ、これも中国産?」とか聞かれそうな、外装がオールアルミ製のしょぼい外観、しかもコーティングも地味で、ドイツの50~60年代のBrownとか、King Reguraあたりの普及品のレンズ交換式レンジファインダーカメラのレンズそのままの佇まいです。

このレンズの正体は、ドイツのSteinheil社製のQuinon5cmf2と言います。
一見、50年~60年代の普及品レンズを彷彿とさせるのは、このレンズが元々、パクセッテ用に開発されたものを極少数、ライカLマウントの距離計連動として、パッケージングし直した製品だからです。

このレンズ、佇まいは高級感がない凡庸としたフツーのレンズですが、さにあらず、構成がなんと3群6枚のゾナータイプ、しかも、今さっき、調べた結果がゾナータイプと判って唖然としたのが、同時のテストしたタナー5cmf1.9よりもまだ良く写るのに、同じ枚数・構成のゾナータイプだった!ということです。

百聞は一見に識かず、下の作例をご覧下さい。条件は当然開放、ベッサR3Aのスーパーセンチュリアの100EX24の組み合わせでプリント時のフォトCDからのキャプチャです。

一枚目は築地本願寺前で、後ろボケを取り入れ、人物がいかにシャープに捉えられるかをテストした構図、まさにシャープな主題となだらかでナチュラルな後ボケが相俟って、浮かび上がるが如き描写性能を示しています。また逆光に近い条件にも関わらず、フレアも全く生ぜず、コントラストも適正です。
二枚目は、築地場外市場で店内の照明に照らされた人物と、ショーウィンドゥ前のお客さんとで、蛍光灯下でのコントラストと、前ボケを試した構図です。
こちらも、店内の人物、整然と積まれた包装ともに目が覚めるようなシャープさですが、前のお客さんたちは、崩れることなく、じんわりとボケています。蛍光灯の強い光を反射しているショーケースの表面は若干フレアが認められますが、構図を壊すレベルのものではなく、寧ろケース表面のガラスに写るお客さんの姿をデフォルメし、面白みの有る画に演出してくれていると思います。

しかし、今回驚いたのは、ツァイス、ローデンシュトック、シュナイダの3強から見れば格落ちと思っていたSteinheilの製品が、本家ゾナーよりも、その優秀な教え子のニッコールよりも、またその流れを汲み、独自の改良を加えたと思われるタナーよりも、優れた描写を見せたことでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2008/10/13(月) 23:12:06|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:14
<<忘れ去られていたエース~Cooke Speedpanchro32mmT2.3~ | ホーム | パラレルワールドから来たレンズVol.2~Wollensak Velostigmat2"f2.8S>>

コメント

いやいや、charleyさんの写真で見させていただく限りは、初期ズミルックス50mmf1.4を髣髴とさせる立派な佇まいです。描写は大変に素直ですね。ハイライトに少しフレアが入るようにも見えますが、この固体特有なものなのでしょうか。
  1. 2008/10/14(火) 01:48:16 |
  2. URL |
  3. kinoplasmat #lpavF/Xw
  4. [ 編集]

kinoplasmatさん
コメント有難うございます。

このレンズ自体の作例があまりアップされていないので、ハイライトでの微かなフレア加減がこの個体特有ものか否かは判らないのですが、ただ、同じ構成のニッコール5cmf2もタナー5cmf1.9も開放での撮影では同じようなフレアが認められますので、ゾナー形式の共通の特徴なのかも知れません。

外観は、造形自体はまぁまぁ悪くはないのですが、所詮アルマイト製品なので、往年のライカの銘玉達の真鍮塊を刳りぬいて加工の上、丁寧なクロムメッキを施されたものとは、手にとった時の質感、密度感が全然違います。
  1. 2008/10/14(火) 10:04:46 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
わたしも一瞬見てライツかと思い、ローレットを見直してUSSRかと思いなおし、回答を確認してええっとなりました。
シュタインハイルは、オルソスティグマットを除くとロクなレンズはないとどこかで読んだ記憶がありますが、この2枚を見ればすでにその間違いが証明されますね。
また、オーソドックスなガウスタイプと思っていたのですが、ゾナーだったのは非常に意外です。
そう言われて見ると1枚目は典型的なゾナーの写りの様に見えてきます。
この作例を見て、またカスカが欲しいよお病が発症し始めました。
世界唯一のユーゲントシュティール・カメラです。

話が変わりますが、先日のアポ・ロダゴンはもの凄い描写で感動しました。
ところが、同日にお借りして持っていたキネマトグラフの中央ばかりシャープで周辺に向けて崩れていく描写もたまらないのです。
節操ないですね。
charley944 さんが理想の女性を追い求める騎士なら、わたしは女性なら何でもござれのふしだら男。この差は何なのでしょう。
  1. 2008/10/14(火) 22:37:30 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

混乱している様で、すみません・・

三枚張り合わせのタマが好きで最近ではGRシリーズがありました。 ***  キャノン50mm1,5やインダスターなどゾナータイプの50mmも、ひと昔前の一眼レフガウスタイプ標準レンズの一覧表同様、激戦だった様です。ところで三枚張り合わせなくとも60年代ローライ35は2,8ではありますが十分にシャープで色の出もよいです。ガラスの進歩とはひとたまりもありませんね。 
 時代は前後しますが、zeissとnikonには戦後のゾナータイプ怨念対決があり、それらの時代考証ときわどいスペックを追うと、その二大党派に巻かれて他社製品のアピールが霞んでしまい、canonの1.5とは何?果てはゾナーとガウスのハイブリットタイプのひらめきはなに、とか・・・。そして、 ここでR.R.タイプレンズにはひとことある名門シュタインハイルが参入し、はたしてゾナータイプの進化論はcosinaにその秘密が隠されているのか、と勘ぐって見ます。 さて、立ちどまって、歴史の生き証人たるquinonですか。 手前の光源の滲みはs-nikkorにそっくりで、ピントの合ったところのエッジがきりきり来る具合とかはcosinaゾナーの開放作例を彷彿させるに十分な血統と・・・。

  1. 2008/10/14(火) 23:20:14 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
コメント有難うございます。
そーなんです、ロシア製かと見紛うようなしょぼい鏡胴の外観ですし、ガラス自体もそれほど高性能そうには見えないのですが、撮ってしまえば、ご覧の通りなのです、同じゾナーの末裔と知らずに一緒にテストした国産のゾナータイプの雄、タナー5cmf1.9も形無しでした。

カスカといえば、そうそう、まだまだ深川秘宝館は奥深いですが、カスカIIなんてのもありましたね、近いうちに登場させましょうか。
旋盤による飛散アルミ微粒子か、或いは深酒のし過ぎか判りませんが、近頃、コレクションに何が有ったか忘れることがしょっちゅうで、これでひとつ思い出すことが出来ました(笑)

ところで、アポロダゴン、気に入って戴いたようで何よりです。
実は、このブログで紹介した時には、まだ一個しかレンズヘッドが入手出来ていなかったので、作例までは載せないようにしていたのですが、既に二個目を温存していますので、どんどんアピールしていきましょうか。

しかし、レンズに関しても、清濁併せ呑む器量を持つということはなかなか出来ないものです。
どうしてもご本尊様のマイクロニッコールとご神体のノクチルクスの呪縛から逃れられなくて・・・
  1. 2008/10/14(火) 23:45:42 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Treizieme Ordre さん
コメント有難うございます。
ガラスとコーティング技術の進歩の恩恵を受けたのは、実はWガウスタイプよりも、ゾナータイプだったのかも知れません。

ご存知の通り、ゾナーは前からの二群目が屈折率高めのクラウンガラスの凸、真ん中が屈折率低めのフリントガラスで弱めの凸、そして一番後ろが高屈折クラウンガラスで相当きつい曲面を持つ凹レンズでエレメント全体として凹、即ち、強いマイナスパワーを持っています。

この二群目がまさにガラスと、コーティング-の進化の恩恵の与かったと見るべきなのです。

つまり、設計が新しく、コストをかければかけたほど性能が上がる・・・具体的には、二枚目の低屈折フリントの分散率を下げれば色ヌケが良くなりますし、三枚目の凹レンズに新種ガラスを使えば局面が抑えられるので、球面収差がだいぶ緩和され、コーティングがマルチになれば、二枚目のフリントを廃し、空気レンズとすることも可能になります。

まさに今述べてきた技術発展が、オリジナルゾナーから、ニッコール、タナー、Quinon、そして、二群に張り合わせがなく、低反射コーティング技術を駆使し空気レンズとした、改良技術の集大成である、コシナのゾナーとなるのです。

尤も、コスト管理面から見た生産技術の観点では、
芯出しが難しい3枚貼り合わせより、メニスカスに囲まれた空気レンズを挟んだ2枚構成の2群の方が、結果的にWガウスタイプより貼り合わせ面が減るので、より安く作れることもまた事実なのでしょう。
  1. 2008/10/15(水) 00:09:19 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

先日は的確な解説、ありがとう御座いました。手元の資料でも確認したところ、cosina-sonnarは、マルチコートが始まりだした70年代のローライ35前群とf1,5の張り合わせ三枚後群の組み合わせですね。それは、まるでごく初期のsonnar,エルノスターからの変種だと思うと、とても興味深いものです。 特異な例として、hasselの250mmも三群四枚にしては、色の落ち着き具合、ピント面のそつのなさ(あっさりと高画質)が個性的でおもしろく、前群三枚分離としてはT-2のカタログ写真、犬をつれた外人の写真で、周辺の像のくずれもレンズタイプの特徴があったと回想します。
  1. 2008/10/16(木) 22:07:22 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordre さん
コメント有難うございます。
一口に50mmのゾナーと言っても、F1.5以上のF値を持つものと、F2周辺のF値を持つものでは、設計思想に大きな隔たりがあります。
それは、細かな差異、例えば、絞り羽根より前の群のレンズエッヂの形状とか、一枚目のエレメントと二枚目のエレメントのギャップ、曲面はさておいて、まさに貴兄が指摘されたとおり、一番後ろの3群(相当)目が3枚貼り合わせなのがF1.5 up、2枚貼り合わせなのがaround f2の最たる特徴なのです、この作法はツァイスもニコンも全く同じです。
逆にこれがゾナーのゾナーたる所以なのであって、二群目が貼り合せてあろうが、空気レンズであろうが、関係ありません。

どこかの某サイトで単玉から複玉への発展の歴史を滔々と述べてきていて、感心して眺めてましたが、エルノスターとゾナーを述べるくだりになって、コンタックスT2のレンズ構成をさもありなんとばかりに「エルノスター」と決め付けていたのには失笑してしまいました。尤もよくよく見てみれば、テッサーがトリプレットから発展してきたとか、ずいぶん珍説を展開されている御仁のサイトではありますが(爆)

なお、中判以上には全くキョウミが湧かないので、ハッセルのSonnarを引き合いに出されても、う~んと頭をひねるばかりです、あしからず。
  1. 2008/10/16(木) 22:34:26 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

ガラス生地からの考察はさすがにレンズ加工技能者としての誉れとお見受けしました。レンズのガラスをのぞきこんで見れば、英知や研鑽、あるいは驚くべき創意にみちた固体ではあります。先人の、最良と信じた曲線やガラスの選択、そこから導きだされた物理的な特性としての再現画像。ひょっとしたら、設計者にとっては必要な数値が得られればよい、とするかもしれません。 門外漢の私にも、彼らの努力と才能とひらめきと挫折の歴史が、世界中のカメラ屋あるいは撮影者の手元にころがっている姿を容易に想像できます。 ルドルフやベルテレの推考のダイナミズムは、硝材の飛躍的な拡大と社会的要求度の高まりと歩調を合わせ、レンズの近代化を大いに推し進める事とする語り草と成ったのでしょう。 専門的な事は敬して遠避ける事といたします。 歴史的な新発見、あらたな推論を可能にする改造等、当サイトの発展に望みます。
  1. 2008/10/17(金) 20:58:47 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordreさん
コメント有難うございます。
貴兄もご存知のとおり、当工房では、マウント改造のみならず、時にはエレメントをバラしてまた色々チェックしたり調整したりしてから組み直し、最良の描写性能を求めたりもします。

そうなってくると、実に即物的ではありますが、レンズ構成の発展史みたいな通時的な研究よりも、目の前のレンズ構成に関する設計の合理性、或いは必然性など、解剖学的な観点での探求に主眼が置かれることになります。

色消しレンズの基本は、それこそ分散率と屈折率の違う二種類の硝質の凸凹レンズの組み合わせなのですが、エレメントの配置、硝質、曲率、その無限とも思えるバリエーションが様々な写りを作り出すと思うと理屈抜きで探究心、創造意欲を湧き立てさせられてしまうのですね。

ということで、まだまだ工房での創作、レンズ発見の旅は限りなく続いていきます。
どうぞ、お楽しみに。
  1. 2008/10/18(土) 20:57:40 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

シュタンハイルのレンズは馬鹿に出来ません。
このメーカは結構好きなメーカーで、マクロレンズなんかを35、55,100,135mmを作っています(ライカマウントじゃないけど)あと逸品はオルソチグマット(大判カメラのレンズにもあります)
35mmのレンズですね。ライカよりもカスカのレンズの方がかちょいいですが
このキノン50mmF2はライカスクリュウを2本所持していました。なかなかの優秀な玉だと思います。
  1. 2008/10/20(月) 21:21:19 |
  2. URL |
  3. ジオグラフィック #8iCOsRG2
  4. [ 編集]

ジオグラフィックさん
コメント有難うございます。

確かにこのQuinon5cmf2がウチに来る前にオーソスティグマット35mmf4.5も、カスカIIのクルミナー5cmf2.8も手許にあって、どちらも、シャープで色ノリもなかなか締まっていて、質感溢れた描写をしてました。

そういった意味では、アルミの外観でパホーマンスに先入観を持ってしまうというのは良くないことかも知れませんね。
  1. 2008/10/20(月) 21:43:04 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

charley944さん 外観にも弩和されるのは仕方が無いです。まずは外観の出来きて、そのかっこよさに惚れて買ってしまうのですから、私もアルミ銅鏡は好きではないです。ロシアンを1つも持っていないのは性能が良くてもなんだか陳腐な部分で手が出ません(笑)
  1. 2008/10/20(月) 22:40:46 |
  2. URL |
  3. ジオグラフィック #JalddpaA
  4. [ 編集]

ジオグラフィックさん
再び有難うございます。
そーですね、今度、クラカメマニアで"三悪追放運動"ってのをやりましょうか。
その"三悪"ってのはレンズ、カメラにおけるプラ、アルミ、マグネです。
どれも質感も耐久性も及第点上げられませんので(爆)
  1. 2008/10/20(月) 23:02:20 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://pwfukagawa.blog98.fc2.com/tb.php/59-a6c2efb6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

charley944

Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる