深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

異母兄弟の絆~Xenon50mmf2Arri改M~

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【撮影データ】カメラ:M8 ISOAuto 絞り優先オート、全カット開放
お待たせ致しました。
今宵のご紹介はまた当工房作品の紹介となります。
このレンズは独Arnold & Richter社のモーションキャプチャカメラArriflex用として、戦後の早い時期にSchneider Kreuznach社が供給したものと思われます。

このレンズの特徴は、かつてご紹介した"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものと、鏡胴のメカ設計は勿論、レンズ構成まで全く異なり、寧ろ、同じ時代にArriflex用としてデフォルトであった、Cine-Planarに酷似していますし、同じ独製のCine-Heligonもかなり近い作りになっています。

これは推定ですが、おそらく、元々はArriflex用のレンズはCarlZeissしか供給していなかったのが、戦後、急に販路が拡がり、数量的にも、或いは競合する他のモーションキャプチャカメラシステムとの対抗上、レンズ供給ソースを拡げる必要性があり、ことレンズの生産能力に関しては懐の深かった、Schneider社がこれに応じ、Arri社の要求仕様通り、先行するCine-Planarと近時したものの製造を行ったのではないかと思いました。

しかしながら、最初はPlanar互換品でスタートしたXenonも、Arri社のカメラ自体のモデルチャンジに伴う性能改良に対し、次第に独自の工夫が求められ、或る時期から、このモデルと全く異なる形になったのではないでしょうか。

では、具体的には、これまでの"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものとどう違うのか。
まず、一点目はひと目で判る特徴なのですが、"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものは、前玉が銘板ぎりぎりまで前進した位置に固定されており、また、前玉から後玉までの光学系全体が長いです、それに引き換え、このレンズはかなり短く、ゾナータイプかと思ったくらいです。
それから、最大の特徴は、Arriflex用のレンズは回転ヘリコイドが多く、このレンズもご多分にもれず回転ヘリコイドなのですが、"Arriflex-Cine-Xenon"銘のものは、Kinoptik同様、極めてレアな直進ヘリコイドになっています。

さて、前置きはこれくらいにしておいて、早速、作例いきます。

まず一枚目。今回も深川からは程近い、浅草でシェイクダウンテストです。これは地下鉄から上がってすぐ、今回の道連れである湘南在住の某人気ブロガーT姫光学氏と待ち合わせている場所のすぐ横で人待ち顔でメールしていた、横顔の美しいお嬢さんを一枚戴いたものです。
開放ながら、髪の毛の一本一本に至るまで質感を正確に掴み描写していますし、みずみずしく柔らかそうな肌も、そのままに再現しています。後ボケもこの解像度にしては、煩くなくて好感が持てるのではないかと思います。

それから二枚目。お嬢さんから90度左横に目を向けると、今度はやや西に傾きかけた真冬の太陽に照らされた白人の親子が居ます。髪の毛、肌の照り返しがとても美しく見えたので、ここでも一枚戴きました。被写体である外人親子は極めてシャープに捉えながら、後ボケは極めてスムーズでイイカンジに描かれています。

そして三枚目。今度は人物から至近距離でのオブジェ撮影によるシャープネス、および後ボケのテストです。この扇屋さんは今まで一回も買ったことがないのですが、しょっちゅう店先でテスト撮影させて戴いていて申し訳ないキモチもないではないのですが、ついついやってしまいました。
殆ど逆光に近い条件ながら、フレアはミニマム、合焦部の団扇の値札のコントラストはさすがに若干低下しているものの、この時代のレンズとしては驚異的な性能ではないでしょうか。後ボケは渦こそ巻かないものの、球面収差の影響でG.ルオーの油絵みたいな雰囲気になってしまいました。

最後の四枚目。これは伝法院通りを歩いていて、伝法院の門前で停車し、派手なパフォーマンスとともにお客に観光案内をしている車夫の兄さんを捉えたものです。
人力車のスポーク一本一本まで金属の質感を正確に描写し、坊主頭の車夫さんなどは、今にも画面から飛び出してくるのではないかと思えるくらい、クリア且つシャープに写し撮ることが出来ました。

ここでも、このXenonは、M8という最新のデジタルデバイスの超能力を借りながらも、兄弟の"Arriflex-Cine-Xenon"を含めた他のArriflex用レンズ、或いは一般の銀塩用のXenon50mmf2レンズ同様、線が細いながらも力強く魅力的な写りを発揮してくれました。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/02/22(日) 23:14:20|
  2. Cine-Xenon50mm
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

レンズより
一枚目の写真の女性のほうが
気になってしまうのは
やはり
修行が足りないせいですね・・・・笑

やはり
某人気ブロガーのように
おばさんでも、撮れる
心の広さが必要だと痛感した今日この頃です・・・マテw
  1. 2009/02/23(月) 20:25:22 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

f2という、まずまずの明るさのレンズがどの様に使われてきたのか、気になる次第です。収差を抑えて学術用途とか・・・。ズミクロンの様な、優等生描写として人力車はまさしく標本的に写り、できればメモ書きの背景さんも見本帳にはいってほしい。うちわの近接で微妙な軟らかさがでて、ローライ66クスナーの明るさは違うものの、色合いに類似するものを感じます。外人のコマは、ハロを禁じているかのような、一連のレンズにある重たい背景描写がありますが、一枚目の女性写真のクセノタールで捉えたかのような描写に結実します。それは人物を背景から際立たせ口径のある前景のやわらかさは気分の良いもので、日差しの照り返しが自然のレフ効果になり、『次の顔を上げた場面からシークエンスが始まり、彼女の演技が開始される・・・』。そんな予感に圧倒されます。(たぶん、じっさいは、カレシのもとへハシルだけ!)
日常を切り裂き、舞台装置を演出するレンズ・・・。これはスチルフォトの復権にほかなりません。
  1. 2009/02/23(月) 22:41:29 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

山形さん
有難うございます。
>レンズより一枚目の写真の女性のほうが気になってしまうのは
元気が出てきた証拠です。
その調子で回復出来る様、某人気ブロガーT姫光学氏とタイアップして、"萌え"写真バンバン逝きます。
何せ、今回の湘南撮影ツアーではブログを持っていない筈の水母伍長ドノやSKさんまでが"萌えによる回復のチカラ"を信じて、その手の写真を精力的に撮りまくっていましたから >_<\☆★ぼっこっぉ!!
  1. 2009/02/23(月) 22:42:09 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

Treizieme Ordre さん
いつもながら深遠で含蓄に溢れたご講評有難うございます。

今回、一連のシネレンズ改を順繰りと"白魔"で実証していくことにより、その優劣・・・いや持ち味の違いみたいなものを検証していくことにしました。

勿論、そんなの関係ねぇ!萌え写真だけしかキョウミねぇ!ってな御仁も地球上のどこか、例えば東北地方辺りに居られるような気もしますのでテストには、極力萌え系を入れるように心がけたワケではありますが(汗)

しかしここまでの検証過程で気付いたことは、全部が全部、空気を剥ぎ取ったかの如きシャープさを売り物にした画像なワケではなく、例えば同じ浅草界隈でテストを行ったKinetalは充分シャープではありますが、もっと重厚な油彩のようなどっしりとした写りで魅せてくれます。

たとえは適切ではないかもしれませんが、白魔を首都高と見立てれば、一口にシネレンズと言っても、高性能車の定義が一様でないように、重量感で乗る者に安定感と快適さを約束するような大型セダンのようなキャラのものもあれば、反対に胸のすくような運動性能と軽快な走りでドライバーに官能をもたらすライトウェイトスポーツのようなキャラのものも有るのだと思ってきた次第です。
  1. 2009/02/23(月) 23:42:55 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

こんばんは。
Arri.レンズの詳細はなかなか判明しないようですが、想像がふくらんでおもしろいですね。
チャーリーさんの2本とわたしの1本を見ると、
Xenon 475XXXX 1956?
Cine-Xenon 642XXXX 1960?
Arriflex-Cine-Xenon 1119XXXX 1969?
(年代は Schneider 社の Age of Lenses から)
という並びになります。
たった3本の例で勝手に空想すると、50年代中頃に他のマウントも含めシネやスティルに採用されることを前提に製造。60年代にはアリやミッチェル、エクレール等で採用、名前に Cine を冠してシネ用に設計変更。60年代後半には、アリがシネカメラで席巻しアリ専用レンズ化。名前を変更すると同時に光学系もマイナーチェンジ。
安直過ぎますか…。

4枚目の作例は、中心のいちばんいいところに被写体を配してシャープな画面の中に、映画の一シーンのように時間を止めることに成功しています。
車夫の動作がわざとらし過ぎですが、カメラの存在に後ずさりしながらも師匠の名説明に思わず指さす方向を見やるお弟子さんがいい演出になっています。
ルオーのボケという表現は気に入りました。
わたしも真似したいです。
いずれにしても、アリ用クセノンはどのタイプも、肌の質感を滑らかに描写するすばらしいレンズだと思います。
  1. 2009/02/24(火) 23:12:32 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。

35mmモーションピクチャカメラの世界では、Arriflexというものは、ニコンの実力とキャノンの販売力とライツのブランド力を兼ね備えた化け物じみた存在ですから、一夕一朝にその全貌を窺い知ることは出来ないのではないかと思います。

またシュナイダー社もしかり、欧州の光学界では、Carl Zeissに肉薄する実力を持ちながら、自社ではカメラを一切製造せず、優れたカメラメーカーにレンズを広く供給、具体的に例示すれば、同じXenonでも、レチナに出した「普及品」から、ライツのズマリット先行品、そして極小数のイタリアカメラや、アルパ、ライカマウント向け、そしてこの究極の用途とも思える、Arriflex用・・・することに専念してきたことから、やはりその全貌を解明することは相当な困難があるものと思われます。
しかし、番号による年代、そして用途・形態という限られた情報で推理をすることはとても楽しいことだと思います。

さて、4枚目の画像ですね、確かにこのスキンヘッドの車夫さん、オーバーゼスチャですね、でもまさにご慧眼の通り、映画の一シーン・・・は褒め過ぎにしても、地元の観光協会の案内パンフ程度のテイストは出ているかも知れませんね。昔、人力車に乗ったことがあって、写真を撮られる時は意識するか聞いたことがあって、その答えは「自分たちも観光業のはしくれですから:::」ということでした。

しかし、このXenon50mmf2奥目6号機の写りは単なる予兆にしか過ぎなかったのです・・・詳細は再来週に。
  1. 2009/02/25(水) 10:29:16 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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Author:charley944
今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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