
さて、今週は予告通り、今週末に製造した久々の新作レンズの出来栄えをレポート致します。
その名はDallmeyer Pentac5cmf2.9改M。調べてみたら、約4年7ヶ月前に、かなり状態のイイ個体を改造した1号機を浅草で試写したストックフォトを元にご紹介しておりました。
こちらの方が見た目も古そうだし、エレメントもノーコートの普通の光学ガラスで作られているようですが、1号機が約70年前ということですが、これは御年80歳くらいになるのではないかと思います。えっ思いますじゃなくて、シリアル見りゃ良かんべ?というご意見ももっともですが、何せ、レンズ先端部外周にあるはずのシリアルが経年劣化による塗料の剥がれと地金の腐食が相まって、現状では読めないので、外観、硝質で判断せざるを得なかったという次第。
では、さっそく福井~金沢での試写結果を逐次眺めて参りましょう。カメラはα7c、全コマ絞り開放によるAE撮影となります。

まず一枚目のカットですが、今回の旅では、金沢への移動途上に位置する富山には、ランチに海鮮丼食べて、お城だけ見るだけ見て、早々に夕暮れ前の金沢に入って、駅至近の宿にチェッキンし、宵の口にかけての主計町茶屋~ひがし茶屋でも撮ろうと考えていたのですが、魔がさすもので、新幹線の中でふと手に取った広報誌にたまたま富山の沿岸部に北前船当時の古い街並みが保存されているというので、お城を見てから、市電に乗って、その景観保存地区である岩瀬地区を歩きだしてすぐ目についた旧家の軒先の屋号透かしを一枚撮ってみたもの。

二枚目のカットですが、ちょうど、この季節の便りとも言える、日本の地方都市の風物詩、造り酒屋の軒先の杉玉のかなり巨大なのが、雨を防ぐためか、二階屋根の軒下に特別に設けられた切妻形式の可愛らしい屋根からぶら下げられており、色の変わり具合から察するに、10月に仕込んだ今年の新酒がもう飲み頃ですよ、如何ですか?とか、吞ん兵衛各位を誘因する大役を果たしているようだったので、このノーコートで内面反射もシビアなオールドレンズの鬼門である明るい空が入るのもものかわ、店先ごと一枚撮ってみたもの。

三枚目のカットですが、この街に着いた時には全く意識していなかったのですが、どちらも登録有形文化財である北前船時代の豪商の店舗兼住宅を二軒公開していて、通常は数百円の入場料を徴収することになっているのですが、訪問した11/3はご存知「文化の日」であるため入場料免除、まずは東岩瀬の駅からのアクセスでは手前に位置する「森家住宅」の佇まいを観光案内パンフ的なアングルから一枚撮ってみたもの。

四枚目のカットですが、一軒目の森家の屋敷の中を隅々まで見せて頂き、係員の方にお礼を述べて大通り
に出て、奥の方向へと歩いていくと、程なく二軒目の北前船時代の豪商の店舗兼住宅である「馬場家住宅」も無料公開しているので、急ぐ旅でなし、呼び込みの係員さんの声に応えるかっこうで中に入れて貰い、ここも、内証の土蔵から二階の客間までご当主の馬場さんの案内でぐるっと見せて貰いながら、土蔵群の横の小さな庭の苔の間に滑り止の庭石代わりに埋められた石臼がイイ味出していたので、一枚撮ってみたもの。

五枚目のカットですが、同じくご当主の案内で「馬場家住宅」の内部見学をさせて頂いていた最中に石臼が埋められていた苔むした中庭から、すでに季節的に萎れてしまった庭木、たぶん樫か欅といった広葉樹の枝葉越しに、よく手入れが行き届き、お城の天守とか櫓を彷彿とさせる、分厚く真っ白い漆喰総塗籠仕上げの土蔵の壁面、窓の扉を一枚撮ってみたもの。

六枚目のカットですが、同じく「馬場家住宅」の中を巡っている最中、ご当主の馬場さんから、ふーん、手作りのクラシックレンズであちこち撮り歩いているんだ、イイ趣味してるね、そうそう、飾り金物で面白いのがあるんだけど、普段はよその人に見せないんだけど、見て撮ってく?とのことで、ご自慢の奥の土蔵の、時代を経た欅の板に取り付けられた凝った彫金仕上げの城前の前に案内され、確かに面白いと思い、一枚撮らせて戴いたもの。

七枚目のカットですが、屋敷の中を一通り見せて頂いたのち、お礼を述べて名刺交換などし、ご当主に通りまで送って頂き、そのまま大通りを海に注ぐ川の畔まで歩き通し、海の上で西に傾き始めた太陽など眺めてから、大通りから一本東の通りを通って、駅まで戻ろうとした時に、手入れの行き届いた馬場家や森家のものとは異なって、長年の雨風によって、表の漆喰が全て剥げ落ち、その下の土壁だけが痛々しい姿を晒している土蔵の姿を撮ろうとしたら、興味半分の親子連れが入ってきたので、有難く一枚戴いてみたもの。

八枚目のカットですが、駅に戻る手前で、、大通りに面し、大きな杉玉を吊るした造り酒屋の奥には、醸造を行っている醸造場があって、板張りの壁で囲まれた大きな建物の上には、これまた懐かしいコンクリート造で、醸造している清酒の名前を書き記した、如何にも田舎の醸造所という風情が、午後遅くのだいぶ赤みがかった陽光に照らされて、得も言われぬ風情を醸し出していたので、広角レンズではなかったので、ギリギリ構図を工夫し、画面に収めてみたもの。

九枚目のカットですが、翌11/4は朝から、前回の片道4キロも歩かねばならなかった丸岡城へのリターンマッチとして、福井滞在時に発見した、芦原温泉と福井駅前からの路線バスのうち、金沢からは少し近い芦原温泉から乗って、1時間半ばかり現地に滞在し、またバスと電車乗り継ぎで戻ってきて、17時過ぎに金沢駅に着けたので、そのまま、駅前のバス停から左回りの巡回バスに乗って、ひがし茶屋街まで移動し、まだかろうじて残照があるものの、灯火が灯ったメインストリートを行き交う人々を撮ってみたもの。

十枚目のカットですが、同じくひがし茶屋街のメインストリートで、この時間にしては珍しく、開いているお店が少ないため、通りがややゴーストタウン的になっていて、通りのガス灯が煌々と点いているにも関わらず、個々のお店の前は暗くなっているので、観光客各位もメインストリートで写真を撮るだけ撮ったら、たぶん、賑やかな夜の賑わいが人を惹き寄せる香林坊とか片町に移動するのでしょうが、街灯以外は真っ暗な街並みを見て、どこで記念撮影しようか迷っている中国系観光客の後姿をちゃっかりしっかり戴いてみたもの。

十一枚目のカットですが、連休谷間とは言え、平日だったため、殆どのお店が17時定時、ないし新型コロナ対応で営業時間短縮で閉まっていたなか、何店かの飲食店は細々と営業を続けており、中でも、金沢の百万石の伝統を受け継いだ抹茶系スィーツを商うお店には行列こそできないものの煌々と照らされている店先のメニューボードに足を止めて品定めをする女性客は引きも切らず、適当な組がやって来たところで有難く一枚戴いてみたもの。

十二枚目のカットですが、平日の宵の口なので、完全に真っ暗な店舗も結構な数有ったのですが、先の抹茶系スィーツのお店の如く、お店を開けてお客さんを迎え入れていなくとも、店内には煌々と灯りを点し、黙々と週末の営業の準備でもしているのか、お店のスタッフ、或いはマネジメントの方が、レジのところで、忙しくタブレットを片手に何らかの作業している姿が見えたので、外から一枚戴いてみたもの。

十三枚目のカットですが、メインストリートどん詰まりまで歩き切ってしまったので、いつもの散策ルート通り、どん詰まり左側からメインストリートの一本北側を並行して走る通りを目指すこととして、東端の小径、即ち、名高い料亭「山乃尾」の建つ卯辰山山系の下の通りを歩いていたらガス灯りが仄かに照らす石畳の道沿いのべんがら格子の街並みがなかなか佳き風情だったので、誰か通るのを待って、一枚撮ってみたもの。

十四枚目のカットですが、メインストリートの一本北を走る通りはなぜかメインストリートと交差する茶屋街入口の通りというかちょっとした広場に合流する手前、ひがし茶屋街料亭組合の建物の手前で、お城の桝形虎口じゃあるまいし、建物の壁伝いに左に曲がって、またしばらく真っすぐ歩いて右手に曲がるという、いわゆるクランク、鍵の手構造の裏通りの煌々と照らされたひとつめの突当たり手前を歩く小姐二枚を捉えてみたもの。

十五枚目のカットですが、鍵の手から抜け出て、そのまま道なりに真っすぐ歩けば、ひがし茶屋街メインストリート入口の、ちょっとした石畳の広場経由、浅野川に架けられた橋の袂の左右に設けられた、武蔵辻・近江町経由金沢駅方面、或いは兼六園下・広坂経由、片町・香林坊方面へのバス停へと戻れるのですが、こんなお店もまばらなウィークデー宵の口の茶屋街でも楽しかったのか、お手々繋いで家路を急ぐ風情のカポーがいたので、有難く一枚戴いてみたもの。
今回の感想ですが、ノーコートでしかもフード無しで前玉が比較的前に出ているので、逆光はつらいものがあると予想しての旅先での試写でしたが、なかなかどうして、空や強い光源に対しては、なすすべもなく、盛大なフレア大会にはなってしまいましたが、順光ないし、日陰っぽいところでは、素晴らしいシャープさとヌケの良さ、程よいコントラスト加減を示し、素性の良いレンズであることが良く判ったという次第。
さて次回は、またしても、旅から旅の合間のクラシックレンズによる撮影ということで、夏草や、兵どもが夢の跡、を彷彿とさせる古戦場を日帰り弾丸ツアーで巡ってきたレポートなどお送り致します、乞うご期待!!
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- 2022/11/13(日) 18:17:16|
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はじめまして
13枚目の光源のニジミが切れて
おばさん(小姐かな)まで届かない写りが素晴らしいです。
- 2022/11/17(木) 11:29:57 |
- URL |
- nakajima akira #-
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nakajima akira さま
コメントありがとうございます。
このレンズ、ノーコートで内面反射も結構ありそうで、なかなかくせ者なのですが、今回のひがし茶屋の宵の口の散策のように光線状態がトリッキーな環境下では、まぐれ当たりで、面白い写真が撮れるので、レンズ加工はやめられないのです。
- 2022/11/17(木) 23:42:48 |
- URL |
- Charley944 #195Lvy4Y
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