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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

深大寺撮影会~大口径単玉祭り+α~

Nikkor5cm.jpg
componon.jpg
NOCTI_01.jpg
先週末は、通称"愉快な仲間達"と秋の風物詩、鄙の紅葉を求め、その実は蕎麦を堪能し、吉祥寺で呑んだくれる目的で深大寺へと赴きました。

今回の撮影会は一見、どこにでもある中年のひまおやじが数人集まって、わいがやで好き勝手に写真を撮り散らかしているようにも思えますが、さにあらず、会の「鉄の掟」が有って、これを満たさないと正式参加として認められません。

そして今回のテーマが大口径or超広角、ということで、開放値f1.4もしくは、焦点距離20mm未満の玉を必ず一本携行し、主催者の求められた際はいつでも提示もしくは供出しなければならないという、実にノー天気ながら厳しいものです。

というのも今回の参加者のうち、工房主人を含め、稀有な大口径のコレクターが3名も集まったので、これをあますことなく活躍させたいと思ったからでした。

深川秘宝館からは、ニッコール5cmf1.1内爪、ノクチルックス50mmf1.2最初期型手磨きロット、山形方面からは、同じくニッコール5cmf1.1外爪、ヘキサノン60mmf1.2初期生産型、そして相模の国からは、ズノー5cmf1.1L後期型の参加です。

特に、山形方面のゲストがその友誼電站でヘキサノン60mmf1.2初期生産型の作例をバシバシとアップしてしまっているので、こちらも主催者側として、キャッチアップするのが返礼というものです。

そこで、今回のアップは、大口径の作例2枚とエンラージングエルマー5cmf3.5との比較のため、工房にてピントを完全調整したComponon5cmf4改Sが佐原のピン甘写真のリベンジ戦に登場です。

まず一枚目。これが川崎の友好工場で「限界まで光学系、ピントの精度を追い込んだ」というニッコール5cmf1.1の作例です。

機材は手持ちのSマウントボディ中、最高のファインダ性能を誇る、ニコン西大井サービス課調整済みのニコンS2初期型、フィルムはいつものスーパーセンチュリア100EX24オリジナルです。

露出はもちろんいつもの通り、開放、シャッターは1/1000で切っています。

全体的にはフレアッぽくてそこはかとなくソフトなカンジが漂うのですが、ところが合焦域中央のカモフラージュ模様のフリースを来た少年とその隣の少年の髪の毛をご覧になれば判りますが、一本一本が識別出来るくらいに解像しているのです。

但し、後ボケはつのだじろうの恐怖新聞の恐ろしい霊が取り巻くバック処理のようにグルグルに渦巻いています。

続いて二枚目、これはうって変って、Componon5cmf4改Sの開放での作例です。
同じくボディはS2、フィルムはスーパーセンチュリア100EX24です。

このレンズは、ピントが合うと彩度というか、色の飽和度も上がるカンジで、Schneider Kreutznachにありがちな、醒めた発色が行き過ぎて、時にはシアン被りにも思えるくらいの淡い寒色系の画面構成にはならず、寧ろ、他のドイツ製レンズ、特にツァイスやローデンシュトックの玉のように温かみのある描写を魅せてくれます。

そして最期の3枚目は、工房のご神体、堂々のNoctilux50mmf1.2です。
これは、さすがに日が翳ってきたのと、その日のうちに結果が見たかったこともあり、ちょっと日和って、RD-1Sに装着しての作例です。

ISOを400まで上げ、いつものデフォルトのプラス1/3の露出補整をかけた状態でのAE撮影です。

RD-1Sの比較的良く出来た明るい等倍ファインダのおかげで、とっさに少女が立ち上がって、クツを投げようと憤怒?の表情を見せた瞬間を逃しませんでした。

こちらもやはり王者の風格、ラテン語で"夜"の名を冠した大口径ながら、昼下がりから夕刻にかけてのアベイラブルライト下でも必要十分なシャープネスと質感を描きだしてくれます。

後ボケはニッコールに比べずっと大人しく、個人的にはこちらの方が好みです。

なお、工房ではまだフジノン5cmf1.2Lプロトとキャノン50mmf1.2深川スペシャルを秘蔵していますが、今回はその何れもベンチウォーマーになってしまいました。

近い将来、この二強に挑戦状を叩きつけることになりますので、乞うご期待。
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テーマ:スナップ写真 - ジャンル:写真

  1. 2008/11/24(月) 21:13:49|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:12
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コメント

ニコンのボケは、やはり独特ですよね。
ピントが合った場所のシャープさがあるので
またそことの対比が持ち味になっているのかもしれません。

二枚目の写真はシャープですね。
ボケも普通ですが
普通すぎて、逆にボケて欲しいと思われる
「物体X」が、左上中央に写っているのは
心霊写真ということにしておきます・・・・・・・マテw


三枚目は、レンズもさることながら
よく撮れましたね~~~
感心しました。

一眼レフならいざ知らず
RFで、ここまで撮れるとは、御見それいたしました・・・(^_^;)

うちの秘蔵の大口径は、ネタ切れなので
年末ジャンボに当たって
ライカの0.95でも買えないかなと
淡い夢を見ている今日この頃です・・・・笑
  1. 2008/11/24(月) 21:56:24 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
早速のお越し&コメント有難うございます。
K東カメから帰ってきて、初のテストです。
この結果は、同じくK東カメで修理した外爪のものよりも格段にシャープで開放から十分鑑賞に堪えるものだと思っており、結構気に入っています。

二枚目の物体Xって、あのメンインブラックに両脇を抱えられた宇宙人"グレィ"宜しく、男性二名に両脇を抱えられたぶぅちゃんのことですか・・・あっあれは、実はミシュランが深大寺の蕎麦屋の星付け調査キャンペーンに来た時の「ムッシュバンダム人形」なのですよ(汗)

3枚目の憤怒で靴を放る少女は、まさに咄嗟でしたが、RD-1Sのそこそこ良く出来たファインダーと優れたAEに助けられました。

でも、浅草では、もっとチャンスを捉えられましたよ、何せ、新しいパートナーのファインダはもっと良く出来ており、AE機構も格段に良いですから。
  1. 2008/11/24(月) 23:12:54 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんにちは。
拙ブログにコメントいただきありがとうございました。
月刊「写真工業」の廃刊は、軟弱な雑誌が巷間溢れる中ほんと残念です。

12月号の貴工房の記事もつぶさに拝読いたしました。マニアックなこと誠に瞠目するとともに舌を巻くばかりでした。
継続した記事を期待していたのですが・・・(残念)

ブログのほうは今後とも立ち寄らせていただきますので、益々のご活躍をお祈りいたします。
  1. 2008/11/25(火) 16:04:37 |
  2. URL |
  3. ファジ~ #UXr/yv2Y
  4. [ 編集]

ファジ~さん
コメント&記事の写真工業ご購読有難うございます。
また、いつも拙ブログにお立寄り戴きまして、重ねて御礼を申し上げます。

写真工業はあのように「有終の美」を飾ることとはなってしまいましたが、拙ブログはまだまだ続きます。

何とならば、工房主人の欲しいレンズはまだまだ有りますし、写りに関心がある、或いは技術的にチャレンジングなことから、是非改造してみたいレンズもまだまだ山ほど存在しているからです。

また、編集部との交流は今後も続くことから、何らかのきっかけで出版物メディアへの再登場もないわけではありません。

今後も是非ともご贔屓のほどを。
  1. 2008/11/25(火) 17:29:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
帰宅が遅くて、たいしたコメントに成らないと思いますが・・・。
  ニコン
 今までどの作例でも見せ付けられた、ハロにやられたソフトレンズと思いきや、シャープな結像に収差のみの実態に驚愕。話の翌日、marketのレンズを見に行き、本気で購入を検討しました(展示品は、最後部当り金具歪みのバルサム・セパレで見送りましたが)。
  コンポノン
 ライツとは、色傾向の違いと、アウトフォーカス部の際立つ輪郭(エッジ)はフォコター特有。コンポノンは線がふとい。
  ノクチ
 彫刻刀で削られた様な映像。画像はニコン以上のシャープネスを狙っている様子。とんでもない戦闘的なライツの血統を色濃く感じる粗さ。カメラ機材はかつて本当に兵器だったと思わせるに十分な貫禄。60hoodそとずけのf1ノクトはとてもマイルド(2年くらい昔には持っていた)。
 (全てにおいて、よい管理の賜物です)
  以上。  

(通信事情悪くて、手形レンズ持参出来ず、失礼しました。)
  1. 2008/11/25(火) 21:42:35 |
  2. URL |
  3. Treizieme  Ordre #-
  4. [ 編集]

Treizieme  Ordre さん
一昨日はお疲れさまでした。
的確な寸評有難うございます。

特に大口径2本は全く違うコンセプトながら、どちらも、開放から既に必要十分なシャープネスをもち、コントラストと階調再現性のバランスが高く、また、発色も心地良いバランスで、ただオール球面か、非球面採用かの違いがフレアの出方、そして、背景の描き方に、味付けの差として出ているのだと思います。

しかし、余談ですが、このノクチ、RD-1Sでもここまでシャープなのに、新しい相棒"白魔"で撮ると、シャープネスと立体感が更にブーストされ、更に格段魅力的になるのは何故でしょうか。
  1. 2008/11/25(火) 22:08:32 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

それは、きっと

喫茶店で
かわいい女の子が出してくれる
コーヒーが、普段より美味しいのと同じ・・・・・・・

って事ですよ・・・(負け惜しみ・・・(^_^;)
  1. 2008/11/25(火) 22:24:05 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
コメント有難うございます。
実は、昨日の朝も市川編集長と電話にてM8賛歌で盛り上がっちゃったんですねぇ・・・

要は、マヂなところ、M8のコダック製撮像素子光学系は、ローパスフィルタがないのと、オンチップマイクロ偏向レンズの出来が極めてイイので、良いレンズはより美しく、そうでないレンズもそれなりに写してくれるから、より魅力的に感じるんだってなハナシでした。

実際に今も浅草で撮ってきた作例を整理してましたが、あまりの臨場感にびっくら島倉千代子状態です(笑)
  1. 2008/11/25(火) 22:42:08 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
今回はいきなりアレが出るかなとの予想を裏切って、好い写真をお見せいただいたのはうれしい限りです。
わたしにとってスナップとしての距離感が心地よいですし、この距離がレンズ性能を見極めるのにぴったりなのかとも思えます。
それぞれのレンズが見事に描き分けられているのが、いつもながらに見事です。

1枚目では、ご指摘の解像度の点はもとより、前ボケの白いラッピングが美しいですし、全体に白っぽい中で革ジャンの親父さんが浮き上がっているのも面白い。
何より、試食を勧めるシーンに見えますが、おばさんの説明がうまいのかたかが試食に家族がこんなにもひとつになって集中している一瞬の状況を見逃さなかったのはさすがと敬服します。

前後に比べてぐっと全体にしまった2枚目を真中に据えるのも感心します。
まずは女性のエプロンの柄の解像具合に目がいきますが、やはり女性の表情がすばらしく、この最高の笑顔を待ってレリーズした charley944 さんの姿がまぶたに浮かぶようです。

大口径にこういう使い方もあるぞと教えてくれるのが3枚目です。
少女の顔にはほぼピントがきていますが、体は少し焦点がずれていて、 一瞬を止めたにも関わらず躍動感を表現したようにも見え、たいへん新鮮な印象です。
わたしにとってもこの写真はエンゼル・キッスになりました。
想像では、この靴は少し離れて撮影していた山形さんを直撃して、軸がずれたヘキサノンは急に歪曲するようになったのではないですか。

Treizieme  Ordre さんのように短い言葉でレンズを表現できる知識も能力もないので、いかにも素人な感想ですが、傑作スナップを見ると饒舌になってしまい長々失礼しました。
  1. 2008/11/26(水) 02:13:42 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
渾身の?コメント、有難うございます。

確かにニッコールの5cmf1.1は今まで、内・外合わせて3本ほど買ったり、売ったりしましたが、今回のものは、ダントツの描写性能を誇ります。

何とならば、K東カメの献身的な救護、即ち、バル剥がれや絞りの油滲みを治す過程での光軸調整、内面反射対策、そして各エレメントの回し積みといった、気の遠くなるような作業と計測の繰り返しにより、レンズ自体の味を残しつつ、開放からの実用に耐え得る戦闘力有るレンズに生まれ変ったからです。

Componon5cmf4は佐原では、無限がおかしかったため、3枚玉で絞りもF値で0.5明るい、ソムベルチオのFlorにすら惨敗してしまいましたが、今回は、工房での調整の結果、まさにその性能をあますことなく発揮して、さりげないスナップでも、その臨場感を伝えるかけがえのない絵筆と化したのです。
では、佐原での調整ミスは何だったのか・・・そう「工房も筆の誤り」、おぃ、ヤマダ君、座布団一枚やっとくれ♪です(笑)

最後にノクチルックス・・・これはもう人知を超えた奇跡の眼としか言いようがありません。
明るさ、シャープさ、そして力強さを兼ね備えた全知全能のレンズです。同じ大口径でもニッコール、フジノンが使い手を選ぶのに対し、このレンズは撮影者のウデを或る程度カバーするのではないかと思います。
ちょうど、最新型のフェラーリは初心者でも街乗りは難なく出来るように・・・・しかし、頂点を極められる人間はほんの一握りなのでしょう。
まだまだ自分には精進が必要だと痛感しました。
  1. 2008/11/26(水) 12:00:16 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

そして私のヘキサノンは

可愛い子を写す時以外は

ダメダメレンズになってしまったんですよ~~~~w


「白い悪魔」に対抗して

管理人さんなら判る
ゴールデンハーフの「黄色いサクランボ」のエバ・・・・
レンズになってしまったんですよ~~~~笑
  1. 2008/11/26(水) 20:09:11 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

山形さん
やっぱあの鉛の靴の直撃受けてたんですか・・・^^;
てっきり、あの直撃を受けたのは同方面で作戦行動中だった伍長で、その場で傷痍軍人になってしまい、後方に退避して、街頭でアコーディオン弾く代わりに、しもた屋にて旋盤回し、注文品の加工を始めたものばかりと思っていました。
  1. 2008/11/26(水) 22:41:29 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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