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深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

An amazing bargain sale of fantastic optics ~TTartisan 21mmf1.5asph.~

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さて、今回の更新は、やっとのことで試写まで辿り着いたTT Artisan21mmf1.5asph.のご紹介を行います。
このレンズ、言わずと知れた中華レンズで、お値段は新品ベース実勢価格でだいたい7万円弱、今回の個体は、南半球の羊の国から輸入した極上というふれこみの中古品で、なんと電子湾でポチっとな♪して三日ほどで届いたという驚きの出会いで、お値段の方も、愛用していたLeicaElnarit21mmf2.8のヘリコイドレバーの破損修理を含めたOH代とさほど変わらないということで、F値が約半分ということも手伝い、ついつい買い求めてしまったという次第。
’20年6月1日に発売されたこの光学系の構成は11群13枚、LDガラスが5枚、ガラスモールド非球面を1枚使っている旨、各絞り値でのMTF曲線ともども公表されています。
では、さっそく、テスト日当日の行程に沿って、実写結果を逐次眺めて参りましょう。
カメラはSONYα7cによる全コマ開放AE撮影となります。

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まず一枚目のカットですが、ロケ当日は、久しぶりに新鮮なシーフードを食べてあちこち撮り歩きたかったので、東京駅に出るまで、江ノ島にしようか、小田原にしようか迷ったのですが、結局、まだ早い時間だったので、小田原の漁港に直行し、魚市場食堂でランチしてから、いったん駅に戻り、一日券を買って、周遊バスで訪れたのは、秀吉のイリュージョン「石垣山」で、広々とした二の丸跡の広場で帰り際の親子連れを入れて撮ってみたもの。もちろん無補正ですが、周辺の光量落ちも殆ど気にならないレベルです。

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二枚目のカットですが、ここが、井戸曲輪といって、秀吉によって石垣山に築かれた規格外の陣城の凄いところで、二の丸広場の奥、山の南東斜面にあり、なんと、水源確保のために石垣を積んで、谷を丸々堰き止めて、今でいうダムとした構築物というか施設なのですが、ここで汲み上げた水を沸かして、淀君他の側室に茶の湯を点てさせたという話が残っていて、戦場に奥方を連れてきて、遊興込みで相手が落ちるのを待つという彼我の戦力差を思い知らせるものだったということ。薄暗い木立の中から、空も入れて岩場を撮りましたが、意外とフレアも控えめ、暗部のコントラストも高めです。

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三枚目のカットですが、石垣山のお城は、人海戦術と有り余る軍資金に物を言わせ、たった80日で総石垣の、当時既に近畿や東海地方に存在していた通常の居城並みに曲輪内部の建造物もきっちりと整備したようなのですが、特に、お城の、或いはそこに住まう大名の権威そのものだったのが天守閣で、もちろん、北条氏の立て籠もる小田原城のから3kmほどの距離の山の上のことですから、ごつい石垣の上に真っ白い天守が姿を現せば、戦意喪失に繋がるのは自明の理で、その急ごしらえの天守が建てられていた石垣の跡を撮ってみたもの。徳川の治世になって、小田原攻めの際の臨時の城跡など荒れるに任された上に、大正の関東大震災で激しくダメージを受けたため、かつての石垣を構成していた大きな石が幾つか転がっているのみです。ここでも木立の中から、空を入れて遺跡を撮っていますが、驚くほど、フレアは少ないと言えます。

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四枚目のカットですが、そろそろ、ここの下を通る市内周遊バスが到着する時刻が近づいてきたので、時計と睨めっこしながら、バス停がある麓まで撮り歩いて行ったのですが、さすが国の指定した史跡だけあって、下草や樹木の伐採は言うに及ばず、ぱっと見、時代がかった石柱のようですが、頭頂部に載せられた、秀吉の旗印である千成瓢箪をモチーフにした瓢箪のレリーフが現代のものと気付かせてくれますが、側面の達筆な曲輪内案内は雰囲気満点で、思わず足を止めて一枚撮ってみたもの。ここでもほぼ逆光ながら、これだけのコントラストで周辺まで光量が十分に届いていると、周辺はやや解像度は甘めですが、像面湾曲が殆ど認められないのは立派と思います。

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五枚目のカットですが、石垣山のバス停から市内周遊バスに乗って、約20分ほどで小田原城の天守閣への最短ルートである藤棚前観光駐車場のバス停に到着、そこから本丸まで季節の花など眺めて撮りながら歩いて行こうと思った矢先、幼い姉妹連れのご老人が蓮の葉で覆いつくされ、かろうじて水面が顔を覗かすお濠の鯉の餌付けなんかやっていたので、有難くそのお姿を頂戴したということ。これだけの被写体とのディスタンスですと、いかなf1.5の大口径開放とはいえ、そこは21mmの超広角であるため、極小姐達のつやつや・さらさらの黒髪から、水面に浮かぶ蓮の葉、そして遥か彼方の空に浮かぶ雲の濃淡まで識別出来るという不思議な描写になりました。

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六枚目のカットですが、藤棚前の入口から真っすぐ坂道を上がれば、即、天守閣の聳え建つ本丸広場に上がれるのですが、それでは、試写ツアーは全く成立しないので、かなり大回りにはなりますが、正規の登城ルートである、銅門方面に移動し、21mmの威力を活かすべく、普段ならば、かなり後退しないと全幅が収まり切れない、木造復元の白亜の櫓門の姿を、いたいけな小姐お二人様が姦しく語らい合いながら前を通る瞬間狙ってシャッター切ったもの。ここでは手前の地面で極僅かな光量落ちと解像度の甘さが見て取れますが、たぶん、f4程度に絞れば、全く解消するレベルではないかと思います。

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七枚目のカットですが、どうせ先を急ぐ旅でなし、土日のみ、入場料無料で開放している、木造復元の銅櫓門の中に入って見学しないという選択肢は有り得ないので、足取りも軽く、向かって右の石垣張り土塁の上に設けられた階段を駆け上り、さて、中に入って、久しぶりに愉快なお人形さん達と記念撮影も悪くはないなぁとか思いながらふと門の下方を眺めると、人待ち顔の南蛮人の小姐が門の控え柱にもたれて、スマホンなど弄っていたので、櫓の外観込みで一枚撮ってみたもの。何故かこのカットでは、周辺の光量落ちも解像度低下も殆ど認められないのが不思議に思えました。

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八枚目のカットですが、銅門上の木造復元の櫓内部にさっそく入ってみたのですが、靴を脱ぎ終えるか否かというところで、フルサイズでは超広角として使える21mmレンズの威力を試さんと、内部の全景図を撮るべくとカメラを構えたら、ちょうど、いたいけな極小姐連れの若いヲヤヂが視界に入ってきたので、有難くエキストラご出演願ったもの。さすがf1.5だけあって、外よりむしろ照度の低い屋内の方が得意と見え、色再現もコントラストももちろんシャープネスも申し分はないのですが、若干、奥の柱に樽型の歪曲が認められます。

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九枚目のカットですが、すわ、黒沢監督写真か!?と驚くのもさもありなん、お人形さん達と仲良く「小田原評定」のシーンでえ記念写真撮りましょう♪という趣旨のコーナーで、普通に上から、ないしアイレヴェルで撮っても、お人形さんはお人形さんで、面白くも何ともないので、手前でぐわっと腹ばいになり、ファインダが覗けるギリギリの床面からの高さから見上げるアングルでお人形さん達の寸劇を撮ってみたもの。薄暗い室内に煌々と陽光を投げかける桟付窓が被写界の中央右手寄りに入りましたが、さすが現代のレンズだけあって、画面を覆うようなフレアも全体的なコントラスト低下も起こさず、きちんとした映画のごときシーン描写を見せてくれました。

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十枚目のカットですが、お茶タイムも逆算して、そろそろ、本丸に向かって歩き出さねばならないので、もうちょい寛げそうな銅門櫓から降り、ひとつ手前の住吉門という「埋門」形式に分類される、実はレアな形式の門をよく観察し、「内桝形」と云われるお濠と塀で囲まれた敷地内に収まった形式の90°に位置に建つ二つの門で仕切られた方形の空間全体を撮るべく、一回、正規登城ルートを戻ってお濠越しに撮ってみたもの。これだけ空を大きく画面に入れて開放で撮っているのに、周辺光量落ちは皆無で、ヘタすると対称系35mmをLeicaM(TIPO240)で撮るより良いかも知れません。

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十一枚目のカットですが、外濠に掛かる「馬出門土橋」の先に設けられた内桝形である馬出門虎口まで進み、高い塀で囲まれた方形空間に直角に設けられた二つの「高麗門」形式の門の特徴がよく判るような位置で虎口を撮ろうと、虎視眈々とカメラを構えたら、南蛮人ご一家が異国の言葉で談笑しながら出てきたので、ここぞとばかりに一枚撮ってみたもの。周辺光量の落ちも皆無、何となく、35mmくらいの準標準で撮ったようにも見える描写となりました。

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十二枚目のカットですが、再び銅門方面に戻り、本丸方面に向かうと、一段と高い丘陵の上に本丸があり、その奥まったところの高石垣の上に、お城のご本尊様ともいえる天守閣が鎮座ましましのですが、このシーズン、ちょうどGW過ぎ辺りから、花菖蒲と紫陽花がその丘陵部の麓の元内堀跡一帯に咲き乱れ、今回の目的は、レンズの試写がメインなので、迷うことなく道草とばかり、花の咲き乱れる内堀跡のお花畑に降りて丘の上の常盤木門の櫓門をバックに今は盛りの紫陽花を撮ってみたもの。ここでこのレンズの最大の不満点が出ました。それは最短が70cmしか寄れないこと、今流行りのヘリコイド付きアダプタ使えば良いのですが、結構高いので持っておらず、21mmでの70cmでは至近距離での主題の強調が出来ず、ちょい物足りないカットとなってしまいました。

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十三枚目のカットですが、常盤木門櫓の内部のお土産屋で結構面白い、現地でしか買えないお城グッズがかなりの点数目についたので、ガチャガチャも含め、結構散財し、そこそこ満足した気分で本丸をRC造の白亜の天守閣に向かって歩き出し、ちょうど良い手前の松の木の下から全景図を撮ろうとしたら、空中浮揚をする不思議な小姐が目の前にやってきて、地球の重力を無視したような滞空時間で跳ねていたので、有難く一枚頂いてみたもの。空が大きな面積を占めていますが、相変わらず光量落ちもなく、超広角らしからぬ描写なのですが、やはり、手前の地面を凝視すると、両脇は中央部と比べれば若干甘めの描写になっています。

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十四枚目のカットですが、実はこれまで10回以上も小田原城は訪問していたのですが、途中、新型コロナの長い蔓延期を挟んでいたこともあり、天守裏のこども遊園地の名物、外周を巡るミニSLの運航を今まで一度も目にしたことがなかったのですが、今回、初めて、正常運航していることが判り、線路端で待つこと5分程度で録音された効果音とともに、ミニチュアサイズの機関車がコーナーから姿を現し、なかなか雰囲気のある画となったもの。ほぼアイレベルの水平撮りだったのでパースも皆無、若干、右隅の石垣の描写が崩れ気味であることに目をつむれば、35mmレンズ並みにナチュラルな描写ではないかと思いました。

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十五枚目のカットですが、機関車がやって来る前に周囲の撮影環境をリサーチしておいたので、おサルさんならぬ、白髪のご老人が操る先頭車両が通り過ぎると、客車が数量それに牽引されて目の前の通り過ぎていったのですが、線路ギリギリのところに大ぶりな白いヤマユリが咲いていたので、70cmしか寄れないのは残念でしたが、いたいけなお子ちゃま各位が乗り込んだ汽車を見送るが如き、白い花を主題として一枚撮ってみたもの。このカットこそが、今回のレンズ試写の真骨頂で、後ボケはナチュラルですし、通目の前を通り過ぎる列車の躍動感みたいなものも良く雰囲気を捉えていると思いました。

今回の感想ですが、はじめて上海で海鴎製のミノルタコピー機を買い求め、きちんとした大きな店で買ったのに無限は出ないわ、方ボケするわと滞在中の試写で散々な結果だったので、翌日、プリント持参でお店にクレーム付けにいったら、あ、ゴメン、ゴメン、お店の在庫からどれでも好きなのを代わりに持って行ってちょうだい、とか言われ、ピンが甘いのをどうやって見分けて良品と替えるのか逡巡していたら、別のお客が、お店の人間に何か云って、ケント紙みたいなのを持って越させ、それをフィルム幅に切って、通りの向かいのビルのてっぺんに向けて、とりあえず無限が出るのを二台選ってくれて、安かったので、結局二台買って来てしまったということを思い出し、隔世の感を覚えた次第。

さて、次回は、たぶん、’23年の年明け早々にクラシックレンズ達と訪れた瀬戸内界隈ツアーからお送りしたいと思います、乞うご期待。
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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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