深川精密工房 [Fukagawa Genauigkeit Werke GmbH]

深川精密工房とは、一人のカメラマニアのおっさんの趣味が嵩じて、下町のマンション一室に工作機械を買い揃え、次々と改造レンズを作り出す秘密工場であります。 なお、現時点では原則として作品の外販、委託加工等は受付けておりません、あしからず。

Evolution of the name~Konica E-Hexanon50mmf3.5 mod. for S~

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【撮影データ】カメラ:ニコンS2 フィルム スーパーセンチュリア100 全コマ開放
さて、このところいつもは日曜の晩に更新を行っていますが、明日からまたGW旅行第二段に出掛けてしまうので、一日早い更新です。

今回のご紹介は、某新宿西口靴屋ビル2階にある中古カメラのジャンク棚に野晒しになりながらも、未使用で新たな主を探していた、旧コニカ製の引伸用レンズ E-Hexanon50mmf3.5を破格の一万円プラス消費税で買い求め、当工房にてSマウント改造したものです。

実のところ、本当は有り余るキャノン製のヘリコイド&マウントユニットと結合させてカッコイイLマウントレンズを拵えようと思ったのですが、何せ、フランジバックが短く、かといって、もうひとつの主要パーツの供給源のロシアのインダスター系では今度は長すぎ、クリアランス調整用にフランジを噛ませても、カッコが良くない・・・で性根が怠け者の工房主人は、手っ取り早くレンジファインダーレンズに改造出来るSマウント化に踏み切ったというのが真相です。

ところで、タイトルで「その名前の進化」云々と言ってますが、一体これは何を意味するのか・・・
もう聡明な読者各位はお気づきでしょうが、今年の初めに月刊写真工業の市川元編集長殿から拝領した引伸ばし用のHexar5cmf3.5をLマウント改造しましたが、そのレンズと比較してのことなのです。

Hexarは戦後間もない1940年代半ばから後半の輸出用、そしてこのE-Hexanonは、製品に付属していた真新しいプラケースが"Konishiroku"銘ではなく、すっきりさっぱり"Konica"銘になっていることから、どんなに遡っても、1970年代半ば以降、ひょっとすると80年代に入っての製品かも知れません。

今回はエレメントも絞りも非常に美しい状態でやってきたので、開ける必要は全くなさそうだったのですが、Sマウント金具との結合作業で、L39スレッドの内外を切削加工する必要があったので、前後のエレメントを鏡胴からバラシましたが、このレンズも50mmクラスの引伸しレンズには贅沢なことに、計4群6枚のWガウスタイプでした。

先のHexarが逆テッサータイプと考えられたの対し、ずいぶんと奢った設計になっていると思います。
その進化を如実に表しているのが、まさに今回の御題、名前の変遷なのです。
ものの本によれば、小西六は、3群4枚構成のものは、Tessarに倣いHexar、そしてそれ以上に枚数、群の多いものは、Hexanonとしたとのことで、やはり進化していたのです。

では、その進化の度合いを作例で見て行きましょう。今回も先週ご紹介のCanon N-FDと同伴での神楽坂ツアー続編です。なお、前回のN-FD20-35mmも今回のHexanonも開放値がf3.5というのは楽しい偶然でした。

まず、一枚目。これは神楽坂の交差点を渡り坂を登り出してすぐ左側にある、瀬戸物屋兼、レトロおもちゃ屋さんの店先で撮ったものです。
若干陽光が当るビニール包装のおもちゃ類は合焦部であるにも関わらず微かにフレアっぽく写り、反対に被写界深度の後ろギリギリに位置する店内の瀬戸物はかなりシャープに色も忠実に再現しています。

そして二枚目。今度は少し坂を上って左の路地に折れると、いきなり南欧のカフェレストランみたいなお店が姿を現してきます。
そのお店の看板を至近距離で一枚戴き。
木陰になっていたお陰で白い看板はフレアに見舞われず、またコントラストも低下しないまま、かなりみたままにシャープに捉えられています。
店先もバックに入っていますが、この距離での後ボケはかなり素直で好感持てるのではないかと思います。

続いて3枚目。神楽坂の中ほどを横切るかなりの交通量の有る道路を横断して坂を更に登っていくと、イイかんじの食品スーパーあり、個人商店有りなのですが、いつも撮らせて戴くのが、昔風に言う荒物屋さん、今風に言えば生活用品屋さんの店頭のこのカラフルな篠籠です。
お店の方はテストのための被写体を鵜の目鷹の目で捜し歩く遠来からのアマチュアカメラマンの便宜を図ってということでもないでしょうが、色といい、編み目といい、レンズの持つ、発色性能、カラーバランス、何よりも解像力を同時に試すには格好のターゲットなのです。

最後に4枚目。ここも、神楽坂での撮影行ではもれなく立ち寄る名被写体なのです。
場所は坂を登りきって、東西線の神楽坂駅の入口付近、設計事務所か何かが入っている建物らしいのですが、このグリム兄弟が街の人たちをペテンにかけながら下宿してそうなカンジのクラシックな窓を持つ建物では、ちょくちょく個展みたいなものが開かれていて、今回もリトグラフの作家展をやっていました。
しかし、ただ建物を撮るんぢゃ芸がないし、東北方面の朋友など、許してくれそうにないので、息を潜めて待つこと約5分、清楚なカンジのお嬢さん2名が足早に通り過ぎようとしていたので、M3に勝るとも劣らない速写性を誇る我らがS2の能力を駆使して戴いたのがこのカットという次第です。

今回思ったことは、やはり神楽坂での街撮りには、フィルムが面白いのではないかということ。
時間がない場合、R-D1SやM8でさっと流して撮ってしまったこともありますが、深川とはまた異なった歴史と庶民の生活の息吹が根付くこの街のリズムに合わせて撮り歩くには、やはり銀塩のカメラがイイと思った次第です。

テーマ:ニコンSマウント - ジャンル:写真

  1. 2009/05/02(土) 20:04:48|
  2. Sマウント改造レンズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

  これは、なにやら由来が分からない、供出する引き伸ばし機があったのでしょうか、わたしは初めて見ました。
 まさかコピー機の布石では無いでしょうが、コントラストが若干高く思えます。
 (たぶん)引き伸ばしレンズで、ぼけ具合がこの様に良好というのも妙ですけれども、たぶん特定倍率にやんわりと最高性能を絞ったレンズ構成の副産物のような気がします。そういえば業務用コニカには、デュープ用レンズもありましたね。
 一枚目のフレアーぎみのハイライトが特徴ですが、シャドウ諧調が秀逸のようなので、曇天や薄暮の情景ににじみの詩情を湛えそうな、そんな期待を持たせます。
 割合とシャープそうな印象も、引き伸ばしレンズ全般に付きまといます。
 過日拝見した逆テッサータイプという、軟らかさに万能さを秘める旧ヘキサーEレンズには、かなり(日本的、地味な)あずき色系統に色合いが偏っていましたが、コニカはこれを含め全般にマゼンタ風色彩の印象があります。

 毎度感じますが、引き伸ばしレンズの描写に奥行き画像があると言い知れない奇妙さを感じてしまいます。一般撮影用レンズと同様な物理特性にもかかわらず写真の秘儀の一端がそこにありそうな、奇妙な妄想に囚われてしまいます。
 かれらは、いつもは、写真と写真の隙間に人知れず高性能を主張しあってて暗闇でじーっと動きまわっています。

 わたしにとってこれらの「改造引き伸ばしレンズ群」は、結局、少女の様に悩まされ、罪作りで、愉快なモノたちなのでしょう。
  1. 2009/05/02(土) 21:10:32 |
  2. URL |
  3. Treizieme Ordor #-
  4. [ 編集]

これまた見事な仕上がりですね~!!
引伸用レンズの改造は聞く事はあってもカメラに据え付けられた姿をみる事が殆ど(こちらでしか)見ることがありません。
安価に素材を仕入れて、ご自身で立派な撮影用レンズに改造出来るんですから楽しいでしょうね!

フィルムでの撮影は、スローなアナログ機を扱う楽しみがありますよね!
さらに、今のところレンジファインダー機でのフルサイズ撮影では、レンズの端まで固有の描写を楽しむ事が出来ることにはフィルム撮影に大変メリットがあるとも思います。

お写真はどれも端正な写りとボケ、とりわけ赤の発色が見事ですね。
それに3枚目の篠籠の奥に見える柄杓やブルーのポリバケツ(?)あたりのボケはじんわりとして良い感じです。
引き延ばしレンズはフィルムの情報を余す事無く印画紙に届けなければなりませんので、安定した性能が求められると思いますが、印画紙が相手の場合はフィルム共に平面ですので、撮影用レンズとは設計の勝手がちがうんでしょうね。

良いゴールデンウィーク後半をお過ごし下さい。
  1. 2009/05/02(土) 21:44:22 |
  2. URL |
  3. andoodesign #WSWGH/LU
  4. [ 編集]

Treizieme Ordor さん
有難うございます。
確かにご慧眼の通り、旧5cmf3.5はコントラストも相対的に低く、マゼンタというよりはまさにあずき、臙脂色系の発色にアクセントが置かれていたようにも感じますが、こちらは、全体的にコントラストと色飽和度を高くした上で、暖色系にシフトしているように感じられます。

カリカチュア的に申せば、旧レンズが和風味付けの蕎麦屋のカレーライス、こちらは洋行帰りのコックが作る洋風の(本場インドともまた違う)カレーライスってなカンジですか。

しかし、小生も全く同感なのは、写真の教科書的な通説(風説?)では、引伸レンズは近接しか使えない、平面性を重視した設計になっているので、立体感の描写が苦手等々・・・数多く改造して実写していく毎に嘘のベールが一枚一枚剥がされていきます。

思うにいかな大メーカーといえども、数多く捌ける撮影用のレンズと別箇の設計など、本当はやっていなくて、元々、写真用レンズを設計する段階で、そのどちらでも一定以上の性能が出るよう、硝材、構成も考えていて、それがたまたま違う鏡胴に納まって、片や撮影用でござい、片や引伸用でござい・・・と売り方だけ変えているような気がしてなりません。

要は思っているより、両者の垣根はずっと低く、メーカーのマーケッティングによって目隠しされているだけなのではないかと・・・まさにエッシャーの騙し絵みたいなものです。
  1. 2009/05/02(土) 22:56:28 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

andoodesignさん
過分なお褒めのお言葉ありがとうございます。

このレンズ、しらばっくれてしまえば、まるで純正みたいな顔をしていますが、中古カメラ屋のジャンク棚ではちっちゃくて目立たず、自分が買って行ってあげなければ、きっとここでカビを貰って、ホントのジャンクと化して役に立たないまま終わってしまう・・・という思いで救助?して連れて帰って、翌週にはもう改造してました。

今回は工程の都合上、L39のスレッドは削り落としてしまいましたから、もう引伸レンズとして活躍することは出来なくなってしまいましたが、それでもSマウント改造に成功して、こうして人様にお出ししても、そこそこ恥をかかないレベルの写りを見せてくれるようになったワケですから、新たな命を与えたと言えなくもありませんね。

まさにこのように出番を失ったレンズ達に手を差し伸べて、新しい活躍の場を与えるのが当工房の使命であり、無上の楽しみだと思っています。

そして、今回のSマウント化というのはもうひとつの意味があって、実質、銀塩フィルムでの撮影専用レンズとして生まれ変わるということなのです。

確かに海外産のS→Mマウントアダプタはテスト用に買ったことはありますが、キエフのマウントを壊して底部にMマウント形状のパーツを結合させただけの子供騙しのようなシロモノで、せっかく丹念に精度を出して作った自分の可愛いレンズ達をR-D1Sや、M8に繋げるために使いたいとまでは思いません。

それから、貴兄ご慧眼の通り、このレンズ、前作のHexarと較べて発色とコントラストが飛躍的に改善されていまして、シャープさ、ボケの素直さはそのまま受け継いでいて、手間をかけた甲斐があったと思っています。

まだまだ世に出ていない、引伸ばしレンズ、映画用レンズを改造して、その知られざる写りをこの場を借りて情報発信して行きたいと思っております。

今後もひとつ宜しくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
  1. 2009/05/02(土) 23:14:15 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

おおきく出遅れ、失礼しました。
ダブルガウスで50/3.5というスペックは珍しいのではないでしょうか。
意外に国産引き伸ばしレンズでは普通だったですか。
さすがにひしゃくや女性の背中とかボケはきれいで、一点の破綻もない感じがします。
四隅も中心も同レベルのようです。

ただ、わたしには、ピントがあまりにしっかりしていて、ピークがどこに来ているとかが逆に分かりにくく感じます。
そのぶん広角レンズ的、または絞った絵的な印象を受けます。
こういうレンズは熟達者のためのもので、チャーリーさんや Treizieme Ordor さんレベルでないとなかなか語れないのでしょうね。

電話いただいた件、申し訳ありません。
法事に行っていて、タイミングが合わず連絡できませんでした。
あらためて連絡させてください。
それから、区民は肉料理全般に愛用させていただいております。感謝你。
  1. 2009/05/09(土) 21:42:05 |
  2. URL |
  3. 中将姫光学 #sKWz4NQw
  4. [ 編集]

中将姫光学さん
有難うございます。
実は、今日はJCII日本カメラ博物館で市川元編集長殿とお会いしていて、その後、銀座に移動し、不二屋カフェにて7時半過ぎまで、色々と放談しており、次回の葛飾柴又&裏浅草ツアーの際、都合が合えば、夜の総括宴会だけでも出たいとの話も出て、盛り上がっておりました。

さて、本レンズですが、確かに画面全体の均質性と、被写界深度の深さ、ボケの移行のなだらかさのお陰で却って合焦部とオフフォーカスの境界が判りづらくなっていて、絞って撮ったみたいに全体的に平面性が勝っているカンジもします。

これは私見であり、エレメント内の光量チョークリングを取っ払って光路測定やったわけではないので、あくまで推定の域を出ないと思いますが、おそらく、このレンズの実力、即ち銀塩フィルムで撮影に供するに十分な構造上の開放値はf2.4とか、f2.2くらいあるのに、平面to平面で像投射を行う場合、周辺の球面収差が投影画面の均質性を損ねる可能性があるため、美味しいところだけ使う前提でf3.5、つまり約一絞り絞った状態で使っているのと同じになっていて、絞った銀塩レンズのようなイメージを与えているのではないかと思います。

なお、その実証は、既にこのコメントを打つ前に一個サンプルレンズヘッドを拵えましたのでおいおいご報告出来るのではないかと思います。
  1. 2009/05/09(土) 22:45:24 |
  2. URL |
  3. charley944 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

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今を去ること60年前、古き佳き江戸情緒の残るこの深川の地に標準レンズのみを頑なに用い、独特のアングルにこだわった映画監督が住んでいました。その名は小津安二郎。奇しくも彼の終いの住まい近くに工房を構え、彼の愛してやまなかったArriflex35用標準レンズの改造から始まり、忘れかけられたレンズ達を改造し、再び活躍させます。

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