



【撮影データ】カメラ:R-D1S ISO800 全コマ開放
皆様、新年明けましておめでとうございます。
本年もひとつご贔屓のほどを。
さて、昨年1月17日から、某T姫光学なる超絶鏡玉&世界ウルルン滞在記まがいの人気ブログに触発されて、ぢゃぁ、それがしも一発やってみるでござるか!?と初めて以来、一年を待たずして1万3千ヒットを越えるご来訪を戴きました。
生来が怠け者で横着者の始めたこと故、更新の間が空くたび、仲間内からは、ははぁ・・・遂にネタが切れたか、まさにネタ切れ浪人とはこのことなり!とか揶揄されつつ、心配もされましたが、関係者各位のご声援、並びにアドバイス、リクエストなども有り、コレクションと工房作品を取り混ぜてご紹介することにより、何とか一年は持ちこたえたようです。
お正月休みということで、先週もまた更新をサボってしまいましたが、その反省も含め、今年の第一発目は、工房附設秘宝館から、超弩級レンズのご紹介。
このレンズは、国産各社、いや、写真界の総本山、エルンストライツ社をも巻き込んだ世界的なハイスピード標準レンズ開発競争の中で、1954年に富士写真フィルム(当時)が発表した製品で、ズノ-、ニコンの各f1.1に数値こそは劣るものの、その写りは、ライツ社製の神器Noctilux50mmf1.2と肩を並べるとまで謳われた銘玉です。
見ての通り、一見何の変哲もない、Fujinon5cmf1.2のLマウントですが、このシリアルにご注目。
なんと、50万2番という有り得ない番号なのです。
通常は5番くらいまでは試作品として販売しないのが普通ですから、これは、○に”S”の朱印こそないものの、先にご紹介したクリスター5cmf2同様、社内向けに製作された量産試作品とみるべきと考えます。
また、シリアルのみならず、エレメントの何枚かは、部品取り用に保有している、数百番後の同形式レンズに比べ、うっすらとカナリアイエローの色が認められます。
これは、新種ガラスの塊である、同レンズの試作にあたり、小型の白金ルツボで新種ガラスを少量融解したため、極微量の白金イオンがガラス中に溶け出し、大型のルツボで融解するのに比べ相対的にその含有量が多いため、その物質色が違いとして見えるのではないか、という推定をしました。
さて、前置きはさておき、早速、作例を見て参りましょう。
まず一枚目、これは夜のとばりも降りた新川界隈をかしましく語らい合いながら、家路を急ぐ、妙齢のご婦人二名をターゲットにR-D1Sでの夜間撮影試験を試みたカットです。
ISO800での開放による作例ですが、かなりシャープに捉えられていると思います。左のご夫人の白いシャツもフレアは出ておらず、かといって、右のご婦人のベージュのブラウスも相当シャドーになっているにも関わらず、上手く質感を捉えています。
ただ、Noctilux、或いはCanon N-FD50mmf1.2Lといった、非球面とエレメント枚数を贅沢に使ったレンズに較べると、点光源はやはり崩れがちになってしまい、ニコン、ズノーよりは遥かにましなものの、Noctiluxと肩を並べる云々は言い過ぎなのではないかと思いました。
そして二枚目、これは今も江戸ご府内と深川を結ぶ、永代橋を渡りきったところで通行人を狙って、鋼製橋と人間の質感の違いを、青い人工光下でどのように描き、また後ボケはどうなるのか?を確かめるために撮ったカットです。
個人的には、左右の自転車乗りの男性とも、フラフラ、ユラユラと柔らかい感じを出している一方、鋼製の橋はただただ硬く聳え立っているという対比が楽しめると思いますがいかがでしょうか。
ここでは、画面全体の均質性は悪くないですが、橋の頂点部分にかけての後ボケがややだらしなく崩れてしまっているのが残念に思えます。
最期に三枚目、これは門仲交差点で、今宵のデートのお店はどうしませうか?などと古風な愛のやりとりを楽しんでいるかのようにも見えたカップルを後ろから一枚戴きました。
ほとんど逆光に近いシチュエーションにも関わらず、男女のシルエットは十分輪郭も見えますし、女性については、表情はいわずもがな、髪の毛の一本一本まで識別出来るくらいの解像度で捉えています。
しかしながら、やはり球面収差はコントロールしきれず、背景の点光源、或いは電光看板はイレギュラーに膨らみ切って、大変なことになってしまっています。
今回は高感度に強いR-D1Sの力を借りて夜間迎撃試験でしたが、次回は昼のひなかに、是非、Noctilux、そして同じ富士写真フィルム製のCristar5cmf2のType3Proto.とフィルムで対決させてみたいと思っています。
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テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真
- 2009/01/04(日) 21:37:46|
- 深川秘宝館
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| コメント:9
今年もよろしくお願いします。新年早々凄い玉が来ましたね。確かに滅多にお目にかかることのできない番号ですし、ピント部分のクリアさは量産品よりも優れているのではないでしょうか。まあこの時代の大口径ですから収差は仕方ないですね。R-D1ですと周辺はかなり落とされていると思いますが、非転収差も周辺にはそこそこありそうに見えます。私は非点収差、ぐるぐる大好き人間なので、すぐそちらに目が行ってしまいます。また、詳しくは判別できないのですが、3枚目の点光源の中に皺のようなものが見えます。ノクチf1.2など非球面だとよく皺になることがあるのですが、このレンズはまた別の要因なのでしょうか。
- 2009/01/04(日) 23:40:57 |
- URL |
- kinoplasmat #lpavF/Xw
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kinoplasmat さん
明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
今回のアップもそこそこお気に召したようで何よりです。
シャープでありながら、アウトフォーカス部で暴れまくる・・・或る意味、このジキルとハイドぶりは、全域ジェントルなNoctilux50mmf1.2やN-FD50mmf1.2Lなどと較べると、使いこなす腕を要求されるだけに却って面白いかもしれません。
尤も、先のNikkor5cmf1.1しかり、このような大口径の被写界深度の浅い玉でスナップするなんて、目的外使用も甚だしい・・・こういう玉はモデルさんのポートレートを至近距離で撮るための玉ですよ!などと斯界の名人に嗜められてしまうかもしれません。
ところで月内にも、「極我的琉球」とのタイトルで、昨年末に新作のレンズテストも兼ねた沖縄旅行での作例をアップしていきますが、たぶん、貴兄のハートをガッチリと掴むんぢゃないか・・・と思うものがありますよ。(実際にT姫光学さんは同形式のレンズを入手し、某工房に加工に出しましたし・・・)
- 2009/01/05(月) 00:29:48 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
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昨年はほんとうにお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。
何とか一年は持ちこたえたようですだなんて、たいへんなご謙遜ですね。
最新のネタを出してこないという余裕を感じます。
今回もすごいレンズですが、やはり2枚目にそのエッセンスを感じます。
前後ボケとも美しいのに、光源部分のボケをだらしないと表現されるとは、相変わらず要求が厳しいですね。
それに、これだけの大口径レンズで、この程度の非点収差はぜんぜん許容の範囲と思うのですが、これも手厳しいです。
このレンズは、立体感がすばらしいと聞いたことがありますが、そのあたりはいかがでしょうか。
- 2009/01/05(月) 21:07:24 |
- URL |
- 中将姫光学 #sKWz4NQw
- [ 編集]
山形さん
今年もひとつ宜しくお願い致します。
関東での撮影会・オフ会にわざわざ出掛けてきて戴ける・・・時間とお金を掛けて。
これだけでも、写真にかける情熱を窺い知ることが出来ます。
1000枚のうち、一枚でも・・・だなんてご謙遜を。
しょっちゅう、おっと思うようなショットを拝見致します。
小生とてまだまだ修行中の身の上、貴兄や、T将姫光学さんのサイトでお互いに切磋琢磨、そして時には励まし合いながら、自己表現術としてのそれぞれの写真道を極めていきましょう♪
- 2009/01/05(月) 23:00:44 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
- [ 編集]
中将姫光学さん
こちらこそ、今年も色々と遊んでやって下さいね、宜しくお願い致します。
>前後ボケとも美しいのに、光源部分のボケをだらしないと表現されるとは、
>相変わらず要求が厳しいですね。
>それに、これだけの大口径レンズで、この程度の非点収差はぜんぜん
>許容の範囲と思うのですが、これも手厳しいです。
確かにこの時代のこれだけムリしているレンズには厳しすぎる要求かも知れませんが、当工房の基本理念が、Noctilux50mmf1.2とMicro-Nikkor5cmf3.5を凌駕するレンズを探せ!ですから、やはり較べてしまいます。
ましてや、夜間撮影の常連レンズであるCanon N-FD50mmf1.2Lの、真空中に浮かぶ色という概念そのものを掴み取ってくるようなクリアさ、歪みの無い端正な描写をいつも見ている以上、無意識に比較してしまうのは止むを得ないことと思います。
しかし、好きかキライかと言えば、やはり好きなのでしょう・・・それは絶対性能のみならず、1954年当時、キャノンの伊藤宏、ニコンの脇本善治という両天才設計者と伍して、やはり富士写真フィルムの俊英、土井良一が世界のライツに挑んだ志の忘れ形見に他ならず、その心意気と夢を感じることが出来るからです。
なお、立体感については、この作例は全て日没後なのであまりはっきりはしませんが、同じような傾向の写りである、Canon L50mmf1.2のシャープな合焦部と非点収差、球面収差の入り乱れたアウトフォーカス部のボケの対比による開放での立体描写と共通するものがありますので、かなり楽しめるのではないかと思います。
- 2009/01/05(月) 23:14:29 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
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新年明けましておめでとう御座います。 今年も宜しくお願いします。
遅くなりましたが、まずはご挨拶まで。
(キヤノン・ねじ込み50mm1,2と比べると、シャドウが引き締まって見え、補正が高度に達成されている様にみうけます。的確に対象の輪郭をとらえ、情緒の入る隙間も少ないような・・・。 いずれにせよこの様な貴重な製品の数々。数十年の歳月を経て、なお厳しい今日撮影条件と照らしあわせるに付け、色々と思うところあります。
それは、ガラスの組み合わせが到達する被写体との「適合調和」の考えを見届けないわけにはゆきません。バイオリンが音を調整するように、ガラスの組み合わせが光の波動を調和させるのです!) *まずは一杯酔い気分、今年の初夢*
- 2009/01/07(水) 22:21:03 |
- URL |
- Treizieme Ordre #-
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Treizieme Ordre さん
コメント有難うございます。
確かにこのレンズの経てきた幾星霜を考えれば、驚異的な性能かも知れません。
しかし、今回の夜間迎撃試験ではまだまだこのレンズの描写性能・・・いや、レンズを通した表現に於ける魅力、というべき属性をあからさまにしていないのではないかと思います。
願わくば、フィルムよりは寧ろ、白魔の魔眼、即ちローパスフィルタのないKodak製CCDを通した白昼の描写で、神器Noctilux50mmf1.2、深川スペシャル のCanon L50mmf1.2と対峙すべきなのかも知れません。
では、今年もどうかご贔屓に。
- 2009/01/07(水) 23:15:25 |
- URL |
- charley944 #SFo5/nok
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