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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

奇貨可居的鏡頭~Boyer Saphir ((B))5cmf3.5mod.L39 by F.G.W.G.

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さて、今宵のご紹介ですが、旅行で一週スキップ、実はその旅先でついでに試写も済ませてしまったので、途中降板とは言え、その実力の程をご披露致します。

今回のレンズは当工房では通算で4本程度改造してライカマウント化しているフランスはBoyer(ボワイエ)社製の4群6枚ダブルガウスタイプの光学系を持つSaphir5cmf3.5となります。

ここでややこしいのは<>の略字で、これがないと、3群4枚のテッサタイプになってしまうというのです。

今回のタイトルはまさに「奇貨居くべし」ですが、珍しく裏鬼門である目黒方面に試写&鏡頭漁に出た時、肩慣らしのつもりで寄った、親戚の家並みに心安い恵比寿駅前の大沢カメラで、店に入ってすぐのショーケース内に見慣れたアルミ製の可愛いレンズヘッドが極めて蠱惑的な値段付けられて並べられており、要はマウント、用途不明で前玉の水玉模様のシミ有りということで、お買い得価格を付けているとのことだったので、この玉なら何度も分解清掃に内面の反射防止まで全部やったことがあるので、速攻買い求め、その後、通好みのビルの二階に在りながら穴蔵みたいな雰囲気のお店、四谷の買取名人親子のお店を経て、工房に持ち帰り、寝る間も惜しみ、分解、超音波洗浄かけて、その後、丁寧のコバ塗り、鏡胴内部の反射防止を行って、L39のヘリコ&マウントユニットに削り出しの真鍮スペーサかまして全周スクリューで固定したもの。

コリメータを通して見た緑のレチクルは全周全てクリア、シャープで、これなら、ボワっと写るボワイエという汚名を返上出来るだろうと、旅行先への遠征リストに加えたもの。

では、さっそく、その実力のほどを逐次眺めて参りましょう。

ロケ地は金沢市内、カメラはLeica M(Tipo240)、全コマ開放での絞り優先AE撮影となります。

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まず一枚目のカットですが、当日はお江戸をガラガラの新幹線で10時24分に出たので、金沢駅到着が12時52分、ちょうど遅めのランチに丁度イイ時刻に着いたので、駅名店街の「加賀屋」さんで至高の箱膳を戴き、しかるのち、駅前の宿にチェッキンの上、荷物を置いてから市内への撮影に出掛け、まず最初に立ち寄ったのが、金沢城下広阪の21世紀美術館で、無料ゾーンの庭園になかなかイイオブジェが有るので直行、まずはバス停から敷地入ってすぐのアルミ鋳物の空豆みたいな椅子が木漏れ日を浴びて鈍く光る姿を撮ってみたもの。

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二枚目のカットですが、同じく21世紀美術館の庭園に複数個所設けられている、誰が誰に呼びかけているか判らないアルミ製のちょうど蓄音機のスピーカみたいな形状の伝声管に、いかにもバカンスで他の地域から来てますよ!感プンプンの小姐二名が、仲良く並んだ二本の伝声管が繋がっていようはずもないのに、一人が一本に絶叫し、もう一本にもう一名が耳を傾け、「何にも聞こえないよ~」とかやってる姿が滑稽だったので、傍から一枚戴いてみたもの。

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三枚目のカットですが、これも21世紀美術館敷地内の空豆みたいなアルミ製の椅子が陽当たりの良い、館南部の芝生の上に据え付けられ、遠くの梅雨空に浮かぶ白い雲やこの美術館の建物の特徴であるほぼ全周をガラスの壁で覆われた円柱形の形状を窺える屋根のスカイラインの優しいカーブがきれいに映り込むので、ここでも一枚撮ってみたもの。

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四枚目のカットですが、21世紀美術館の敷地内のあちこちに置かれたアルミ製の空豆ばかり撮るのも如何なものかとふと思い、蓄音機のスピーカ状の伝声管の周りに人々がたかっていない頃合いを見計らい、かつ何本かあるもののうち、青空が映え、周囲の植栽や青々としたきめ細かい芝生がきれいに映り込むものを選んで至近距離で一枚撮ってみたもの。

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五枚目のカットですが、いつもAPS-Cサイズで撮っていると50mmは準望遠なので、とても建造物の或る部分を周囲の中で調和させた構図での写真を撮ろうとは思わないのですが、何せ、M(TIPO240)であれば、5cmの焦点距離を持つ玉は、掛け値無しの標準画角で使えますから、ファインダを覗き込み、明るくクリアなブライトフレーム内に意図した構図が収まっているのを確認し、ほくそ笑んで建物のなだらかで優しいカーブを捉えてみたもの。

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六枚目のカットですが、これも21世紀美術館の敷地内、ちょうどメインエントランスの位置する東側とは反対の西側のしかも敷地の外れ、傍らを通る道路に近い位置に建てられた、オールステンレス鏡面研磨仕上げの葡萄の房を逆さにしたような、或いは巨大なメタリックの泡のようなオブジェで、表面が鏡面なので、空を行く雲も地上を歩む観察者も全て映し返すという性質で、この日は梅雨空で白い群雲が複数の球面にそれぞれ映し出され、非日常的な視覚を与えてくれていたので、面白いと思い一枚撮ってみたもの。

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七枚目のカットですが、次なる目的地は兼六園と決めていたので、時間を節約するために、宿を出ていったん駅に寄って買い求めた北鉄バス一日乗車券を活かし、バスで移動すべく、最寄りのバス停に向かって歩き出したら、敷地内丑寅の方角に設けられた巨大なカラーフィルタでもある大型曲面パネルを使った色彩遊びの体験型オブジェをいたいけな若者がお手々繋いで楽しんでいたので、傍から一枚撮ってみたもの。

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八枚目のカットですが、同じく21世紀美術館の敷地内でバス停への出入り口すぐそは、到着時とほぼ同じ辺りで若いオモニがアルミ製の前衛的ジャングルジム遊びを終えて帰ろうかという際に、念には念を入れて、アルコール付ペーパータオルで手を消毒していたようだったので、その微笑ましい様子を横から一枚撮ってみたもの。

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九枚目のカットですが、バスに乗ろうかと思った刹那、前回、お向かいの神社にご挨拶していなかったことを思い出し、日暮れまではまだ時間もあることだし、境内にも何か所か撮影スポットが有ったことを思い出し、到着したバスは見送って、信号が変わるのを待って、道を横断し、「石浦神社」にお参りして行程の無事とシャッターチャンスを祈り、では失礼して、と物色した矢先に簾屋根の風鈴回廊の風鈴のひとつが目に留まったもの。

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十枚目のカットですが、風鈴回廊の風鈴をクローズアップして撮りましたが、全体的にも木々の間の木漏れ日を浴びて、所々、赤い木枠が艶やかに照らされ、何とも言えない風情を醸し出していたので、これもさっそくの御利益と思い、入り口付近から奥の方向に向かい、有難く一枚戴いてみたもの。

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十一枚目のカットですが、ここ石浦神社境内の風鈴回廊の横には、前回も撮らせて頂いた赤い鳥居の回廊が有り、ここは木立の外かつ簾の屋根が無いので、梅雨の合間の午後の陽光を燦々と浴びて、一本一本の鳥居の赤というか朱色が、それこそイタリアの誇る至宝フェラ-リの情熱の赤にも決してヒケを取らない、艶やかな佇まいを見せてくれていたので、ここも有難く一枚戴いてみたもの。

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十二枚目のカットですが、よくよく考えたら、広坂であれば、広大かつ複数のゲートを持つ兼六園もそれほど遠くはないし、そもそも、まだ観ていないところもかなり有りそうだったので、バスで兼六園に向かうのをやめて、お城の周りをテクテク撮りながら移動しようと思い、神社の北西の門からお暇しようとして、ふと石の鳥居に目をやったら、何らかの顔料で描かれた極彩色のハートが目に留まり、これも何かのご縁と思い最短距離で一枚戴いてみたもの。

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十三枚目のカットですが、広坂から一番近い兼六園の入り口から入場券買って中に入ってみると、前回は人が全く居らず、池に浮かぶ有名な琴柱灯籠だけ撮ったら、多少なりとも被写体がたむろしているであろう、茶屋街に移動すべく、園内の散策もそこそこに立ち去ってしまい、庭園内の建造物にまで関心が及ばなかったのですが、今回は入場したゲートのすぐ先に数寄屋造りの立派な佇まいの茶室が目に留まったので、せっかくだからと一枚撮ってみたもの。

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十四枚目のカットですが、茶室の反対側に目を転じてみれば、加賀友禅の如くゴージャスな錦鯉が遊弋する池の畔にこれまた風情溢れる数寄屋造りの建物が半分近く、杭に支えられ、水上にせり出しており、しかも涼をとるべく、池に開け放たれた縁側の先には藤棚が設けられているという念の入れようで、仕事柄、杭が腐食したら、宴会の途中に酔っ払いのヲッサン各位が三味線抱えたゲイシャガールともども池にどっぽーん!哀れ、腹を空かせた錦鯉達の餌食・・・とか妄想を膨らませて撮ったもの。

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十五枚目のカットですが、ゲートで入場料を払った時に貰った地図というか園内見取り図を頼りに、例の池に浮かぶ琴柱灯籠他、撮影スポットを探しながら園内巡りをしようかと思い、池の畔の火山岩をくりぬいたベンチみたいなのに腰掛けて辺りを眺めたら、お大尽とゲイシャガールの無理心中現場となりそうな数寄屋造りの木造家屋の玄関前に素敵なクルマユリのオレンジの花弁を見つけたので、周囲の観光客に気取られぬよう、ダッシュで位置取り、速攻で撮ってみたもの。

今回の感想ですが、いやはや、まともな状態のものは良く写るじゃないですか・・・これまでの経験で云えば、Saphir5cmf3.5については、入手したもの全てが、後玉がコーティング劣化していたり、G3の絞り対向面のガラスのクモリが取れなかったりと、デジタルでなくても、コントラストが大幅に低下し、まさにボワっと写るボワイエレンズとなっていましたが、今回の個体は治療が上手く行ったおかげで、f3.5にダブルガウスを奢ってしまうという贅沢な構成のおかげで、f3.5で云えば、OHを経たSummaron35mmf3.5並みにシャープネスとヌケの良さを両立出来たのではないかと思いました。

さて、今回は金沢遠征の予告編みたいになってしまいましたが、次回から3泊4日の旅を前後編に分けて
お送り致します、乞うご期待!!
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  1. 2020/08/02(日) 16:03:04|
  2. その他Lマウント改造レンズ
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  4. | コメント:2
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コメント

こんにちは

濃厚な色合いいいですね
フィルムで撮ったとき
これがど-変わるのか興味あります!
  1. 2020/11/23(月) 14:46:45 |
  2. URL |
  3. けふお #-
  4. [ 編集]

けふおさま
コメントありがとうございます。
フィルムはもうよほどのことが無い限り使うことは有り得ないので、ムリな相談ではあります(笑&汗)
しかしながら、そもそもM8の発色をコダックのEKTAR100ネガの純正仕上げに合わせていて、それにM(TIPO240)を合わせているので、これはとりもなおさず、EKTAR100の発色に近い線ではないでしょうか。
  1. 2020/11/24(火) 00:23:57 |
  2. URL |
  3. Charley944 #zdvXpt9s
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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