深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

打完球之後,第一次描述②~Canon L50mm f1.2

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【撮影データ】Leica M4OD Canon L50mm f1.2 Ilford XP400 全コマ開放
ブタもおだてりゃナントカ・・・とは良く言ったもので、このレンズの評判に気を良くして、大サービス第二弾、普段は公開しないモノクロ画像を堂々アップ!
この作例は、先のカラーの作例と同じ日に秘密結社「新宿西口写真修錬会」の例会に混じって、先の立ち寄り先である葛飾柴又で撮影したものです。

まず一枚目。これは柴又帝釈天こと題経寺への参道で駄菓子売るお店の向かいで焼き鳥やら焼きイカ、そして缶ビールなんかを売る常設屋台みたいなお店でいかにも楽しげにバイト仲間と語らい合いながら店頭調理を行っていたお兄さんを一枚戴いたもの。
ピンはお兄さんの顔で合わせたため、距離的に顔と一直線にあるものについては極めてシャープに捉えられていますが、少しでも被写界深度から外れたものは滲むが如くボケてしまいます。このカットで見る限り、前ボケも後ボケもナチュラルで心地良いものだと思います。

そして二枚目。これは帝釈天から少し外れた矢切の渡しへの道すがら、「山本記念館」とか言う、カメラ部品で財を為した方の邸宅を保存してあるところの庭園にお邪魔し、蹲をじっと覗き込み、来し方行く末について沈思黙考する哲学的な幼児が居たので、背後から忍び寄り一枚戴きました。
このカットでも全体的にはフレアッぽくてソフトな雰囲気ながら、幼児の毛髪、衣服の皺、そしてオフフォーカスの筈なのに蹲の水の煌きが妙にクリアに写っていて不思議な印象を与える画になったのではないかと思います。

続いて3枚目。まさにこういう写真が撮りたくて、わざわざ京成電鉄の支線に乗って、重いカメラ、機材を提げて葛飾区くんだりまで行った甲斐があります。
まさにこのカットの意図するものは、50年~60年代にかけての日本映画の残滓です。もっと具体的に述べれば、古くは深川住まいの先達、小津安二郎の「東京物語」、「麦秋」、比較的新しいところでは、まさにこの葛飾柴又に根ざした「男はつらいよ」のテイスト、これを企図したものです。
参道に有る茶店のかなり薄暗い部屋で何物にも換え難い家族の団欒のひと時を楽しむ一家を捉えました。お嬢さんと父母、そして祖母・・・いつかそう遠くない日にこの古風なお嬢さんは誰かのもとへ嫁いで行くのでしょうが、この残された老夫婦は、この何気ないひと時が記憶の中で波に洗われる砂浜に一粒落ちたダイヤの輝きのように思い出されることになるのでしょう。

最後に四枚目。これも同じく茶店で90°横向いて咄嗟にシャッター切った一枚。
これも古き佳き時代の日本映画のテイストを求めた作例です。
何かしら曰く因縁有りげな中年カップルの女性がその細腕に渾身の力を込め、同伴の男性のために茶を注ごうとしています。しかし、目線は店の奥で忙しそうに立ち回る従業員達・・・もう長いこと一緒の時間を過ごし過ぎて、話題すらなくなってしまい、時の移ろいのみを待ち侘びているのでしょうか。
このカットの面白いところは、一続きの同じフロアに居るのに、手前の男女は実体感の有る存在として写っているのに、バックの白い衣装の従業員達はあたかも劇中劇の如く、スクリーンに映る何か映画のシーンのように写り込んでいることです。

このようにまだ柔らかさを残していたリニューアル前は、モノクロでもなかなか良い仕事をして楽しませてくれたものでした。

テーマ:ライカ・マウント・レンズ - ジャンル:写真

  1. 2009/03/20(金) 00:25:47|
  2. 深川秘宝館
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

モノクロのモニター画像、興味深く拝見させていただきました。
小津安二郎の映画はときどき耳にしますが、3カット目にそんなイメージをふくらませました。ひだりのオヤジの目線とうつ向き加減で妙齢の女性に、高度成長期を背景にしたかつてのきびしく・ひたむきな父娘の物語をそのまま現代に感じさせます。
 一眼用のf1,4でも80年に入るくらいまでは、ここまでシャープにはならないとおもいます。距離計式の精度の高さと両立して、現代でも使い手があるものです。(フレアー無さも、これで改良前ですと、改良の要点は何でしょうか)
 じつはモノクロプリントしたことが無く、今回のモニター上の再現が三枚目は気になりませんが、意外とトーン幅が少ない気がして、余計に画像にノスタルジックを感じたかもしれません。
 しかしながら、「深川近辺」にはトーン豊かな高度成長期の残滓もあろう事ですし、当方近所の〈ガングロ・ヤマンバ以降・・・〉ゼツ不況状態・渋谷近辺のハイライトからディープ・シャドーの環境を想う度に、まだまだ「小津安二郎」路線には挑戦して頂きたいと、お望み申し上げます。
  1. 2009/03/20(金) 16:34:03 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

小津監督との奇妙なえにし?

Treiziemeさん
ありがとうございます。
一緒に撮りましょうよ、小津テイストも・・・
そう、4月5日のイベントの次も実は企画を暖めていて、恒例の葛飾柴又&浅草裏通り徘徊行(仮称)ってなカンジなんです。

ここで、高木屋の暗い屋内に陣取り、また~りと幸せそうな家族を待ち伏せして古カメラの集中砲火を浴びせるのも乙なものかも知れません。
勿論、フィルムはこのイルフォードXP400の擬似モノクロで(笑)

ところで、今日は都営大江戸線を隅から隅に近いくらい乗って、或る無料の読み物を貰って読んでいたら面白いことが判りました。

それはまさに当工房とシネレンズを結ぶ奇妙な縁の物語です。
当工房の西約150m付近に小津監督ゆかりの「小津橋」というのが有って、そこはかとなく縁を感じていたのですが、彼の逝去が1963年、即ち小生の生まれ年、しかもこの深川の地に引っ越してきた12月12日が彼の命日で、小生がここに居を構える前、一回しかこの地を訪れたことがなかったのですが、それも奇しくも1974年8月22日、そう小生十一歳の誕生日です。蛇足ながら生を受けた産婦人科名が「深川産婦人科」

また、これまで、このアリフレックスレンズの50mmの改造を多く手掛けてきたことは、50mmしか使わなかった小津監督の想いにシンクロしていたのかも知れませんね。
  1. 2009/03/21(土) 01:07:35 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

 わたくしも、ウチの親戚に見かける「小津風家族」みるにつけ、余り御縁が無さそうなわが身のふがいなさに、むしろクロサワのぶらんこの場面「生きる」のほうが、自分にふさわしいような・・・。背景は荒々しいノクチ1,2を希望します。(贅沢ですが)
 それにしても、妙な符号があうものです。シネレンズの《復活》拠点と一致するなんて。深川は大火や芸者、木やりばかりと思っていましたが。
 浅草近辺もそうですが、築地も含め、意外と下町・江戸情緒の写真に深みがあるので気に成っていました。根っこがありましたか。 
 映画、人生の一場面。
 正夢のような一瞬が定着し、並べて我々は他人の登上人物だったなんて、死ぬ前のセリフのようですが、写真という「装置」にも、そんな舞台をこしらえる力が、確かにあると思います。
 「小津安二郎」。ホンとに50mmだけですか!?

 それもいいですね、端正で。
  1. 2009/03/21(土) 13:31:40 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordre #-
  4. [ 編集]

最初見たとき
うちのPCのモニターがついに壊れたかと思いましたよ~~~笑

だって、モノクロの画像って予期してませんでしたし・・・(^_^;)


でも
モノクロ写真を
ちゃんと黒白フィルムで撮るなんてのは
流石ですね♪

アナログとデジタルを使い分けるのって
なかなか出来ない人が多いし難しいですが
やっぱり
モノクロ写真は、フィルムからモノクロってのが王道だと
私はモノクロは素人ですが、思っております・・・(^_^;)
  1. 2009/03/21(土) 18:51:13 |
  2. URL |
  3. 山形 #-
  4. [ 編集]

Treizieme Ordre さん
再び有難うございます。
小津作品はまさに見る者に「並べて我々は他人の登上人物」と見終わった後に感じさせてしまう練られたストーリー立てと演出、そしてカメラワークを身上としていますね。

小津作品は50mmしかも、前編、我らがArriflexの35mmを酷使していたというのは半ば伝説と化した業界の常識らしいですが、その旨、都営線で無料配布の「中央公論 Afagio」13号に詳しく書かれていますよ。表紙にもArriflexと共に木偶人形が写っていますし・・・
  1. 2009/03/21(土) 22:37:38 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

山形さん
ありがとうございます。
実はこの白黒的なフィルム、白黒ぢゃないんです。
プリントした結果は、モノクロっぽくなりますが、現像処理もカラー扱い、プリントもCD焼もセンチュリアと同じ扱いでスピードラボでも手軽に扱える画期的製品なのですよ。
今度こちらに来られたら、是非、騙されたと思って数百本くらいお買い求め下さい。

シャープなレンズならモダンな味で、ソフトっぽいレンズなら懐かしい風合いで描写出来、結構面白いフィルムなんで、月1本は撮りますね。
  1. 2009/03/21(土) 22:50:43 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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